限られた日々のなかで〜女神と歩んだ1年〜   作:月白弥音

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#12私の思い

ライブ本番まで後少しに迫った今日、私はμ'sの朝練を手伝っていた。

海未の体力トレーニングと私の知識をもとに作ったダンストレーニングで最初に比べればかなり良くなった。でもやっぱり普段から運動してる海未はともかく、穂乃果やことりは基礎の基礎な体の柔軟性や体幹の筋肉が全然足りない。でもこのライブに間に合わせるのは無理だし……これからの課題ってことにしとけばいいか、とりあえず。

「夢ちゃん! 今の、どうだった?」

そんなことを考えてたら穂乃果に声をかけられた。私が見て今の時点で直せそうなことを指摘する。さっきからこの繰り返し。穂乃果たちが踊って、私が修正点を指摘して、それを踏まえてまた踊る。

「うん、わかった! じゃあ、もういっ……たぁい!」

休憩もそこそこにまた踊ろうとする穂乃果にとりあえずチョップすると、穂乃果は大袈裟に痛がった。

「今までずっと休憩なしだったんだからちょっと休む! 本番前に怪我したらどうするの」

「はーい」

 

 

 

 

 

 

「ふーっ、終わったぁ」

あの後、細かいところの修正をして今日の朝練は終わり。やっぱり最初よりずいぶん体力がついた。前はへとへとになって倒れこんでたのに。

「頑張っとるみたいやね」

ストレッチをしてる三人を見てると後ろから声をかけられた。

「えっと……?」

見知らぬ巫女さんだった。いや、どこかで見た気が……

「あ、分からへんか。うちは音ノ木坂で副生徒会長をやってる東條希や」

「ああ、副生徒会長さんでしたか。ところでこんなところで何を……バイトですか?」

格好的にそうかと思うんだけど、神社にバイトってあるの?

「あるんよ。ところであなたが三人のこと見てたんやね」

「ええ、そうですけど、それがなにか?」

「ううん、何でもないんよ。頑張ってな」

「は、はい……」

「……「まーきちゃーん!!!」」

東條先輩がなにか言おうとした瞬間、穂乃果の大きな声が境内に響いた。

「だから心臓止まるかと思うから急に大きな声出さないで!」

「夢ちゃんが言うと怖いからそんなこと言わないで!」

「えへへ、ごめんごめん」

私に言葉にことりからツッコミが入った。穂乃果の態度に海未は叱り始めてるし、相変わらずだね、本当に。

「すみません、東條先輩。それで……っていない」

なにか言おうとしてたから聞こうと思ったのに、東條先輩はすでにいなかった。どこいったんだろ?

とりあえずそれは置いといて、穂乃果が捕まえた真姫ちゃんのもとに私もいく。

「おはよ、真姫ちゃん」

「えっと……」

「真姫ちゃん、この前私たち三人で歌ってみたの。結構上手く歌えたと思うんだけど、聞いて?」

「はあ? 何で私が……」

ここでツンデレ真姫ちゃん発動したよ。

「だって私を手伝ってくれたし」

「……」

黙りこんだ真姫ちゃん。それを見て穂乃果は不気味な笑いを漏らして、真姫ちゃんに飛びかかった!

そして真姫ちゃんが引いてる間にイヤホンを耳に押し込んで離れた。

諦めて聞く体勢になった真姫ちゃんの前に三人がならんで私たちで決めたμ'sの合言葉的なものを口にする。

 

 

 

「μ's」

 

 

 

この子に三人の歌はどう聞こえるのかな。

 

 

 

 

「ミュージック……」

 

 

 

 

 

 

少しでも気が楽になるようにいい評価だといいんだけど……そう願って。

 

 

 

 

 

「……スタート!」

 

 

 

 

 

 

でも私は忘れてた。パフォーマンスの上手さよりももっと重大な問題があったことを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「無理です……」

