――ここは……どこだ?
真っ暗な暗闇の中を漂いながら、上条当麻は首をかしげた。
少なくとも普通の空間ではないだろう。漂うという水中でしかできないことをしているにもかかわらず、呼吸は全く苦しくない。つまりここは水中ではないという、
――苦しくない?
そこで当麻は思わず首をかしげた。なぜかはわからないが首をかしげないといけない気がした。
自分は苦しんでないとおかしい気がした。
――そうだ……俺は、あの時、インデックスを守るために追ってと戦って……それで、それで!
そこまで思い出した瞬間、上条の眼前に一枚の純白の羽が舞い降りた!
…†…†…………†…†…
「インデックス!」
一気に今までのことを思い出し飛び起きる当麻。だが、そこで彼のいつもの不幸が巻き起こる!
「って、うわっ!?」
「きゃっ!?」
当麻が飛び起きた瞬間、眼前にいた何かと当麻が激しくぶつかり、絡み合うように床に倒れてしまったのだ。
「いてててて……なんだ、いったい!?」
まさか、敵がまだいたのか!? と、あわてて起きようとした当麻は、床に手を突こうとして、
むにゅり……と、何かやわらかいものをわしづかみにしてしまう。
「ん? なんだこれ?」
寝起きでかすんでいた視界は、徐々にその機能を取り戻し、当麻の脳に映像を提供。そして、
「……え」
「お、おきられたんですか上条さん。よかった……と、ところでその、どいてもらえたりするとうれしいんですけど」
顔を真っ赤にして自分の下敷きになって倒れる友人の彼女――フィアと、自分の手がわしづかみにしている、彼女の……胸。
そんな光景を見てしまった瞬間、当麻の脳裏に浮かんだのは、年ごろゆえに女性にタッチできた幸運を喜ぶ感情でも、いつものようにこの後待っている女性からの制裁に不幸だと思う気持でもなく、
「あ、あぁ……」
純粋な――恐怖。
なぜなら彼は、こんなことをして自分がタダで済むわけがないと知っていたから。だからこそ、彼女にはラッキースケベならぬアンラッキースケベを発揮しないよう、ずっと注意を払っていたのに、ここにきてその努力のすべてが水泡に帰した。
「い、いや……まて、落ち着くんだ当麻。ここにまだ錬がいると決まったわけでは」
そういって当麻が現実を正しく見つめ、まだ残っている活路を見出すが、
「ただいま~フィア。当麻につけるかえの包帯とって……きた」
そこはミスターアンラッキーこと上条当麻の面目躍如。その当麻に死を与える存在は、間が悪く、最悪のタイミングで帰ってきて、その光景を見てしまった。
当麻はぼろいアパートの扉を開き入ってきた友人の姿に、涙を流しながら自分にこんな問いをぶつける。
――Q:家に帰ってきたら自分の彼女を男友達が押し倒し、その胸をわしづかみにしていました。さて、この光景に至るまでの経緯を予想するとしたらはたしてどんな経緯になるでしょうか?
A:レ○プ直前現場
「ま、まて……錬。話せばわかる」
「うん。わかっているよ当麻。どうせいつものあれなんだろ? でもごめんね? たとえそうだったとしても、許せることと許せないことがあるんだ」
人は怒りの沸点を超えると、怒りよりもまず笑いが出てくるらしい。
そんな言葉を体現するがごとく、いい笑顔を浮かべた錬はスッと手を挙げ空気中に無数の氷塊を生み出す。
先端は無論、鋭利にとがった氷の槍。
当麻はそれをうつろな笑みで見つめた後、
「こ、殺さないで」
「うん。ごめん……無理」
瞬間、槍の雨が当麻に向かって降り注ぐ!!
