っていってもあちらのキャラあんまり使えてないですけど…
七月、中学二年生になった私はあと一か月に迫ったダンスの大会に向けて最後の練習をしていた。
「1 2 3 4……」
先生が作ってくれたお手本ビデオに合わせつつ、カウントに必死で食らいつく私。
右手を振り上げながらジャンプ。体ごと右を向いて両手を体の真ん中から円を描いて胸の前でそろえる。腕を上げる時、一緒に左足を上げる。
揃えたら二回跳ねて、手を伸ばしながら体ごと左を向いてまた胸の前でそろえて……っと、また失敗した。
このあと手をパタパタしたら体が正面を向くから足そろえちゃダメなのにまた揃えちゃった。
「はぁ、難しいなぁ……」
「はい、どうぞ。夢ちゃんのダンス、大変そうだね」
穂乃果たちと同じくらい仲がいい同じダンス部のなっちゃん、本名香川菜月がが私にスポーツドリンクを渡しながら声をかけてくれた。
「ありがと。大変だよ……でも、これくらいしないと舞里さんには勝てないと思うんだ」
「舞里さんって確かあの強豪校の?」
「そうそう、エースって言われてる人。舞里さん、今年で中学卒業だからさ、次同じ大会でれるのは私が高校になってからじゃん? だから今年は何としても舞里さんに一矢報いたいって思ってるんだよ」
いつもより熱がこもってた私の言葉になっちゃんは少し笑った。
「夢ちゃんがそんなになるなんて珍しいね。わりといつも冷静な感じなのに」
「え?」
私ってそんな風に思われてたの!? 私結構遊んでるだけだと思うんだけど……
「まあ、なんていうかやるときはしっかりやるしさ、いろんな人に教えてるし、まあ私も教えてもらってるけど、周りをよく見てて頼りになるなぁって思ってるよ」
「うまくなれる方が楽しいから私にできる範囲でやってるだけだし、結構自分のことで精一杯で周りなんてほとんど見てないよ」
「へぇ、そうなんだ。でさでさ、そんな舞里さんにこだわる理由は何? なんかあったの?」
「うーん、あんまりおもしろい話でもないけど……そんなに気になるなら話してあげるよ」
私は舞里さんと初めて会った時のことを思い出す。
あれはたしか、小学4年生くらいで、二回目か、三回目の大会の時のこと。
その大会はいつもと違って私と同い年くらいのだけじゃなくて五年生や六年生もいっぱいいた。
当時の私にはそこにいるみんなが大人のお姉さんに見えた。
いつもなら私たちのスクールの人が全員パフォーマンス終わったら帰るんだけど、その日は私が初めて入賞したから、最後まで残ってなきゃいけなくて、その人たちのダンスを見ることにした。
その中で私が一番気をひかれたのはきれいな長い髪をした女の子、それが舞里さんだった。
ダンスを体いっぱいに表現して、とっても楽しそうで、私は一瞬で舞里さんに魅了された。そして私もあんな風に踊れるようになりたいって思うようになった。
翌年、私は舞里さんと同じクラスで大会に出た。
自分で言うのはどうかと思うけど、初めて入賞した大会から力をつけて、私は上位三人くらいに残れるようになってた。
私と舞里さんは順調に決勝まで勝ち残って、そのとき初めて自己紹介をした。
「クラス上がってきてすぐここに来れるなんてすごいね! 夢花ちゃんは絶対才能あるよ。私も負けてられないなぁ」
そう言ってもらえたことがすごく嬉しくて、私は決勝で全力のダンスをした。舞里さんに追いつきたい、その一心で。でも……
結果はボロボロだった。今ならその失敗もわかる。舞里さんを意識しすぎて私が目指した楽しいダンスを忘れちゃってたから。
それに気がついたのは結構経ってたからだったけど、そのあとも舞里さんとは大会でよく顔を合わせて、ある意味ライバルみたいな存在になった。勝ったり負けたり負けたり負けたりばっかだけど、お互いに切磋琢磨できる、そんな関係になれたと思う。
「で、舞里さんがこの大会で中学生として出るのは最後だから勝たせっぱなしで終わりたくはない……ってこと」
「なるほど。勝てるよ、きっと。こんなに頑張ってるんだもん」
「ありがと、やれるだけやってみるよ」
なっちゃんと私は別れて自分の練習に戻った。
舞里さん、今回はどんなダンスなんだろ? でも、負けないよ!
そして、あっという間に一か月はすぎ大会当日を迎えた。
「あ、舞里さん!」
入り口ですぐ舞里さんの学校の集団と出会った。
「あ、夢花! 久しぶり」
すぐに私に気が付いて学校の集団から離れてこっちに来てくれる舞里さん。
「舞里さん、来てくれるのはありがたいですけど学校のとこから離れて大丈夫なんですか?」
「うん、大丈夫大丈夫。あの子たちは団体の方だから、関係ないの。
それでどう、調子は?」
「万全ですよ。ダンスも仕上げてきましたし、勝ち逃げはさせませんよ」
体を動かして好調なことをアピールする。
「そう? じゃあ楽しみにしとくよ。でも、負けるつもりはないけどね」
じゃあ、お互い頑張ろ、そういって舞里さんは自分の待機場所に戻っていった。
私の出番は最初だから待機場所に行かないで、アップを始めるためにそのままアップ会場に向かった。
そして、やってきた私の出番。
大丈夫、やれる、できる。さんざん練習したんだから。
あとは、あと楽しんでやるだけ。
私は目をつぶる。そして私のダンスの曲の前奏が始まった。
敬礼した状態で待機してた私は体を大きく開いてジャンプ!
