ギアースとか使うでしょうし。
日本サーキット予選・北陸第1ブロック1回戦。
現在わたしの前で行われているのはその先鋒戦。我らがエース・ミクちゃんが戦ってくれている。
だというのにわたしは魅入っていた。試合を見ているのは間違いないのだけど、そうではない。
「これが……モーションフィギュアシステム……はじめて生で見た」
モーションフィギュアシステム、ファイトの進行・ファイターのイメージに合わせてユニット達の映像が展開されるシステムだ。
今はすでにギアースという最新システムが主流となっているので、こちらは型落ちということになるけれど、梅乃台ではその型落ちものすら拝めなかったのだ。
「サンクチュアリガード・レガリアでアタック!」
「の、ノーガード……うわあああああああ!!」
サンクチュアリガード・レガリアがミクちゃんの動きに合わせて右腕を相手のヴァンガードに向けて振り下ろす。王の鉄槌、まさにそういった貫禄だ。
「勝者・梅乃台高校歌星ミク!」
ジャッジの宣言がされると、レガリアやそーどみー達は姿を消していった。
「はぁぁ……すごかった」
消えてしまうのがもったいない。
ミクちゃんとユニット達は堂々と自信に満ち溢れていて、まさにロイヤルパラディンの精鋭という感じで美しかった。
「続いて緑ヶ丘高校対梅乃台高校、中堅戦をはじめます。選手は前へ」
ミクちゃんがデッキを手にわたし達のもとへと帰ってきた。
「ダメージ6対2……圧倒的だな、歌星」
トウジが呟く。
映像に魅入っていて気がつかなかったけれど、そんなファイト展開になってたんだ。
「勝つのは当然なんだし、言ったでしょ?わたしは先鋒で相手の心を折ってくるって」
ミクちゃんが髪をかき揚げながら、こともなげに言った。今のは東京の女っぽかった。たぶんだけど。
「じゃ、行ってきなさいユキネ、桐澤くん。これはチーム戦、向こうは今ノーデータの梅乃台全員がわたしと同じ程度の実力だと思い込んでいるはずよ。堂々としてれば勝手に崩れてくれるかもしれない」
「堂々と……かあ」
ミクちゃんは言うだけ言うと壁際まで行き、寄りかかり腕を組んだ。完全なる観戦者モード。
「普通にファイトするだけだ。いくぞユキネ」
「そうだね。よーっし、特訓の成果を見せてやろう!」
それぞれのファイトテーブルまで歩いていき、デッキをセットする。
向こうの代表も位置につき、ファイトが始まる。
『スタンドアップ・ヴァンガード!』
「この地に芽吹け吹雪にも負けぬ花、その名も希望!ストライド・ジェネレーション!聖樹竜ジングルフラワー・ドラゴン!」
ファイトはあっけないほど、わたし達優位で進んだ。
向こうのプレイングがわたしの目から見ても精彩を欠いている。
この機を逃す手はない。
「アーシャのストライドスキル発動!早咲きの乙女ピアを分身!」
モーションフィギュアシステムが大きな花を咲かせ、その中からピアが生まれでる。こうして映像として自分のユニットを見るのは、大げさだけれど感慨深い。
「メイデンオブフラワーピストルをコール。そして春待ちの乙女オズのスキル、カウンターブラスト。ソウルに入って山札からピアをさらに呼び出す!」
2輪目の花が咲き、花びらが舞う。
「フラワーピストルのスキル発動!このターン中、このユニットを早咲きの乙女ピアとしても扱う。さらにフラワースクリーンのスキル発動、ドロップの完全ガードを山札に戻し、このユニットもピアとして扱うよ」
5体のリアガードが全て同じ若草色のマントを羽織る。さあ、早咲きの乙女部隊の準備は完了だよ。
「ピアのスキルを発動!ドロップからメアホープと完全ガードを山札に戻し、ピアを4枚選びパワー+3000!」
ヴァンガードの後ろにいるピア以外を選択肢パワーを上げる。
