「ここ。あたしのうちよ」
少女に手を引かれ走り、数十分。
目の前には大きな館があった。
「なんだこれ……すげぇデカい家だな……」
「そりゃあ当然よ。比那名居一族の家だもの」
「ひ、ひなない……?」
「あぁ、まだ自己紹介してなかったわね。あたしは比那名居天子、天に人の子と書いててんしよ」
唐突な自己紹介。
いまだ名字に違和感を覚えているが、とりあえず礼儀として自己紹介を返す。
「俺は葛葉紘汰、よろしくな」
「コウタ、ね。ひとまずよろしく」
少女はそういうと、にこりと軽く微笑んだ。
「で、お前の家に来てどうすんだ?俺、すぐに元の世界へ戻りてぇんだけど……」
「まぁまぁ、そんなに焦んなくても何とかなるわよ。うちで茶でも飲んでいきなさい、あんたの現況を把握しておきたいし」
「でも、出会ってそんなに経ってないし、そこまでしてもらうのはちょっと悪くないか?」
「男のくせに細かいことばっか気にするわねぇ。あたしが茶を飲んで行けって言ってるんだから黙って来なさいよ」
少しだけの会話だが、この子の性格がわかった気がする。
かなり勝気で我が強い子だな。
まぁ、でも疲れていて頭が動かないのも事実だし、この申し出に乗るのもいいかもし
れない。
一度リフレッシュする必要がありそうだ。
「そこまで言うなら、お邪魔するよ」
「それでいいのよ。さ、中へどーぞ」
門を抜け、中華風と和風の混ざったような内装の部屋のテーブル席へと通される。
世話役らしい女性へ天子はお茶も用意するように言いつけると、俺の対面の席へ座っ
た。
「で、あんたはどんな世界から来たのか聞かせてもらおうかしら」
俺は天子の問いに答えた。
沢芽市でビートライダースというダンスチームに属していたこと、その沢芽市でイン
ベスゲームというものが流行っていたこと。
ひょんなことから戦極ドライバーとロックシードを手に入れたこと、沢芽市で起きた
インベスによる事件のこと。
アーマードライダーとしてインベスと戦っていたこと、気付いたらこの世界にいたこ
と。
そして戦極ドライバーとロックシードを共に紛失したこと。
話せるすべてのことを順序立てて話していった。
天子は時々、よくわかっていなさそうな表情を浮かべてはいたが、それなりに真剣に
聞いてくれた。
そして、お茶を一口を含むと静かに口を開いた。
「なるほど。で、今はその『せんごくどらいばぁ』ってのと『ろっくしーど』ってのを探していて、早く元の世界に戻らないといけないってことね」
天子はふたたび腕を組み、少し考え込む。
俺も一口茶に口をつけると、天子の顔を窺う。
「……すぐには元の世界に戻る方法は見つからないと思うわ。それにこの幻想郷で探し物は絶望的よ。ただでさえ種族間での争いが絶えない土地なのに幻想郷全土を探すとなると、それなりの有力者に取り入るくらいしないと難しいわ」
「そんな……」
「でも、元の世界へ戻る方法はすぐに見つからなくても、探し物なら可能性はあるわ」
打ちひしがれそうになっていた時、天子のその一言で一筋の光が差した気がした。
「本当か!?」
思わず飛び上がり、叫んでしまった。
「私はこれでも天界の天人、比那名居一族の娘よ。少しくらいの探し物なら任せなさい!」
そう言って天子は真剣なまなざしで俺を見据える。
その眼差しはしっかりとした意志を感じる、真剣なものだった。
「ありがとう、マジで助かるよ」
「即席だけどあたしたちこれからは仲間ってことで。よろしく、コウタ」
天子はそう言って手を差し出す。
俺はしっかりとその手を握って、固い握手を交わした。
「あぁ、よろしく!てんこ!」
「あ、あたしの名前はてんこじゃなくててんしよてんし!」
「いいじゃないか!愛称だよ愛称!」
「てんこだけはやめなさい!ホントにやめて!」
「てーんこっ!てーんこっ!」
「てんこ言うなー!」