雪国の先導者達   作:黄雀

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3人目のヴァンガード部員、天原ミコト登場。
初のファイト描写も。


天原ミコト

キラキラの美少女歌星ミクさんが転校してきたその日の放課後。

わたしは勧誘に失敗していつもよりちょっと意気消沈しつつ、いつものように部室となっている3年2組の教室を開ける。3年生が2クラスあったころは使っていた教室も、今では空き教室である。

「ミコねえただいまー」

「ここはお前の家じゃねえ。ちわっす天原先輩」

トウジと2人、入ると同時に挨拶をするとやっぱりミコねえは先に来ていた。ほんわかとした笑顔で迎えてくれる。

「こんにちは、2人とも。すぐ梅昆布茶いれるねー」

そう言って電気ポットのスイッチを入れる姿はおばあちゃんみたいな安心感だ。

天原ミコト。通称ミコねえ。2年生の先輩で小さい頃からずっとお世話になりっぱなし。部の存続条件が「部員3人以上」かつ「部員が二学年以上に渡っていること」である梅乃台高校で、ヴァンガード部が続いているのはミコねえのおかげだ。

肝心のヴァンガードはデッキももってないから時々わたしかトウジのデッキを借りてやるくらいだけど。

「さって、じゃあ梅昆布茶を待ちつつ一戦やりますか」

トウジはそのへんにカバンを放り投げるとデッキを取り出す。

「うんっ、やろう!」

もちろん受けて立つ。

「2人ともがんばってね〜」

 

互いにファーストヴァンガードを裏向きにセットする。お互いわかってるけど一応裏向きに。

「じゃあいくよトウジ」

「おうよ」

『スタンドアップ・ヴァンガード!』

 

「春待ちの乙女オズ」

わたしの分身はオズ。同名カードを次々に呼ぶネオネクタールのデッキだ。女の子のカードが多いこともあって気に入っている。

「士官候補生アンドレイ」

そしてトウジのファーストヴァンガードはアンドレイ。連続攻撃を得意とするアクアフォースのデッキ。

 

「じゃあ私から。ドローして、萌芽の乙女ディアンにライド。オズはヴァンガードの後ろに移動するよ」

こうやってヴァンガードをより強いユニットへとライドしていく。それがヴァンガード。

先攻はアタックできないから____

「これでターンエンド」

 

【御堂ユキネ:ダメージ0/手札5】

【桐澤トウジ:ダメージ0/手札5】

 

「ケルピーライダーポロにライドだ。アンドレイを移動。ポロをコールする」

トウジは眼鏡を押し上げると、早速ユニットを展開してきた。

「リアガードのポロでアタックするぜ」

「ノーガード。ダメージチェック」

ダメージでめくれたのは100%オーランジュ。ダメージトリガーはない。

「相変わらずの速攻だね」

「まあな。ダラダラしてんの嫌いだし。ヴァンガードのポロもアタックだ」

「えー、ダラダラって最高だよ? ノーガードで」

「ドライブチェック、トリガーなし」

マグナムアサルトが手札に入る。

「ダメージチェック」

フルブルームドラゴンがダメージへ。トリガーでないなあ。

 

【桐澤トウジ:ダメージ0/手札5】

【御堂ユキネ:ダメージ2/手札5】

 

