μ'sも7人になったし、そろそろ新しい曲の作曲始めなきゃなぁ、大分海未の作詞も終わったみたいだし。
日直の仕事で遅くなったわたしはそんなことを考えながら部室に向かっていた。
「……あれ? みんな……?」
ふと窓越しに見た中庭に部室にいるはずだったμ'sのメンバーがいた。
あ、でもにこ先輩がいないのかな……?
「あっ! おーい、夢ちゃーん!」
穂乃果に気づかれた。
そうやって呼ぶの恥ずかしいからやめてって言ってるのに……
まあでも、今はなにやってるか聞きたいしちょうどよかったのかな。
「なにしてるのー?」
わたしも出来るだけ大きい声で聞く。
「なんかμ'sの取材だってー!」
取材?
まさかTVの取材じゃないだろうし……
なんの取材だろ?
「一旦部室に戻るから夢ちゃんはそのまま部室にいて〜」
戻ってくるんだ。わたしが降りなくていいんだね。
教えてくれてありがとう、ことり。
とりあえず私は部室に行ってよっと。
「学校紹介ビデオ?」
「そうなんよ」
副生徒会長の説明でピンとくる。
そういえば来月オープンスクールあるんだっけ。
そのための準備しなきゃだもんね。
「で、このありのまますぎる穂乃果と海未のビデオがとられてたわけね……」
「プライバシーの侵害です!」
ことりが穂乃果のビデオ……この子なら楽しんでやるね。
「よーし、こうなったらことりちゃんのプライバシーも……」
仕返しにカバンを漁ろうとするんじゃないの。
でも、ちょっと面白そうだし止めないでおこうかな?
「あれ……?」
穂乃果が声を上げた瞬間、ものすごい速さでことりがカバンのチャックを閉めて後ろ手に隠した。
「ことりちゃん……?」
「ナンデモナイノヨ」
「でも……」
「ナンデモナイノヨナンデモ」
すごい早口だし片言だし絶対何かありそうだけど……
この様子じゃ言ってくれなそうだし諦めるしかないかな。
でもすごく気になる……
ことりが私たちにもあんなに隠そうとするなんて今までなかったから余計に……
「うちは誰かを支えることしかできんから……」
あ、ことりのこと気になりすぎて話聞いてなかった。
なんでこの話に?
「まあ、うちのことはええやん」
本当に自分のこと話そうとしないよね、副生徒会長。
入院してると自然に相手の様子から感情とか、考えとか読み取れるようになるらしくて、例に漏れず私もなんだけど、それでも副生徒会長の思ってることがわからない。
私がまだまだなのか。
「取材が来るってほんと!?」
っ!?
はぁ……なんだ、にこ先輩か……
もうちょっと静かに入ってきてくださいよ……
「心臓止まるかと思うじゃないですか」
「夢ちゃんがいうとシャレにならないからやめて?」
ことりさん、その笑顔が怖いです。
「えっと、ごめんなさい?」
「うん!」
「ほら、君らも中庭行くよ〜」
ことりとお話ししてる間にみんなが移動を始めてた。
「あれ、にこ先輩は……?」
いつの間にかツインテを解いてた。
というか、なんかトリップしてた。
「ああなるとにこっち、なかなか戻ってこないから……」
副生徒会長、にこ先輩の扱いよくご存知なんですね……
えっと、ごめんなさい、私も先行きますね。
それから各個人のインタビューのような、遊んでるような……というのを撮った後、屋上で練習風景の撮影。
「あんなに遊んでるような感じやったのに練習になると目が変わるんやね」
って副生徒会長、希先輩が褒めてた。
あと、副生徒会長って呼ぶのを強制的にやめさせられた……まあ、なんとなくそう呼んでただけでどっちでもよかったんだけどね。
練習が終わってからは穂乃果のうちに行くって言ってたけどそれはパスさせてもらって先に家に帰った。
そして翌日。
「リーダーは誰がふさわしいか。そもそも私が加入した時点で考えるべきだったのよ」
穂乃果のうちでなんで穂乃果がリーダーなのか、という話になったらしい。
で、にこ先輩的には熱意があって、みんなを引っ張っていけて、精神的支柱になれて、尊敬されている人がいいらしい。
「海未先輩かにゃ?」
「なんでやねーーん!」
あ、にこ先輩がなりたかったんですね……
まあ、センターも変わるって話だったしね。
あと一応年上だし。
「無理です……」
だよね〜だろうと思ってたよ。
「だいたい、穂乃果はそれでいいのですか? リーダーはおろか、センターの座も奪われようとしているんですよ?」
「あっ、そっか。うーん……まあ、いっか!」
「「「「え〜!!」」」
まあ、なんとなくそんな気はしてたけど……
穂乃果はそういうのにこだわらないもんね。
「じゃあ、ことり先輩?」
「副リーダーって感じかな?」
「じゃあ夢花先輩は?」
え?
