雪国の先導者達   作:黄雀

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新年は中部大会からと言ったな?あれは嘘だ。
すいません、本当にすいません。
でも本当にもうすぐです。


梅乃台の危機

 東京ドラゴンエンパイア支部に特設されたファイトスタジアム。大観衆の見守る中、2人のファイターにより熱戦が繰り広げられていた。

「スタンドしたオーバーロードTHE ACEでアタック……ぞくぞくするやん?」

「くっ……ノーガードだ」

 ドラゴニック・オーバーロードが業火を纏った長剣をヒャッキヴォーグに向けて振り下ろす。

 会場が大歓声で沸いた。

「決まったー!中堅戦も日本代表天道ヒメカ選手がとりました!これで日本代表の3連勝!団体戦の日本勝利が決まりました!」

 シンガポールと日本の、高校生代表7名による交流戦。

 先鋒葛木カムイ、次鋒篠崎アリサ・岸沼クロガネ、中堅天道ヒメカと連勝したことで、副将、大将を待たずに決着がついてしまった。

 落胆するシンガポール選手達の中から、監督がスタジアムの中央に、拍手をしながら歩み出てくる。

「日本代表の皆さん、おめでとうございます。お集まりいただいた皆さん、応援ありがとうございます。シンガポール高校生代表監督のクリストファー・ロウです」

 本人も高校生と同じ程度の年齢だが、彼はギアースの開発者であり、世界的に有名なヴァンガードファイターでもある。

「さて、皆さん。現在の日本の高校生のレベルは非常に高く、櫂トシキや雀ヶ森レンが高校生であった頃に勝るとも劣らないレベルだ。既に団体戦の決着はついてしまったわけだけれど、どうだろう?残り2戦も観たくはないだろうか?勝敗ももちろん重んじられるべきだが、これは交流戦。残り2戦も、やるというのは」

 会場中から大きな拍手が上がり、どよめきの波が生まれる。

「もちろん日本チームが了承してくれれば、だけどね。どうだい、マモル?」

 日本代表監督・安城マモルに同意を求める。

「先導さん、歌星さん、鈴森さん、いいよね?」

「はい、もちろんです!わたしもシンガポールの人とファイトしたいですし」

 先導エミ。強豪宮地学園カードファイト部を率いる部長であり、数々の伝説をもつ先導アイチを兄にもつ。

 福原や祭谷が厳格な実力主義をとり、部員同士はライバルという色が強いのに対し、部員同士の仲の良さが宮地最大の武器ともいわれる。

「……わたしは早く帰りたいけど。ま、やるならさっさとやっちゃいましょ」

 無名校を率いる絶対エース……ってさっき勝手に紹介されてた。

 とにかく少しでも早く梅乃台に帰ってユキネの状態を確認しないと。最悪の場合には部員全員がリバースさせられている場合もある。まあ、4人くらいならわたし1人でも何とかなるけど。

「ボクはファイトしたいですー。アリサもクロも、お姫様も、空気読んで負けてくれたらボクのファイト盛り上がったのになー」

「はっ、すいませんお姉様!」

「間に受けるんじゃない」

 また始まった……福原組のコント。

「でもミックミク、お急ぎみたいですからね。すぐに終わらせるとしましょう」

 レイカ部長の目に妖しげな光が灯る。サイクオリアを持つ者の輝き。祭谷のヒメカと違って、部長がこの力を使うことはほとんどない。サイクオリアなしでも、ほとんどのファイターは部長に遠くおよばないから。

「ええと、選手も同意してくれたから、受けるよ。残り2戦のエキシビジョンマッチ」

 安城マモルが返事をすると、クリストファー・ロウは満足げに頷いた。

「それじゃあ皆さん、続いて2戦目のタッグファイトをお楽しみください」

 大げさに手を広げて大観衆を煽ると、シンガポール側のベンチに下がっていった。

「じゃあ行こう!ミクちゃん、いっしょに楽しもう!」

 笑顔でわたしに手を差しのべる先導エミ。

 このチームのキャプテンが経験豊富な葛木カムイでも、おそらく最も力のあるレイカ部長でもなく彼女なのは、こういうところに理由があるのかもしれない。

「……行きましょうか」

 デッキを手に、立ち上がる。

 

 

 

 ________________________

 

 

