LuLuの物語-if-少女に与えられた偽りの希望   作:ウンニーニョ

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刻まれた名前

午後のお茶会と風林火山は今浮遊城へ来ている。

ボス部屋が発見されたとの情報が入った為、攻略レイドに参加するためだ。

浮遊城、アインクラッドと呼ばれるこの空に浮かぶ城が実装されてから数ヶ月、攻略は25層まで進んでいた。

SAO時代に比べプレイヤーのレベルが高いという事もあり、低階層攻略はサクサクと進むかと思われたがそこは運営側も考える所。

モンスターのステータスの上方修正に攻撃アルゴリズムの追加、それに何と言ってもSAOではあり得ない魔法の使用と経験者でも楽しめる仕様へと変更されていた。

そう、楽しめる(死に繋がらない)のだ。

協力になったボスに取り巻き、迷宮区内、フィールドのモンスター。

8層のボスではキリト達午後のお茶会を含めた35人で挑んだものの返り討ちにあい、サクヤ、ユージーンなどのシルフ領サラマンダー領の精鋭部隊と午後のお茶会と言うフルレイド42人で挑んだほどだ。

それからのボス戦はフルレイドで挑んでいる。

 

閑話休題(それはさておき)

 

リリルカが最後のモンスターをポリゴンへと変え、一行は迷宮区へとたどり付いた。

 

「ねえアスナ、確か25層って初めて死者が出たボス戦だったわよね? 」

 

「クウォーターポイントですよね、攻略組の皆さんが話してたのを聞いた事があります」

 

迷宮区へ入ってすぐリズとシリカが今回のボスについて質問した。

それにアスナが顔を少し陰らせて話す

 

「うん、25層の攻略はそれまでの階層ボスとは訳が違った。あの時血盟騎士団は結成当初で人数も少かったし一大勢力だった軍のプレイヤーが半分近くをしめていたの。そんな状況下でのレイド三分の一の死亡、軍は10人以上の犠牲者を出したわ……」

 

「統率がうまく取れていれば……いや、ディアベルは上手くまとめていた。だけどそんな統率なんて一瞬で崩れ去るくらいに人の死は混乱を招いた。強敵の前で崩れる陣形、それは死に直結した。その時混乱するプレイヤーを叱咤し、陣形を建て直すようにディアベルに叫び、やられそうなプレイヤーを守って戦ったのはあいつだった。あいつがいなかったら全滅もあり得たかもしれない」

 

アスナの言葉を引き継いだキリトが言い終わるとクラインが話し出す。

 

「おいおい、攻略組の全滅ってそりゃあ……」

 

「ああ。SAO攻略の断念にも繋がってたかもしれない。それでもあいつは、もっと救えたかも知れないって一人で抱え込んで……その後少ししてかな、あいつが黒猫団に入ったのわ」

 

そこまで話して、場の雰囲気はずっと暗くなる。

全員黒猫団の行く末を知っているからだ。

 

「はい! お終いお終い! 暗くなるのは無し! 今はもうそんな事にはならないんだし、でも油断は禁物よ。そんだけ強かったボスがさらに強くなってるんだから! でも1人も欠けずにクリアしてあいつを見返してやるのもいいわね‼︎」

 

言葉を発したのはリズだった。

それを聞いた全員がそれは空元気だと分かっている。しかしそれを分かっているからこそそこに乗っかり場の雰囲気は明るくなっていった。

 

☆★☆★

 

攻略会議はいつもより慎重に行われた。

帰還者からのクウォーターポイントの助言もあり対策などをしっかりと話し合った上での出陣である。

ボス部屋の前の扉で今回のリーダーであるユージーンが全員を見回し、頷くとゆっくりと扉を押し開けた。

 

攻略レイドが一斉に部屋へとなだれ込む。

 

しかし何も起こらなかった。

灯篭に順番に火が灯る事もなく、ボスが玉座に座っているという事もなく、ましてや上からボスが落ちてくるといった事も無い。

何も起こらない異常に先頭のユージーンが部屋を見回す。

すると入り口と反対側にあるドアが開いているのが見えた。

 

「……クリアされている? 」

 

ユージーンの口からそんな言葉が漏れた。

(しかしあり得ない、ALOの精鋭を集めたレイドの前にどこかのギルドが倒した? いや名のあるギルドは参加しているし、今回の参加していないプーカ領やレプラコーン領それに_______いずれにしても単体では不可能だろう……)

 

考えても答えは出ずにユージーンは2つの部隊にレイドを分ける。

と言ってもそんな仰々しいものではない。

26層へ向かう部隊と誰が倒したのか調べる部隊。

前者はALOからのプレイヤー全員ではないだろうか?

後者にはユージーンにサクヤなど領を統括する長、午後のお茶会に風林火山といった具合だ。

 

そしてユージーンや午後のお茶会らは転移結晶にてある場所へ転移した。

 

「転移_______」

 

☆★☆★

 

転移したのは浮遊城一層始まりの街。そこにある黒鉄宮と呼ばれる場所。

そこにはかつてはプレイヤーの名前が並び、死亡したプレイヤーへ横線が引かれるといった黒い碑石があった。

その碑石は今のこの世界ではフロアボスを攻略した者の名前、8名以下であればプレイヤー名、それ以上であればギルド名などが記載される英雄碑へと姿を変えた。

 

やって来た一行はそれを見て目を見開いた。

そしてリズはそれを見た瞬間に口を手で押さえ泣き崩れた。

アスナが背中を摩りながら「よかったね」と声をかけている。

それをしているアスナも、キリトも、午後のお茶会のメンバーにクラインも目の端に涙を浮かべている。

 

「だ、誰なんだ……コレは……」

 

ユージーンから驚愕の声が漏れた。

その黒い碑石の25層の欄に書かれた名前はだった1人

《ルル》

過去にSAOで攻略組を苦しめ、そこからさらに上方修正され、魔法まで使うボスを1人で倒した名前も知らないプレイヤー。

 

「お主達は知っているみたいだな。聞かせてくれないか?」

 

サクヤがリズ達午後のお茶会に向かってそう質問する。

彼女らは答える。

 

SAOをクリアした英雄の事を。

 

そして彼の辿った道を。

 

自分達の目的を。

 

それを聞いてユージーンやサクヤはまたも驚愕をあらわにする。

しかしゆっくりと事実を飲み込み、最後には一つの考えへとたどり着いた。

 

彼に会ってみたい。

 

そして午後のお茶会への協力を申し出る。

しかし2人は他言はしないだろう。

この話を他のプレイヤーへ話した所でただの夢物語であり、彼に会ったとしてもこの世界で会ったのならただのプレイヤーなのだから。

しかしそれでも2人は彼に会ってみたいと思った。

目の前にある事実を実現できる強者に、彼女ら午後のお茶会がそこまでして会いたい人物に会ってみたいと思ったのだ。

 

 

リズは少し赤く腫れた目をぬぐいながらもう一度黒い碑石を見つめ、愛おしそうにそこに書かれた名前を指でなぞる。

 

「うん、あいつはここに居るんだ。絶対に見つけてあげるから、首を洗って待ってなさいよね!」

 

リズの言葉に午後のお茶会全員が頷いた。

 




あとがき

今回碑石に刻まれる名前の数の所、プレイヤー名を7名以下から8名以下へ変更しています。
マザロザにリズをぶち込みたいので8×6チームでも問題無いかなーと思いまして。
次からマザロザ突入予定です。

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