立体交差並行世界論というなんとも長ったらしく難しい話で意気投合している大理と十六夜だったが、気が付けば目的地に着いたようだ。
商店の旗には、蒼い布地に互いが向かい合わせになっている二人の女神が描かれている。あれが、件の超大手商業コミュニティ“サウザンドアイズ”の旗印なのだろう。
日が暮れて来たからであろうか、店員らしき割烹着を身につけた女性が看板を下げていた。その様子を見て慌てて黒ウサギが待ったを――
「まっ」
「待ちません、時間外営業はやっておりませんので」
……待ったをかけることもできなかったようだ。悔しそうに黒ウサギは店員を睨みつける。今にも口から『キィ~!』というお約束な声が出てきそうだ。だが、そこはやはり噂通りの超大手の店員なようで、押し入り客の拒み方もベテランだ。というか手慣れていた。
「あら、商売っけのない店ね」
「お客様は神様、という精神は持っていないようだね」
「全くデス! 今は閉店時間五分前でございますよ!」
「文句、クレーム、言い掛かり、その他諸々をお持ちであるならばどうぞ回れ右をして下さって構いません。今後一切の出入りを禁じます。出禁です」
「これだけで出禁!? お客様を舐めてんでございますか!?」
ムッキャー!と喚く黒ウサギも店員は軽く流して冷めた視線を向ける。
その様子を見て、十六夜と大理は手の平にポンッと拳を打つ。
「なるほどね、これがノーネームのデメリットなんだね。まあメリットなんてないけど」
「まあ、そりゃ旗印も名前もないコミュニティを信用するなんざただの阿呆だしな」
その会話で先ほどまで騒いでいた黒ウサギも勢いが弱まる。というか、黒ウサギは今まで忘れていたのだ。この超大手コミュニティが“ノーネーム”御断りだというとても重要なことを。まさに駄ウサギ、恥ウサギ。
「あの~、やはりノーネームはお断りでございますか……?」
「はい、ルールですので」
やはりというか、そのルールの理由は大理と十六夜が話していた通りだ。“旗”と“名”。それはこの箱庭の世界にとって身分証明書のようなものだ。
例えてみるとしよう。とある超大型人気デパートがあったとする。そこは営業時間中常に繁盛しており、まさに真っ黒字の安定している店だ。そこに、閉店ギリギリの普通ならば来ないであろう時間帯に『今お金はありませんが、いつか払いに行きます』と言って物を買おうとする怪しい人物が来るのだ。まず信用できないだろう。誰がそんな奴の言葉を真に受けるというのか、というものだ。
まあ、デパートで借金などできないのだがそこは例えだとしておくとそういうことになる。
そして例えに現在の状況を当てはめると、『店員=超大型人気デパート』『黒ウサギ一同=怪しい人物』となるのだ。
よって、この状況ははっきり言って店員が正しいのだ。大理達もその辺を分かっていれば、もしかしたら引くかもしれない。だが、あいにくと四人は異世界から箱庭に来て一日と経っていないのだ。分かっていたら引く、と断言できないのが悔しいところではあるが。
「あの、ある人物に会わせてもらうだけでいいので少しだけ……」
「御断りです。おもてなしなどしません。おことわりです」
「そこをなんとか一度白夜叉様に――」
「――いぃぃぃぃぃやっほぉぉぉぉぁぁぁぁああああ!! 久しぶり黒ウサギぃぃぃ!!!!」
何故か、店内から白髪の和装幼女が爆走してくると、その勢いのままに黒ウサギにフライングボディーアタックをかました。周りが唖然としている中、黒ウサギと和装幼女はくっついたまま(和装幼女が離さない)空中で体操選手顔負けの四回転半ひねりをしてちょうど店の対面に流れている浅い水路まで吹き飛んで行った。
「きゃあぁぁぁあああああーーー…………」
黒ウサギの悲鳴も途中から聞こえなくなり、そしてボチャン。お手軽にびしょ濡れガーターベルトのウサ耳少女が出来上がった。
「……なあ店員。この店にはドッキリサービスでもあるのか? それなら是非俺にも別バージョンを」
「ありません」
「税金込みの有料でも払えば」
「やりません」
「あ、それなら俺がやってあげようか? ちゃんとセリフ付きでやってあげるよ」
「ほう、どんなのだ?」
「“愛してたよ”……。なんてどうかな?」
「こええよ。一体何があった」
そんな馬鹿なやり取りをしている三人を飛鳥と耀が見ていた。
「……飛鳥、やる?」
「結構よ!?」
なんだかんだで仲良くなっていたようだ。
期末終わったぁぁぁぁあああああああああああああああ!!!!!!
よっし、よっし、よっし!!
今日から更新ペースが元に戻ります。
それと、今回は新しく地の文に例え的なものを入れてみました。どうだったでしょうか?初めてなので下手ですいません。