東方果実錠   作:流文亭壱通

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参上!果実武者!2

◆人里・寺子屋

 

 

 魔理沙に首根っこを掴まれたまま飛行して数分。

 確かに走るよりも早く寺子屋を肉眼で捉えた。

 

「……誰かが戦ってる」

 

 魔理沙は寺子屋の方角を見つめつぶやくように言う。

 俺には戦闘の様子など窺い知ることが出来ないんだが。

 空を飛ぶだけあって視力が良いんだろうか。

 

 と、その瞬間!

 寺子屋の庭付近で大きな爆発が巻き起こる。

 

 どうやら魔理沙の言っていることは正しいらしい。

 

「異変も起きちゃいないのにスペルカードを発動するってことは、こりゃ相当大事みたいだぜ……」

 

 俺の目には相変わらず爆発の煙しか映っていないが、爆発の規模からして喧嘩だとか

 そんなレベルではないことはわかる。

 

「魔理沙、寺子屋の庭へ急いでくれ!」

 

「お、おう!」

 

 速度が上がり身体に重力の負担がかかる。

 わずか数秒で数百メートルの距離を飛び、眼下には荒れ果てた寺子屋の庭の惨状が広

 がっていた。

 

「こりゃひどいな……、一体どんな怪物が出たってんだ」

 

 淡々と魔理沙がつぶやく。

 

 徐々に爆発の煙が晴れ、より詳細な状況が見えてきた。

 

「……インベス!」

 

 庭の中心に見慣れた姿の怪物を見つける。

 それも三体。

 間違いない、あの風貌、あの体色。

 上級インベスだ。

 

「いんべす?」

 

 魔理沙は俺が発した敵の名に対して首をかしげる。

 

「俺が自分の世界で戦ってた怪物だ。何でこの幻想郷に……!」

 

「おい、葛葉!あれ!」

 

 魔理沙が指を差す。

 その先には、上級インベスの一体に首を掴まれ宙へ掲げられたボロボロの慧音の姿があった。

 そしてその隣にはへたり込んで俯く天子の姿も。

 

「てんこ!慧音!」

 

 名前を呼ぶが空からの声は届かないようだ。

 

 くそ!こうなったら!

 

「魔理沙!」

 

「な、なんだよ?」

 

「俺を投げろ!」

 

「…………は?」

 

「いいから、早く投げろ!」

 

「な、投げろったってどこにだよ!」

 

「あの怪物たちに向かって思いっきし投げろ!」

 

「怪物たちにって……、どうなっても知らないぞ!」

 

「承知の上だ!」

 

「よーし、覚悟決めろよ葛葉!せーの!おりゃっ!」

 

 魔理沙は少女とは思えない腕力で俺をこれでもかと勢いをつけ下へと投げ落とした。

 

「だぁぁぁぁぁあああああ!」

 

 腕を目いっぱい広げ、着地体勢に入る。

 

――スタッ!

 

 ふぅ……、ひとまず無事着地には成功だ。

 

 事前に魔理沙が高度を下げてくれていたおかげか、対した痛みもない。

 そのまま俺は間髪入れず立ち上がり、天子たちのほうへと駆け寄る。

 

「うぅっ……ぐすっ……だれか……だれかたすけてよぉ……!」

 

「……っ!」

 

 泣いている。

 天子が泣いている。あの勝ち気でいつもどんな奴にも突っかかっていくような天子

 が。 

 脇目も振らず、顔をぐしゃぐしゃにしながら。

 その表情に、心が引き裂かれるように痛んだ。

 

「……誰か助けてよ!慧音を!美代を!この寺子屋を!誰でもいいから助けてよ!お願いだからぁ!!」

 

 天子のそばへゆっくりと歩み寄る。

 俺の手には、久しぶりに握る『戦極ドライバー』と『ロックシード』。

 

 天子のこんな顔を目の前にして、慧音がボロボロに傷ついているのを見て、もう我慢

 の限界だ。

 

「……あぁ、助けるさ」

 

 その言葉は俺のこの世界での誓いの言葉でもあった。

 俺の大切な人を、場所を、こんな奴らに壊させはしない。

 

「えっ……」

 

 虚を突かれた天子が動揺の声をあげる。

 どうやら俺がそばに来ていたのにまったく気づかなかったらしい。

 助けてとか言ったくせに、本当に助けが来るとは思ってなかったのかよ。

 まぁ、いいさ。

 見てろ!これが以前お前に話した、俺が背負ってる責任だ!

