もしも、飛鳥に許嫁がいたら?   作:ミミヤヤ

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真実への思考

 件のバイオ三人衆+面白ければ乗ってしまうウサギ商売人の計四人は一時間程息を荒くしていた。それはもう『ハア、ハア』と変態の鼻息ばりには。原因はというと、まあ黒ウサギのウサ耳なのだが。それを、それはもう“モフモフ”という可愛らしい効果音など出よう筈がない雑な触り方をしていた。

 

 時には引っ張り。

 時間を空けてはくすぐったり。

 さらに引っ張り。

 たまに着脱可能な仕様かを確かめたりもした。

 

 結局のところいっぱい引っ張りたまにくすぐった、というのが結論というか正解?だろう。

 

 そんな不憫なウサギは現在、ガチな涙目であった。

 

 「ひ、酷いのでございますよ~」

 

 蹲り、普段自慢にしているウサ耳を押さえて。

 

 「悪かったって黒ウサギ」

 「ごめんなさい、黒ウサギ」

 「……謝る、黒ウサギ」

 「ごめんごめん、黒くないのに黒ウサギ」

 「ちょっと大理さぁああん!? あなた絶対に今いらない事言ったのでございますよ!?」

 

 ムッキャーー!! とプリプリ怒っている黒ウサギだが、そんなのは知らないとばかりに岩に座り、

 

 『で、ここって何処?』

 「よくぞ聞いてくれました、ここは“箱庭のせか――ってなに無かったことにしようとしてるんですか!」

 

 え~、もういいじゃ~ん、というようなメンドクサそうな顔をしている四人に顏をトマトのように真っ赤にして怒る黒ウサギだが、やはりというか問題児の諸君は神業スルーを続けるようで。

 

 「あ、あり得ないのですよ……。なんですかこの傍若無人っぷりは。これ絶対におかしいでございますよ、頭のネジ飛んでるんじゃないんです――」

 『――あ゛ぁ?』

 「な訳がないデス! 恐らくネジが多すぎてゴチャゴチャになっているのでございますね!」

 

 YES! これで命は助かりました! と安堵している黒ウサギではあるのだが、四人からすればそれも失礼にあたる言葉なので結局黒ウサギのウサ耳は引っ張られることになる。

 

 南無阿弥陀仏、とったところだろう。これも問題児を呼び出した者の運命(さだめ)であり宿命(さだめ)でもあるのだろう。

 あれから約十分後、解放された黒ウサギは軽く目が死んでいたという。

 

 

 

 

 

 

 ようやく場が収まったようで、四人は岩に座りながら各々が楽な姿勢を取っており、黒ウサギは己の誉れであるウサ耳に絆創膏のようなものを貼っていた。

 

 「それではいいですか、御四人様。定例文で言いますよ? 定型文で伝えますよ? 言います、さあ、言っちゃいますよ?」

 「早く言えよ」

 

 前フリがちょっと長かっただけなのでございますよ~、と十六夜の言葉に軽くいじける黒ウサギであるがすぐさま気を取り直したようで、少し前までの死んだ目が嘘のような天真爛漫で快晴のような笑顔が表れる。

 

 「改めまして。ようこそ、“箱庭の世界”へ! 我々は御四人様に……。あれ、四人?」

 

 笑顔が消え困惑の顔色を見せる彼女に問題児等は訝しんだ視線を向ける。

 

 「あの~、黒ウサギ達が出した手紙は三通だけなのですが……」

 「あ、それなら俺は違うね。俺は飛鳥宛の手紙でここに来たから」

 

 え? と飛鳥と大理を除く他三名は目を丸くする。そして、事の重大さに気づいた黒ウサギが目に見えて慌てだした。

 

 箱庭、それは修羅神仏、悪魔、精霊、星――星霊――から与えられた恩恵、“ギフト”を用いた者達が『ギフトゲーム』という互いを競い合う場を持って勝負する世界。傍から聞けば危険など皆無に思える『ギフトゲーム』だがその実、中身は危険で溢れている。さらにそのゲームには何らかを賭けなければいけない。つまり、チップが必要なのだ。そのチップは多岐に渡り、人間・金品・土地・名誉・利権、さらには己が持つ“ギフト”まで賭けることができる。つまり、一度の敗北で人生が一気に地に落ちる可能性もあるのだ。そして、『ギフトゲーム』というのは“箱庭”の代名詞とも言えるし一種の法とも言える。つまり、ゲームに参加をすることは生きている限り一度はあると言っていい。

 

 この世界は、飛鳥、大理がいた世界などとは比べ物にならないほどに危険が多い。それは勿論十六夜や耀の世界も同じことだ。そして、大理が飛鳥宛の手紙に着いてきてしまった。

 

 ――つまり、十六夜、飛鳥、耀には修羅神仏等々から与えられたギフトがあるだろう。しかし、大理にはそれがない。

 

 南極に丸裸で来たようなもの、とまではいかなくともかなりのピンチであるだろう。

 

