完結を目標に毎日少しずつ執筆中です。
カードショップ10daysで出会ったミクちゃんにファイトを挑んだわたしは4ターン目に差し掛かろうとしていた。
勝てばミクちゃんは部員になってくれる約束だったけれど、実力差は早くも歴然だった。
【御堂ユキネ:ダメージ3/手札6】
【歌星ミク:ダメージ2(0)/手札6】
「わたしのスタンド&ドロー。ライド、開花の乙女ケラ」
今引いてきたケラにライドする。少しでも巻き返さないと。
「メイデン オブ グラジオラスをコール。オズのブースト、ケラでヴァンガードをアタック」
「ノーガード」
「ドライブチェック……ゲット、ドロートリガー」
ウーントタナップがめくれる。パワーをグラジオラスに振る。ダメージにはサンクチュアリガードドラゴンが落ちていった。
「グラジオラスでヴァンガードをアタック!パワーは14000」
「熱意の宝石騎士ポリーでガード」
あっさりガードを許してしまう。次のターンのストライドで流れを変えないと……
【御堂ユキネ:ダメージ3/手札7】
【歌星ミク:ダメージ3(1)/手札5】
「スタンド&ドロー」
ごくりと喉が鳴る。またミクちゃんの猛攻がくる……!
「ブラスターブレードでグラジオラスをアタック」
「えっ?なんでライドもコールもしないで……さっきグレード3のカードを引いてたのに」
まさか、手加減されてるの?本当はヴァンガード部に入りたいとかで……
「なんで?対戦相手が答えるわけないでしょ。で、このアタックは?どうするのユキネ」
「えっと、ウーントタナップでガード」
「次、ティファニーのブーストでヴァイオリニストがヴァンガードへ」
「……ノーガードする」
「ドライブチェック……ゲット・ヒールトリガー」
ミクちゃんがドライブチェックでめくれた熱意の宝石騎士ポリーを見せつけるように軽く振る。
「パワーはそーどみー、裏になってるまぁるがるを回復する。そーどみーでアタック、21000でヴァンガード」
「くっ……ディモルフォーぜとパドミニでガード!」
ダメだ。ツインドライブなしでも十分にキツい。このままじゃミクちゃんをヴァンガード部に入れられない……!
【歌星ミク:ダメージ2(1)/手札7】
【御堂ユキネ:ダメージ4/手札4】
「スタンド&ドロー。ラナンキュラスの花乙女アーシャにライド!そしてジェネレーションゾーン解放!」
「できないわよ」
「え…………あっ」
ストライドの条件はお互いのヴァンガードがグレード3以上であること。相手が前のターンライドしなかったことによる戦略の崩壊である。
ミクちゃんはこれを狙ってわざとライドしなかった。その結果アーシャの超越時スキルも、グラジオラスのジェネレーションブレイクも使えない……
「……このままアタックする。オズでブーストしたアーシャでヴァンガードをアタック」
「ダブクリが出ても負けはしないわね、ノーガード」
「ツインドライブ!ファーストチェック、100%オーランジュ」
トリガーではなかったけれど完全ガードは防御に合って損はない。
「セカンドチェック、ゲット・ドロートリガー」
パワーをグラジオラスへ、そして1枚ドロー。これで次の攻撃はしのげるはず。
「グラジオラスでヴァンガードにアタック!14000パワー」
「ブラスターブレード探索者でインターセプト」
【御堂ユキネ:ダメージ4/手札7】
【歌星ミク:ダメージ3(2)/手札7】
「……ファイナルターン」
「!?」
ファイナルターン。このターンで勝負を決めるという宣言だ。
でもまさか、わたしの手札は7枚。完全ガードだって2枚もある。
「ライド、サンクチュアリガード・ドラゴン。スキル発動、手札のシングセイバー・ドラゴンを捨てることでデッキからシェリーをスペリオルコール」
また、リアガードが増えた。本当にあっという間だ。
「シシルスを切ってジェネレーションゾーン解放……」
すぅっ、とミクちゃんが息を吸い込む音がした。
「力は我にあり。裁きの光で刃向かう者を切り伏せよ、ストライド・ジェネレーション!神聖竜 サンクチュアリガード・レガリア!!」
「これが……ミクちゃんのGユニット」
「ティファニーのスキル発動、ソウルに入りシェリー2体にパワープラス3000。そしてナイト・オブ・ツインソード、ティファニーをコール」
ふと気づけばミクちゃんの背後に、トウジとミコねえが立って見ていた。
大丈夫、守りきってみせるよ。
「シェリーのブーストそーどみーでヴァンガードをアタック。レガリアのスキルで全ての前列ユニットは、自分のグレード1以下のリアガード1体につき3000パワーアップする」
「そんな!?今グレード1以下はシェリー2体とティファニーの3体だから……」
「9000パワーアップ。もとのパワーと合わせて18000。さらにブースト役のシェリーもティファニーのスキルでパワーアップしている。合計パワー……28000」
「そんな……の、ノーガード。ダメージチェック」
ダメージにはグレースナイトが落ちる。トリガーはでない。けど、こっちには完全ガードが2枚ある。残り2回のアタックをこれで防げばいいだけのこと。
