もしも、飛鳥に許嫁がいたら?   作:ミミヤヤ

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湖への怒り

 「わっ」

 「きゃ!」

 

 二つの小さな悲鳴らしきものが上がった。

 手紙を開けて内容を読めばいつの間にか知らない場所への転移。しかもその場所が上空4000mの場所と来たものだ。悲鳴の一つや二つは上がるものだろう。

 

 飛鳥や大理の他にも上空4000mからのスカイダイビングに挑戦させられた者はヘッドフォンをした金髪の少年が一人と猫を連れた茶髪の女の子が一人。

 

 そして、四人は同様の感想をこぼす。

 

 「ど、何処だここ!?」

 

 視界に広がるは見たことも無いような景色。

 森の自然が広がっており、果てには断崖絶壁まで見える。その近くには美しくも荒々しさも含む滝と湖ようなものも。四人と一匹ともに見たことも感じたこともないような空気。

 

 そこは、完全無欠の異世界だった!

 

 ――どぼん!!

 

 だが、どうやら四人と一匹を呼び出したものは相当の切れ者、いや、ひん曲がった者のようだったようで。

 スカイダイビングの着地地点は見事、湖だった。着地地点だった湖には四つの箇所から水飛沫が上がる。

 

 四人は着地前に用意してあった不可視の緩衝剤のようなもので無傷で済んだようだが、猫の方はそうはいかなかったようで、その飼い主のだと思われる茶髪の少女によって慌てて湖から引っ張りあげられる。

 

 大理を除く他二人は湖から出ると罵詈雑言を吐いていたが。

 

 「し、信じられないわ! まさか空に放り出すなんて、礼儀というものを知らないのかしら!」

 「右に同じだクソッタレ。ニューゲームした途端にゲームオーバーなんざ冗談じゃねえよ。それなら石の中に呼びだれた方が幾分か親切設計だ」

 「……君は石の中でも動けるのかい?」

 「ああ、問題ない」

 「ワオ……。」

 

 規格外にも程があるね、と遠くを見るような目をする大理。

 とりあえず、四人は服を絞り少し水気を取る。猫は身体を震わせて水を飛ばすようだ。

 

 「……ここ、何処だろう?」

 

 服を絞っている最中、そう呟いたのは今まで一言も喋っていなかった少女だった。

 

 「さあ、な。世界の果てらしきものも見えたし、どこぞの大亀の背中なんじゃねえか?」

 「まあとりあえず俺が知っている世界ではなさそうだね」

 

 少女の呟きに答えたのは金髪の少年と大理だった。

 

 (大亀の背中……。そんな伝説や物語なんてあったかな? 服装もそうだ。一体どういう……)

 

 と少し首を傾げる大理であったが、すぐに今考えてもしょうがないと思考に決着をつけたのか服の絞りを再開する。

 

 服を絞り終わったのか、少々癖のある金髪を掻き上げ、

 

 「まず、間違いないだろうが一応確認しておくぞ。お前達にも妖しさがプンプンする手紙が?」

 「ええ、そうよ。だけど、まずはその“オマエ”って呼び方を訂正して。私は久遠飛鳥よ。そして、こっちが藍里大理」

 

 ははは、自分でしようかとおもったんだけど、と笑いながら軽く会釈をする。

 癖のない少し長めの黒髪を弄りながら、

 

 「そこの猫を抱きかかえてる君は?」

 「……春日部耀。よろしく」

 『にゃあああ!』

 

 猫を撫でながら茶髪の少女、耀は答える。あまりしゃべることは得意ではないのだろう。猫は可愛らしく鳴いている。まあ、実際その猫の声の内容はというと、

 

 『おどるぅぅぅぅえええええええ!!!! お嬢に色目使ってんじゃねえ!』

 

 という誠に残念な内容ではあったのだが。耀はそれを聞いてすぐに猫の頬をつねる。

 ぎにゃっ!? と短く頬をつねられたことによる痛みを悲鳴によって訴えるがそれでも耀はつねり続けた。それをみた大理は首を傾げるのだが最後の少年の紹介が始まるようなので注意をそちらへと向けることにした。

 

 「最後はそこの野蛮で凶暴そうな貴方よ?」

 「高圧的な紹介ありがとよ。見たまんま野蛮で凶暴な逆廻十六夜です。粗野で凶悪で快楽主義者と三拍子そろったダメ人間なので、用法と用量を守った上での適切で相応な態度でせっしてくれお嬢様」

 「そう。取扱説明書でも用意してくれたら考えておくわ、十六夜君」

 「マジかよ、ハハ、今度作っとくから覚悟しとけよ、お嬢様」

 

 正に売り言葉に買い言葉。反りが合うのか合わないのか、どちらなのだろうか。

 なにはともあれ。

 

 ヤハハ、と心から楽しそうに笑う逆廻十六夜。

 傲慢そうに、しかし微量の笑みを浮かべる久遠飛鳥。

 我関せずを通して無関心を貫く春日部耀。

 飛鳥の笑みを見て微笑むのと同時に何か気になる方向があったのかそちらを見る藍里大理。

 

 この四人を迎える運命はどのような形をしているのだろうか、それが楽しみでもあり、怖くもあるだろう。

 だがきっと、いや絶対この者達は自分の力で未来を切り開くことの出来る存在であることには間違いないのだと思える。

 

 

 




 今回は自己紹介回。

そして、まさかの二話連続のあとがきでの寒いダジャレ炸裂。
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