 そして、黒ウサギははそれを包み隠さずに話した。それは、一方的に呼び出した末に招いた招待者側の不始末、という責任からだろう。 

 だが、それに対する大理の反応は淡白なものだった。

 

 「なるほど、ここはそういう場所なんだ」

 

 たったそれだけ。黒ウサギを責めるような言葉もない。パニックに陥ったような様子も見られないし、それを押し隠しているような素振りも全くない。

 

 それも当然だ。これくらいのこと、大理は予想していた(・・・・・・)のだから。

 

 「だってそうでしょ? まず飛鳥が呼ばれた、この時点で飛鳥の力が関わっているのは目に見えて分かった。さらに十六夜と耀のあり得ない気配察知能力。挙句の果てには黒ウサギという存在」

 

 その言葉に周囲は驚愕していた。いや、呆然としていた、と言った方が正しいかもしれない。

 

 「ウサギの耳を生やした(・・・・)少女。この時点で大抵は想像できてた。黒ウサギ、君の耳を少し乱暴に扱ったのは本物なのか念入りに確認するためだったからね」

 「そ、そうなのですか?」

 

 勿論嘘である。嘘も嘘、大嘘もいいところだ。大理はあの時考えていたことと言えば、

 

 『これ、外せたら飛鳥に付けて貰おう』

 

 という煩悩丸出しの思考であるのだから。

 

 飛鳥は大理の嘘を見破っているからか笑いを必死に堪えている。目の端には涙まで出てしまっているほどだ。まあ、大理が考えていたことを知れば即座にその顏は羞恥に染まるのだろうが。

 

 嘘も程々にしといた方がいいと知っている大理は嘘だとバレていない今の時点で嘘はもうやめることにして、得意げに続ける。これによって嘘だとバレにくくするというが狙いだろう。まあ、バレたらバレたで何なのだという話しなのだが。

 

 「まあ、それはいいとして。黒ウサギ、君はやろうと思えばこの場ですぐに俺を殺すくらいならできるだろう?」

 

 その言葉に周囲の空気が一気に引き締まっていた。十六夜はにやけていた顏が真剣味をおびた表情に変わり、耀は相も変わらず無表情だが抱えている三毛猫を下に降ろして動きやすい格好に、飛鳥は大理の前に出て手を広げてすらいる。

 

 「落ち着いて、飛鳥。これは例え話みたいなものだから」

 「……嘘は嫌よ?」

 「俺も嫌だから問題ない」

 

 ……分かったわ、と警戒心は解かずに一歩下がり大理の隣りへと移動する飛鳥。やはり心配なのか、これだけはゆずらないと目が語っていた。

 

 「続きを始めるよ。そんな俺を殺せるような存在が目の前にいるんだ、それを見てなんとも思わないわけが無い。君以上の者がいると仮定したんだ。そして、その仮定したことのなによりの理由は、君がなにか焦っているからだ」

 

 黒ウサギのウサ耳がビクンっ!と反応する。隠そうとしているのだろうが、衝撃の事実の連続のために動揺しているのかそれもすぐにボロが出てしまっていた。

 

 「黒ウサギは俺達がどんなにふざけても、我儘を言ってもここに置いていくという選択をしなかった。投げやりになることもなかった。君の性格ならそれもあるのかと思ったが、あまりにも都合が良すぎると思うんだ。さっきまでは予想八割確信二割くらいの気持ちだったんだけど、さっきの反応を見るに確信十割にして良いみたいだね」

 

 しまった……、とでも言いたいかのように顏を悲痛に歪ませる黒ウサギ。

 周囲は、十六夜も耀も飛鳥も黙って大理と黒ウサギのやりとりを見ていた。今はもう呆然とした様子ではなく、十六夜は興味気な顏、耀はいつも通りの無表情、飛鳥は嬉しそうに笑みを受かべていた。

 

 「黒ウサギを焦らせるだけの存在が、この箱庭にはいる。これは確定だね。そして、飛鳥のように力、“ギフト”だったかな? それを持った者達を呼び出し、離れて行かないように自分に興味を集め続けた。最後に、これは本当に予想でしかないが黒ウサギは、いや、我々って言っていたから君一人じゃないのか。それはともかく、黒ウサギ達は助けを求めている。黒ウサギでは手に負えないほどの強大な敵から助けてほしいとか、……いや違うな。もう敵にやられた後なのか。世界を超える、それがどれほど大変なものかくらいなら簡単に予想できる。……まあ、そう俺は考えているよ」

 

 今度こそ、黒ウサギはは隠すことすら忘れて明らかな反応を示した。その表情を唇を噛みしめていて、今にも泣いてしまうのを我慢しているように見える。その反応に大理は「これも当たり、か」と溜息を吐く。それは残念そうな、まるで当たってほしくない予想が当たった時のような表情だった。

 

 「さてと、黒ウサギ。君達の事情を教えてくれないか?」

 




今回は大理のすごさをズゴーンと見せた回。

はっきり言って少し無理やりだったかなと思ってる。でも、後悔はしていない……です。
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