雪国の先導者達   作:黄雀

23 / 44
ようやく予選開幕まで来ました。
梅乃台4人組の初挑戦。大会までの期間のことも、ファイト中の回想で出そうかなーと思っております。


日本サーキット予選開幕

 夢にまで見た公式戦デビュー。日本サーキット予選を明日に控えた今日、わたしはチームのみんなをわたしの家に呼んで決起集会を開いていた。

 こたつの4辺を囲んで緑茶をすすっているだけとも言うけれど。

「いやー楽しみだねぇ、明日」

「まだ予選に参加できたってだけだけどな」

 相変わらずトウジは嫌なことばっかり言うな。

「そういう時にはクレイドルを使ってストライドすればいいのよ」

「そのターンは呪縛できなくなるけど大丈夫かな」

「相手も呪縛されるつもりで出してるから____」

 ミクちゃんとミコねえに関してはもう聞いてないし……。

「聞いて聞いてー!一応部長だよーっ!」

「本当に一応、な」

「うるさいなトウジは」

 まあこんなふうにグダグダするのが目的でもあったんだけど、その前に決めておきたいことがある。

 明日のオーダーだ。

「えっとね、結局明日はどういうオーダーにするのか決めておかなきゃいけないんだ」

「部長決めてないんすかー?」

「トウジうるさい!」

 ミクちゃんとミコねえもようやく話を止めて聞いてくれている。片や呆れ顔、片やにこにこと。

「わたし北陸ブロックの勢力図とか知らないんだけど、どうなのユキネ?」

 うっ……勢力図?

 え、なにどういうこと?

 ヴァンガードの大会って、情報戦みたいなことするの?

「それはね、ミクちゃん…………。ミコねえが説明しえくれるよ」

「はーい、わたし説明しまーす」

 やっぱりミコねえは頼りになる。部の書類とか手続きとか、難しいことは全部ミコねえに丸投げだもんなあ。

「北陸第1ブロックはざっくり言うと新潟県と富山県の学校が該当するブロックです」

 ふむふむ。出たことないし知らなかったよ。

「強豪と言われるのは富山藤城商業と伊達北高校の2つ。とはいえ、今年のVF甲子園では代表の富山藤城商は大阪祭谷高校に1回戦でチーム全敗」

「もしかして、レベルの低いブロックってことですか?」

 トウジが質問する。

 たぶんそういうことだよね。

「まあ、全国から見ればレベルの低いブロックになるかな。特に今回の予選で目指すベスト5に入るだけなら、富山藤城と伊達北にさえ当たらなければ充分に狙えると思うよ」

 ミコねえ、穏やかな声でなかなかはっきり言うなあ……。ふわふわした印象だけど、ときどき凄味みたいなものを感じるし。

 それはそうと伊達北高校ってハルミさん達だよね。やっぱり強いんだなあ、あそこ。

「大阪祭谷高校は全国でも5指に入る強豪だから、全敗もやむなしとは思うけどね」

「ミクちゃん大阪は詳しいんだね」

「別に。福原にいたころ交流戦があっただけよ」

 へぇ、エリートは違うんだね。

「と、ここまでは調べたんだけど、だからどういうオーダーにすればいいのかは分からないんだよね、わたし。ヴァンガード詳しくないし」

 ミコねえ、そこでわたしを見て!ミクちゃん見ないで!

 わたしにも発言権をちょうだい!

「藤城商、伊達北用とその他雑魚用でオーダーを2種類用意しましょうか」

「ミコねえよりはっきりものを言う人がいるとは思わなかったよ……」

 その他雑魚って……。ミクちゃんの実力があるから言えるんだろうな。ちょっとかっこいいかも。

「大会中、デッキは変えられないけどオーダーは1戦ごとにいじれるんだったよね?」

 へえ、そうなんだ。いじるもんなのかな、オーダーって。

「で、まずその他雑魚戦のオーダーはどうするんだ?」

「トウジもその呼び方に乗っかっちゃうの!?」

「その他雑魚戦は先鋒わたしがいって、心を折ってくる。中堅のタッグはユキネと桐澤くんでいきましょう。秘密兵器になり得るグレンディオスはギリギリまで隠したい」

 そう、グレンディオス。

 ミコねえのデッキが先週の部活から変わっていた。ミコねえのイメージとかけ離れたユニットで正直すごくびっくりしたよ。

「強豪校と当たった時はタッグでわたしとミコトさんがでる。先鋒は桐澤くんで」

「俺が?」

 その他の時と完全にシングル、タッグが入れ替わるわけか。

「簡単に言ってしまうと桐澤くんのデッキはタッグ向きじゃないのよ」

「ふーん。まあ、歌星がそう言うんならそうなんだろ」

 トウジもたいがい適当だなー。

 ま、わたしも似たようなもんなんだけどさ。

「よし!それじゃあみんな、明日は絶対に勝とう!勝って必ず日本サーキット本戦にすすもう!」

「おー」

「当然ね」

「やるしかねえな」

 三者三様の返事を受け、決意を固める。

 わたしと、おばあちゃんの夢を叶えるためにも。

「気合い入ってるわね、ユキネ」

「ユキネちゃんはいつも、ヴァンガードで梅乃台を変えるって言ってたもんね」

「そうなの?」

 ミコねえの説明にミクちゃんがこちらを向いて訊ねる。

「うん、そうだよ。梅乃台の中高生はね、みんな何でもすぐ諦めちゃうの。部活の大会で勝てなくても、人がいないから仕方ない。進学にしたって近くに大学がないんだから仕方ないって」

