黒ウサギが十六夜のことを追って行って数分。ジンの案内に着いて行った大理達は“六本傷”のコミュニティが運営している店に来ていた。
「あ、ここ空いてるわよ!」
飛鳥が大理達全員が座れる四人席の場所を見つける。皆はそこの席に着き店員を呼んだ。
「いらっしゃいませ! ご注文は何ですか?」
ネコミミの可愛らしい女の子が注文を取りに来る。
「紅茶を二つと緑茶を一つ、それとコーヒーを一つ。軽食は……」
「いる」
「え、でもまだこの時間――」
「――い・る」
「え、ええ。分かったわ」
食い気味の耀の様子に若干恐れを抱く飛鳥だが、店員に軽食を頼むことにより耀の視線から逃れることに成功する。
『ま、待ちぃ! ネコマンマ一つ!』
「は~い、ネコマンマ一つですね」
ん? と大理と飛鳥、ジンが首を傾げる。耀はネコミミの店員に驚いたようで珍しくその無表情を崩していた。
「……三毛猫の言葉が分かるの?」
「もちろん! 私は猫族ですからね~。ご年齢の割に随分と綺麗な毛並みをお持ちになっている旦那さんには特別に少しサービスしちゃいますよ~」
『嬢ちゃん、随分可愛い耳と尻尾やな。今度甘噛みしに行くから一緒に炬燵で丸くならん?』
「やだぁ、御上手。でも、ナンパはダメですよ♪」
そう言うと、注文を書いた紙と一緒に店内へと戻って行くネコミミ店員。耀とネコミミ店員、三毛猫の会話に他三人は唖然としていた。
「か、春日部さん。あなたもしかして猫の言葉が分かるの?」
「……うん。生きているなら誰とでも話せる。……ペンギンと話せたし」
「ペンギン!?」
飛鳥が急に身を乗り出す。それにビクッ、と耀と三毛猫、ジンが反応する。それに気づいた飛鳥は恥ずかしそうに乗り出した身体を戻した。
「ご、ごめんなさい。ペンギンと聞いたから。ペンギンかぁ、大理、ここにもペンギンはいるかしら?」
「いるんじゃないかな? 逆に居なかったら吃驚だけどね。ジン君、ペンギンっているのかい?」
「はい、北側の方は寒い地域だと聞いていますので恐らくペンギンもそちらにいるかと」
「本当! 北側、コミュニティが落ち着いたのなら一度行ってみたいわね。大理、その時に備えて暖かい格好をそろえておくわよ!」
「ははは、まずはそれを買うお金を稼がないといけないかな?」
「ええ、頑張るわ!」
まさか、ペンギンの話題でここまで盛り上がるとは思っていなかったらしいジンと耀は少し引き気味だが、大理はそれに慣れたように対応していた。実際は大理もとても楽しみにしていたりするのだが。
そういえば、という耀の呟きで視線が耀に集まる。
「久遠さんは」
「飛鳥でいいわよ、春日部さん」
「う、うん。飛鳥はどんなギフトをもってるの?」
「私のギフト? まあ、酷いものよ。だって人を――」
「おやおや、聞いたことのある声がすると思えば東の底辺であり汚点でもある“ノーネーム”のリーダー、ジン=ラッセル君ではないですか」
飛鳥の言葉を塞いだのは取り繕ったような上品ぶった声をした……。
上品ぶった声をした……、
いや、何がピチピチかと言えばその身に着ているタキシードなのだが、不覚にもジン以外の三人はその姿を見て吹き出してしまった。それはそうだ、なんせピチピチなのだから。それも、現実では滅多にお目にかかれないほどのピチピチ具合のピチピチ度。
吹き出すのも無理はない。
「ぴ、ピチピチ……! きもい、キモさ限界突破ぁ……!?」
最初に失礼な言葉とともに笑い声を出したのは大理だった。実際問題、ギフトを持っていないとしてもこの人物が問題児であることには変わりないのだ。初対面でも遠慮なんてしないであろう。
「ッ! や、やめてもらえないかしら……! タキシードが可哀そ、あ、あははは……!!!」
次に飛鳥。大理に続いて笑いを我慢できなくなったようだ。普段は品のある振る舞いを心がけている飛鳥だが、だからこそピチピチ人物の上品ぶった態度と姿はツボに入ったのだろう。腹を抱えて笑う、を体現している。
「プフッ、汚点はあなた……! 身体を張った芸は身を滅ぼす……!?」
最後まで耐えていた耀もどうやら我慢の限界らしい。おさえながらも失礼な言葉を吐くのは忘れない。“身を滅ぼす”という言葉もピチピチ人物側なのか自分達のことなのかを分かっているのだろう。答えはどちらも、だが。
それにしても、まさに問題児の鏡だろう。その証拠に登場十秒ほどでピチピチ人物――ガルド――の額には青筋が立っている。
「……黒ウサギ。僕たちが騙そうとしたのが何故バレたのか、何でか分かった気がするよ……」
ジンは一人、天を仰いでいた。
このピチピチの、ピチピチによる、ピチピチのためではない笑いが収まるには五分ほどの時間を要したという。
今回はガルド登場からのピチピチを指摘回。
これによってきっとピチピチ耐性ができる大理達。