LuLuの物語-if-少女に与えられた偽りの希望 作:ウンニーニョ
「えーっと、次に対戦する人、いませんかー?」
サラマンダーの大男とのデュエルに勝利し、Vサインを作りながら次の挑戦者を待ち受ける少女。
長く伸びたストレートの髪は艶やかなパールブラック。胸部分を覆う黒曜石のアーマーは柔らかな丸みをおび、その下のチュニックと風をはらんではためくロングスカートは矢車草のような青紫。腰には黒く細い鞘。
羽根が閉じて隠れている状態でもわかる闇妖精族の特徴。
彼女が今回の午後のお茶会の目的。無敗の剛剣士《絶剣》
午後のお茶会が行っている情報収集に引っかかった強者。
コンバートしてきてすぐにこうしてデュエルと言う野良試合を申し込み、勝ったプレイヤーにはOSSを伝授すると言う触れ込みで噂の人物だ。
ちなみにOSSとはオリジナルソードスキルの略でSAOで使われていたソードスキルはユニークスキルを除いて既に導入されているが、それ以外に自分の考えるソードスキルをシステムとして完成させることができるシステム。
ただしその方法は容易では無く、5連撃以上の物を作るのはSクラス難易度とされ、今まで確認されている中で最高はユージーンのOSSの8連撃だった。
そこへ絶剣が放り込んだのが11連撃と言う超レア級の代物だったのだ。
しかしその景品もさる事ながら強者と聞いてこのゲームで一番を目指すギルドとしては挑戦しないわけにはいかないと来たわけだが、この話が持ち上がる前にシリカ、リーファ、リリルカ、そしてキリトまでもやられており、今回はアスナとリズが挑戦する事になっている。
ちなみにセレスティアはリアルでの用事があり今日はログイン出来ないそうだ。
アスナとリズの2人は手を挙げ、挑戦者として名乗り出た。
手を挙げた2人の挑戦者を見た瞬間ギャラリーが湧いた。
周りからは「バーサークヒーラー」や「デスメイド」と2人の通り名が聞こえてくる。
アスナはこの
リズもルルを探すために戦闘面でも強くなると決め、アスナやキリトに剣の修行を付けてもらい今ではALOのトッププレイヤーの1人だ。
ALOで空を飛ぶためにパンツスタイルに変わった物のボス戦で黒いメイド服を翻して戦う姿からこの通り名で呼ばれる事がある。
絶剣は2人を見るとニコリと笑い「オッケー! でも1人づつね」と軽く返事を返すと先ずはアスナへとデュエルを申し込んだ。
2人は向かい合い剣を構える。
リズの視線は絶剣の頭上に浮かぶYuukiと言うプレイヤーネームを確認すると自分の番の為に2人の戦いに集中する。
結果はアスナの負け。
息をつかせぬ攻防、閃光の名に恥じないアスナの攻撃、それを凌ぐ絶剣、ユウキの剣速、そして勝負を決めたOSS十一連撃。
「お姉さん、すっごくいいよ! 1人目はお姉さんに決めた!」
ユウキがそう言うと今度はリズの目の前にデュエルの申し込みが浮かび上がった。
「お姉さんも期待していいのかな? 知り合いみたいだし」
ユウキのその言葉にリズは申し込みを受けながら「どおかしらね」と悪態をついた。
アスナの戦いの熱が冷めやらぬ間に戦いが始まった。
始まりは先ほどのアスナの戦いのリプレイを見ているようだった。
リズがユウキの懐へ飛び込むと突きを3発繰り出すとユウキが先の2発を紙一重で躱し最後の一撃を受け止めた。
そこからの展開は全く違うものとなる。
リズはレイピアを滑らせ柄でユウキの剣を弾きあげると突きではなく上段からの袈裟斬りを繰り出す。
ユウキは驚いた顔を見せたが咄嗟にバックステップで後方に下がる。
擦りはしたものの大きなダメージは受けないで済んだようだ。
そしてユウキも攻撃に転じる。
リズの剣線を見切り、剣を弾き上げるとさっきのお返しとばかりにアスナでのデュエルで見せたOSSを繰り出した。
ユウキの剣に青い光が灯りソードスキルが発動する
ことは無かった。
ユウキの発動モーションをリズが崩したからだ。
リズは弾き上げられた力に仰け反ることを避ける為に自ら剣を離した。
剣は上空へと飛んで行ったがそのおかげで態勢はさほど崩れてはいない。
リズは一歩踏み出すとユウキの剣を左手で掴んだ。
これはリズの左腕が彼の武器をイメージした手甲で包まれていたからできた芸当。
そして彼をイメージしてアスナに教えてもらった剣さばきにかつて見た彼の戦いを織り交ぜたリズのALOでの戦い方だからできる事だ。
驚きで目を見開くユウキを尻目にリズは何も持っていない右手を天高く上げる。
するとそこへ飛ばされたレイピアが落ちてくる。
予定だった。
しかしレイピアは2人の後方でカシャンと音を立てて落ちた。
「……あれ?」
音を聞いて振り向くリズ。
ギャラリーは声も出ずにその自体を見守った。
アスナの自分を呼ぶ声にリズが視線を元へ戻すと、いつの間にか緩んだ手から逃れたユウキが剣を構えていた。
これは「終わったわね」リズがそう考えた時、ユウキは笑い出した。
「お姉さん、面白い事するね。 でも、ちゃんと決まってたら僕が負けてたかも……決めた! 2人目はお姉さんで決まり! お姉さん達、この後まだ時間ある?」
2人の了承とるや否やユウキは2人の手を引き、3人は何処かへと飛んで行った。
☆★☆★
3人が去った後、ギャラリーが撤収し始めた頃、少し離れた木の陰からデュエルを観戦していたプレイヤーにキリトが背後から声をかけた。
「そうやって陰から見ているだけなのか?」
「……よくわかったな。ここは索敵圏外のはずなんだが……」
「感だよ、それより合わなくていいのか?」
キリトが声をかけたのは目つきの悪いインプの少年ルル。
午後のお茶会が探している目的の人物である。
「ああ。……分かってるからあいつらが居なくなってから1人で声をかけてきたんだろ?」
「買いかぶりだよ。本当は引きずってでもホームに連れて行きたい所だけど、お前にも何か考えがあるんじゃないかと思ってな」
「今リズに会うわけにはいかないさ」
「何か理由があるのか?」
「そうだな。リズを支えてやれる奴が現れた時かな」
「それはお前の役目じゃないのか?」
「バカ言うな。俺は現実で共に歩んで行けないんだ。……どんなに願ったとしても、もうあいつを支えてやる事は出来ない」
「そうか……」
悲しそうにリズが飛んで行った方向を眺めるルルを見て、キリトはこれ以上追求するのを止めた。
『もう、2人が共に歩く事は出来ないのかよ‼︎』
共にその空を眺めながら、キリトは心の中でそう叫びギシリと奥歯を噛み締めた。
あとがき
遅くなりましたが最新話。
マザーズロザリオ開幕です。