限られた日々のなかで〜女神と歩んだ1年〜   作:月白弥音

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#11はじまり

μ'sの初めての曲が完成した次の日、私が編曲して音を増やしたやつを穂乃果たちに持っていった。

「穂乃果、出来たよ」

「本当!?」

「うん。お待たせ」

「待ってて、すぐ海未ちゃんとことりちゃん呼んでくるから!」

扉を大きな音をたてて開け閉めするほど慌てなくても。私は音源置きに来たんだから逃げないって。

 

 

 

それからすぐに屋上にいった私たちは、私が持ち込んだパソコンを使って出来た曲を再生した。真姫ちゃんに手伝ってもらって納得がいく出来にはなってるけど、実際に聞いてもらうとなるとやっぱり緊張する。

「どう?」

私は三人に感想をもらおうと思ってそう聞く。

「ちゃんと、曲になってる……」

「これが、私たちの……」

「私たちの、曲……」

誰も聞いてなかった。

「おーい、三人とも! 戻ってきて」

「はっ、どうしたの、夢ちゃん」

「だから、どう? なんか気になるところとかある?」

三人が戻ってきたとこで改めて同じ質問をする。

「ううん、全然! 気に入らないとこなんて何にもないよ」

「うん、ことりもこの曲好き!」

「私もです」

三人とも言葉は違うけど気に入ってくれたみたい。本当に良かった。

「夢ちゃん、ありがとう!」

そう言ってそのまま飛び付こうとした穂乃果。

「ちょっ、穂乃果ストップ!」

私の声に穂乃果だけじゃなくて海未もことりも止まった。

「そうやって飛んでこられると私のここ、止まっちゃうかもしれないから……」

そっと手を左胸に当てて穂乃果にそう言うと

「あ、そっか……ごめん……」

私がこの病気、拡張型心筋症を発症する前はよくこうやって飛びかかってくる穂乃果を受け止めてたけど、今はそんなこと出来ない。本当の意味で元通りにはなれないんだって自分でいって少し悲しくなった。

「そうですよ、穂乃果。もっと注意してください。あなたはいつもいつも……」

海未がなんとかいつもと同じように怒ろうとしてるのが伝わってくる。こういうとき、入院してて自然と身に付いちゃった他人の顔を見てその内面をある程度察する能力って本当に要らないと思う。

居心地が悪い沈黙がその場に広がった。きっかけがなくて誰も言葉を発せない。

「穂乃果ちゃん、海未ちゃん、夢ちゃん!」

その沈黙を破ったのは唯一パソコンの前から動いてなかったことりだった。

呼ばれた私たちはパソコンの前に集まってことりが呼んだ理由を知った。

「評価が……入った」

入れてくれたのは誰かわかんないけど、初めての評価が入った。

「……さて、練習始めるよ。本番まで後二週間しかないんだから」

とりあえず歌の練習から。ダンスは後で海未とことりが決めるっていってた。私はそのアドバイスをすればいいみたい。

とりあえず、歌を一通り教えてきた私は海未たちの振り付けの相談には関わらないで家に帰ってきた。

今日よくわかったのは歌うことも結構体力を使うってこと。最初は一緒に歌ってたけど一番のサビ辺りでもう大変だった。

そんなわけで自分の部屋のベッドに倒れこんだわたしは……

 

 

 

 

 

 

 

……しばらく寝てたみたい。およそ二時間くらい。お陰で体力はある程度戻った。

「お姉ちゃん、おはよ」

「おはよ、結衣」

夕飯が出来たから呼びに来たら寝てたんだよって結衣に怒られちゃった。

「ごめん、ごめん。起こしてくれてありがと」

「うん。それより珍しいね、お姉ちゃんがお昼寝なんて。ほのちゃんたちのは終わったの?」

「うん、ちゃんと出来たよ。穂乃果たちにも喜んでもらえた」

「だからそんなに嬉しそうなんだね」

「え、嬉しそう?」

自分では全く気付いてなかった。そんなに分かりやすく顔に出てた?

「なんていうか見てるこっちも嬉しくなっちゃうくらい。きっとそれだからお昼寝しちゃってたんだね」

「そうかも」

なんかこんな会話してるとどっちがお姉ちゃんなのか分からないよね。前にも思ったけど私が発症してから結衣は急に大人になったから、きっといろんなことを我慢してるんだろうなってやっぱり考えちゃう。姉としては妹の成長が嬉しい反面、自分のせいでっていう申し訳ない気持ちもあって素直に喜べない。

「あーあ、私もほのちゃんたちに会いたい! 今度つれてきてよ!」

かとおもったら今度はこれだもん。でもまだまだ子供のままで居てくれると私は嬉しい、かな。

「とりあえず二週間後の初ライブが終わったらね。それまではとにかく練習しないと本番に間に合うかわかんないから」

「はーい……」

つまらなそうに返事をした結衣は次の瞬間ぱっと花が咲いたように笑顔になって

「ねえ、そのライブ、結衣も見に行けないの?」

と聞いてきた。

「その日に一般公開してる訳じゃないしたぶん無理じゃない?」

「そっかぁ……」

さっきよりさらに大きく落ち込んだ結衣。

そんな結衣を見て

「三人のライブ、ビデオで撮っておいてあげるから、ね」

と声をかけた。

「ほんと!?」

落胆の表情から一転笑顔になった結衣。

元々撮るつもりだったから仕事が増える訳じゃないし。それに、この笑顔を見たら断れないよ。

「絶対だよ、約束だからね!」

「うん、任せて」

さて、こんなに楽しみにしてくれてるし、中途半端なパフォーマンスは出来ないよ。

穂乃果、ことり、海未。頑張ろうね

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