LuLuの物語-if-少女に与えられた偽りの希望   作:ウンニーニョ

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希望

「よっしゃあ! これで後はこれを持ち帰れば報酬は俺達こもんだぜ!」

 

紅く透き通った四枚の羽根を使い飛び上がり、嬉々として喜んでいるのはギルド《風林火山》のギルマスであるクラインだ。

周りには風林火山のメンバーも喜びをあらわに飛び回っている。

それもそのはず、今日の12時より発表された新クエストの達成が目の前に迫っているからだ。

クエストの内容は誰よりも早く森に隠された秘宝を探し出し、依頼主の元へ届けるというもの。

つまりは報酬を受け取れるのは1人もしくは1チームという競争形式のクエストなのだ。

ライバルを欺き、罠にハメ、正しい情報を掴んでやっと秘宝を手に入れた。後はゴールである依頼主へ渡すことができればこのゲーム。

アルヴヘイム・オンラインで唯一のアイテムをゲット出来るのだ。

ゴールも目前、森を抜けようとした時だった。

 

「それは私達が頂くわ!」

 

クライン達が警戒し、木の上を見上げるとそこには、4つの影が風林火山のメンバーを見下ろしていた。

 

このゲーム独特の尖った耳、羽根を折りたたんだ妖精の出で立ち。

1人は青く透き通った羽根を持つ水妖精族ウンディーネ、水色の髪のボブカットで前髪をおでこが見えるほど短く切り、まるでオモチャを見つけた子供のように笑みを浮かべる少女。セレスティア。

1人は黄緑色の透き通った羽根を持つ風妖精族シルフ、ポニーテールにくくった金色の髪を風になびかせ、右手に細剣を構える少女。リーファ。

1人は黄色い透き通った羽根を持つ猫妖精族ケットシー、右肩に白い小竜を乗せ、この登場の仕方が恥ずかしいのか顔を赤く染める少女。シリカ。

1人は桃色に透き通った羽根を持つ工匠妖精族レプラコーン、桃色の癖っ毛、まるでメイドを思わせるようなエプロンドレスに身を包んだ少女。リズベット。

 

4人は散会しつつ風林火山へ向けて飛んだ。

 

クラインを除いた風林火山のメンバーを任されたリーファ。

彼女がこの中で一番優れているのは魔法を交えた空中戦闘。

アルヴヘイム・オンラインの仕様変更前、種族間でいがみ合っていた頃からの古参としての能力を発揮し、分担にせいこうする。

次に動いたのはリズ。立っていた木の枝から思い切り踏み出し、クラインへ向けて光速の突きを繰り出す。

それはかつて彼女達が生きたゲームの世界でリニアーと呼ばれた技だった。

しかしクラインも攻略組と呼ばれたプレイヤー、リズの攻撃を刀で受け止める。

しかしその行動で注意が散漫になった秘宝を静かに近ずいた少竜ピナが尻尾で空高く打ち上げる。

やられたと某然とするクラインにしてやったりと笑うリズ。

しかし空に打ち上がった秘宝へ一番に手を伸ばしたのは森から勢い良く現れた黒い剣士と水色の剣士の2人組だった。

 

「させませんよ! キリトさん、アスナさん」

 

その2人組、キリトとアスナの行動を遮るようにシリカとピナが立ちはだかる。

その間にリズは間抜け顔を晒しているクラインの頭を羽根を羽ばたかせながらふんずけると飛び上がり、秘宝を掴み取るとゴールへ向けて走り出す。

それを見たリーファとシリカも戦闘を止めて後を追う。

最後に、追いかけるクライン、キリト、アスナに風林火山のメンバーの前に降り立ったのは今まで戦闘に参加していなかったセレスティア。

戦闘に参加せずにずっと唱えていた魔法の詠唱を言い終わるとニヤリと笑いその身長に似合わないハルバートを地面に突き刺した。

理解できたのは同じウンディーネであるアスナ。顔を引きつらせ止まろうとするがもう間に合わない。

回復魔法が得意なウンディーネだが、攻撃魔法ももちろん存在する。

今セレスティアが使ったのは誰も使わない最上級の魔法。覚えるスペルが長く実用性がないからだ。しかしその威力は絶大である。

地面から氷柱が何本も現れ壁を作る。実際の仕様方法はこの氷柱の尖った先をプレイヤーの真下から生やし串刺しにするというものだが、今回は足止めの為の壁を作ったのだ。

いきなり現れた氷の壁に追いかけていたクライン達は激突し、追うことを断念せざるを得なかった。

 