「ティファニーのブースト、レガリアでヴァンガードをアタック。パワーは40000!クルーエル・ナイツオブラウンド!」
「オーランジュで完全ガード!」
手札からウートタナップを捨て、スキルを有効にする。
でもミクちゃんはまったくひるまなかった。
「トリプルドライブ!ゲットヒールトリガー、パワーはツインソード。ゲットドロートリガー、パワーはツインソード。シェリーブースト、ツインソードでヴァンガードをアタック」
わたしが2枚目のオーランジュに手をかけたその時だった。
「スキル発動」
「えっ」
「ツインソードのジェネレーションブレイク。ヴァンガードにアタックした時、ブーストされているならカウンターブラスト1を支払いツインソード以外のグレード2を山札からスペリオルコールする。そーどみースペリオルコール」
アタックを終えたそーどみーに新しいそーどみーが上書きされる。
「そーどみーのスキル発動、後ろにシンベリンをスペリオルコール」
今度はブーストを終えたシェリーが上書きされる。
「シンベリンのスキル発動。レストしてそーどみーにパワー+10000」
そーどみーのパワーが……28000に。
手札を確認する。グレード3のフルブルームドラゴンが2枚、完全ガードが1枚、パドミニとグレースナイトが1枚ずつ。
「……足りない。ノー……ガード」
6枚目のダメージに、アーシャが散った。
「つ、強い……」
「はぁ、とにかく約束は守ってよね」
ミクちゃんは退屈そうにカードを片付けはじめた。
「うん、それはもちろん」
ショックだった。4人目の部員がゲットできなかったことよりも、実力の差を見せつけられたことが。
こんなんでVF甲子園だとか、日本サーキットだとか、出られるわけがないよ……。
「あ、あのユキネちゃん?わたしね、デッキ作ってみたんだけど」
ミコねえが気を使って話しかけてくれる。本当、どっちが部長だかわかんないや。
「なあ、歌星。お前、そんなに強いのに、なんでヴァンガード興味ないなんて言ったんだ?」
「桐澤くんだっけ?どうでもいいでしょ、そんなこと。嘘は言ってないわけだし。もうすぐ、うまくいけば今日でヴァンガードはやめるの」
ミクちゃんはサングラスを外し、髪を解き始めた。
「ヴァンガードをやめる?」
「ええ、そう。1人だけ決着をつけたい相手がいるから、そいつを倒したらね」
「……それが、伊達北高にいるってことか」
「そう言ってたわ。本人は」
「やーやー、梅乃台ヴァンガード部の皆さん。おー待たせしましたー!」
ファイトスペースにやたらと威勢のいい女性の声が響く。
「どもっ!伊達北高ヴァンガード部、部長の北岡ハルミいいますー。今日は冬のレギュラー4人できましたっ」
そういう北岡さんの後ろには男子2人女子1人。
「ほら、ユキネちゃん。じゃなかったユキネ部長、挨拶してっ」
「あっ、は、はいっ!えっと、梅乃台ヴァンガード部の部長、御堂ユキネです。今日はよろしくお願いします!」
やっぱり部長とかレギュラーとかなると3年生なんだろうなあとかぼんやり考えてたら出遅れてしまった。ミコねえがわざわざ約束とりつけてくれたんだから、失礼のないようにしないと。
「うんうん、よろしくねー!で、普通だったらここでお互いのメンバーの自己紹介をするんだろうけど」
「は、はい……?」
まさに今すると思っていた。
「それはファイトの中でしよう。どうかな?ヴァンガードファイターらしくない?」
「はい!すごくいいと思います」
いいなー、こんな部長クラスがいたら部活楽しいんだろうな。
ハルミさんは満足げに数度頷くと、ピンと人さし指を立てた。
「じゃあ、1ヶ月後の日本サーキット予選と同じ4vs4のチーム戦でやろう。タッグファイト1つ、シングルファイト2つの3試合マッチ」
「あ……えっと」
慌ててミクちゃんの方を振り返りアイコンタクトを取る。たぶんミクちゃん、こっちの部員だと思われちゃってるよ。
そんな心配をよそに、返ってきた言葉は意外なものだった。
「……別にいいわよ。今日だけ助っ人ってことでも」
「ありがとうクミちゃん!」
その手を握ろうと駆け寄る。
「ただ……北岡さん」
「ん?何かな?」
ミクちゃんが北岡部長の方を向き直る。
「撃退者と戦わせてもらえませんか?オーダー、そちらの撃退者に合わせるので」
「りべんじゃー?うちに撃退使いはいないけど?」
「……いない?今日は来てないってことですか?」
「じゃなくて、伊達北ヴァンガ部には1人も撃退使いはいないんだよ」
「そんな……」
一気にミクちゃんの表情が曇る。
話が見えないけど、どうしたんだろう……。
「とにかく、俺らもオーダー決めよう。誰がタッグで出る?」
見かねたトウジが空気を変えようと、いつもより明るい調子で振る舞い訪ねてきた。
「うーん……わたしとトウジで出よう。ミコねえにタッグはまだ難しいだろうし」
「……どこにいるのよ、アビスウイング」
誰かの息を呑む音が聞こえた、気がした。
To be continued……