雪国の先導者達   作:黄雀

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100話までに完結するといいけれど……
最近そんなことを思いはじめました。
でも、コラボとかもしたいです。


強さを求めて

 日本サーキット北陸第1ブロック予選。本戦出場の最後の1枠を争う5位決定戦が行われている。

 4チームによるトーナメント戦で、現在は決勝。そこにわたし達のよく知る人達の姿はない。

「……わたしのせいだ」

 伊達北高校はストレート負けした。全員のプレイングが精彩を欠いていて、特にハルミさんの調子が酷かった。

 わたしのせいだ。

「ユキネちゃんのせいじゃないわ。表彰式、でれそう?さっき聞いてきたけど、1人代表で本戦出場切符を受取れば大丈夫らしいから。わたし1人でも」

「大丈夫。ありがとうミコねえ」

 ミコねえと、シュンヤくんがこんなわたしを心配してくれる。

 ミクちゃんはわたしの試合後すぐに、トウジは伊達北の敗退が決まってから、それぞれどこかに行ってしまった。

 愛想を尽かされたのかもしれない……。

「そうだ、御堂さん。僕もヴァンガード部に入りたいんだけれど、いいかな?」

『えっ?』

 ミコねえと声が重なる。

 シュンヤくんがヴァンガード部に?

「ダメかな?最近ミコト姉ちゃんの練習に付き合ってたら、またヴァンガードしたくなって」

 さっきのわたしの、部長のファイトを見てそれでも入部したいと思う人がいるなんて。

「シュンちゃん、学校来るの?」

 ミコねえの驚きはわたしとは全く別のものだったいみたい。

「ああ、ちょっと思うところがあってね……。御堂さんがいいって言ってくれたらだけど」

 少し、ひっかかりを感じた。

 思うところがあって……。なんなんだろう。そもそもシュンヤくんが二学期から学校に来なくなっていたのはなぜなんだろう。少なくともクラスでイジメとかはなかったはずだ。

「えっと、入部に関してはもちろん歓迎します」

 断る理由もない。日本サーキットに人数ギリギリの部員数だったし、7人まで増えれば夏のVF甲子園だって目指せる。

「よかった。じゃあ御堂さん、これからよろしくお願いします」

 ぺこりと頭を下げるシュンヤくん。

「そうだ。暇してても仕方ないし、シュンちゃんとユキネちゃんでファイトしてみたら?歓迎ファイトってことで」

 ミコねえが提案してくれる。気分転換になれば、と思って言ってくれたのだろう。

 でも、わたしは……

「僕からもお願いしたいな」

「ん、じゃあ……せっかくだしね」

 大会も終盤になり、空きテーブルはいくつもある。

 断る理由もないかな。

 このファイトは別に勝たなくてもいいわけだし。

 

 

 

「最初にお互い、ジェネレーションゾーンのカード枚数を確認するの、裏のままね。最大8枚だよ」

 シュンヤくんは昔はヴァンガードをしていたらしくて、だから新しい要素だけを説明していく。

「8枚か……じゃあ、これとこれと……うん、これでOKだよ」

「そのカードはメインのデッキとは別に、裏向きのまま置いておく。順番は気にする必要ないから適当に」

「うん、こうかな?」

「そうそう、じゃ、はじめようか」

 勝たなくてもいいファイトが、こんなに気分の軽いものだったなんて。昨日まではずっとそうだったのに、すっかり忘れていた。

 

 〈勝て。どんなファイトにも。もっと強く……〉

 

 ファーストヴァンガードをセットした瞬間、あの声がまた聞こえてきた。

 いいんだよ、このファイトは勝たなくて。だから黙ってて。

『スタンドアップ・ヴァンガード!』

「春待ちの乙女オズ!」

「希望の子トゥルエル」

 

 シュンヤくんはエンジェルフェザー使いか。

 レギオンもストライドもない時代のカードだけど、油断はできない。それを言ったらミクちゃんのファーストヴァンガード、ティファニーだって古いカードだ。

「説明する都合があるから、わたしの後攻でいいかな?」

「説明するから後攻?よくわからないけど、じゃあ僕が先攻もらうね」

 こうしてわたし達のファイトははじまった。

 

「ドロー。サウザンドレイ・ペガサスにライド、トゥルエルを移動。これでターンエンド」

 カードを扱う手つきが慣れている。

 これならストライドまでは何の説明もいらなそうだ。

 

【比嘉シュンヤ:ダメージ0/手札5】

【御堂ユキネ:ダメージ0/手札5】

 

