限られた日々のなかで〜女神と歩んだ1年〜   作:月白弥音

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★夢花のチョコ教室!

「チョコレート?」

「うん、ほらいつも一緒に作ってくれてるじゃん」

学校から帰ってきた結衣に言われて気がついた。そういえば日曜日ってバレンタインデーか。

「そうだった。今年はどうする?」

「みんな、金曜日に持ってくるって言ってたから……」

「結衣も金曜日に持っていきたい?」

「うん」

今日は水曜日だから今から凝ったことは出来ない。

私もお菓子作るのは好きだけど、全部のお菓子のレシピを知ってるわけじゃないから調べないといけないかもしれないし。

「何作るか決まってる?」

「えっとね、フォンダンショコラ、作ってみたいんだけど……結衣に出来るかな?」

「うん、出来るよ」

不安そうな結衣の言葉に私は即答した。

前作ったことあるから多分レシピ覚えてる。確か難しいことはなかったはず。一応確認しないといけないけど。

「本当!」

「うん、難しそうだけど意外と簡単なんだよ」

「じゃあそれ作ることにする!」

嬉しそうに言う結衣を見て私は何だかプレッシャーを感じていた。

これで出来なかったら。

もしそうなったときの結衣を思い浮かべて……いつも以上に真剣にやらなきゃ。

いつも手を抜いてる訳じゃないけどね。

「じゃ、今日のうちに買い物だけしとこっか」

「お姉ちゃん、大丈夫?」

「大丈夫、大丈夫。でもなるべく移動距離は減らそう」

「うん」

 

 

 

 

 

 

 

近くのスーパーに行くと

「何であんたたちがいるのよ!」

「私たちも買い物に来たからだよ、にこ」

にこがいた。

「んなことは分かってるのよ!」

「じゃあしかたないでしょ……ところでにこは何買ったの?」

「……妹たちとμ'sにあげる用のチョコよ。って言っても材料だけどね」

「にこもそうなんだ」

なんて話してるうちに買うものを指示してあった結衣が戻ってきた。買い忘れがないか私がチェックしてるのを横から見てたにこは

「さすがにそれだけ見ても何作るかわからないわ」

と呟いた。

そうだと思う。

だって買ったのはちょっと濃いめのチョコとココアパウダー、あと生クリームだけだもん。小麦粉と無塩バターはうちにあったし……

「あ! 粉糖忘れた!」

「なにやってるのよ。はい、今数えたら一個多かったからあげるわ」

にこが粉糖を結衣が持つかごに入れた。

「にこ、ありがとう」

「ふ、ふん、たまたまよ、たまたま! 返しにいくのも面倒だしちょうど良かったわ」

にこに感謝しつつ、別れて会計をしてるとやっぱり製菓材料コーナーに行ってるにこを見つけた。

本当に不器用だよね、にこって。

 

 

 

そのあと百均でラッピング用の袋やシール、マフィン用のカップを買って帰ってきた私たちは明日の準備をすることにした。

「準備って何するの?」

腰に青いリボンがついた白いエプロンをつけた結衣が聞いてくる。

「フォンダンショコラの中に入れるとろけるチョコを作るの」

「へー前日からやるんだ」

「これによって明日の作業が変わるから作っておきたいんだよ。別に明日一日だけでもできるけどね」

話しながら計量カップで生クリームを量って小さい鍋に移す。

「じゃあ火にかけてる間にチョコ刻もう」

「はーい」

ビターチョコを取り出して細かく刻んでいく。毎年、って言っても2、3年だけど、やってるだけあってこれはもう慣れたみたい。最初、板チョコに元々入ってる線で切って終わったって言われたときはビックリしたな。

生クリームを沸騰する寸前で火から外して刻んだチョコを入れる。

「まださわっちゃだめ!」

「え?」

「チョコが少し溶けはじめてからの方がダマになりにくいから」

「ふーん」

少し溶けたのを見て結衣は泡立て器でゆっくり混ぜ始める。多分生クリームが多いから大丈夫だと思うけど。

結衣の様子を見ながら全く同じ行程を私もやる。

「きれいになったよ」

結衣が見せてきた鍋の中のチョコはなめらかになっていい感じだった。

「じゃあ二つくらいに分けて棒状にしてラップで巻いて」

私がラップの両端をもってチョコが真ん中にいくようにして結衣がそこにチョコを流し込む。そのまま上でラップをあわせて棒状に。

「お姉ちゃんすごい」

「誰でも出来るよ。あとは冷蔵庫に入れとけばオッケー」

私も作ったチョコを一つ一つラップで丸めて冷蔵庫に入れた。

「お姉ちゃんは何作ってたの?」

「トリュフ作ろうかなって。結衣が作ったのはガナッシュっていってトリュフの中身にもなるんだよ」

「そうなんだ」

「うん。さて後は明日。とりあえず使ったものの片付けしよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、私は朝から困惑していた。

