もしも、飛鳥に許嫁がいたら?   作:ミミヤヤ

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不憫な痴ウサギ

 十六夜は不機嫌そうに腕を組む。

 

 「で、呼びだされたにも関わらず誰も居ねえとは一体どういった了見なんだ?」

 「まあ、手紙に書いてあった“箱庭”っていう場所のことを説明してくれる人が居ても良いと思うんだけどね。」

 「本当にまったくだわ。自分がどういう風に動けばいいのかが分からないじゃない」

 「……今の状況に落ち過ぎなのもどうかと思うけど」

 

 (本当に、まったくでございます)

 

 四人と一匹を近くの草陰から隠れて見ていた黒ウサギは思う。

 実は、この黒ウサギ。かなり刺激的な格好をしている。ウサ耳にガーターベルト。さらに胸も谷間の部分をさらけ出すように作られた、まさに製作者の趣味(エロス)全開の一品。年頃の少年であるならば思わず屈んでしまうことだろう。何故、というのは愚問だ。

 

 さて、黒ウサギの痴女的服装は置いておくとして、黒ウサギは登場するタイミングを計りかねていた。

 もっとパニックに陥ってでももらえれば出やすいものだが、どうもこの四人は子供の頃に一度は言われるであろう“落ち着きを持って行動しよう”という約束を律儀に守っているようだ。

 

 (……悩んでいても仕方のない事、これ以上不満を噴出される前に勇気を出すとしましょう!)

 

 と、若干四人の様子に怖気づいていた黒ウサギだったのだが、どうやらようやく決心を決めたようで。

 いざ、出陣! と飛び出そうと思った矢先に――

 

 「――しょうがねえか。おい、そこでコソコソしてる奴にでもお話してもらうか?」

 

 十六夜のいうコソコソの元凶である黒ウサギは心臓をワシ掴まれたように飛び跳ね、冷や汗を流す。引き攣った笑みを受かべて。

 そして、四人の視線がある一点に注がれる。まあ、勿論黒ウサギがビクビクとおびえている地点なのだが。

 

 「あら、貴女も気づいていたのね」

 「勿論。かくれんぼ缶蹴り共に負けなしで白星しか取ったことがねえな。春日部も気づいていたんだろう?」

 「風上に立たれたら嫌でも。……でもそれを言ったらそこの人も」

 

 そう言って視線を向けるのは大理だった。

 

 「ん? 俺は、まあ勘、かなぁ。なんとなくだよ、なんとなく」

 

 事も無げにそう告げる。

 仮にも黒ウサギはこの箱庭の世界で幾年も育った、それも才能に溢れる強者でもある。それを勘で見つけるというのはどれほど鋭い勘なのだろう。

 

 そんな大理達の返答に軽薄な笑みを浮かべる十六夜だが、その目は笑っていない。

 三人の冷ややかな視線と一人の憐れんだ視線を受けてやや涙目状態な黒ウサギだが、当然のことそんな存在に手を差し伸べるような正義感あふれる者はこの場にいない。

 

 「こ、怖いでございますよ御三方様。そんな凶暴な狼のような顏で見られては黒ウサギは死んじゃいますよ? ええ、ええ、古くから孤独と狼はウサギの天敵でございます。そんあ脆弱で臆病な黒ウサギの心臓とハートに免じましてこの場は一つお話を聞いて戴くというのは――」

 「断る」

 「却下」

 「お断りします」

 「ウサギのそれは事実じゃないよ?」

 「あっは、取りつくシマもないですね♪」

 

 あと最後の方、それ言っちゃいけない奴デス……、とガックリ肩を落としながら手をバンザイ状態にする黒ウサギ。

 が、その目は冷静に四人のことを見定めていて、

 

 (肝っ玉は及第点、ですが、扱いにくいのが難点。……あれ、すごい問題児では?)

 

 冷静になった結果は冷や汗の分泌量を増やす結果だったようだ。

 

 「それにしても、コイツはどうする?」

 「餌にして魚でも釣るかい?」

 

 爽やかな笑顔でそう告げるのは大理で、その様子に『ヒイィ!?』と悲鳴を上げる黒ウサギ。

 四人はどうやら黒ウサギをどうするかを話し合うようで、とりあえず近くの椅子代わりになりそうな手頃な岩に腰を落ち着かせる。

 

 「釣りは却下よ。異なる世界に来て早々血を見るなんて夢がないわ」

 「ヤハハ、俺も同意だ」

 「……そう思う」

 「勿論、冗談だよ」

 

 あれ? 何気に優しい?  と安心する様子を見せるコスプレウサギだが、

 

 「そうだな、トラップでも作って獣を捕まえるか?」

 

 そうは問屋が卸さない!

 先ほどの安心が嘘だったように恐怖に再び浸される黒ウサギ。『さ、サバイバルをする前提で話を進めないでください~』と懇願するのだがそこは達人スルー。

 

 

 「そうね、いっそのことここに縛って置き去りというのは?」

 『それだ!」

 「お願いでございますからやめてください!?」

 

 初っ端から思考がバイオレンスでございますよ!? と叫ぶのだがそこで耀の思わぬ一言でその場が収まった。

 

 「……これ、本物?」

 

 耀が握るは黒ウサギのウサ耳。まさかのコスプレではなく本物説の浮上。さすがファンタジーといったところだろうか。

 

 ウサ耳に興味を示すバイオレンス三人組。

 耀が少し強めに引っ張ったことによって『フギャアッ!』と短い悲鳴を出す黒ウサギ。

 

 「マジか?」

 「……マジ」

 「本気と書いての?」

 「……本気と書いての」

 「私も触って……?」

 「もち、おーけ-」

 

 目を光らせるバイオな三人組。そして黒ウサギを売り出す耀。

 

 ここに断言しよう。

 

 ――このウサギは今後間違いなく胃薬を求める日が来ると……!!!――

 

 

 

 

 




黒ウサギのブラックな登場回。

進行が遅いのはご了承ください。
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