雪国の先導者達   作:黄雀

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大変長らくお待たせいたしました。
卒論と並行してですが、また執筆していきたいと思います。


それぞれの戦い

 目の前でナツキさんがリバースされた。

 日本サーキット予選でユキネちゃんを圧倒したあのナツキさんがだ。それほどまでにリバースの力は強大なのかもしれない。

 ミクちゃんが帰ってきて、タイガちゃんもいて、わたしはたぶん戦わないことが最善なんだろう。

「ミクちゃん、どうしよう。ナツキさんまでリバースしちゃった」

 取り乱すユキネちゃんに、押し黙るタイガちゃん。

 年上のわたしがしっかりしなきゃいけないんだろうけど、もうミクちゃんに任せるしかない。

「倒すしかないでしょ……。北岡部長とナツキがやられたんなら、伊達北は全滅とみていいわ。残ってる部員がいるかもしれないけど、状況の打開に役立つとは思えない」

 そのミクちゃんの表情にすら焦りが見える。

 普及協会とかに連絡して、プロファイターを送ってもらうとかした方がいいのかもしれない。

 いえ、それはできないわね。

「一旦撤退した方がいいのかもしれない」

 あのミクちゃんからも弱気の発言が出た。

 でも、それではいけないんだ。

「ダメだよ。ここ伊達北高校でリバースを抑えないと、トウジくんやシュンちゃんがここに来たみたいに、またここのリバースファイターが他の学校のファイターをリバースしちゃう」

 わたしは考えてたことを口にする。何もできない身で言うのは気が引けるのだけど。

「そっか……じゃあわたし、トウジを探してファイトしようと思う」

「ユキネはファイトしちゃダメよ。あんたはメザ・リバース……症状が完全に出てないだけでリバースしてる。ファイトで勝っても浄化できない可能性すらある」

 メザ・リバース……?

 用語に聞き覚えはないけれど、ユキネちゃんの最近の様子には思い当たるものがある。

 

 

 

「あれ?梅乃台のみんなじゃないあ」

 

 

 

「!?」

 不意に投げかけられる、誰よりも聞きなれた声。

「シュンヤくん」

 リバースして、忌々しい模様が顔に出たシュンちゃんだ。

「伊達北もほぼ全滅。あとはミコト姉ちゃん達だけ。諦めてこの力を受け入れたらどうだい?」

 あまりにも重い空気。

 最初に沈黙を破ったのはミクちゃんだった。

「あいにく、今から反撃に出るところよ」

 デッキを構え、前へ進み出る。

「いいね。歌星さんにも、勝ちたかったところだし」

 シュンちゃんも応じる構えだ。

 でも、ここは____

「ミクちゃん、わたしにやらせてくれないかな?」

 シュンちゃんだけは、わたしがやらなきゃいけない気がする。

「え?でもミコねえ……」

 ユキネちゃんは不安そうに見てくる。

「大丈夫。もしわたしがリバースしても、もとが弱いからユキネちゃんが解いてくれるでしょう?」

 デッキを手にとり、進み出る。

 ミクちゃんは、少し考えて下がっていった。

「勝手にしなさい」

 ありがとうミクちゃん。絶対勝つから。

 シュンちゃんの相手が決まるのを待っていたかのように、赤黒い空気が辺りを包み込む。無機質なファイトテーブルも床から伸びてくる。

 不思議、というよりかは不気味だ。

「さあ、はじめようシュンちゃん」

「ついに本気のミコト姉ちゃんに勝てるんだ……ああ、楽しみだよ」

 シュンちゃんを取り戻す____!

 

『スタンドアップ・ヴァンガード!』

「希望の子トゥルエル」

「星輝兵ワールドラインドラゴン!」

 

「僕の先攻、ドロー。ナキールにライド、トゥルエルを移動。ターンエンド」

 

【比嘉シュンヤ:ダメージ0/手札5】

【天原ミコト:ダメージ0/手札5】

 

「わたしのターン、ドロー。ワールドラインのスキルを発動。Яクレイドルを捨てて5枚見る……グレンディオスを手札に」

 シュンちゃんとのファイト……。グレンディオスを勧めてくれたあのファイトを思い出す。

「ライド!真空に咲く花コスモリース。コスモリースでヴァンガードをアタック!」

 パワー6000対7000。トリガーが出なければアタックは通らない。

「ノーガード」

「ドライブチェック、アポロネイルドラゴン!ゲット・クリティカルトリガー」

 よし、幸先はいい。エンジェルフェザー特有のダメージ利用が始まる前に一気に畳み掛けないと。

「ダメージチェック。ノキエル、サニースマイルエンジェル。ヒールトリガー、ノキエルを回復する」

「そんな……」

 クリティカルトリガーの分を帳消しにされてしまった。いえ、そもそもラッキーで与えたダメージ。大したことはない、そう思わなきゃ。

 

【天原ミコト:ダメージ0/手札6】

【比嘉シュンヤ:ダメージ1/手札5】

 

「僕のターン、ドロー。ライド、黒衣の裁断ハールート。そしてコール、ノキエル。スキルで手札のブロークンハートをダメージへ、ダメージのサニースマイルを手札に」

 優秀なリアガード要員をダメージに置いた。

 ダメージからコールするための準備だ。

「ノキエルでヴァンガードをアタック」

「ジェイラーテイルでガード!」

「トゥルエルのブーストしたハールートでアタック!」

 こういう1枚で止められないアタックは通す。シュンちゃんが教えてくれた。

「ノーガード!」

「ドライブチェック、ドクトロイド・リフロス。スタンドトリガーだ、効果はノキエルに」

「ダメージチェック……ルインマジシャン。トリガーなし」

 シュンちゃんのデッキ。ドクトロイド・リフロス。あれをいつまでも手札に持っていられるとパワーに変換される。トウジくんが見せてくれた。

 早くガードで使わせないと。

「ノキエルでヴァンガードをアタック!」

「アポロネイルでガード!」

「ちっ……絶対に負けられないんだ。僕は、ヴァンガードだけは!」

 シュンちゃん……?

