LuLuの物語-if-少女に与えられた偽りの希望 作:ウンニーニョ
第75層
攻略組は今、フロアボスであるザ・スカルリーパーと戦っている。
このボス部屋はプレイヤーが入ると扉が閉まり、ボスを倒すか、プレイヤーが全滅するまで開く事は無い。
スカルリーパーは左手の大鎌でプレイヤーを串刺しにし、嬉々とした表情を浮かべたように見えた。
スカルリーパーが次に狙ったのは黒髪から金髪のグラデーションヘア、左手に義手の魔爪を付けた目付きの悪いプレイヤー、ルル。
ルルの体勢は仲間を助ける為にソードスキルを使った直後の硬直状態である。
HPは既にレッドゾーン。
向かって来るスカルリーパーの大鎌を見てルルは「終わった」と思った。
HPが無くなることが現実の死と直結するこのゲームの世界で、この攻撃を受けるという事は即ちそういう事だ。
ルルの頭にはこれまでの様々な思い出が浮かぶ。
この世界でであった仲間。仲間を、友を亡くした辛い思い出。桃色の髪の彼女との出会い。それから過ごした数々の思い出。第1層、守れなかったプレイヤー。
そして、その後意識が途切れた自分がどうなったのか……
スカルリーパーの大鎌をガードする事なくもろに受けたルルのHPは1ドット残すところで止まり、尽きる事はなかった。
そんな事は、あるわけが無いのに_____
☆★☆★
スカルリーパーのHPを少しずつ、しかし確実に削っていった攻略組のメンバーはついにHPを削りきりスカルリーパーをポリゴンへと変えた。
今回死亡したプレイヤーは32人中14人。
ボスを倒し次の階層へ上がれるにもかかわらず皆んな意気消沈している。
これ以上の戦いが後25回も続くのだ。次死ぬのは自分かもしれ無いと考えているのかもしれない。
その中でルルは、自分の思い出した事実にこれから自分がどうすべきか考えていた。
そこでふと黒髪の二刀流剣士、キリトの視線に気づく。
キリトが睨んでいるのはこのレイドのリーダー、ヒースクリフ。
それを見てルルも気づいた。ヒースクリフのHPが今回も半分を下回ってい無い事に。
それは明らかにおかしいと思えた。
今回のボスはノーガードならこのボス攻略に参加する程の実力者のHPを一撃で削りきるほどの攻撃力を持っていた。
それでもHP半分以上残っている。
ヒースクリフがHPを半分以上減らしそうになったのはキリトとデュエルした時……
ルルはその時に起きた不可解な現象を思い出し、ある考えに結びつける。
どうやらキリトも同じ考えのようでヒースクリフに向けて走り出していた。
それを追ってルルも走り出す。
キリトが繰り出した斬撃は防がれるもその背後から不意を突いて繰り出されたルルの斬撃がヒースクリフをとらえたようにみえた。
「キリト君、ルル君⁉︎ なにを?」
彼らの意味不明な行動にアスナが叫び、それを聞いた全員が注目する。
ルルの刀はヒースクリフには届かなかった。
その代わりにヒースクリフの前にある言葉が浮かぶ。
Immortal Object
「システム的不死、ってどういうことですか? 団長」
アスナがヒースクリフに問いかける。
しかし、答えたのはキリトだった。
「この男のHPゲージは、どうあってもイエローに落ちないようにシステムに保護されているのさ。この世界に来てからずっと気になっていることがあった。あいつは今、どこで俺達を観察し、ゲームを調整してるんだろうってな!でも俺は、単純な心理を忘れていたよ。どんな子供でも知っていることさ。人のやっているゲームを側らから眺めていることほどつまらないものはない。そうだろ?
