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翌日、日直だった私はいつもより早く学校に来ていた。
朝早い学校は人の気配が少なくてちょっと怖いっていう人もいるけど、私は結構好きかな。もともと朝の空気って、結構好きだし、誰もいない校舎って逆になんか気持ちい感じがする。まあもちろん夜の学校でこうなるのは絶対ごめんだけど。別にホラー自体苦手じゃないけど、やっぱり、ねぇ。
職員室に向かう途中、私はすれ違った先生みんなに声をかけられる。
私みたいに面倒くさい生徒は有名になっちゃうんだよね、対応に困るんだろうし。
だから、私に接するときは基本的に、すごく気を張って接してくるか、面倒くささをうまく隠そうとして接してくるかのどっちかしかないんだよね。正直なところそういう風にされるの嫌なんだよね。
あ、でも二人だけそうじゃない人がいたっけ。
一人はことりのお母さんでこの学園の理事長。それはちっちゃいころからの付き合いだから当然だけど、もう一人。
今前から歩いてきたあの女の人、うちの学校の保健室の先生。
「あ、夢花ちゃん! おはよう。今日は早いのね、日直?」
「おはよう、こつめ先生。うん、そうなの、朝早いのは好きだけど、ちょっと大変」
保健の先生の
「もぅ、みんなそう呼ぶんだから……できれば私は小鼓先生って呼んで欲しいんだけどなぁ」
「いやもうこつめ先生はこつめ先生だよ」
こつめ先生と私はほとんど歳が離れてない。
確か初めて来た学校がここなんじゃなかったっけ?
だから申し訳ないとは思ってるんだけど、自然と敬語が外れちゃうんだよね。あと、反応が可愛いし!
でも、私にとってはことりのお母さんと同じか、それ以上感謝してる人。
私が音ノ木坂を受けるとき、病気の配慮してもらわないといけないからその申請を先にしないといけなかったんだけど、最初は受理されなかったの。
そのあと突然許可が下りて、授業料の割引、教科書の支給なんかがついた特待生的な立場で入学できるかもしれないことになった。あ、もちろん入試で合格しないといけなかったんだけどね。
で、ここからはあとで聞いたんだけど、このとき、ことりのお母さんとこつめ先生が受け入れに賛成してくれて、最終的に反対派を押し切ってくれたらしい。
こつめ先生がそのときに、私の対応は全て引き受ける、みたいなことを言ってくれたらしくって入学してすぐからずっと気にかけてもらってる。
「夢花ちゃん? どうかした?」
他の先生から嫌味のように言われた話と去年1年のこつめ先生との関わりを思い出してたら黙っちゃってたみたい。
「ううん、なんでもない。
いつもありがとう、こつめ先生」
「突然どうしたの?
まだ今年も始まったばかりだし、もう1年あるんだからそんな終わりみたいなこと言わないの」
「えへへ、そうですね。特に私みたいな人じゃ余計ですよね」
「本当にだよ!」
本気で心配してくれてるし怒ってくれる。
よくある普通の関係。なかなかそうやって関わってくれる人がいないからその普通さが私には心地よかった。
「ねえ、ところで日直の仕事はもうしてきたの?」
「あ……」
こつめ先生とのお話が楽しくて忘れちゃってた……
こつめ先生もあーあって感じの顔してるし! 気づいてたなら教えてよね!
「とりあえず職員室行ってきます!」
「行ってらっしゃい、ゆっくり行くんだよ〜」
こつめ先生はひらひらと手を振って見送ってくれる。私は口だけは急いでるけど走れないから気持ち急いで歩く程度。
それがなんだかおかしくて、私は少し笑いながら職員室に急いだ。
放課後、日直の日誌を書いてると開いてる窓から微かに歌声が聞こえてきた。
穂乃果たちかなって思って聞いてたけど、明らかに穂乃果たちの声じゃなかった。
誘われるように教室を出て、声の主を探し始める。どうやらこの子たちは中庭で練習してるみたい。でも……合唱部もないし、この学校で他に歌を練習する人なんていたっけ?
そんなことを思いながら中庭に向かっていると、1人は途中でわかった。
西木野真姫ちゃん、音楽が好きな真姫ちゃんが誰かに声出しを教えてる……?
いったい誰に?
気になって中庭を覗いてみるとそこにいたのは
「小泉さん……?」
だった。
「あーあーあーあーあー」
真姫ちゃんのリードに小泉さんが続く。
あまり声を出さないからか小泉さんの声はまだ小さいけど、だんだん声が大きくなってきた。
「どう、気持ちいいでしょ?」
「うん、楽しい」
小泉さんはとても楽しそうで、真姫ちゃんも照れてはいるけど嬉しそうだった。
これは2人とも入ってくれるかな?
わたしはそんな期待をしながら教室に戻って日誌を書き上げる。
それから急いで荷物をまとめて日誌の提出をしに職員室に向かう。
「先生、日誌書き終わりました。よろしくお願いします」
担任の先生に日誌を渡して、焦る気持ちを抑えつつ、でもいつもよりは早く階段を上って屋上のドアに手をかけた。
「私……小泉花陽っていいます!
声も小さくて、運動も苦手で、得意なことなんて何もないです。でも! アイドルへの気持ちは誰にも負けないつもりです!
だから、私をμ'sのメンバーにしてください!」
小泉さん、花陽ちゃんの覚悟の言葉が聞こえた。
穂乃果と花陽ちゃんが握手をする。みんながそれを見てる中私は屋上に出て、花陽ちゃんを連れてきた2人に声をかける。
「それで? 真姫ちゃんと凛ちゃんはどうするの?」
「どうするって? 私はやらないって言ってるでしょ!」
「り、凛も……かよちん、応援してるよ!」
2人とも私の言外に含めたμ'sに入らないのっていう質問にしっかりと断りを入れて、屋上から出て行ってしまった。
「えー、なんでよー! 一緒にやりたいって思ってたのに……」
単純に人数を多くしたい穂乃果とは違い、
「凛ちゃん、西木野さん……」
花陽ちゃんの言葉には寂しさが込められていた。