東方果実錠   作:流文亭壱通

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仮面ライダー鎧武のネタバレを多く含みます。
また仮面ライダー鎧武と東方projectの両作品の知識が無ければ分からない箇所も多々あるかもしれません。
知識がにわかなところもあります。
どうかご容赦ください。


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第一章
出会い


 

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「ここは……一体……?」

 

 目を覚ますと、目の前には見渡す限りの空が広がっていた。

 ただ空が見えるのではない、自らが空にいる。そんな光景。

 足元を見ると花草が生い茂り、しっかりと地面もある。

 だが、目線の先に映し出されているのは地平線ではなく、空なのだ。

 大陸ほどもある雲が無数に広がる、無限の青さ。

 己の器では到底受け止めることなどできないほど、美しく、広大だった。

 

「何で俺はここに……」

 

 俺は葛葉紘汰、沢芽市でビートライダースに所属し、アーマードライダーとして戦っ

 ていた。

 はずなんだけど、今のこの状況に直面している。

 脳内での処理が全くできていない。

 俺は何をしてたんだ?

 どうしてここにいる?

 ここはどこなんだ?

 

 様々な疑問が高速で巡り、身体的な動きすらも抑制している。

 一歩足を踏み出そうと試みてもうまく動かすことが出来ない。

 仕方がなく、わずかに動かす手で自らの身体をまさぐってみる。

 

 どうやら怪我はないらしい。

 それがわかっただけでも、前進か。

 

 だが、腰のあたりをまさぐった時、一瞬にして背筋が凍りついた。

 

「ない!ない!!」

 

 腰に提げていたカラビナがない。

 そして、さらに重要なモノも。

 

「ベルトもロックシードもない!」

 

 戦極ドライバーとロックシード。

 アーマードライダーへ変身するアイテム。

 俺にとって大事なものを同時に二つも失くしてしまった。

 

「やっべ、どこで落したんだ!? って、この場所すらどこかわかんないのにわかるわけないか……」

 

 紛失したショックでいつの間にか身体が自由に動くようにはなったが、今度は喪失感

 で脱力してしまった。

 

「まずいなぁ……、こんな状態でインベスに襲われでもしたら……」

 

 インベス、アーマードライダーとして俺が戦っていたヘルヘイムの森の怪物。

 クラックっていう時空の狭間から現れて、人々を襲う厄介な奴らだ。

 

 とりあえず立ち止まっていても仕方ない。

 俺はひとまずベルトとロックシードを探すため歩き出した。

 

「あぁ……、暇ねぇ……」

 

 一際目立つ注連縄の巻かれた丘の上、木の根元に座り込みながら下方を見下ろす一人の少女。

 何をするでもなく、ただぼうっと景色を眺める。

 そして時折漏れるのは小さな溜息と、今現在自分が置かれている状況への不平不満。

 少女は日が明けてから四刻ほど、そうしていた。

 

「なーんか面白いことないかしらねー……」

 

 誰に言うでもなく、ぽつりとそんなことを零す。

 

 比那名居天子、この少女の名である、

 天界に住まう天人の一族、比那名居一族の令嬢である。

 

「また異変でも起こしてやろうかしら……」

 

 ふと思いついたことを口に出してみるが、すぐさま頭を振ってかき消す。

 以前、同じようなことをして痛い目を見たのを思い出したからである。

 

(あーあ……なんか適当に面白いこと転がっていないかしら……)

 

 そしてまた思慮の迷宮へと入っていく。

 こんなことをほぼ毎日のように繰り返している。

 彼女の属する比那名居一族は裕福な家庭ではあるが、それ故に変化に乏しい生活を強いられていた。

 元々天人になるべくしてなった身ではないため、天界や天人自体への嫌悪感ともいうべき想いに苛まれ、日々を過ごしているのだ。

 だからこそ、先の異変を起こしてみたのだが、見事に博麗の巫女に返り討ちにされて

 しまった。

 天人になるために修業を積んで天人となった者たちから疎まれていた比那名居一族は「不良天人」と卑下されていたうえで、そんな 屈辱的な仕打ちを受けたため、一族に対する天界中の視線もより厳しいものとなり、天子の日々はより退屈なものへと変わってしまった。

 

 今、彼女にとってもっとも有意義な時間はこうしてぶっきらぼうに下界を見渡すこと

 のみ。

 しかし、それももう限界に近くなってきた。

 溜まり続けるフラストレーションを解放しようにも、他の天人によく思われていない

 現況では、如何ともしがたい。

 

「……あたし、何のために存在してるのかな……」

 

 勝ち気で傲慢さの目立つ彼女でさえ、巡り巡る退屈な日々のせいで、いつしかこのよ

 うな弱音を口に出すまでになっていた。

 

「はぁー……」

 

 何度目かわからない溜息をついたとき、ふと人の気配を感じた。

 その気配は先ほどまで彼女が見下ろしていた下の方から。

 天子は退屈な日常が少しでも変わることを祈りつつ、さっと立ち上がり、気配のする

 方へと歩き出した。

 


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