もしも、飛鳥に許嫁がいたら?   作:ミミヤヤ

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階層支配者との邂逅

 和風なつくりをしている、個室というには些か広い部屋に黒ウサギ達は来ていた。

 少し前に、ビックリな登場をかました和装幼女の後に着いてきた先がここなのだ。和装幼女は和室の上座に腰を落ち着ける。濡れていた筈の服はいつの間にか乾いていた。

 

 「生憎、店は閉めてしまったからの。私の私室で我慢してくれ」

 

 そういって、どこからともなく扇子を取り出す和装幼女。そんな恰好に一同は困惑していた。いや、正確には異世界組の一同なのだが。

 

 「牛乳、ちゃんと飲みなよ?」

 「運動もした方がいいわ」

 「睡眠もとった方がいい」

 「まあ、まだ希望はあるんじゃねえか?」

 

 なんのことかしばらく分からなかったようなのだが。牛乳、運動、睡眠、希望。そしてそれらが自身に憐れみで向けられている。その式から解かれた式はまさに幼女が傷つく真実だった。

 

 「おんしら失礼じゃな!? 背が小さいのはしょうがないじゃろうが……元の姿を見たら絶対にそんなことは言えんぞ!!」

 

 負け惜しみ……? と首を傾げられ、より一層顏を紅くして青筋を浮かべる。だが、それが爆発することはなかった。なんというか、先ほどもまでの微妙な空気を一新させるための会話だったのだろう。場は既に和んでいた。……和装幼女が傷ついたことに変わりはないが。

 

 「はあ、とりあえず自己紹介から始めるかの。私は白夜叉、“サウザンドアイズ”の幹部様じゃ。四桁の門、三三四五外門に本拠を構えておる。そこの黒ウサギとは少々縁があってな。まあ、器の大きな美少女様と覚えてくれればよい」

 「はいはい、誠にお世話になっておりますデスヨ」

 

 そんな適当な返事をする黒ウサギだが、まさか幹部だとは思っていなかったのか大理達はちょっぴり驚いていた。

 

 「ねえ、白夜叉でいいのかしら?」

 「うむ? そうじゃが。依頼ならお主の歳の割には発育の良い胸を生で揉ませてもらうだけで引き受けようぞ? 黒ウサギでも可」

 「黒ウサギはともかく飛鳥の胸はあげないよ? やるなら黒ウサギにどうぞ」

 「ちょっと大理様!? なに黒ウサギを犠牲にしてんでございますか!」

 「そうね、私は遠慮しておくわ。相手は決めているし」

 「飛鳥さん!? 惚気るのは良いですが黒ウサギを助けてください!」

 

 ムッキャー! と自分の扱いを嘆き喚く黒ウサギだが、そんな彼女に手を差し伸べる者はやはりこの中にはいない。なぜなら、ここにいる者全ては問題児なのだから。不幸、黒ウサギ。

 だが、そんな中黒ウサギ弄りを止めた者がいた。

 

 「外門、ってなに?」

 

 耀だ。勿論、意図してのことではないが黒ウサギにとってはまさに天使のように見えたことだろう。もしくは、『あなたが神か……!』と目を丸くしたやもしれない。

 

 箱庭には、階層がある。七桁、六桁~一桁と、数字が若ければ若いほど都市の中心部へと近づき、それと同時に百戦錬磨の猛者が住んでいる。そして、その階層を区切り、示す外壁のある門のことを“外門”というのだ。

 

 黒ウサギはそれらのことを口頭で伝え、より分かりやすいように箱庭を上空から見た図を描いた。そして、それを見た感想はというと。

 

 「……超巨大タマネギ?」

 「いえ、超巨大バームクーヘンではないかしら?」

 「俺はお嬢様に一票だな」

 「俺もバームクーヘンかな。例えるなら美味しい物の方がいいし」

 

 うん、とそんな身も蓋もない感想を述べる四人にガックリと方を落とす黒ウサギ。きっと彼女の苦労が終わることは無いのであろうと分かる絵図だ。

 