「スタンド&ドロー。開墾の戦乙女パドミニにライド!オズを移動し、アタック!」

 オズとパドミニをレスト。

「ノーガード」

 テンポよく応えるシュンヤくん。やっぱりヴァンガード、そうとうやってたんだ。

「ドライブチェック、メイデンオブ・ディモルフォーゼ。ゲット・クリティカルトリガー!」

 遠慮はいらなそうなのでこのクリティカルはヴァンガードに乗せさせてもらう。

 

 〈そうだ、強くなれ。もっと強く〉

「ダメージチェック、レクィレルにブロークンハート。トリガーなし。サウザンドレイはスキルでパワー+4000」

 サウザンドレイ・ペガサスには自分のダメージゾーンにカードが置かれるたび、そのターン中パワー+2000するスキルがある。今は関係ないけれど、のちのち厄介になりそうなスキルだね。

 それも大事だけど、今はそれより____

「それ、ナース・オブ・ブロークンハート。ジェネレーションブレイクのスキルをもったユニットだね」

「ん?ああ、これ。GBってジェネレーションブレイクって読むんだ」

「うん、Gゾーンとヴァンガードサークルで表になっているGユニットの合計枚数がその数字以上になった時解放されるスキルなの」

「なるほど。強力なスキルだと思ったけどそういうことか」

 

 

 

 ターン6

【比嘉シュンヤ:ダメージ4/手札5】

【御堂ユキネ:ダメージ3/手札6】

 

「僕のターン。スタンド&ドロー。ライド・黒衣の戦慄ガウリール!」

 お互いのヴァンガードがグレード3になった。

 ここでストライドの説明をしないと。

「えっと、お互いのヴァンガードがグレード3だから、ストライドできるんだよね?」

「あれ?知ってるの?」

 最近のヴァンガードは知らないって言ってたけど。

「さっきね。アイドルさんから教えてもらったんだ」

「……そっか。手札からグレードの合計が3以上になるようにドロップする。そしたら、Gゾーンから1枚選びストライドだよ」

 タイガちゃんか、怒ってたな……。

「じゃあ、これで……ストライド!聖霊熾天使ウリエル!」

 大会をずっと観戦してたからかな?わたしのつたない説明でもすぐに理解してくれている。

「ガウリールのスキル。カウンターブラストして、山札を3枚見る。黒衣の裁断ハールートをダメージゾーンに置き、ハールートをコール。ダメージゾーンにカードが置かれたから、ブロークンハート、ウリエル、ミリオンレイにパワー+2000」

 はじめてのストライドでいきなりコンボを決めてきた。シュンヤくん、すごく強いのかも。

 

<お前も強くなれ……>

 

 例の声がまたうるさい。

 お願いだから静かにしていて。わたしはもう、あんなことはしたくないの。

 

「ブロークンハートでヴァンガードをアタック」

「ウーントタナップでガード!」

「ウリエルでアタック!」

「ノーガード!」

 

<強くなれば、ファイトで勝てる>

 

「えっと、トリプルドライブだよね?1枚目、不死鳥カラミティフレイム。2枚目、クリティカルヒットエンジェル!クリティカルをヴァンガードのウリエル、パワーをハールートに。最後、ドクトロイドリフロス。スタンドトリガーだ。効果はすべてブロークンハート」

「スタンドトリガー!?」

 身の回りに使う人がいないからすっかりその可能性を頭のそとに追いやっていた。

 スタンドトリガーか……

「ダメージチェック。ヒールトリガー!パワーだけヴァンガードに。2枚目、フラワーピストル。トリガーなし」

 

<ファイトで勝てるならば、あんなことをしなくとも目的が果たせるであろう?>

 

 えっ……

 強くなれば、あんな形じゃなく、みんなと全国に行ける……?

「ウリエルのスキル発動だよ。3枚見て、ミリオンレイをダメージに置き、ダメージからサニースマイル・エンジェルをコール。スキルでウリエル、ブロークン、サウザンドレイにパワー+2000」

 

<そうだ。私に任せろ。お前を強くしてやる>

 

 強くなれるの?そしたら、あんな酷いことしなくてもみんなと日本サーキットを勝っていける……?