しばらく基礎の技をつなげただけの簡単なとこ。ここでミスは許されない。
でも、そんなことどうでもいい。楽しい! ずっとのまま踊ってたい。
すっかり私の頭から細かい注意点は消えてた。ただ、このままダンスを楽しみたい。
曲はサビに入って私が何度やってもできなかったところ。でも今の私ならきっとできる!
体は私を離れて勝手に動き出す。私はこの瞬間を楽しんでるだけ……
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いつの間にか私の番は終わってた。終わったのがわからないくらい楽しかったなぁ。
さて、この組の最後が舞里さんだから、楽しみだけど、ちょっと不安。私、本当に勝てるかな?
そう思ってるうちに舞里さんの番。
私がドキドキしてると舞里さんが私にウィンクしてきた。相変わらず余裕だなぁ。
舞里さんが位置につく。そして、曲が始まった。
序盤は私と同じで基礎の技。でもやっぱり私よりはるかに完成度が高い。
曲の盛り上がりは最高潮になって、サビに入る。
3回跳ねて腕と一緒に腰を振る。もう一度3回跳ねて、今度は前に踏み出しながら大きく腕を開いて胸の前で合わせる。
簡単な動作。難易度としてはおそらく私の方が難しいことをやってるけど、見た目の綺麗さだけで言ったら舞里さんの方が上。
私がどう評価されてるのかはわからないーーこの大会は審査員五人がそれぞれ10点満点で評価して最高点と最低点を除いた三人の平均点が得点になる仕組みで、大会中に得点は公開されないーーけど、私は舞里さんのダンスを見た瞬間勝てないことを確信してしまった。
やっぱり、舞里さんのダンスはすごいね。私はまだまだだよ。
舞里さんの出番は割と最後の方だったから最終的な結果はそんなに待たずに出た。
結果は……
予想してた通り舞里さんが一位、私が二位。
舞里さんの最後の大会、私、結局全然舞里さんに届かなかったな……
「夢ちゃん……」
「え……?」
「泣いてる、よ……」
なっちゃんにそう言われて初めて気づいた。私の目から涙が溢れていた。
「な、何で泣いてるんだろ、私。変だね」
顔を手で拭っても涙は溢れてくる。
「夢ちゃん」
気がつけばなっちゃんに抱きしめられてた。
「我慢しなくていいんだよ。夢ちゃんは私に隠れて誰からも見えないから」
私の中で何かが崩れ去った。それを自覚した途端今よりもっと涙が溢れ出てきた。
「うっ、ううっ……勝ちたかったよぉ、せめてもっと近づきたかったよぉ……」
「そうだね、悔しいね……」
しばらく私は人目も気にしないで声をあげて泣いた。
「ほら、夢ちゃん。そろそろ表彰の時間だよ。行ってこないと」
なっちゃんにそう言われて時計を確認すると確かに表彰式の時間が迫ってた。
「なっちゃん、その……ありがと。行ってくるね」
私は笑顔を作った。うまくできてるかどうかはわからないけど、なっちゃんも笑顔を返してくれた。
そして、表彰式。舞里さんにあった私はすぐに泣いてたことを見抜かれた。
「まさか、夢花が私に負けて泣くなんてね〜」
「しかたないじゃないですか、私だってびっくりですよ」
ちょっと怒った感じで言葉を返す。
そんなことは御構い無しにやっぱり終わってすぐ夢花のとこに行くべきだった、なんてふざけてる舞里さん。それを見てると自然と笑顔になれた。
「そうそう、その顔。ダンスしてる時、一番乗ってる時のその笑顔。いつもそれを忘れないで」
「えっと……どういうことですか?」
「あ、そうだ! お互いの学校の集まりが終わったら入り口のとこにある看板で会おうよ」
私の疑問には答えてくれないで、あとで会う約束をしようとする舞里さんはいつも通りで。
どういうことかよくわかんないけど、とりあえずさっきの舞里さんの言葉は心にストンと落ちた。
私は舞里さんに頷いて、表彰式のための移動で連れて行かれた。
私が学校の集まりが終わって看板のところに行くと、既に舞里さんが待ってた。
「すみません、待たせちゃいました?」
「ううん、大丈夫だよ。そんなに待ってないから」
舞里さんの隣に立ったはいいけど、言葉が出ない。言いたいこと、聞きたいこと、色々あった気がするのにいざこうやって立つと言葉が出ない。
「終わっちゃった〜最後の大会。めっちゃ楽しかった!
夢花は? どうだった?」
先に口を開いたのは舞里さんだった。
「私も、楽しかったです。……舞里さんには負けましたけど」
少し意地悪く言ってみたら
「まさか泣いちゃうなんてねぇ」
って逆にからかわれた。本当に敵わない。
「私、夢花といつも一緒に大会出て、競い合って本当に楽しかった。一年間、先に行って待ってるね」
「そのまま待っててください。その間に私はもっともっと力をつけますから」
「早くここまでおいで、その頃には私はさらに上にいるから」
お互いに自分の力の向上を約束して、大会での再会を約束して。
私たちは別れた。それぞれの新たな道に向かって。
4月。
私は中学最後の時を迎える。
今年は舞里さんの代わりに私が優勝するんだから。
私は机に飾ってあるあの大会で舞里さんと撮った笑顔の写真を見る。
表彰式の後、少し涙が残ってる変な顔で笑ってる私と、全開の笑顔で写ってる舞里さんの写真。
再会の約束の証。
「よしっ!」
私は決意を新たに自分の部屋を出た。
さて、楽しんでもらえたでしょうか?
明日、シベリアさんの「ラブライブ!~幻のメンバー~」の方で第二章が投稿されます!
あとがきでは少し遊んでいるのでそれも含めて読んでもらえると嬉しいです!