茅場晶彦‼︎」
キリトの言葉を聞いた周りは騒然とする。
「なぜ気づいたのか、参考までに教えてもらえるかな?」
ヒースクリフの質問にキリトではなくルルが答える。
「あんたはその設定をレッドゾーンにまでは行かないにするべきだった。スカルリーパーの攻撃力はノーガードなら俺達を一撃で殺す事ができる威力だった。皆んながレッドまで落として何とか生き残ってるのに、イエローすら落ちないなんてどれだけの高レベルなんだって疑問が出てきた。そのとき思ったのさ。あのとき、キリトとデュエルした時、あんたはキリトの最後の一撃をありえない動きで防いだ。速すぎたんだ。あれも、受けていればイエローに入るのを、いや、Immortal Object表示がでてくるのをどんなことしても防がなければいけなかった。そうおもった。違うか?」
「キリト君もかな?」
ヒースクリフの言葉にキリトがうなずく。
「やはりそうか。あれは私にとっても痛恨事だった。キリト君の動きに圧倒されて、ついシステムのオーバーアシストを使ってしまった」
その言葉にざわついていた周りは絶句する。
周りを見回すとヒースクリフは話し出す。
「たしかに私は茅場晶彦だ。ついでに言えばこの城の最上階で君達を待つはずだったこのゲームの最終ボスでもある」
全員に衝撃が走る。
そうだろう。最強の味方が最後に立ちはだかるというのだから。
「なかなかいいシナリオだろう? 最終的に私の前に立つのは君達のどちらかだと予想はしていた。二刀流スキルはすべてのプレイヤーの中で最大の反応速度を持つものに与えられ、そのプレイヤーが勇者の役割を担うはずだった。……しかし、最大の反応速度を持ったプレイヤーは片腕がなく、それ以前に……いや、これはよそう。
そして私は選定をし直した。そして選ばれたのがルル君を除いたプレイヤーで最大の反応速度を持つキリト君に与えられたわけだ。軽微な差だったしね。
そしてキリト君は私の予想を超える力を見せた。君には勇者の素質があると私は確信している。今回の出来事も……
こうゆう予想外な出来事こそネットワークRPGの醍醐味だと思わないかい?」
ヒースクリフの言葉に切れた血盟騎士団のプレイヤーがヒースクリフに切りかかる。
「俺達の忠誠、希望を、よくも‼︎」
そう叫び切りかかるプレイヤーをあざ笑うかのようにヒースクリフは左手を振り、GM用のメニューを開くとそのプレイヤーをマヒ状態にする。
麻痺になったプレイヤーはヒースクリフに攻撃を与えることもできずに地に伏せる。
ヒースクリフはコマンドを操作し、次々に麻痺にしていく。
立っているのはヒースクリフの前に並び立つ二人、キリトとルル。
「どうするつもりだ? このまま全員殺して隠蔽するつもりか?」
キリトが問いかける。
「まさか、そんな理不尽なマネはしないさ。こうなってはいたしかたない。私は一足先に最上階にある紅玉宮にて君達を待つことにしよう。ここまで育ててきた血盟騎士団、そして、攻略組プレイヤーを途中で放り出すのは不本意だが、なに、君達の力ならたどりつけるさ。だが、その前に、キリト君、ルル君、君達には私の正体を見破った褒美を与えなくてわな。
……チャンスをあげよう。
今、この場で私と戦うためのチャンスだ。むろん、不死属性は解除しよう。私に勝てばゲームはクリアされ、全プレイヤーがこの世界からログアウトできる……どうかな?」
「駄目よ2人とも、今は、今は引いて!」
アスナは2人を止める。
死んでほしくないから、この戦いは分が悪すぎるから。
「そーだよ。みんなで生き残る道を考えよう? リズの元へ帰るんでしょ、ルル」
水色の髪の少女、セレスティアもルルを止める。
(この世界が終わる……)
ルルは考えていた。
(ここでクリアすればもう誰も死なずに向こうへ戻れる。
ここで、今まで沈黙を続けていたルルが動いた。
ヒースクリフと向かい合い、キリトの少し後ろにいたルルは手に持った刀を振りぬいた。
ルルのカーソルがグリーンからオレンジに変わる。
キリトの右腕が宙を舞い、床へと落ちた。
回復し、満タンだったキリトのHPは4割ほども削られる。
全員が信じられないとルルを見る。
ヒースクリフは笑みを浮かべ話し出そうとするのを遮ってルルは話し出す。
「なあクソ虫、これでキリトは戦えないだろう? 褒美は俺だけが貰う。ここで、俺と1対1で戦え」
その言葉で全員が理解する。キリトを庇ったのだと。
「おい、ルル! 俺も戦う。ヒースクリフ!」
キリトが叫ぶがヒースクリフはため息を吐くとメニューを操作し、キリトに麻痺を付与する。
「いいだろう。これは私と君との一騎打ち。しかし以外だ。先ほどキリト君の腕を切り飛ばしたのは君もこのゲームをクリアされては困るからだと思ったのだが……思い出したんだろう?」
「ああ」
「では何故?」
「愛する人がいるからだ! 確かに俺はこのゲームの中でしか生きられない。できるなら、ずっとこのままこの世界が続けばいいとさえ思う。だけど、現実で生きているリズや、皆んなはこの世界で姿は変わらないが、点滴だけで人が生きられる訳がない。皆んな刻一刻と死へ近ずいているだろう。だから、俺はこの世界を終わらせて皆んなを現実へ返す‼︎」
「なるほど、この世界で生きたがゆえ、か」
「どういう事だ?」
ヒースクリフとルルの話にキリトが疑問を口にした。
皆同じ気持ちだろう。ルルがこの世界でしか生きられないとはどういう事なのか?
