もしも、飛鳥に許嫁がいたら?   作:ミミヤヤ

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問題児の奇行、そして爆発

 「い、許嫁でございますか!?」

 

 黒ウサギがそれはもう吃驚仰天といった様子を見せる。

 

 大理の突然の暴露によって先ほどまで空気を包んでいたシリアスな雰囲気はどこかへと旅に出て行ってしまった。それも、『探さないでください』という残し手紙付き。しばらくシリアスは来ないと思っていいだろう。

 

 「そ、許嫁。飛鳥は久遠家っていう大財閥の令嬢で、俺はもう衰退して無くなっちゃったけど藍里家っていうかなり大きかった家の当主の息子」

 「無くなったのか?」

 「まあね。ちょっとした博打に出て大失敗。そこを久遠家に拾ってもらったんだ」

 「へえ……。まあいいか」

 

 大理の言った言葉は所々ぼかしてあった為、そこを聞こうかとも思った十六夜だが。大理自身が言わなかったことなのだからわざわざ聞くのも野暮というものだろうと思い直し適当に返事を入れる。

 

 「……許嫁。本当にあるんだ」

 「ええ。まあ、私達の場合周りと少し違ったから一つに纏めてしまおうってことでそうなったのだけれどね」

 「……なんかごめん」

 

 謝ることはないわ、今の関係気に入ってるもの、と答える飛鳥。その表情は本当にそう考えている様子だった。

 

 「少し違う? お嬢様は分かるが大理は何が違ったんだ?」

 「大理は何もかも飲み込みが早過ぎなのよ。それが異常に見えたらしいわよ? 最初は天才だ神童だの騒いでいた癖にね。本当、箱庭に呼んでもらって感謝するわ」

 

 あ、あはは、どういたしまして……? となんと答えれば困る感謝に苦笑いで答える黒ウサギ。

 

 「……飲み込みが早くて異常? 具体的には」

 「そうね、やっぱりあれかしら?」

 「ああ、あれね。でも、簡単だったと思うんだけどねぇ」

 「そんな訳ないでしょう。習ってからたった一日で武術の師範を簡単に制したんだもの」

 

 え……? と口を開けて驚く黒ウサギ。他も黒ウサギほどオーバーなリアクションではないが十六夜も耀も驚いてることには違いなかった。

 

 「それは武術というくくりのみで制したということでございますか?」

 

 何か他の手段も入れて勝利したのではなくて? と暗に疑いのような問いをする黒ウサギだが、悪気は無かったようで発した言葉の意味を改めて考えて謝ろうとするがその前に聞こえた言葉で謝る必要も無くなる。

 

 「ええ、そうよ。他にも勉学では一教えたら十を知るみたいなこと言って驚いていた教師も居たわね。まあ、そのせいで同年代からの妬み、恨み辛みはあったけれどね。まったく、あれはむかついたわ! 自分ができないからといって大理に当たって!」

 

 自分の事のように楽し気に語っていた飛鳥だが、途中から嫌なことでも思いだしたのか不機嫌になっていった。それは大理が宥めることによって落ち着いたのだが、周囲は未だ驚いている。いや、十六夜は大理を面白そうに眺めているようだ。

 

 「……大理は本当にギフト持ってないの?」

 「そ、そうでございます! 天は二物を与えずとよくいいますが二物どころではないでございますか!」

 「いやあ、そんな貰ってないと思うよ? 単に記憶力が良いだけだから」

 

 いやそれはない、と十六夜、耀、黒ウサギどころか飛鳥にまで否定されてしまっては返す言葉もないようで苦笑いをしている大理。

 

 「まあいいさ。ギフト持っていたなら儲け物、持っていなくてもその頭脳でコミュニティを少しでも支えれば良い。さっさと行こうぜ、箱庭とやらに」

 

 十六夜の言葉で黒ウサギはハッと気を取り直し案内を始めるのだった。

 

 (大理さんのギフトの有無。これはギフト鑑定を少し早めた方がいいのでしょうか?)

