限られた日々のなかで〜女神と歩んだ1年〜   作:月白弥音

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#5 ほんとのきもち

『みんなのこと、嫌いだよ』

 

 

「はぁ……」

屋上からそのまま逃げてきた私は教室で突っ伏してた。

完全に終わっちゃった、よね。私、穂乃果たちのこと嫌いだなんて思ったことないのに……あんなこといっちゃったらもう前みたいになんて戻れないよね……

それから授業が始まっても、私は集中なんて全然できなくて何度も先生に注意された。

「どうしたの、白崎さん。何かあった?」

となりの席の橋元さんにも聞かれたけど、素直に話す気にもならなくて適当にはぐらかしちゃった。なんだか申し訳ない気持ちにはなったけど、私にそんなこと考える余裕はなかった。

 

 

 

放課後、いつも通り美優が私のとこに来た。

「そう言えばさ、うちのクラスの穂乃果ちゃん、今日午後からやけに静かだった、ていうか上の空だったんだよ。なんかあったのかな?」

……やっぱり、そうだよね。

「……」

「夢花ちゃん?」

「え?」

「夢花ちゃんもなんかあった?」

「……ううん、なんにもないよ」

素直に言えない。私が穂乃果たちを傷つけたんだなんて。

「ウソだよ。夢花ちゃん、なにか隠し事があるとき絶対手を握るもん」

「だから、何でもないって!」

つい大きな声を出しちゃった。もうだめだ私。美優が気にしてくれてるのに、それすら拒否してる。

それを自覚しつつもどうすることもできなくて、美優が私の声に驚いてる間に私は教室を出た。

昇降口を出て、校門の近くのお母さんがいつも車を止めるとこに行ってみると、まだお母さんが来てなかった。珍しいな、お母さんの方が私より遅いなんて。しばらく待ってたけどいつまでたっても来そうにない。お母さんに連絡してみようと思って携帯を開いて、気がついた。

――今日から私徒歩帰りじゃん。

気がついて少し寂しくなる。今、私完全にひとりぼっちだ。一人歩いて帰る道はいつもより長く感じて、気のせいか心拍数も少し上がってる気がした。いつもなら何気なく前を通ってる穂むらの前も、今日はなんだか通りづらくて、わざと違う道を通って帰った。

 

 

 

 

「何かあったでしょ?」

家に帰ってすぐにお母さんに言われた。

「止めてよ、お母さんまで。別になにも……」

「穂乃果ちゃんたちとなんかあったのね」

「……敵わないよ、お母さんには」

私は降参した。いつもいつもお母さんは鋭い。

「そりゃ何年あなたの母親やってると思ってるのよ」

まあ、確かに。もうそろそろ17年になるね。

それから、今日のことを一通り話した。穂乃果たちを傷つけたことも、美優にも悪いことをしたことも。

「ふうん、なるほどね。穂乃果ちゃんらしいわね」

納得したように頷く。

「それで?」

「え?」

「別に穂乃果ちゃんたちのこと嫌いじゃないんでしょ?」

お母さんにそう聞いてきた。

「それはもちろん」

「じゃあ、美優ちゃんのことは?」

「もちろん嫌いじゃないよ」

「なら素直に謝ればいいじゃない」

「簡単に言わないでよ。美優はまだしも、穂乃果たちは……」

私は言葉につまった。今さら私がそんなこと言えるわけない。

「そう。夢花、あなたはどうしたいの?」

「私は……」

私は穂乃果たちとまた前みたいに仲良くしたい、困ってるなら出来る限り手伝いたい。でも今さらそんなこと……

「まあ、決めるのは夢花よ」

そう言って私に背を向けたお母さんは、そんなこと気にするとは思えないけどね、って言いながらキッチンに入っていった。

決めるのは私自身、か。

私も自分の部屋に入ってベットに寝転がって、机の横に置いてあるパソコンを横目見る。もし私の趣味が頑張ろうとしてるあの子たちの役に立つなら……でも今さら何て言えばいいのかわからない。あんなひどいこといっちゃって、やっぱりやる、なんて言えるわけないよ……

「お姉ちゃん!」

「びっくりした! 驚かさないでよ、心臓止まるかと思うじゃん」

結衣に大きな声で呼ばれた私はとりあえず注意した。私が言うと洒落にならないからね。

「お姉ちゃんがそう言うとほんとに怖いから止めて! それにさっきから呼んでたよ、ひたすら無視されてたけど」

「そ、それはごめん。で、どうしたの?」

「お母さんがそろそろご飯だよ~って。お姉ちゃんパソコンやってると気がつかないときあるから」

「そっか、ありがと。……あっ、結衣!」

出ていこうとする結衣を慌てて呼び止める。

「ん、なに?」

「ねえ、友達と大喧嘩してもしかしたらもう二度と元通りにならないかもしれないとき、結衣ならどうする?」

「ほのちゃんたちのこと?」

「……知ってたの?」

「さっきお母さんから聞いた。それで、結衣ならどうするかだっけ? 自分が思ってることを素直に言う、かな? だってまた元通りになって遊びたいもん!」

「そっか、ありがと」

結衣が面白そうに笑ってる。

「どうかした?」

「ううん、お姉ちゃんも結構悩むことあるんだなって思って」

「バカにしてる?」

「全然。だってお姉ちゃん、病気のこともそうだけど、いつもすっごく前向きじゃん! だからそんな風に悩んだりもするんだなぁって思って」

確かにそうかも。新学期になって少し緊張してたのかな? 最近やけにこんな風に悩んでることが多かったかも。いつまでも前やっちゃったことを考えててもしかたないよね。今どうするか考えないと!

私は結衣を抱き締める。

「わっ! もう……」

こういうときってどっちがお姉ちゃんなのか分からないよね。結衣、私が心筋症になってから急に大人になったから。

ちょっと寂しかったりもするけど。

「結衣、ありがと。お陰でいろいろ振りきれたよ」

抱きしめて頭を撫でながら改めてお礼を言う。

「えへへ、どういたしまして!」

しばらくそうしてたらお母さんに遅いって言われたけど、まあいいよね。




やっと本来のキャラ設定通りの夢花に戻った……
あと結衣(小学六年生)が思ったよりずっとかわいい。

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