「もう1体のピアでスキル発動!アーシャとパトミニを戻しパワー+3000!」
ユニット達の周辺に純白の花びらが舞い始める。
わたしのイメージ通りだ。
「ジングルフラワーのスキル発動!Gゾーンのジングルフラワーを表にすることで、ユニットを1枚選び、このターン中すべてのユニットのパワーを選んだユニットの数×2000アップする。わたしはピアを選択」
ピアは3体、そしてフラワーピストルとフラワースクリーンがピア扱いになっている。
「全てのユニットにパワー+10000!」
ユニット達から吹き出す花びらはついに相手のフィールドすらも包み込んだ。
「ジングルフラワーでヴァンガードをアタック!パワー53000!」
直前のターンでトウジのランブロスが相手ペアのダメージを8まで追い込んでくれた。
タッグファイトは9ダメージで決着する。あと1点だ。
「クシナダで完全ガード!」
「トリプルドライブチェック……ゲット・ドロートリガー!パワーをフラワーピストルに。続いてピアのブースト、フラワースクリーンでヴァンガードのユグドラシルをアタック!パワー48000!」
手にした剣を刺突の構えにし、猛スピードでフラワースクリーンが相手のヴァンガード・CEOユグドラシルへと迫る。
「凍気の神器スヴェル!クインテッドウォール!」
5体のユニットがスヴェルの求めに応じてユグドラシルを守るように立ちふさがる。
ククリヒメ、ロットエンジェル、エイル、ニュクス、へスペリス。だけど、そのガード値は____
「41000……た、足りないっ!追加のガードを……」
「ダメだ!これ以上使ったら次が止められない!」
うろたえた相手選手にタッグパートナーが一括。
「フラワースクリーン、全部切り裂いちゃって!」
スピードを殺さず、フラワースクリーンがククリヒメに剣を突き立てる。その勢いのままロットエンジェルに体当たり、2体が消滅。続いてエイルを袈裟斬りに切り捨て、ニュクスを掌底で地面へ叩きつけ、残ったへスペリスとスヴェルを蹴り飛ばす。
そして最後に、守る者のなくなったユグドラシルを上段から一閃。
光の粒となってユグドラシルは消滅していった。
「勝者!御堂ユキネ、桐澤トウジペア!2ー0で梅乃台高校の勝利!」
ジャッジのコールが響く。
「勝った、のか……?」
隣のトウジが半分放心した状態で呟く。
「トウジ!やったよ!勝ったんだ!」
たまらなくなってわたしはトウジに飛びついた。
「うわっ!?ユキ……えぇっ!?」
そこにミコねえとミクちゃんも歩み寄ってくる。
「あらあら、混ざっちゃ悪いかしら。ミクちゃんわたしに抱きついてもいいのよ?」
「意味わかんない」
「なんでよりによってトウジに……」
数分後に控えスペースで冷静になったわたしの第一声である。
「勝ったのになんて顔してんのよ……」
「だってぇ、ミクちゃん~」
「いや知らないわよ。自分で飛びついたんでしょ」
1回戦を勝ち抜いたチームのメンバーが続々と集まってくるこの控えスペースだが、見れば選手以外の応援の人たちもいるようだ。
男子選手と応援で来たその彼女であろう2人等もいる。リア充Gアシスト失敗しろ。
「あーっ!いたいた!トウジく~ん!」
その中からかわいらしい声が上がる。
ん……?トウジ?
見れば一目でコスプレとわかる格好をした少女がトウジに向かって手を振りかけよってくる。
まさか、トウジもそっち側の人間だったなんて……!
「うげっ、あいつ……」
「あれ~?なんか嫌そうな顔しなかったぁ?」
「嫌だったからな」
「ひっど~い!もう、プンプンだぞぅ」
トウジの彼女というわけではなさそうだ。少し遅れて男子もこちらに歩いてくる。こちらは落ち着いた印象……あれ?どこかで見たことある?
