雪国の先導者達   作:黄雀

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一昨日は突然の休載申し訳ありませんでした。どこかで休載分を通常の更新に加えて書きたいと思います。
今回は、実は初めての桐澤トウジ視点です。


トウジとアイドル

 このままではいけない。

 そう思ったきっかけは天原先輩だった。前の部活の時、それまでとはまったく違ったプレイングを見せていた。少し前まで買ったり負けたりを繰り返していたユキネは今や全く勝てないファイターになり、歌星は……まあ言うまでもない。

 俺はあっという間に梅乃台ヴァンガード部のお荷物になりつつあった。

「大会、どうせ出れないって思ってまじめに練習してなかったしな」

 あんまり、ユキネの前でかっこ悪いところは見せられないしな。

 そう思った俺はこの日曜日、ひとりで十日町のカードショップ・テンデイズにやってきていた。

「ショップ大会、隠れて練習するにはもってこいだな」

 今週はショップ大会が開かれる。ネットで知った。

「いらっしゃいませー」

 やる気のない店番のおじさんにさっさと大会の申込用紙を提出。

 時間までアクアフォースのカードでも見ていこう。いいのあったら買ってくか。ユキネもデッキ強化してたし。

 アクアフォース、ちゃんと考えて選んだクランでもないし、もしかしたら向いてないのかもしれないけど。

 

「あれ~?トウジくんじゃない?梅乃台の」

「今日は1人なのね」

 ヴァンガードのコーナーを見ようとした矢先、2つの声が俺にかかった。

「伊達北の北岡部長に浅倉先輩……」

 先日交流戦をした伊達北高のシングルファイト代表の2人。

 しかし立って並ぶと浅倉先輩、本当に背低いな。

「あ、そうだ!トウジくん聞いたよー!梅乃台も日本サーキット予選、出るんだって?」

 北岡部長、相変わらず声がデカいな。不思議とこの人の場合はそれが不快じゃないけれど。

「そうなんです。4人揃ったんで一応」

「じゃあ歌星ミクのやつ、結局入ったのね?」

 今度は浅倉先輩。

「ええ、まあ。どうせユキネのやつが無理やり入れたんです」

「よかったわ、あいつがいないと張り合いがないし」

「なっちゃんあの子やたらとお気に入りだよね?なんかあったの?」

「別に。ま、とにかく今日はお互い頑張りましょ」

「頑張ろうーっ!」

「ははは、お手柔らかに」

 なかなかハードな大会になりそうだ。

 

 

 

「はーい、じゃあ対戦表配りまーす。今回参加者7人のトーナメントになりまーす」

 そうこうしているうちに店員から大会開始の声がかかる。俺達3人もファイトスペースへと移動する。

「ふーん、身内とは当たんなかったみたいね」

 まず浅倉先輩が指定された席につき____

「俺はあっちみたいなんで」

「うん、あとでねー。あたし不戦勝だって~」

 不戦勝を残念がる北岡部長。よっぽどファイトしたくて、そして勝つ自信があるんだろう。

 俺の対戦相手は、女の子だった。浅倉先輩より体は大きいが、それでも雰囲気が年下だ。俺苦手なんだよな、女子。知らん人が今のヴァンガ部の男女比見たら信じてもらえないだろうけど。

「あのぉ、よろしくおねがいしまぁす」

 そう、特にこういう甘ったるい話し方するやつ。

「ああ、よろしく……」

「ヴァンガードアイドルめざしてまぁす。日比谷タイガ、中学3年生でぇーす」

「……桐澤トウジだ」

 さっさと勝って、北岡部長か浅倉先輩に特訓してもらおう。

 