 

 

【比嘉シュンヤ:ダメージ1/手札5】

【天原ミコト:ダメージ1/手札4】

 

「スタンド&ドロー……。ライド!星輝兵マグネットホロウ。このままアタック!」

「ノーガード」

 シュンちゃんのさっきの言葉……ヴァンガードだけは。いったい彼は何を言ってるんだろう。

「ドライブチェック、トリガーなし」

「ダメージチェック。カラミティフレイム。トリガーなしだ」

 いや、分からない振りはいけない。本当は分かってる。シュンちゃんがどんな思いでリバースの力に手を出したのか。

「……スキル発動。デッキからレオパルドЯを手札に加える」

 

【天原ミコト:ダメージ1(表0)/手札6】

【比嘉シュンヤ:ダメージ2/手札5】

 

「僕のターン、スタンド&ドロー。ライド!黒衣の戦慄ガウリール」

 大天使ガウリール、背負う原罪は嫉妬。

「このままヴァンガードにアタック。16000」

 リアガードの愛天使ノキエルは8000、こちらのヴァンガード星輝兵マグネットホロウは9000。このアタックを無理に防ぐより、ダメージトリガーに期待した方が効率はいいはず。

「ノーガード」

「ツインドライブ!カラミティ・フレイム、そして守護天使アスベエル。ゲット、クリティカルトリガー。効果は……全てヴァンガードに」

「全てヴァンガード!?」

 まだアタックしていないノキエルがいるのにどうして……

 

 

 

「なんでノキエルにパワー振らないの?」

 ファイトを観ていたユキネが、ミコトの疑問を口に出す。

「ノキエルはどのみちアタックしないからどこでもよかったのよ」

 ミクがそれにすぐ答えた。

「どのみちアタックしない?」

「クリティカルが出たからミコトさんのダメージは3まで行く。グレンディオスのリミットブレイクを阻止するためにパワーが届いたとしてもノキエルはアタックしないつもりなのよ。唯一アタックしたいのはダメージチェックにヒールトリガーが出てダメージが3に届かなかった時だけど、その場合にはどのみちノキエルはパワーが届かない」

「でも、わざわざヴァンガードに振ったっていうのは……」

 そこでユキネは口を噤んだ。

 

 

 

 そう、わざわざヴァンガードに振ったっていうのは、自分の方が状況を正確に理解しているというアピール。だよね?シュンちゃん。

「ダメージチェック。アシュレイЯ、ジェイラーテイル。ドロートリガー。1枚ドロー」

「ふん、ターンエンド。さあ、せいぜい足掻いてよ。そのグレンディオスで」

 わたしは、もう負けないよ。

「スタンド&ドロー!全てが欲しい、欲張りなわたしの罪の化身……勝利への渇望と共に現れ出よ!クライド!星輝兵Ωグレンディオス!」

 

【比嘉シュンヤ:ダメージ2/手札7】

【天原ミコト:ダメージ3(表2)/手札7】

 

 

 

 

 シュンヤとミコトのファイトの一方、伊達北高校では体育館裏でもう1つのファイトが始まろうとしていた。

「俺はもう引退したんだけどな。どうも君とは縁があるみたいだね、色男」

 手塚アキナリ。数日前までこの伊達北高校ヴァンガード部のレギュラーだった男だ。

「色男はやめてもらう約束だったと思いますが」

 対するは禍々しいオーラを纏った梅乃台のレギュラー、桐澤トウジである。

「そうだったっけな。でもまあ、すぐ忘れるんだからいいじゃないか。噂ではリバースが解けたら、リバース中の記憶はなくなるんだろう?」

 普段の余裕に、どこか緊張感を漂わせる笑みでアキナリは挑発じみた言動を重ねる。

「知らないですよ、解かれたことないですし。それにこれからも俺は負けない。あの北岡部長にすら勝ったんだ。いいから始めましょう」

 2人の周囲を黒い靄が取り囲み、ファイトテーブルが地面だった場所からせり上がる。

「ハルちゃんを……?」

 応じるようにデッキを構えつつも、アキナリはほんの僅かに眉を潜めた。それはよく見知った者でなければ気づかないほど僅かな変化で、トウジがその変化を認識することはなかった。

「なあ色男、いつもみたいにファイト中に無駄口たたかないから2つだけ教えてくれ」

「……どうぞ。答えないとファイトはじめないんでしょ、どうせ」

 互いに手札の交換を行いながら、静かに言葉を交わす。

「ユキネちゃんのアレは……つまり、サーキット予選決勝での豹変っぷりは、リバースなのか?」

「リバースだと思いますよ。俺らのとは少しちがうようですけど」

「そっか……じゃあ最後、ユキネちゃんをリバースさせたのは、キミかい?色男」

「……いや、俺じゃない」

「そうか、それならいい。ぶっとばすだけで許してあげるよ、色男!」

 

『スタンドアップ・ヴァンガード!』

 

 To be continued……

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