そのままリズ達4人が逃げきり今回のクエストをクリア。

仲間達と喜びを分かち合うリズをキリトとアスナはしてやられたと見ながら話す。

 

「リズが元気になって本当に良かった」

 

アスナの口から漏れた言葉にキリトが頷く。

現実で初めて彼女に出会った時は別人のようだった。

今の彼女がいるのは希望に手を伸ばしているから。

アスナも現在お誘いを受けているリズをギルマスとするアルヴヘイム・オンラインで今急成長中のギルド。

午後のお茶会(アフタヌーン・ティーパーティー)

抜けた名前に反するようなエンブレム、ティーカップを持つ左手だけの鎧。それからSAOの時と変わらないメイドの様なコスチューム。けれどこのゲームでは赤と白の衣装だったのを赤と黒の衣装に変え、自身のスキルで作った左手だけの黒い甲冑を装備している。これが彼女の彼を見つけると言う希望に手を伸ばすと言う意志の表れ。

 

とても危うい偽りの希望。

しかしキリトとアスナが見た確かな希望。

 

それは、アスナがまだこのゲーム、アルヴヘイム・オンラインに囚われていた時まで遡る。

 

 

☆★☆★

 

 

この世界(アルヴヘイム・オンライン)の中心にそびえる世界樹の上にSAOプレイヤー300人が囚われていた。

その中でもアスナはそれを実行した人物、GM須郷伸行によって別に巨大な鳥籠の中に囚われていた。

仲間達の力を借りて、アスナを助けに来たキリトはプレイヤーとGMの覆せない力の差に地に伏していた。

須郷がGM権限で聖剣エクスカリバーを取り出した時だった。

 

「そんなクソ虫にやられちまうのか? キリト」

 

聞こえてきたのは懐かしい声だった。

黒から紫のグラデーションヘア、左手に黒い(義手)をつけた6枚羽根の闇妖精(インプ)

突然現れたプレイヤーに須郷は混乱し、怒りをあらわにしエクスカリバーを振り下ろした。

ガキンという音と共にこのゲームで最強と呼ばれる武器の一つはそのプレイヤーの左手でたやすく受け止められ、須郷は目を見開き、何が起きているか分からないとたじろいだ。

それをまるで気にも留めていないかの様に彼は地に伏したキリトの前にしゃがみ込む。

 

「キリト、今からお前に魔法の言葉を教えてやる。だからしっかりとお姫様を救い出せ」

 

「ルル……生きて?」

 

「俺の存在は変わらないさ。ただのバグだ。それより良く聞け、コードヒー…ヒー……何だっけか?」

 

「君は本当に締まらないね、コードヒースクリフだ」

 

ルルの言葉に呆れるようにして現れたのは赤と白の騎士甲冑に身を包んだ老け顔の火妖精(サラマンダー)

 

「団長……」

 

現れたのは血盟騎士団団長ヒースクリフ、茅場晶彦。

彼も現実では自分の脳を焼いて死んだ事が確認されている。

 

「そうそう。コードヒースクリフってそのままじゃん! ……まあキリト、この言葉を叫べ。あのクソ虫を倒すのはお前に譲ってやる……それじゃあ行くか、ヒースクリフ」

 

「ああ、後は任せるとしよう。そう、後はキリト君、君にこれを託そう。これはVRMMOの未来。どうするかは君、いや、君達次第だ」

 

ヒースクリフはそう言うとアスナをまるで娘を見る様な優しい目で笑いかけ、ルルと共に消えていった。

その後、混乱している須郷を、キリトが魔法の言葉を使って倒し、囚われのアスナと300人を救出したのだ。

 

 

その時の話をSAO帰還者を集めた学校でリズに話した。

学校に来てから殻に閉じこもる様に塞ぎ込んでいた彼女はそれを聞いて目を見開き、もう一度この世界(VRMMO)へ来る事を決めたのだ。

 

わずかな希望を求めて。

 

それであの頃の元気でかしましいリズが戻って来たのは良かった事だと思う。

だから私とキリト君は決めた。

彼女を支え、彼を探そうと。

 

 

 





あとがき

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