「それじゃあ、1回戦はじめてください」

 店員のアナウンスもちょうどあったことだし。ファイトに必要なことだけ話してよう。

「じゃあ、はじめるぞ」

「はいっ、タイガがんばりまぁーす」

『スタンドアップ・ヴァンガード!』

「士官候補生アンドレイ」

「ブラックボード・オーム」

 グレートネイチャーか。はじめて戦うクランだな。

「俺の先行、ケルピーライダーポロにライド。アンドレイは移動。ターンエンドだ」

 相手がどんなクランだろうと、得意の速攻で沈めてやる。特にこういうイライラする相手は、なるべくすぐに。

 

【桐澤トウジ:ダメージ0/手札5】

【日比谷タイガ:ダメージ0/手札5】

 

「タイガのスタンド&ドロー!ひたむき助手ミニベリーさんにもふもふライド」

 なんなんだよ、もふもふライドって……。

「スキルでオームちゃんは移動。オームちゃんでブーストして、ミニベリーさんヴァンガードにアタック」

 パワーは12000か……。まあ、1ダメージ目だしな。

「ノーガードだ」

「ドライブチェック」

 めくられたのはルーラー・カメレオン。クリティカルのトリガーマークがついている。

「お星さまゲットー。じゃあ全ての効果をミニベリーさんに」

 ちっ、ただクリティカルをひかれただけなのになんかイライラする。

「ターンエンドもふ」

 もふじゃねえ……!

 

【日比谷タイガ:ダメージ0/手札6】

【桐澤トウジ:ダメージ2/手札5】

 

「スタンド&ドロー。ケルピーライダーデニスにライド!そしてコール。マグナムアサルト、レールガンアサルト」

 2体のアサルトで縦列を1つ埋めて陣形を整える。

「レールガンアサルトでブースト、マグナムアサルトでヴァンガードをアタック!」

「ルーラーカメレオンちゃんでガード。ごめんね、カメレオンちゃん」

 いちいちキャラ作りしやがって、イライラする。ファイトに集中しろっての。

「アンドレイのブースト、デニス!16000パワーでヴァンガードにアタックだ」

「ノーガード」

「ドライブチェック。レインボーアサルト、ドロートリガーだ」

「ダメージトリガーありません。しゅん……」

「……ターンエンド」

 いや、冷静になれ。ペースを乱されるな。普通にやれば中坊になんか負けない。

 

【桐澤トウジ:ダメージ2/手札4】

【日比谷タイガ:ダメージ1/手札5】

 

「タイガのスタンド&ドロー。かわいくワイルド、あまくてクールなタイガの分身!ライド!バイナキュラスタイガー!」

 タイガだからタイガーってことか……?

「腕利き助手グルウルフさんをコール。オームちゃんをソウルに入れることでグルウルフちゃんにスキルを与えるよ。そしてぐるぐるダックビルくんを2体ぐるぐるっとコール。ダックくんのスキルはグルウルフさんに。ぐるぐるーっ」

「…………」

「ダックビルくんのブースト、バイナキュラスタイガーでヴァンガードをアタック!この時、タイガの分身のスキル発動、グルウルフさんにパワー+4000」

 合わせて16000か。

 それにしてもこいつ、俺よりも速攻寄りだな。まあ、早く決着がつくのはありがたいが。

「ノーガードだ」

「ドライブチェック、うーん。トリガーでないや」

「ダメージチェック、トリガーなしだ」

 これで日比谷の手札はたった3枚。ツインドライブで一気に反撃してやる。

「ぐるぐるダックビルくん、ブーストして!そしてグルウルフさんでヴァンガードをアタック!パワーは20000」

 20000か……。デニスのパワーは10000ぴったり。防げないこともないが、ここで完全ガードを使うのはもったいないか。

「ノーガードだ。ダメージは、ヒールトリガー!ダメージを回復してパワーをヴァンガードに」

 よし、今日は俺冴えてる。

「この時、スキル発動だよっ」

「何……?」

「グルウルフさんはパワー20000以上でヴァンガードに攻撃をヒットさせた時に1枚ドローできる。もふもふドロー」

 焦った。ただのドローか。

「そしてターンエンド。この時にスキルが4つ発動するよん」

 4つ、だと?