 そんな様子に面白そうに笑いを上げながら頷く白夜叉。

 

 「うまいこと例える。その例えだとするとここ七桁はバームクーヘンの外側の薄い皮となるかの。まあ、さらにこの箱庭のことを説明すると東西南北に区切られておる。ここは東側に当たる。そして、外門の外は“世界の果て”と向かいあう形となっている。あそこにはコミュニティには所属していないものの、強力な力を持った者が住んでおる。……まあ、ちょうどそこの水樹の持ち主のようにな」

 

 そう言うと、黒ウサギの持つ水樹へと視線を向ける。この水樹は十六夜が件の『チキチキ黒ウサギに内緒で大脱走!』の末にある水蛇神と戦い手に入れたギフトだ。その内容は空気中に存在する水分を水樹が水へと変換して半永久的に水を出し続けるという優れもの。現在の“ノーネーム”にとって貴重な水の問題が無くなったのだから大喜びであろう。

 

 「して、一体誰がどのようなゲームで勝利したのだ? 知恵か? それとも勇気を試したのか?」

 「いえ、この水樹はそこの十六夜さん素手で蛇神様を倒したのですよ」

 「おう、そこの十六夜さんに感謝しとけよ?」

 

 自慢げな黒ウサギに楽しげに胸を張る十六夜。そんな二人に白夜叉は驚愕していた。

 

 「なに!? クリアではなく倒した!? な、ならばそこの小僧は神格持ちなのか?」

 

 白夜叉の言葉を首を横に振って否定する黒ウサギ。神格というのは案外一目見れば分かるもののようだ。

 

 神格、それは生来の神を指すものだけではなく、その種の最高ランクへと体を変幻させる強力なギフトのことを指す。

 蛇に神格を与えれば蛇神に。

 人に神格を与えれば神童や現人神に。

 鬼に与えれば鬼神、悪魔は魔神、その他諸々と。

 神格はさらに他のギフトも強化してしまうというチート仕様なギフトだ。それ故に多くのコミュニティは神格の獲得を目指して上層への仲間入りを果たそうとしている。

 

 そして、十六夜はその神格持ちを神格も持たないで打倒した。だから、白夜叉は共学しているのだ。

 

 「白夜叉は十六夜が倒した蛇神のと知り合いだったのかな?」

 「くく、知り合いも何もあやつに神格を与えたにはこの私自身だ。もうかなり昔の話だがの」

 

 かなり昔……? と首を傾げ、大理はハッと気づく。

 

 「つまりロリババアってことなのか」

 「だから失礼じゃな!?」

 

 憤慨する白夜叉だが、掌にポンっと拳を打って納得している他の問題児等を見て落ち込んでしまった。

 そんな時、十六夜から声が上がった。

 

 「へえ、つまりお前はあの蛇神より強いってことか?」

 

 その声音は今までのおふざけの雰囲気を振り払うような音で、白夜叉もニヤリと口角を上げている。

 

 「ふふ、勿論だ。私は東側の“階層支配者(フロアマスター)”。この東側の四桁以下では並ぶ者のいない、最強の主催者(・・・・・・)なのだからな」

 

 その言葉に、問題児たちの心に火が点いた。

 十六夜は爛々と目を輝かせ、笑い。

 耀は手を強く握り僅かに微笑を浮かべ。

 飛鳥は十六夜同様目を輝かせて白夜叉をじっと見て。

 大理は目を瞑っているが、雰囲気が明らかにピリピリとさせている。

 

 そんな様子に白夜叉もまた、試すような視線を向けて楽しんでいた。

 

 一方、黒ウサギは、

 

 「……おかしいのデス、これは絶対におかしいのデスヨ」

 

 ウサ耳をしょげさせていた。

 

 

 

 




何か説明回っぽくなってしまった。
しかも相変わらず進行が亀以上に遅いという事実。

……まあ、いっか! 次回もよろです


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