「で、どうなってるの、これ?」

屋上で縮こまってる海未を指差して穂乃果とことりに説明を求める。

「実は……」

話を聞いてわかった。海未は人前で踊ることが恥ずかしいらしい。そう言えば海未ってかなりの恥ずかしがりやだっけ。

「人前じゃなきゃ大丈夫だと思うんです、人前じゃなきゃ!」

「……そういうときよく言われるのはお客さんを野菜だと思え、だけど……」

「……私に一人で歌えと!?」

「そこ……?」

さすが海未、素晴らしい想像力。普通そこまで考えないと思うんだ。

「でも、これは本気で何とかしないと本番に影響が出るどころじゃないよね」

「うーん……」

ことりと私が真剣に悩んでるところで穂乃果は海未の手を取って

「こういうのは慣れちゃう方がいいよ! 夢ちゃん、穂乃果に任せて!」

私に自信満々に言い切った。

「ま、まあそこまで言うなら……」

「ありがと。じゃあ行こ!」

「行こってどこにいくの、穂乃果ちゃん」

「アキバだよ」

「アキバ?」

「うん、アキバでビラ配りだ!」

ビシッて効果音が付きそうなくらい綺麗にポーズを決めた穂乃果。こういうとこでも海未のトレーニングが効いてることが分かる。

「私はまだいくの怖いからパスで」

「うん、じゃあ行くよ、海未ちゃん、ことりちゃん!」

三人と別れて家に帰りながら気がついた。ビラ配りっていってたけど、今μ'sのチラシってライブのお知らせしかないんじゃ……今さらいっても遅いけど、そこで配っても誰もこれないよ……

 

 

 

 

次の日の放課後、今度は昇降口から校門の間でビラ配りをしていた。

ちなみに昨日は海未が現実逃避に走ったためなにもやらずに帰ってきたらしい。まあ、結果オーライだったよね。

いくら炎天下ではないっていっても長い時間直射日光の中にいるのは良くないから、私は昇降口から三人の様子を見ながらビラ配りをしていた。

「ねえ、あなた」

「はい? ……生徒会長」

私を呼び止めたのは生徒会長だった。穂乃果たちの話によるとたしかμ'sの活動をよく思ってないとか。

「あなた、確か心臓に病気を抱えているんだったわよね」

そう言われても私は驚かない。私のことは小さいこの学校では結構有名だし、殊、生徒会には私のサポートも一部頼んであるから、知ってるのは当然だ。

「ええ、そうですけど」

「なぜ貴女はあの子達の手伝いをするの? 自分の体を優先して治療に専念すべきではないの?」

「……治療に専念、ですか。できたらいいですね」

私は珍しく棘がある言い方になっていた。

「それってどういう……」

「私の病気、拡張型心筋症は心臓の筋肉が伸びて上手く心臓が機能しなくなる病気です。そして伸びきった心筋はもうもとには戻らないんですよ」

「っ!」

生徒会長の顔に驚きが広がった。私は少しうつむいて言葉を続ける。

「完治させるには誰かが死にかけるのを待ってその人の命と引き換えに心臓をもらうしかない……」

「そう……」

「でも!」

私は顔をあげて生徒会長と視線をあわせる。

「穂乃果たちは私を頼ってくれた。あんなにひどいことしたのに、前みたいになにもできないのに。

私は発症してからずっと“人間、いつ何ができなくなるかわからない”って思ってます。だから、私は三人の、μ'sの期待に応えたい。あなたが言うように、状況は好転しないかもしれない。それでも、私は穂乃果たちを応援する。例え応援してるのが私一人だったとしても、私が出来ることなら手伝い続けたい。そう思います」

私の思いをすべて生徒会長にぶつけた。

「……」

生徒会長はなにも言わずに歩き出していちゃったけど、ちょっとは思いが伝わってると嬉しい。

「夢花、あなたの思い、私たちもちゃんと受け止めましたよ」

「ことりたち、これからも頑張るからよろしくね」

聞かれてた~結構恥ずかしいよ、これ!

「夢ちゃん」

「なに、穂乃果?」

「一緒に頑張ろうね、最後まで!」

屈託のない笑顔。穂乃果の一番の魅力だと思うその元気な笑顔でそう言われたら断れないじゃん。元々断るつもりもないけどさ。

「もちろん! 途中で投げ出したら許さないよ」

 

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