 それが過疎の進んだ限界集落に生まれたわたし達の運命。そんな風に言ってしまうのは簡単だけれど、運命なんて言い訳にすぎないと思う。

「だけどね?おばあちゃんが言ってたの。この梅乃台にも、冬の大雪の下にしっかり根をはって春には開く花があるように、わたし達もこの梅乃台で頑張れば夢がかなうって」

 わたしの場合はたまたまそれがヴァンガードだったけど、高校のみんなだって、諦めちゃったらもったいないよ。

「だからわたしがまず、大好きなヴァンガードで、梅乃台の若者の力を見せていきたい!おばあちゃんの教えを証明したい!だから、わたしは日本サーキットに出て、やれるってところを見せたいの」

 ちょっとかっこつけすぎかな。

「ほら、ユキネちゃんの夢、いいでしょう?ミクちゃんはまだそこまで梅乃台に思い入れもないかもしれないけど、力を貸してあげて?」

「ちょっ、ミコねえ。そういうの恥ずかしいからいいって!」

「べ、別に……、思い入れなくもないけど……いや、なくてもわたし勝つし」

「ミクちゃんはミクちゃんでいつもいつもツンデレが過ぎるよ!ツンデレガール・レガリアだよ!」

「はぁ?意味わかんないんだけど」

 やいのやいのと結局いつも通りの雑談になってしまう。

 でもそのおかげで、なんか緊張せずに予選にのぞめそうだなあ……この4人なら。

 

 

 

 

「お、おおお……緊張するぅう……」

 当日。

 やっぱり緊張してきた。

 まず会場に見たこともない人数の人がいる。これのほとんどがヴァンガードファイターだなんて……

「ひ、人がいっぱいだね」

 新潟市の市民体育館だそうだ。よく見回せば何台かテレビカメラも来ている。

「そうねえ、出場が35校だから選手だけで140人いるはずよ」

 ミコねえはいつも通り、落ち着いた様子で配られたパンフレットを見て言った。

「伊達北の人達も来てんのかな」

「探してみる?」

「いや、見つけやすくなるまで勝ち進む」

 ミクちゃんとトウジも気合い十分。冷静に静かな闘志を燃やしている。

「はーっ、なんでみんなそんなに心臓強いのー?」

 思わず叫ぶ。

 その声すらも人混みに吸収されて響かない。

 そんな時だった。

 

「はーい、北陸第1ブロック35校の代表ヴァンガードファイターのみなさん!注目!」

 舞台の上から司会のお兄さんの声がとぶ。

 その傍らでは大きなスクリーンが降りてきていた。

「この度はお忙しい中お集まりいただきありがとうございます。今回集まった全35チームですが4ブロックに別れてトーナメントを行っていただきます。各ブロックの優勝チームは日本サーキット本戦に出場が決定。各ブロックの準優勝チーム4校は、その中でまたトーナメントを行い5位通過のチームを決定します。合計5チームが日本サーキット本戦へ駒を進めることとなります」

 司会のお兄さんが大会ルールを説明してくれる。

 とりあえずブロックごとでの優勝を目指せばいいんだよね。

「ブロックって事前に通知されてましたっけ?」

「ううん。今からだと思う」

 さすがにそわそわしだすトウジとミコねえ。

 その間にも司会のお兄さんから説明が続く。

「ブロック分けは前方のスクリーンに表示いたします。後ろのほうの方見づらいと思いますが、1校ずつ読み上げますし、スクリーンにずっと表示しておきますので慌てず確認してください。では、お待ちかねの対戦表を発表いたします。こちら!」

 パッと腕を振りスクリーンの方を示すお兄さん。

 その瞬間、ヴァンガード普及協会のCMを流していたスクリーンが切り替わる。

 

「おおーっ」

「うちはどこだっ!?」

「うわっ、1回戦から藤城商業か!」

 

 途端にどよめく会場内。

 わたしも必死に梅乃台高校の名前を探す。

「あったわ。Bブロックみたい」

 一早く見つけ出したミコねえが声を上げる。

 振り向けば、同じくキョロキョロとしていたらしいトウジもちょうど振り返り、探してすらいなかったミクちゃんともども視線が合う。

「Bブロック9校……、同じブロックに伊達北高校があるわ」

 ミコねえが指さす先を見れば確かにBブロックに梅乃台高校があった。そして伊達北高校も。

「順当にいけば……当たるのは決勝戦か」

 トウジが険しい顔で呟いた。

 伊達北高校、ハルミさん達の高校とぶつかる……

「伊達北高校、勝てるのかな……」

「お、ユキネちゃん。準決勝までは勝てる自信ありだね?」

「違う違うっ!いや、違うってのもダメか……とにかく勝とう!やれるだけやるよ!」

 自分に言い聞かせるように、声を張る。

 そうだ。相手が強くたって諦めない、弱気にならない。そういう姿を梅乃台のみんなに見せるためにここにいるんだ。

 しかもわたしは部長。こんなとこで立ち止まってちゃみんなに笑われちゃうよ。

 

「AブロックとBブロックの1回戦はじめまーす。係員の誘導に従って移動してくださーい」

 

 普及協会のジャージを着た運営スタッフさんによる誘導が始まる。

「よし、いこうみんな!梅乃台高校ーっ!スタンドアップ!」

『ヴァンガード!』

 打ち合わせなしではじめてやったけど、普通に乗ってくれる愉快な仲間達と一緒に、はじめての公式戦が幕を開けた。

 

 To be continued……

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。