「キリト、俺は既に死んでいるんだ」
ルルの口から語られる衝撃の事実に皆んな返す言葉が出ない。
ルルは続ける。
「皆んなは覚えてるか? 皆んな一斉に気を失った日の事、病院へ移されたと予想している日だ。俺はあの時フィールドに居たんだ。一緒にいたいた奴は気を失った後モンスターにやられて死んじまった。俺もその後に気を失った。目覚めた時無事だったのはポップが枯渇したからだと思ってた。だけどさっき、スカルリーパーに
「そうだ、君は既に死んでいる。何故君だけそうなったかは分からない。切り離されている時に死んだからなのか、向こうで死んだ状況か、はたまた思いの力なんでのも面白い! だから君は僕の方に付くと思ったんだが、理由を聞けばそれもまた納得だ」
「それじゃあ、始めようか!」
ルルは叫ぶとヒースクリフへ向かって走りだす。
鉄壁の盾と存在しないユニークスキル、力は拮抗し、戦いは長引くかと思えた。
しかし、勝負は一瞬だった。
ルルの体が光に包まれると鉄壁の盾の防御力を無視してまるで豆腐でも貫くように盾を、そしてヒースクリフの心臓を突き破りHPを削りとる。
それを見たヒースクリフは笑みを浮かべ、まるで自分の追い求めたものを見つけたような満足そうな顔で消えていった。
同時に浮遊城全体にアナウンスが流れる。
11月17日14時55分 ゲームはプレイヤーガ、ガガビィによってクリアされました。
プレイヤーの部分だけノイズの入った奇妙なアナウンス。
しかし順次プレイヤーのログアウトが開始された事でプレイヤー達はこのアナウンスが本物だと理解したのだった。
☆★☆★
ルルはログアウトしていくプレイヤー達より先に消えた。
仲間の、友の声を聞かずに。
この世界が終わる前に最愛の人に会うために。
夕陽が差し込む浮遊城の上空。
そこにリズは転送された。
そこへルルも転送されて来る。
「ルル! これ、やったのよね? クリアしたのよね?」
「ああ」
リズの質問にルルは笑顔で答える。
「約束覚えてる? 絶対見つけてよね、待ってるから」
「すまない、それはできない」
ルルの言葉にリズは顔を曇らせる。
「どういう事?」
「戦いの時に思い出したんだ。……俺は既に死んだプレイヤーだ。何故だか分からないけどここに残って今まで過ごしてきた。だからこのゲームの崩壊と共に消える」
「嘘! 嘘よ‼︎」
リズは涙を浮かべて否定する。
「そんなはずないよ。だって、今目の前にいるじゃない。あの時助けてくれたじゃない。愛しあったじゃない‼︎ 嫌よ、嫌だ……私は知ってるもの。貴方の温もりも貴方の優しさも……嘘だって言ってよ……」
「すまない」
ルルはリズの頭を撫でようとするがまるでシステムだと言わんばかりに手がポリゴンへ変わる。
「時間みたいだ。リズ、さよなら、幸せになってくれ」
ルルは笑顔で別れを告げる。
「待って! 私、ルルが居ないと幸せになんかなれない。待って‼︎」
リズが引き止めようとルルに抱きついた時にはルルは光の粒子となって消えていた。
のこされたリズは嗚咽を鳴らしながら現実へと帰っていった。
あとがき
ifはどうだったでしょうか? 楽しんで頂けたら幸いです。
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