私?
「私はあくまでも手伝いというか、マネージャーみたいな存在だからμ'sのリーダーになるわけにはいかないかな」
「でもダンスだってすごく……「凛ちゃん」」
ごめんね、凛ちゃん。でもそれは無理なんだよ。
穂乃果たちは寂しそうな顔で私を見てるけど、別にダンスができないのは仕方ないしみんなのせいじゃないのに。
なんでそんな顔するかな。
「とりあえず私のことはいいじゃない。みんなの中からリーダー決めないと」
そう、あくまでも私は手伝い。
だから、リーダーはμ'sの中から決めないと。
……で、いい加減しかたないわねぇって言い続けてるにこ先輩に話を振ったほうがいいのかな?
「もうこうなったらしかたない!」
にこ先輩が声を上げた。
あの、だからお願いだからおどかさないで?
「……で、結局総合すると同じ点数だったんだ」
「はい……」
カラオケ、ダンスゲーム、ビラ配り。
最後のはなんか点数ができるものでもない気がするけど、その合計点数の一番高い人がリーダーってことにしたらしいんだけど……
「結局、みんな同じくらいってことだね」
「どうするのよ、これじゃ決まらないわよ?」
「じゃあなくていいんじゃないかな?」
なくてって……
「ええ!?」
「リーダーなしのグループなんて聞いたことないわよ!?」
「だいたいセンターはどうするのよ?」
それが決まらないからこその話だったんだしね。
真姫ちゃんナイス。
「だってみんな今までそれで練習してきたし。
センターなんだけど、みんなで歌うってどうかな?」
みんなで?
今までだってそうだったし、それにセンターの話は……?
「私、考えたんだ。なんかね、みんなで順番に歌えたらなって。それはとっても素敵だなって」
……はぁ、なんていうか、穂乃果らしいっていうか。
なんか考えてたのがバカらしくなってくるよね、穂乃果の発想の前では。
「そういう歌、できないかな?」
「まあ、歌は作れなくないけど……」
歌詞担当の海未が。
「そういう曲、なくはないわね」
「多分、作れると思う」
作曲チームの真姫ちゃんと私が。
「ダンスはそういうの無理かな?」
「ううん、今の7人ならできると思うけど!」
振り付け担当のことりが。
「ならそれがいいよ! みんなで歌って、みんながセンター!」
ほんと、あなたの発想には負けるよ、穂乃果。
「私賛成!」
「好きにすれば」
「凛もソロで歌うんだー!」
「わ、私も?」
「やるのは大変そうですけど」
1、2年生の気持ちはまとまった。
あとは……
みんなでにこ先輩を見る。
「しかたないわね、ただし、私のパートはかっこよくしなさいよ?」
「了解です、にこ先輩」
みんなの思いがまとまる。
「よーし、じゃあみんなで練習だー!」
穂乃果が部室を飛び出す。
それに続いて私たちも部室を出る。
「でも……本当にリーダーなしでいいのかな?」
あれ、ことり。まだそんなこと聞くの?
「決まってるよ、とっくに。ていうかこんなことは決め直すこともなかったんだよ」
「不本意だけどね」
真姫ちゃんは本当にやる気があるのかないのか言葉だけじゃ分かりにくいね。
ほんとはやる気満々なくせに。
「はい、何にも囚われずに一番やりたいことへ、楽しそうなものへ怯まずまっすぐに一直線に。それは穂乃果にしかできないことかもしれません」
そうそう、穂乃果だからこそ、μ'sがあるんだよ。
きっと、私や、海未や、ことりじゃだめだったんだと思う。
これから訪れるだろう
どこまでもまっすぐに進むエンジンになれるのはきっと穂乃果、ただ一人なんだと思う!
さぁ、これから忙しくなるぞ〜!