「おっはよー! 夢ちゃん」

「あはは、おはよ~」

玄関を開けたら穂乃果とことりがいた。なんか大きい荷物をもって。

「ど、どうしたの?」

「前みたいに一緒に作ろうかなって……」

「穂乃果! ことり!」

「う、海未ちゃん」

「海未、急に大声出さないでよ。心臓止まるかと思うじゃん!」

「夢ちゃんが言うと怖いからやめて!」

ことりとそんなコントをしてる間に穂乃果は海未にこってり絞られてた。

「それより、入らないの?」

「いいの?」

「どうせ結衣と一緒に作るところだったし」

「だめです。夢花の迷惑も少しは考えないと」

「じゃあ海未は来ない?」

その間に穂乃果とことりはうちに入る。

「ああ、穂乃果、ことり……しかたありませんね。お邪魔してもいいですか?」

「もちろん」

海未のあとに続いて家に入る。

それにね、私が倒れる前にやってたことを今でも覚えてて来てくれたのがとっても嬉しかった。

「なんか一気に人が多くなったね」

「でも結衣はあと生地作るだけだから大丈夫だよ。ことりたちは何作るの?」

「私はガトーショコラ作ろうと思ってるんだ。穂乃果ちゃんはマドレーヌ、海未ちゃんはクッキーだって」

「ガトーショコラ! さすがこっちゃん」

「ふふ、ありがとう、結衣ちゃん」

和気あいあいと話しながら作業を進める。

「結衣は卵溶けた?」

「うん。次は無塩バターとココアパウダーと小麦粉入れるんでしょ?」

「そうそう。ちゃんとふるいにかけてね」

穂乃果たちはことりが指導してるし、私も自分のやろっと。

温度調整が難しいテンパリング。これがうまくいくかどうかで見た目が違うからね。

温度計をさして細かく温度をチェックしながら湯煎して溶けたら今度は冷やす。ある程度冷えたらもう一回形成しやすい温度になるように湯煎し直す。

「お姉ちゃん出来たよーあとカップに入れればいいの?」

「うん、その前に昨日のチョコだして結衣の指二本分くらいに切ってからね。あ、私のも一緒に出して」

「はーい」

冷蔵庫にチョコを取りに行った結衣との会話をきいてたことりが

「フォンダンショコラの中をガナッシュにしたんだ」

と聞いてきた。

「さすがことり。その方が失敗しないし、あとから加熱し直してもしっかり溶けるから」

「そうだね」

「相変わらずお菓子作りに関してのことりと夢花の会話はよくわかりません……」

私たちの話を聞きつつも手を休めずに生地を丸く抜いていく海未と

「ことりちゃん、夢ちゃん、ガナッシュって何?」

と手を止めて聞いてくる穂乃果。

「穂乃果、ことりが説明してくれるから手は動かして。生地休ませないといけないんだから」

「はーい」

「ええ、わ、私?」

「ことりちゃん、お願いします!」

「う、うん……」

説明してることりを横目に私は昨日のガナッシュにさっきテンパリングしたチョコをきれいにかけていく。お店みたいに綺麗、とはいかないけどそれに近いくらいにはね。あとは少し固まってきたらツノをつくって完成。

「お姉ちゃん、出来たの?」

「うん、大体ね。結衣も切り終わった?」

「うん」

「じゃあカップの1/3くらい生地を入れたらそのチョコを一個入れて、その上に生地をカップの八分目くらいになるまで入れて」

実演しながら結衣に説明して一個つくってあげる。

「分かった、やってみる」

スプーンを結衣に渡して私はオーブンの予熱を始める。先に海未とことり、温度をあげて結衣、最後穂乃果かな。

「予熱出来たよ。まず、海未焼こうか」

「わかりました」

真面目で几帳面な海未らしく丸型で抜かれたチョコチッブが入ったクッキー生地がきれいに並んでいた。天板二枚分あったから一枚は私が運んだ。

「ありがとうございます」

時間を設定してスイッチオン。あとは焼き上がるのを待つだけ。

私も冷えるのを待ってたトリュフにツノをつくって完成!

「あとはみんなのが焼けるの待つだけだね」

全部カップに入れ終わった結衣に私は頷く。ことりも型に入れてあるし、穂乃果も生地を休ませてるところ。

詰まるところ暇だった。

「何かする?」

ことりが控えめに聞いてきた。五人いるからゲームはしづらいし……

「じゃあウノやろうよ!」

「いいね、それ」

すぐに結衣が立ち上がって自分の部屋に取りに行った。その間にクッキーが焼き上がってことりのガトーショコラと入れ替える。

「35分だっけ?」

「うん、そう」

ことりもやっぱり2ホール作ってた。8等分したら1ホールじゃ足らないもんね。って私以外みんな焼き菓子なんだ。

 

 

 

 

 

 

 

ウノで白熱してるうちに全員のが焼き上がった。あとはきれいにラッピングして……喜んでもらえるかな?

「……」

結衣がフォンダンショコラを五個だけ残してじっと見ていた。

「どうしたの?」

「今、みんなで食べない?」

そうだと思った。

「じゃあみんなでみんなの食べよっか。待ってて今お茶入れるから」

お菓子は、特にフォンダンショコラは焼きたてに限るよね!

「うーん、結衣ちゃんの美味しい!」

「ことりはさすがですね。とても美味しいです」

「海未ちゃんとほのちゃんのも美味しいよ」

「夢ちゃんもやっぱりすごいよね」

私のは結衣のと味は一緒だけど、調理法で若干風味が違うのは面白いよね。それにしてもうまくできて良かった。簡単だよっていっちゃったけどちょっと不安だったんだよね。でも……

「お姉ちゃん、ありがとっ!」

こんないい笑顔の結衣を見ると、私も笑顔になっちゃう。

私は照れ臭くなって残ってたフォンダンショコラを口に押し込んだ。

明日、みんなにきっと喜んでもらえるよ。結衣に頼まれてるμ'sの分もちゃんと渡すからね。




まさかの当日にいかないっていう笑
こういうのもありじゃないですか? 
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