 

 そんなことを考えている黒ウサギだが十六夜が案内の途中で抜け出すのに気づいて憤慨するという未来が自身に訪れるとは思いもしていなのであろう。逆にできたら怖いのだが。

 

 

 

 箱庭二一〇五三八〇(2105380)外門。ベリベッド通りの噴水広場前。

 箱庭の内と外とを繋ぐ門前の階段。その前にはダボダボの身の丈に合っていないロープをその身に着た十代前半くらいであろう地球であればまだ小学生高学年が中学生になり立てほどの外見の少年が居た。癖のある緑の髪は外界であれば珍しいのであろうが、ここは箱庭、

異世界だ。髪色なぞ緑も蒼も紅も紫も金も多種多様の色の人物が存在する。

 

 そんな場所にそれはもう際どい格好をした少女が向かってきた。

 

 「ジン坊ちゃーン! 異世界からお呼びした同士をお連れしてきました!」

 

 ジン坊ちゃん、呼ばれたダボダボローブの緑色少年はそちらに顏を向ける。ジンと呼ばれた少年の顏に浮かぶの安堵と緊張。まあ、実際緊張する理由などないのだが。まあその理由はといえば、

 

 『え、ノーネームだってことを教えた?』

 『はいぃ、思いっきりバレましたデスぅ』

 

 という会話で想像が付くだろうだろう。そんなわけでスタートダッシュから思いっきり崩されたジンだがそこは幼いとはいえ一コミュニティのリーダーであることを自覚しているのかすぐに体裁を整える。

 

 「これからよろしくお願いします。リーダーのジンです。始めに御三方を騙そうとしたことを謝罪します。申し訳ありませんでした」

 

 申し訳ありませんでした、と黒ウサギもジンに倣って頭を下げようと思ったのだがジンのある言葉に引っかかったのか大理達が立っている方向にギギギッという音が聞こえてきそうな首の動きで振り返る。

 そこには案の定、ジンの言葉の通り三人しか居なかった。大理、耀、飛鳥。

 そう、十六夜が居なかった!

 

 「あの~、十六夜サンは一体?」

 「……神のみぞ知る?」

 「真剣に答えてください!」

 

 嫌な予感がする黒ウサギ。それはもう凄く嫌な予感が。

 

 「十六夜なら『ちょっくら世界の果てに行って来るぜ!』って元気一杯で飛び出して行ったよ。あっちらへん方面に」

 

 あっちらへん方面といって、その言葉の通りにあっちらへんとある方向に指をさす。

 その言葉と方面にそれはもう冷や汗が出る黒ウサギ。だがそれよりも先に聞くべきことを聞くことにしたようだ。

 

 「何で止めてくれないんですか!」

 「『止めてくれるなよ』と言ったんだもの」

 「では、どうしてせめて黒ウサギに教えてくれなかったんでございますか!?」

 「『痴ウサギには内緒だぜ』と言われたから」

 「嘘です、絶対に嘘です! ダウトです! メンドクサかっただけでしょうそれ!? っていうか誰が痴ウサギですかぶん殴りますよ!?」

 

 「「「ピンポーン」」」

 

 「誰が正解だと効果音で知らせろと言いましたかァああああああ!!!」

 

 叫ぶ黒ウサギ。もう我慢の限界だったのだろう。色々疲れが溜まってしまいついに爆発した。そしてついに黒ウサギはバイオレンス化したのか進化でもしたのか何故か髪とウサ耳の色が緋色へと変わる。Bキャンセルはできない模様。

 

 「この問題児様方ぁあああああああああ!!!!」

 

 黒ウサギの苦労は絶えないことであろう。

 そうして黒ウサギは十六夜を追っていったのだった。

 向かうは強力な幻獣が多くいる世界の果て。ミッションは“問題児”逆廻十六夜の捕獲。

 

 黒ウサギの未来が明るいものであることを願おう。

 

 

 

 




前回とは違いシリアス無しの回。
大理の加入により今作品の黒ウサギはよく叫ぶかも?
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