「わたしのターン、スタンド&ドロー」

カードを引くとそっと傍らに梅昆布茶が差し出される。渋い趣味だなぁ、ミコねぇは。軽くお礼を言って、ファイトを続ける。

「グレースナイトにライド。そのままアタック!」

「パワー14000か……OK、ノーガードだ」

「そういえば……」

ふと、ミコねえが遠慮がちに口を開く。

「今日、1年生に転校生来たんでしょう? どうだった?」

「あ……」

早速お近づきになれなかった、というか勧誘できなかった記憶が蘇る。でも、歌星さんはヴァンガードなんてやらないよね。

「えっと、ユキネちゃん?」

「ああ、すいません天原先輩。ユキネのやつ、早速転校生をうちの部に勧誘して失敗したんで落ち込んでるんです」

そんな丁寧に掘り返すような説明しなくても

「あらあら、それは残念ねぇ」

「席近くになったからってその場で「ヴァンガード興味無い?」って。そしたら「興味無い」って言われちゃってささ」

喋りながらも身振り手振りでプレイを進めていく。幼なじみだからか、よく知ったデッキだからか言葉を発さなくても問題なく伝わる。

「ふふっ、じゃあ少しは入部も期待できそうねぇ」

ミコねえがぱっつんにした前髪を揺らして穏やかに笑う。

「ちょっとミコねえ、今ダメそうだって話したんだけど?」

「だって、その子ヴァンガード興味ない?って質問に興味ないって答えたんでしょう?」

「うん」

「ヴァンガードって何?じゃなくて」

「あ……」

そういえばそうだ。歌星さん、ヴァンガード知ってるんだ……。ミコねえを誘った時は「ヴァンガードってなあに?」って訊かれたのに。

「ヴァンガードを知ってるだけでも、知らないより多少は見込みありそう。っていうことですか?天原先輩」

トウジもこれには1度手を止めて、ミコねえの方へ向き直る。

「うん、そういうこと」

やっぱりミコねえは頭いいなあ。ヴァンガード、ちゃんとやったら強くなりそうなのに。

 

「さて、ごめんね?邪魔しちゃった。2人ともつづけてつづけて」

パン、と軽く手を叩き話を締めるミコねえ。なんだか部長みたいだ。

「はーい」

「はい。じゃあ俺のターン、嵐を超える者サヴァスにライド。そしてジェネレーションゾーン解放、タイダルボアー・ドラゴンにストライド!」

「えー、口上は?」

「そんなもんない。マグナムアサルトをコール」

恥ずかしがり屋だなぁ、トウジは。

それはそうとこっちのダメージは4枚、手札6枚と早速ピンチ。ここをどう止めるか。

「戦場の歌姫ローデでリアガードのグレースナイトをアタック」

「えっ……リアガードを?じゃあ、ノーガード」

これでインターセプトできるユニットもない。

「タイダルボアー・ドラゴンでヴァンガードのアーシャを攻撃。ブーストつけてパワー31000」

ここでクリティカルを出されると負けちゃうから____

「100%オーランジュで完全ガード!」

完全ガード。手札を1枚ドロップすることでどんなアタックも止めることが出来るカード。これなら大丈夫。

「トリプルドライブチェック。バブルバズーカ・ドラコキッド、クリティカルトリガー。効果は全部マグナムアサルトへ。2枚目はケルピーライダー・ニッキー。トリガーはない」

「やっぱりクリティカル出してきたかー、危ないところだった」

「ようやくちゃんと4ダメージの時ガードするようになったな。サードチェック、戦場の歌姫カロリーナ。ヒールトリガーで1枚ダメージを回復、パワーはマグナムアサルトへ」

「えぇっ!?もう1枚トリガーだなんて……」

「ポロでブーストしたマグナムアサルトでヴァンガードをアタック。パワーは26000、クリティカルは2だ。どうする?」

にやりと笑うトウジ。どうするも何もガードしないと。

「ガードするよ。」

手札からウーントタナップ、メイデン オブ ディモルフォーゼ、開花の乙女ケラをガードに使う。

「これでどう?」

お返しに訊いてやる。いつも勝ったり負けたりだけど、今日は負けないよ。

「ここでマグナムアサルトのジェネレーションブレイク発動。ブーストされてヴァンガードにアタックした後、カウンターブラスト1を支払いスタンドする。さらにパワー+2000だ」

「もともとのパワーが9000だから11000……」

「いや、トリガーの効果はまだ残ってる。パワー21000クリティカル2だ」

手札を見る。開墾の戦乙女パドミニが1枚だけ。これだと防げない。

「……ノーガード」

観念してダメージチェックをする。

ヒールトリガーはない。わたしの負け。

 

「はーっ、負けたー」

「そんなんじゃ部員が揃ってもVF甲子園なんか出られないぞ」

「トウジこそ。昨日はわたし勝ったじゃん」

でもわたし達、本当のところどれくらい強いんだろう。いつもトウジとしかやってないからわからないや。

「トウジ以外の人ともファイトしてみたいなー」

背伸びをしつつぼやく。田舎だから仕方ないのかもしれないけど、やっぱりいろんな人とファイトしてみたいよ。

 

「そうねえ、じゃあ他校と練習試合とか組んでみましょうか」

ミコねえが事もなげに言う。

「そりゃやれるならやりたいですけど、先輩コネとかあるんですか?」

トウジも訝しげだ。

「あるよ?」

『えぇっ!?』

トウジと二人して驚きのあまり大声を出してしまう。ミコねえヴァンガードしてないに等しいのにどうして__

「どうして今まで教えてくれなかったんですか」

「だって訊かれてないもの」

 

……ミコねえだけは、どうにも掴めそうにない。

 

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