「サニースマイルのブースト、ブロークンハートでヴァンガードをアタック。パワーは24000」

「マイリスでガード!」

「ハールートでアタック!25000」

「ファアリーライトでガード!」

 

<ああ、もうあんなことはしなくて済むとも。さあ、私にすべて委ねるんだ>

 

 じゃあ……そういうことならわたしは。

「僕はこれでターンエンドだ」

 

【比嘉シュンヤ:ダメージ4/手札8】

【御堂ユキネ:ダメージ5/手札3】

 

「わたしのスタンド&ドロー……」

 わたしはまだためらっていた。謎の声に従うことに。

 なぜだかは分からない。でも本能的に、従っちゃいけないものの気がしていた。

 

<何を迷っているのだ、御堂ユキネ。お前には力が必要なのだろう?それとも、日本サーキットは初戦敗退で、梅乃台の学生に夢を与えるというのは諦めるのか?>

 

 そうだ。たしかにわたしには力が必要だ。でも、何かがわたしを踏みとどまらせている。

「御堂さん?御堂さんのターンだけれど……?」

 シュンヤくんが心配そうにのぞき込んでくる。

「あ、ああ。そうだよねー。ごめんごめん、なんかぼーっとしちゃってさ。あはは……」

「……さっきのことは」

「えっ?」

「さっきのことは、僕はいいと思うよ。御堂さんが悪いことをしたわけじゃないんだし、それに____」

 さっきのこと、というのはジャッジキルをした大将戦のことのようだ。

 また気を使わせちゃったな。

「それに、僕も気持ちがわかるから。なりふり構わず、絶対に勝ちたい時って、あると思うんだ……」

 シュンヤくんはなぜかそこで、ちらりとミコ姉を見た気がした。

「なりふり構わず……か」

「そうさ。だって、そうしなくても自分の道を進んでいける人ばかりじゃないだろ?」

「…………」

 ミクちゃん、ナツキさん、今のまま頑張っても、少しも勝てる気がしない人。確かにいる。

 頑張っても頑張っても、わたしにはあの域に達することなんて……。

「シュンちゃん?ユキネちゃん?」

「そう……そうだよね。みんながみんな、まっすぐに生きていけるわけじゃない」

 何かが、わたしの中で弾けた。

 

 〈さあ、私が力をあげよう〉

 

 あなたが誰だか分からないけれど、くれるのならちょうだい。

 わたしが自分の道を突き通す力を。

 

「……ふふっ。ありがとう、シュンヤくん。わたしもう迷わないよ。ジェネレーションゾーン解放」

 得体のしれない"彼"を受け入れた時から、わたしの中に力がみなぎっていった。

「この大地を枯らそうと、力を吸い上げ伸びゆけ。ただ美しく咲くために。ストライド・ジェネレーション!聖樹竜マルチビタミン・ドラゴン!」

 イメージが押し寄せてくる。

 すごい、この先の展開がどこまででもイメージできる。

 この力さえあれば、わたしはもう負けない。

「アーシャのストライドスキル。メアホープを分身。そしてマルチビタミンのスキルで他の2体のメアホープにパワー+5000。メアドリームをコール。メアホープのスキル発動」

 圧倒的力!圧倒的イメージ!

 きっとミクちゃんに見えてる光景と同じものが見えてるんだ!

「メアドリームをスペリオルコール。もう1体のメアドリームにパワー+5000!オズのスキル、ソウルに移動しメアホープをスペリオルコール!マルチビタミンのスキル!」

 楽しい。楽しい。楽しい。

 強いって楽しい。

 そうだ、勝ち続けたらもっと楽しいはずだ。そうに決まってる。

「メアホープ2体にパワー+5000!」

「吹っ切れたみたいだね、御堂さん」

「うん!夢を叶えたかったら、勝たなきゃ……!」

 こんなに、こんなに簡単なことにどうして今まで気がつかなかったんだろう。

「ユキネちゃん……」

 ミコ姉、そんなに不安そうな顔しないで。

 わたし、もう負けたりしないから大丈夫だよ。

「まず、マルチビタミンドラゴンでヴァンガードを____」

 

「はいはい、そこまで。表彰式はじまるわよ、ユキネ」

 

 ヴァンガードをレストしようとした手を、押えられてしまう。

 ミクちゃんだった。トウジも、いつの間にか戻ってきている。

「じゃあ、続きはまた今度部活でってことで」

「そうだね、シュンヤくん」

「部活で?比嘉、お前ヴァンガ部入んのか?」

 トウジが不思議そうにする。

 そういえばまだ2人は聞いてなかったね。

「そうだよ、シュンヤくんは今日からヴァンガード部の仲間です。さ、みんな行こう。表彰式遅れたら怒られちゃうよ」

 今から、日本サーキット本戦が楽しみだ。

 

 

 

 To be continued……

 

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