「やあ、ミコト姉ちゃん。まずは1回戦突破おめでとう」
「シュンちゃん!応援に来てくれたんだね。えへへ~、わたし何もしてないけどね。2回戦も後輩3人が全部やってくれちゃうみたいだし」
シュンちゃんと呼ばれた男子。やっぱりどこかで見たことある。
年相応の女の子みたいになってるミコねえの方が衝撃的過ぎて思い出せない。
「御堂さんと桐澤くんもおめでとう。それとお久しぶり」
「あ、ありがとう。えーっと……」
「?」
「……………………誰でしたっけ」
「比嘉シュンヤ。一応、クラスメイトなんだけど」
「あーっ!思い出した!一学期までは来てた影薄い人だ!」
「影うす……」
「あぁっ!?違うのっ、あの、ごめんねっ」
「最低だなユキネ」
「トウジは黙ってて!」
だいたいトウジだって絶対覚えてなかったよ。比嘉シュンヤくん、もう忘れないようにしないと。
「それと歌星さんははじめましてだね」
気を取り直したのか、気を使ってくれたのかシュンヤくんはミクちゃんの方に話を振った。
「ええ、はじめまして。クラスメイト……ってことはわたしの後ろにあるいつも空いてる席の主かしら。転校してきたその日から不思議に思ってたのよ、空いてる机が2つあること」
「たぶん、それかな。1回戦はすごいファイトだったね、歌星さん」
そうそう、ミクちゃんの席の後ろ。いつも遊びに来たミコねえが座ってる席が本来シュンヤくんの席だ。
だんだん思い出してきた。
「あーっ!そうだよ、ミックミク!タイガとファイトしてよ〜」
コスプレの女の子が急にトウジからミクちゃんに標的を変えた。
「ツッコミどころが多すぎて何から言っていいかわからないんだけど、まずあんたは誰よ?タルトゥさん」
タルトゥ?
「お、分かる?分かっちゃう?黒衣の撃退者タルトゥコス。どうかな?ミックミク」
「寒そう。あとミックミクはやめて」
「もっとなんかあるでしょ〜?ま、いいや。ヴァンガードアイドル・日比谷タイガ、ミックミクにファイトを申し込むよっ」
すごい、あの子。ナチュラルに後半部を無視した。
「誰だか知らないけど、やらないわよ」
ため息混じりにきっぱりと断る。
「僕も見たいんだけどダメかな?きっと日比谷さん、強いよ。さっきまで観戦席に一緒にいたんだけど、ずっと解説してもらってたんだ。最近のヴァンガードは分からなくてさ」
意外にも割って入ったのはシュンヤくんだった。
最近の……ってことはシュンヤくんもヴァンガードやってたことあるんだ。誘ったら部に入ってくれるかな。
「シュンちゃんが見たいならわたしも見たいかな〜」
ミコねえはシュンヤくんに甘いなあ。まあ、わたしも見てみたいけど。
「ダメよ。それなりの実力があるファイターならなおさら。どこの学校のスパイかわかったもんじゃないわ」
なるほど、そういうこともあるのか。
「え~、いいじゃん。浅倉パイセンを倒したほどの腕なんでしょ?さっきのも見てたけど、北陸第1ブロックレベルじゃ敵なしじゃん?」
「浅倉……?浅倉ナツキのことを言ってるの?」
「伊達北高校のスパイってこと?」
わたしも口を挟む。
「だからぁ、スパイじゃないんだって。タイガは強い高校に進学したくてリサーチを____」
「各ブロック、2回戦をはじめます。選手はスタッフの誘導に従い試合会場にお戻りください」
控えスペースに入ってきたスタッフの声が拡声器を通して響き渡る。
「あ、えっと……いこうか。ミクちゃん、ミコねえ、ついでにトウジ」
「ついでって何だよ」
トウジが眼鏡のズレを直しつつ、軽口に応える。
「じゃあ、みんな頑張って」
「ちぇっ、じゃあせめて面白いファイト見せてよねっ」
シュンヤくんと、えっと……タイガちゃん?も応援してくれる。
「さあ、次もがんばろう!」
わたし達は2回戦に向けて足を踏み出した。
To be continued……