「まずタイガの分身のスキルから。パワーをもらったグルウルフさんは退却する」

 なんだ、スキルと言ってもデメリットじゃねえか。それなら何の問題もない。

「ぐるぐるダックビルくん2体とブラックボード・オームちゃんがグルウルフさんに与えたスキルも発動。このターン、グルウルフさんが退却した時に1枚ドローする。このスキルを3回使えるから3枚ドロー」

 まさかこいつ、普通にヴァンガード強いのか?こんなふざけてるのに。

「これで本当にターンエンドだよ。トウジさん」

 やめろ。ウインクするな。

 

【日比谷タイガ:ダメージ1/手札7】

【桐澤トウジ:ダメージ3/手札4】

 

「俺のターン、スタンド&ドロー!嵐を超える者サヴァスにライド!そして戦場の歌姫ローデをコール」

 とにかくさっさとダメージで追いついてやる!

「ローデでヴァンガードをアタック!」

「ブロードキャスト・ラビットでガード。うーさぎぴょんぴょん」

 イラつくな……冷静に……。

「サヴァスでヴァンガードにアタック!」

「ノーガード」

「ツインドライブ!バブルバズーカ・ドラコキッド!ゲット・クリティカルトリガー!」

 よし、クリティカルと完全ガードを手札に引き入れた。これで守りも磐石だぜ。

「ダメージチェック。カスタネット・ドンキーちゃん、ドロートリガー。パワーはタイガの分身に」

「マグナムアサルトでヴァンガード!」

「ホルダーヘッジホッグでガード」

 よし、次のターンからはストライドで攻めていける。気を引き締めてファイトに集中だ。

「ターンエンド」

 

【桐澤トウジ:ダメージ3/手札5】

【日比谷タイガ:ダメージ3/6】

 

「タイガのスタンド&ドロ~。さあ、ここからフルもっふの時間だよ」

「なんだよ、フルもっふって」

 ついに口に出しちまったし。

 だがそんなことは全くいに介さない様子で、日比谷は高らかに口上をはじめる。

「プリティーでクレバーな教授が教えるアイドルタイガの歩む獣道。もっふもふにしてやんよ。ライド!魔法科学者テスターフォックス!」

 相変わらずふわふわした頭の悪い口上だが、さっきのターンでよくわかった。こいつは油断ならない。

「かわいいだけのヴァンガアイドルの時間は、終わりだぞよ?シークメイトレギオン!」

 ブロードキャスト・ラビット、ホルダーヘッジホッグ、ルーラーカメレオン、グルウルフが山札に帰っていく。

「カモン!幻想科学者リサーチャーフォックス!さ・ら・に、リサーチャーフォックス先生とグルウルフさんをコール」

 得意げにパチンと指を鳴らす日比谷。

「テスター先生でヴァンガードをレギオンアタック!スキルでリサーチャー先生にパワー+4000」

「ノーガード……」

「ツインドライブ。やった、クリティカルトリガー!パワーはグルウルフさんに。2枚目はリサーチャーフォックス」

 またルーラーカメレオン。レギオンで戻したのが効いてるのか……?

「ダメージチェック。ゲット・スタンドトリガー、パワーはヴァンガードへ」

「リサーチャー先生でマグナムアサルトをアタック。パワーは13000」

「バブルバズーカでガード!」

 やらせるわけにはいかない。マグナムアサルトはアクアフォースの得意な連続攻撃の要だ。

「グルウルフさんのアタック!パワーは21000で……ここはマグナムアサルトに」

「……ノーガード」

 完全ガードを使うわけにはいかない。こちらはもうダメージ5なのだから。

「じゃあ、エンドフェイズいっくよー。ここからがタイガのショータイム」

 ユキネの足を引っ張りたくなくて修行に来てるんだ。1回戦からこんなふざけた奴には負けられねえ。

 俺は改めて、次の展開に身構えた。

 

 To be continued……

 

 

 

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