昨日早く寝ちゃった私はいつもより朝早く目が覚めた。ちょうどいいや、なるべく早くみんなに謝りたいし。それに、あのことも、ね。
「お母さん、もうそろそろ行くね!」
「今日は早いのね。……うん、答えは見つかったみたいね、いってらっしゃい!」
「うん、行ってきます!」
「あ、お姉ちゃんももう行くの?」
そっか、小学生な結衣は出るのが早いんだ。
「うん、途中まで一緒にいこっか」
私は結衣と一緒に家を出る。結衣は集団登校だからうちのすぐそばの集合場所までだけど、私はどうしても言っときたいことがあった。
「結衣」
「ん?」
「えっと……昨日はありがとね。お陰で答えが出せたよ」
「そうなんだ! ならよかった~」
まるでなんにもしてないよって言われたみたいでちょっとイラッと来た私は結衣を抱えて頭をグリグリした。
「いたいいたい! いきなり何するの!」
「別にー。ほら、集合場所着いたよ」
「ぶぅ~」
ほっぺたを膨らませて怒る結衣を気にしないで集合場所に送り出す。
「じゃあね、結衣」
「うん、行ってきます!」
「ふーふんふっふふーん」
結衣と別れた私はこの前できた曲を鼻唄で歌いながら学校に向かう。これ、歌にするつもりだったから歌詞も考えないとなんだよね~まあ、すぐに作らなくてもいいし、ゆっくり考えよ。
そんなことを考えてるうちにいつの間にか校門の前に。そういえば、今朝は家をいつもより早く出たからか信号に引っ掛からなかったなぁ。
教室に入るとまだ人は少なかった。美優もまだ来てないんだ。海未とことりは穂乃果と一緒に来てるから多分結構ギリギリに来ると思うからそっちは昼休みにして、とりあえず美優を待とうか。
美優がくるまで本を読むことにして、私は鞄から最近読んでる本を取り出す。今読んでるのはOLさんで都会の萎びた野菜が嫌で毎日会社帰りに野草をとって帰ってる人のはなし。結構衝撃を受けたけど私は好き。あり得ないってよく言われるけど。
元々本はよく読んでたけど、倒れてからもっと読むようになった。外で遊べなくなったし、作曲もそんなポンポンできるもんじゃないし、一番手頃だったのかも。今では月20冊くらいは読んでるかな。
「……!」
しばらくして美優の声が外から聞こえた。顔をあげて時計を見ると読みはじめてから五分くらいしかたってない。
「美優!」
廊下を歩く美優に声をかける。
「あ……夢花ちゃん」
「美優、昨日はごめん!」
「え……?」
美優が驚いたように変な声を出した。
「私、いっぱいいっぱいで、心配してくれてたのに……」
「良かった……」
「え……?」
今度は私の番だった。良かったって、何で?
「だって、昨日の夢花ちゃんはとっとも辛そうな顔してたけど、今日は全然そんなことない! 二年生になってから一番いい顔してるよ」
「美優……ありがと」
私は笑顔で言えた。そういえば、新学期になってからあんまり笑ってなかったかも。そんなことにも気づいてないなんて。
「今日は生徒会ないから昼休みに」
「あ、美優。今日、私昼休みにやらないといけないことあるから……」
「そっか、じゃあ休み時間にいくよ」
「わかった」
美優にはちゃんと謝れた、むしろ私が元気付けられた感じだけど。あとは穂乃果たち、ちゃんと謝らないと。
三時間目の授業が終わって昼休み。私はご飯を食べてから屋上に向かおうと教室を出る。穂乃果たちが何となくそこにいる気がした。
階段を上ろうとしたところで
「……夢ちゃん」
上から呼ばれた。見なくてもわかるふわふわしたことりの声。私は手だけ振ってことりが居るところへ行く。
「穂乃果たちは?」
「二人とも屋上だよ。私も今から行くとこ」
「私も一緒に行っていい? ……昨日のこと、あるし」
「もちろん」
「ことり、昨日はごめんなさい」
「ううん、全然。でも良かった、また夢ちゃんとしっかりお話しできた」
「……ごめん」
「あ、別にそんな意味で言ったんじゃないよ! ただほんとにうれしかったんだ。夢ちゃんの気持ち、ことりにもちょっぴりだけだけど分かるから……」
そういえばことり、幼稚園の頃足悪かったんだっけ。五歳くらいのときに手術して治って普通に生活してるし、今じゃほとんどその傷も分からないから忘れてた。
「穂乃果ちゃ~ん、夢ちゃん連れてきたよ~」
屋上の扉を開けるとそこには穂乃果と海未がいた。
「穂乃果……」
「夢ちゃん……」
しばらく沈黙が流れる。そして、
「「あのさ!」」
「……引き分け、だね」
最初は穂乃果と雪ちゃんの間でのルールだったこれ。私と穂乃果の間でやり始めたのいつだっけ? まさか今になって役に立つとは思ってなかったけど。
「私、夢ちゃんのことなんにも考えてなくて、このまま離ればなれみたいになってるの嫌で……でもまた夢ちゃんを……」
穂乃果、やっぱり私があのとき言っちゃったこと、気にしてたんだ。
「私の方こそ、皆、ごめんなさい。それと、お見舞いに来てくれたときのことも。こんな風に言うだけじゃ許してもらえないだろうけど……」
「いいえ、許すどころか、最初から怒っていませんよ」
「え?」
朝も同じようなことあったよね。でもまさか、怒ってないなんて……
「だって、私たちは夢ちゃんのこと信じてるもん!」
ことり、嬉しいこといってくれるじゃん。
「二人とも……本当にごめんね」
「もう気にしなくていいよ、前みたいに仲良くしてくれれば!」
「ありがと……」
また最初みたいな沈黙が私たちを包む。ことりと穂乃果、穂乃果と海未が頷き合って私の前に並んだ。
「夢ちゃん、穂乃果は、ううん、穂乃果たちはやっぱり夢ちゃんにつくってほしい、私たちの始まりの曲を!」
やっぱり穂乃果まっすぐだ。いろいろ大変だったけど、始めてみる知らない世界に連れてってくれる。
「はいこれ」
穂乃果がポケットから丁寧に折り畳まれた紙を出した。
「穂乃果、それは……!」
「海未ちゃんが歌詞作ってくれたんだ。読んでみて」
私は言われるまま紙を広げる。そこには海未の几帳面な字が並んでいた。ざっと目を通すだけでも三人の覚悟が伝わってきた。
「すごくいい歌詞だと思う。明るくて、前向きで……私、曲をつけたくなっちゃった」
「え、それじゃあ……!」
「うん、私に作曲、やらせてもらえる?」
あれだけ悩んでたのに、いざ言うってなったらすごく簡単に口に出せた。
「うん、よろしくね! 夢ちゃん!」
穂乃果に抱きしめられた。その外からことりが海未を巻き込んで抱きついてくる。私も今までの分を取り戻すように強く抱きしめ返した。
若干のSID設定が使われました! 矛盾がない程度にこれからも出てきます。
夢ちゃんが作った曲はなんなのか! わかった方は是非感想の方へどうぞ~
なお、これからも2ヶ月ほど受験のため更新を休止します。受験が終わり次第更新を再開します。
と言うわけで、しばらく先にはなりますが次回もよろしくお願いします!