「す、すごかったね……」

 わたしの家に4人で集まってコタツに入り、テレビを見ていた。怒涛の五試合にしばらくみんな圧倒されていた。

「ミクちゃんが7人……って感じね。シンガポールの選手達を全く寄せ付けなかった」

 ミコねえの言う通りだ。

 見ただけで分かる。7人が7人とも、今のわたしに勝てる相手じゃない。

「5戦全勝か……。日本のファイターとして喜ぶべきなんだろうし、そのうちの1人が味方なんだから尚更なんだろうが、日本サーキット本戦はこれに勝たなきゃいけないのか」

 トウジもこの時ばかりは皮肉の一つもでてこないようだ。

「……まあ、福原はともかく。他の学校は1人ずつだし、部員全員がこのレベルじゃないよきっと。団体戦なんだ、勝てるところ勝っていこう」

 重くなってしまった空気を変えようと、シュンヤくんが明るく言ってくれる。

「そ、そうだよ!宮地とか祭谷とあたっても、先導さんや天道さんはミクちゃんに倒してもらえばいいし」

 いつかは、わたしが倒すけど。

「よし!そうと決まればせっかく集まったんだし、ファイトしようよ」

「そうと決まってないけどな、お前が言っただけで」

「トウジうるさい」

 トウジもいつもの調子を取り戻したようだった。

「じゃあ、僕と桐澤くんでファイトとか、どうかな?」

「おう、いいぜ。そろそろお前には勝たなきゃな」

 2人のファイトが始まる。

 コタツのテーブルは狭いから、わたしとミコねえは見学だ。

 2人がファーストヴァンガードをテーブルに伏せる。

 

『スタンドアップ・ヴァンガード!』

「バブルエッジ・ドラコキッド!」

「希望の子トゥルエル」

 

【桐澤トウジ:先攻】

【比嘉シュンヤ:後攻】

 

「俺のターン。ドロー。いくぜ?ライド!ケルピーライダー・ニッキー!」

 バブルエッジ・ドラコキッドが先駆で斜めに移動していく。

 ファーストヴァンガードの斜め移動……か。ナツキさんを思い出すな。

「ターンエンドだ」

 

【桐澤トウジ:ダメージ0/手札5】

【比嘉シュンヤ:ダメージ0/手札5】

 

「ふふっ、楽しみだよ。スタンド&ドロー。サウザンドレイ・ペガサスにライド。トゥルエルは素直に後ろへ」

「俺が素直じゃないみたいだな」

 トウジが茶化す。

 シュンヤくんは少し困ったように笑った。

「はは、そんなんじゃないよ。トゥルエルのブースト、サウザンドレイでアタック」

「ノーガードだ」

 けっこう仲良くなったよね、この2人。男子が2人きりだからかな。

「ドライブチェック。レクィエル、ノートリガーだ」

「ダメージチェック。っと、無駄クリティカルか」

「ターンエンド」

 早速手札に完全ガードのレクィエルを引き入れたか。アクアフォース相手だと多少使いにくくもあるだろうけど。

 

【比嘉シュンヤ:ダメージ0/手札6】

【桐澤トウジ:ダメージ1/手札5】

 

「スタンド&ドロー!……やっかいなもんにライドしてくれたな」

 サウザンドレイ・ペガサス。ダメージを受ける度にそのターン中パワーが2000上がるカード。小さなパワーで連続攻撃を仕掛けるアクアフォースの天敵だ。

「カップルダガーセイラーにライド。バブルエッジの前にマグナムアサルトをコール」

 連続攻撃はしない形の展開。

「カップルダガーでヴァンガードをアタック!」

「うーん……アスベエルでガード」

「ドライブチェック、スタシア。トリガーなしだ。続けてマグナムアサルトでアタック!」

「それは受けるよ。ダメージチェック、ブロークンハート。トリガーなし」

 こちらはエース級のカードがダメージに落ちる。エンジェルフェザーの場合、それでいいのだけど。

「ターンエンドだ」

 

【桐澤トウジ:ダメージ1/手札5】

【比嘉シュンヤ:ダメージ1/手札5】

 