 

「変身!」

 

【オレンジ!】

 

「ハァァァァァァアアアアアアア!オラァッ!」

 

【ロックオン!ソイヤッ!】

 

「ハァッ!」

 

【オレンジアームズ!花道オンステージ!】

 

 軽快な音楽と音声がこだまする。

 それは戦闘開始の合図。

 身に纏った琥珀色の鎧は、ブランクなど感じさせないほどしっくりと俺の身体へとフ

 ィットした。 

 

 さぁ、久しぶりに行くぜ!

 

「……ここからは、俺のステージだ!!」

 

 変身と同時に右手に出現した小刀『大橙丸』を振りかざし、慧音を拘束するインベス

 へと切りかかった。

 

「オラァッ!」

 

「グォォ!」

 

 放った斬撃は慧音を掴むインベスの右腕へと命中した。

 

「げほっ……げほっ……」

 

 よかった、どうやら無事のようだ。

 

「慧音、天子を連れて下がってろ」

 

「お、お前は……葛葉、なのか……?」

 

「話は後だ、早く!」

 

「……わ、わかった」

 

 慧音は天子に肩を貸し寺子屋内へ向かって逃げてゆく。

 それを確認し、インベスへと視線を戻した。

 仲間が攻撃を受けたことにより、他の二体も臨戦態勢に入る。

 

「何でこの幻想郷にお前らが現れたかなんてわかんねぇけど、よくも俺の大切な仲間を傷つけたな!ぜってぇ、許さねぇ!」

 

「グゥォオ!」

 

「ダアアアアアアアアア!」

 

 飛び出してきたインベスをに斬撃を浴びせる。

 怒りを込めた手痛い一発。

 のけずるインベスへ容赦なく攻撃を繰り出していく。

 

「ギュア!」

 

 知恵を絞ったか、連携して別のインベスが背後を取ろうとする。

 だが、そんな隙は与えない。

 

「ハァッ!!」

 

 前方のインベスを左手に持ち替えた大橙丸で抑え、腰に装着されていた『無双セイバー』を抜き後方のインベスへ斬撃を喰らわせる。

 その勢いのまま前方のインベスへ二刀流の乱切り。

 ×印を描くような太刀筋でラッシュをかけていく。

 

「ハァァァ!ウラァッ!」

 

「グ……グォ……」

 

 ラッシュを耐えきれず、インベスはその場で力尽き爆散した。

 

 まずは一体!

 

「「ギュアアア!」」

 

 仲間がやられたことでさらに殺気立ったのか、他の二体が同時に飛びかかってきた。

 

「ダァッ!」

 

 一方へ回し蹴りを喰らわせ、もう一方へ無双セイバーの斬撃を叩きこむ。

 

【オレンジスカッシュ!】

 

 そして戦極ドライバーのブレードを一回倒し、飛び上がり、体勢の崩れたインベスへ

 向かって無頼キックを繰り出した。

 

「ハァァァァァァアアアアアアア!セイハー!!」

 

 そのパワーに二体目のインベスも爆散。

 

「ギュィィイイ!」

 

 休む間もなく残った三体目のインベスが捨て身のつもりか発達した大きな爪で突進し

 てくる。

 それをいなし、無双セイバーと大橙丸を合体、ナギナタモードにする。

 

「これで終わりだ、インベス!」

 

 言いながら戦極ドライバーからロックシードを外し、無双セイバーへ取り付ける。

 

【イチ、ジュウ、ヒャク、セン、マン!オレンジチャージ!】

 

 大橙丸、無双セイバーにエネルギーが送り込まれ、琥珀色に発光し始める。

 

「ハッ!」

 

 ナギナタの無双セイバー側で溜まったエネルギーを放つ。

 インベスはオレンジ型のエネルギー空間に捕らわれ一切身動きが取れなくなった。

 

「ウラァァァアアアッ!」

 

 そしてインベスへ向かってダッシュし、大橙丸側のエネルギーをすれ違いざまに斬撃

 として叩き込んだ。

 

「ギュイイイイイイ!」

 

 断末魔の悲鳴を上げ、最後のインベスも例に漏れずその場で爆散した。

 


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