「ゆーめちゃーん!」
あ、なんかヤバそうな気がする。
振り向いて声の主の位置を確認……って、止まった。
「どうしたの、穂乃果?」
「ビックニュースだよ、夢ちゃん!」
「いや、そうじゃなくていつもならそのまま飛び込もうとしてくるからなんか拍子抜け」
「あー夢ちゃんひどーい! 穂乃果だってそのくらいは考えるもん!」
なら最初からやらないで欲しかったんだけど……
でもそれはそれでちょっと寂しく感じたりもするな……
穂乃果にそんな意識ないことはわかってるけど、私だからって特別扱いみたいでちょっといや。
実際は仕方ないことだし、配慮してもらわないと困るんだけど……
「夢ちゃん? どうしたの?」
「んーん、なんでもない。それよりビックニュースって?」
「それは部室に行ってから! みんなにも話したいもん!」
廃校関係か、μ'sに関係したことか……
ランキングはかなり上昇したけど、まだラブライブ出場圏内じゃないし……
なんだろ?
あっ、そういえば……
「この前のオープンキャンパスの結果ってどうなったの?」
「え? 結果?」
「オープンキャンパスのアンケートの結果。それによっては廃校確定になるって話だったでしょ? ……ってまさか忘れてたわけじゃないよね?」
「も、ももも、もちろん覚えてたよ! い、いくら穂乃果だってそんな大事なこと忘れるわけないよ!」
穂乃果、絶対にそのこと忘れてたよね……
さすがに穂乃果でも廃校のことを完全に忘れてたわけじゃないと思うから、廃校のことよりも大きな穂乃果的ニュースがあったんだよね。
ますます気になる……
でもなぁ……
「あれ、夢ちゃん? 何してるの? 早く部室行こーよ」
「ごめん、私、今日病院いかなきゃなの」
「そっか……じゃあ夢ちゃんには先に教えてあげるね! なんとなんと……!」
「部室が広くなったの!」
「あ、隣の部屋使えることになったんだ。衣装とか、着替えとか、部室じゃあんまり場所がなかったもんね〜」
「夢ちゃんなんで知ってるの!?」
「知ってるもなにも先生に頼んだの私だし」
にこ先輩が入った時点で先生にお願いしてあったんだけど、部室の使用は部活動会議の中でしか許可できないとかなんとかで先延ばしにされてたんだよね。
そっか、やっと申請通してくれたんだ。待ったの一月もないくらいだけど。
「夢ちゃん……! ありがと〜!」
「突然飛びつかないの!」
「えへへ、ごめんごめん。つい……」
この子は自分がちょっと前に言ったこと思い出してくれないかな……
まあこの方がよっぽど穂乃果らしいけどね。
「あ、電話来た。じゃあ私は病院行ってくるね」
「あ、うん、気をつけてね?」
「ありがと。穂乃果たちは練習頑張ってね」
「うん!」
相変わらず元気だなぁ……
ちょっと羨ましくもなる。
今更言っても仕方ないんだけどさ。
私は私ができる限り楽しくいなきゃね。
さて、そのために私は病院行きますか〜
ちょっと気になることもあるし……
「お待たせ」
「ここに車を停めとくの邪魔になりそうで心配なんだから早くきてよ」
「あはは、ごめんごめん。あれ、結衣は?」
「今日、病院の日だって忘れてて遊ぶ約束しちゃったって言ってたわよ」
へえ、珍しい。結衣が私の病院についてこないなんて初めてじゃない?
さて、9人になって部室も広くなったんだけど次の曲どうしようかな。
そろそろ夏だし、夏っぽい曲にしようかな……
そういえば今μ’sのランキングって……
確認してなかったことを思い出して私はランキングサイトを開く。
「うそ……」
「どうしたの、夢花?」
「μ’sのランキングが50位まで上がってて結構びっくりしてる」
「μ’sって穂乃果ちゃんたちのよね。凄いわね。本当に夢花も穂乃果ちゃんたちもすごいわ」
噛みしめるようにお母さんはすごいを繰り返した。
私、手伝ってはいるけど別にパフォーマンスをしてるわけじゃないし大したことはしてないんだけどなぁ……
「さて悩んでるところ悪いけどもう着くわよ」
そう言われて顔を上げるともう病院の駐車場だった。
朝倉先生、元気にしてるかな?
「最近よく夢花ちゃんのことよく見るよ。学校の友達と仲良く頑張ってるみたいじゃない」
「え、朝倉先生μ’sのこと知ってるんですか?」
「少しだけどね。私がって言うよりは澄川さんが見つけてきたのよ」
あー……そういえば美月さんに前に話したかも……
「それでわたしの都合で今回だけ一ヶ月空いちゃったんだけどどう? 前から大きく体調が変わったとか違和感があるとかそう言うのはない?」
「そうですね……あんまりないですけど……」
「その顔は何かあるって顔だね。どんなに小さくても変わったことがあるなら教えて欲しい」
「私の体力が落ちてるからだと思うんですけど前より疲れを感じるような感じがします」
私の言葉を聞いて朝倉先生の表情が少し険しくなった気がした。
「そっか。それじゃあ疲れすぎてもよくないから運動療法のメニューも少し変えたほうがいいかもしれないね。今度次の診察の時に測定し直そうか」
「わかりました。あの先生」
「ん? なに?」
「大丈夫ですよね、私。穂乃果たちとこれからもやっていけますよね?」
どこか突然不安になって思わず朝倉先生に聞いてしまう。
「……ごめんね。私は大丈夫だよって言ってあげたいけどそんな無責任なことは言えない。でも友達との夢も夢花ちゃんの夢も叶えられるように頑張ってフォローはするから」
「はい、ありがとうございます。よろしくお願いしますね」
そうだよね、こんなこと聞かれても困るよね……
「よし、じゃあまたね夢花ちゃん。お母さんはちょっといいですか」
私は診察室を出る。
美月さん、今日来てるかな?
ちょっと行ってみようかな、そう思った私は休憩室に向かった。
♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪
「夢花ちゃんが疲れやすくなっていることを自覚するようになったと言うことは進行が早まっていると考えてもいいかもしれません。詳しくは来週の検査で明らかになると思いますが……」
「そんな……これからどうなるんですか、夢花は」
「心臓移植を検討したほうがいいかもしれません。その間の繋ぎとして人工補助心臓の埋め込みという選択肢もありますし入院治療と言う選択肢もあります。しかしどちらにしても心臓移植のためにはお金がかなりかかるというのも事実です」
「そうですよね……最近夢花がすごく楽しそうに学校に行くようになったんです。まるで病気になる前に戻ったみたいで……」
「同感です。私も夢花ちゃんにあんなこと聞かれると思いませんでした。まだいきたいと思ってくれるようになったのはいいことです。出来るだけ私たちも命の炎を長く燃やせるように全力を尽くしますのでお互い頑張りましょう」