「僕のスタンド&ドロー。黒衣の裁断ハールートにライド」

 順当にライドを重ねていく。

「うーん……このままアタックしようかな。ハールートでヴァンガードのカップルダガーをアタック」

 パワーは14000。防ぎづらいところ。

「ノーガードだな」

「ドライブチェック、黒衣の戦慄ガウリールだ」

 トウジのダメージにもノーマルユニット・アンガーボイルドラゴンが落ちる。

「ターンエンド……ふふっ」

「なんだよ、急に笑って」

 シュンヤくんが俯いたまま妖しく笑う。

 わたしもミコねえも不思議でしかなかった。

「いや、ごめんね。ちょっと気になってさ」

「気になる?何が」

 素っ気なく尋ねるトウジ。

 

 

「桐澤君、キミは強いのかい?」

 

 

「っ!?」

 トウジが驚愕に固まる。

 言葉に対する驚愕ではない。顔だ。シュンヤくんの顔、両目の下にダークレッドの模様が現れている。正体は分からないけれど、本能的に何か邪悪なものだと理解できてしまう。

「シュンちゃん……どうしたの、それ?」

「これかい?これはね、僕の力だ!僕のような負け組が、ミコト姉ちゃんみたいな勝ち組に下克上するための力!」

 もう見間違いなんて誤魔化しはできない。禍々しい模様はシュンヤくんの顔にはっきりと現れたまま、消えることはない。

「リバース、これが完全なリバースか……。素晴らしい力だ。御堂さんも早くおいでよ、この領域に。ヴォイドと一つになるんだ」

「い……いや……」

 こわい。シュンヤくんが怖い。

 何が起こってるの……?

「ヴォイド……あの声が、あの声がシュンちゃんに何かしたのね!?」

 ミコねえが叫ぶ。

 あの声って?まさか、アレじゃないよね……

「すぐに分かるよ。僕がミコト姉ちゃんを倒せば、すぐにね。先に桐澤君だけど」

 倒せば……?

「トウジ、たぶんだけど負けたらヤバイよ!とにかく勝って……じゃなくてこのファイトやめよう!」

 ファイトを中断しようと、カードに手を伸ばす。

「っ!」

 何か見えない力でその手が弾かれた。

「無駄だよ。リバースファイターとのファイトは1度はじまったら逃げられない。さあ、桐澤君のターンだ」

 

【比嘉シュンヤ:ダメージ1/手札6】

【桐澤トウジ:ダメージ2/手札5】

 

「くそっ!やるしかねえのか……。スタンド&ドロー!ライド!蒼嵐竜メイルストローム!」

 トウジの顔に焦りが見える。

 負けたら、トウジもああなるの……?

「そうそう、それにキミが勝てば何の問題もない」

「ったく、何言ってんだか全然わかんねえよ!ラスカルスィーパー、スタシアをコール!ラスカルでヴァンガードをアタック!」

「ふむ……ノーガード。ダメージチェック、ドクトロイド・リフロス。スタンドトリガーだ、パワーはヴァンガードに」

「ちっ、マグナムアサルトでアタック!」

「それも受けよう。ダメージチェック、不死鳥カラミティフレイム。トリガーなし」

 次々とダメージを与えていくトウジ。いいよ、そのままお願い……!

「スタシアのブースト、メイルストロームでヴァンガードをアタック!」

 パワー17000。向こうは14000。

 これはたぶん……

「サニースマイルエンジェルでガード!2枚貫通だ」

 やっぱり。

 メイルストロームには、3回目以降のアタックでヴァンガードにヒットするとデッキからメイルストロームを手札に加えるスキルがある。

 トウジはこれを使うためにリアガードからアタックし、シュンヤくんはこれを防ぐためにガードを温存していた。

「ツインドライブ!カロリーナ、ヒールトリガーだ!パワーをヴァンガード!2枚目……グローリーメイルストローム。トリガーなし」

「ふぅ、ちょっと焦ったよ」

 涼しい顔でそんなことよく言う……。

 

【桐澤トウジ:ダメージ2/手札5】

【比嘉シュンヤ:ダメージ3/手札5】

 

「スタンド&ドロー。ライド、黒衣の戦慄ガウリール」

 静かに、シュンヤくんのターンが始まる。

「さあ、はじめようか。本物のファイトを。ジェネレーションゾーン解放!羽のように軽い言葉も、嫉妬に塗れて刃に変わる。ストライド・ジェネレーション!聖霊熾天使ウリエル!」

 

 To be continued……

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