限られた日々のなかで〜女神と歩んだ1年〜   作:月白弥音

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#16 目標に向けて

翌日、私はまず昨日手伝ってくれた三人にビデオをとってないかを確認した。

「ごめん、撮ってなかった!」

「私も……だってあんな状況だったし……」

「私、照明と音響やってたし……」

だよねぇ、まさか撮ってくれてる人なんていないよね……はぁ、結衣になんて言おう。

穂乃果たちにも見せたかったけど……それは私が悪い、か。

とりあえず、真姫ちゃんのところ行ってみよっかな。

「わかった、ありがとね。じゃあまた」

三人にお礼を言って私はゆっくり音楽室に向かった。

 

 

 

 

「も~、夢ちゃん遅い!」

音楽室の前ですでに穂乃果が待っていた。

「ごめんごめん。珍しいね、穂乃果が早く来てるなんて」

「違うよ、夢ちゃんが遅いんだよ」

そっか、私が話してたからか。

「とりあえず行こっか」

いつも通り中でピアノ弾いてる真姫ちゃんを確認した私はノックをせずに音楽室に入って声をかける。

「こんにちは、真姫ちゃん」

「うぇぇ! ……もうびっくりさせないでよ!」

思った通りいい反応をしてくれた真姫ちゃんを見て私はしばらく笑いが収まらなくなった。

「笑わないで!」

「ゆ、夢ちゃん……? そろそろ……」

そう言われてもしばらく笑っちゃって収めるまでしばらくかかった。穂乃果にかなりひかれてる気もするけど面白いから止まらない。

「それで、何の用です?」

私の笑いが収まった頃を見計らって、本題を聞いてくる真姫ちゃん。

「うん、そうだね。本題を話そうか。はい、穂乃果」

私はそこで穂乃果に振る。そういえばなんかこんな風に重要なことの前に少し間を置くと話に集中してもらえるとか聞いたことがあるなぁ。全然そんなこと考えてなかったけど。

「ええ! わ、私!? え、えっと……

西木野さん、μ'sに入ってください!」

穂乃果がそう言った瞬間、音楽室から一切の音が消えた。

教室に入ってくる風で煽られたカーテンに撫でられた真姫ちゃんはそれで我に帰ったのか口を開いた。

「あ、あたしが? なんで?」

「だって、μ'sの曲作ったの真姫ちゃんだし……」

私がすぐに援護する。

「それはあなたが無理やりやらせたからでしょ! 前にも言ったでしょ、私の音楽はもう終わってるんです」

「あなたは本気で音楽を続けたいと思ってる。それに続けられる環境もある。あとは……実力かな?」

「ふざけないで! 何度言えばわかるの、私の音楽は!」

「終わってる、でしょ?」

これじゃあいつまでも平行線。

でも絶対、真姫ちゃんは本心で言ってない。自分のやりたい気持ちを強い意志で抑え込んでる。

「強いね、真姫ちゃんは」

「え?」

「本当はやりたいって思ってるのにそれを意志の力で抑え込んで目標に向かって頑張ってるところ。私には無理」

「穂乃果も無理だなぁ」

「穂乃果は例外でしょ」

「えぇ~、そんなことないよ! 穂乃果だってμ'sは頑張ってるでしょ」

「確かにね。

まあそれはいいとして、自分がやりたいことと自分がしなきゃいけないこと。両立できたら最高だと思わない?」

とりあえず穂乃果をあしらって真姫ちゃんに私の思いを伝える。穂乃果のせいでうまく伝わったかわかんないけど。

「え……?」

「考えてみて。私たちはいつでも待ってるから」

「うん、少しでも可能性を感じたら私たちのとこに来てくれると嬉しいな」

私と穂乃果、二人で真姫ちゃんに言葉をかけて、私たちは音楽室を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私と穂乃果は階段を上がって屋上に向かう。

それにしても可能性を感じたら、かぁ。相変わらず考えてないときはたまにいいこと言うよね。

可能性を少しでも感じたらそこに向かって突き進む。

それが私の、μ'sの原動力。

うん、なんかできそうな感じがしてきた。あれの方もできそうだしもう穂乃果たちに言ってもいいかな。

「ん? 突然笑ってどうかした、夢ちゃん?」

いつのまにか笑っちゃってたみたい。確かに突然笑い始めたら変な人だよね。

「ううん、何でもない。早くいこ」

さすがに穂乃果にだけ言うわけにいかないしね。

「あ、穂乃果ちゃん、夢ちゃん! どうだった?」

屋上の扉を開けるとすぐにことりが聞いてきた。

「ごめん、やっぱり無理だったよ……」

「それはそうですよね……」

海未も少し残念そうな顔をした。

「ところで夢花、今日の練習は何をするんですか? START:DASH!を練習し続けます?」

「ううん、新しい曲の準備をはじめよっか」

私は何気ないように言った。

「そっかぁ、新しい曲ってえぇ!」

「「「新曲!?」」」

おお、いい反応してくれた。

「いつの間に新曲なんて作ったの!?」

「本当です! 私まだ作詞を……」

「私も衣装、考えてないよぉ」

「だ、大丈夫、大丈夫!」

みんな意識高すぎだよ。特に海未、結構作詞するの乗り気だったんじゃん!

「START:DASH!ができる前に少しの間練習で作った曲があったでしょ? あれに歌詞をつけてるの。明日くらいにはできると思うんだ」

「ああ、なるほど。私はてっきりあれをライブ用に使うのかと思っていましたが、違ったので驚いていたんです。こういう理由だったのですね。

しかし、今なぜ新曲を? 新メンバー獲得を優先させて、新曲はそのあとの方がいいのでは?」

さすが海未、すごく建設的な意見だね。私もそう思って結構悩んだんだよ。

「でも、μ'sってPVないじゃん? 私が取り忘れちゃったから悪いんだけどこの前のライブ映像ないし……」

「あ……そっか、私たちのことを紹介できる動画がないんだ」

頭の上に電球が光るような感じでことりの顔が明るくなる。

「そうそう、そのための曲があった方がいいかなって思ったし、あとずっと同じ曲を練習するのも嫌になるし、ね」

本当はもう一つの理由もあるけど、これは今はなさなくてもいいよね。

「まあとりあえず! 新曲はどうでもいいとして、基礎練習とSTART:DASH!の復習しよっか」

三人の元気な声が屋上に響く。

 

 

 

 

 

 

――可能性を感じたら一直線に

 

 

 

 

 

――だってそこに私たちが目指す未来があるから

 

 

 

 

 

 

――昨日から今日へ、今日から明日へ

 

 

 

 

 

――少しずつステップアップ

 

 

 

 

 

 

 

――1日ずつ、ススメ→トゥモロウ

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