…†…†…………†…†…
「で、一体全体何があってこんな事態になったのさ? 小萌先生に聞いても要領得ないし、この家にいた、今回の君のヒロインであろうインデックスっていう白いシスターは宗教やってるみたいで頭おかしいし」
「れ、錬さん……今上条さん話せそうにないんですけど。あと、言い過ぎですよ」
結局いろんな不幸が重なり、重傷な傷をさらに重症にしてしまった当麻は、土下座の人となり、激憤のあまりまだ頭を踏みつけてくる錬による尋問を受けることとなった。
通常なら文句の一つも出ようものなのだが、今回悪いのは確実に自分なので、当麻は黙ってその制裁を受け入れる。
そして、
「わりぃ、錬……巻き込んじまって」
またわけのわからない事件に巻き込んでしまったことを謝罪しておく。まぁ、といっても、こう言った言葉に帰ってくる錬の言葉は決まっている。
――くだらないことをいうんじゃない。僕と君は友達で、友達のピンチに手を差し伸べられない奴は友達とは言わないんだから。と。
そんな答えを予想し、苦笑を浮かべる当麻に。
「うん。そうだね当麻。お詫びとして慰謝料2000万ほど用意してもらえないかな?」
「って、あれ!? いつもの言葉とちがうくねぇか!?」
「え? 何言ってるんだい当麻? 君と僕が友達だって? 悪い冗談はよしてくれ!!」
「お願いだから許してください錬さんお願いします!? フィアにちょっとした事故起こしたことは全力で謝ってるじゃないですか!?」
「黙れ。僕は君と友人になったこと自体が誤りだと思っているよ」
「そこまで!?」
割と真剣に泣きそうになる当麻に、フィアはあわてて錬の手を取り、
「れ、錬さん! もうそのくらいにしておいてあげてください。わざとじゃないんですし」
「フィア! 何言ってるの!! こいつはその「わざとじゃない!!」を免罪符にいったいどれだけ前科を重ねていると思ってるの!? いい加減ここで痛い目見といたほうがいいんだよ!!」
「錬さん! あ、あの……うらやましいなら、またいつでも同じことをやらせてあげますから」
「フィア!? いつでものぞいていいって言ったけど、さすがにこういう時に心を読まれるのはつらいかな!?」
フィアの大胆発言に顔を真っ赤にしながらも、一応当麻に対する怒りは収まったのか、おとなしく土下座当麻の頭から足を退ける錬。
そんな錬の態度に当麻はほっと息をつきながら、あわてて周囲を見渡した。
「と、ところで……インデックス。あの白いシスターはどうなった!?」
瞬間だった。
「当麻ぁああああああああああああ!!」
「ぶふっ!!」
特に理由のない不幸が、当麻を襲う!!
……というか、当麻が目を覚ましているのを見て歓喜の笑みを浮かべた、インデックスのダイビングタックルだった。
「当麻っ! 当麻っ!! けがは!? 痛くない!? 体のどこか動かないとかない!?」
「い、インデックスさん! おちついて、落ち着いて! 上条さんけが人ですから」
「あう……ごめんなさいなんだよ、キサラギ」
あわてた様子でインデックスを引き留めるフィアに、インデックスはしょんぼり落ち込みながらおとなしく当麻から離れた。
どうやら当麻が寝ている間にすっかりフィアになついたらしかった。何気に年下の少女に慕われやすい、少女である。
そして、そんな光景を見た錬は、
「あの、僕が言うのもなんだけど当麻……大丈夫」
真っ白になって沈黙してしまった当麻を、一応気遣うように言葉をかけるのだった。
…†…†…………†…†…
「さて、今までは君の看病やなにやらで忙しくて話を聞いていないんだけど……当麻。今度はいったいどんな事件に首を突っ込んでいるの?」
それから数時間後。
何とか当麻の意識を再び回復させた錬は、ようやく今回当麻がかかわっている事件の全容について尋ねる質問を行うことができた。
――何をするにもまずは情報だからね。いったい何があったのか正しく理解しておかないと。
と、いつもいろいろな事件に対処するための戦略を練ってくれる兄の受け売りを披露しながら、錬は黙って当麻の返答を待つ。
当麻はそんな錬から気まずそうな顔で目をそらしているだけだった。
どうやら話していいかどうか迷っているらしい。
――まぁ、そりゃそうだよね。仮にも自分をボッコボコにした敵と僕が戦う可能性だってあるんだ。当麻の性格なら僕を巻き込むのをためらって、話をしたがらないだろう。
だが、
「当麻……何か勘違いしているようだけど、君をここまで運んだのは僕とフィアだ。つまり、君をボッコボコにしたあの露出狂の女の人から君を救い出したのも僕たちだ」
「なっ!?」
「今更気遣いなんて無用だよ。僕はとっくの昔に巻き込まれている」
――顔面一発殴っちゃってるしね。と、いう言葉まではさすがに言わない。自分をボッコボコにした相手に、友人が一矢報いていたなんて知ったら、さすがの当麻も落ち込むだろうしね。という、錬からのささやかな気遣いだ。
「わかった……全部話すよ」
とはいえ、一応その言葉で踏ん切りをつけることに成功したらしい当麻は、インデックスに許可を取った後淡々と、今まであった出来事を話し始めた。
自分の寮のベランダに、敵から逃げる際に落ちて引っかかっていた少女インデックス。
その少女が覚えきった禁書――魔導書原典。それを狙う魔術師たちから、彼女を守っていたこと。
そして、
「俺は……その魔術師に負けたんだ」
当麻は告げなかった。インデックスの前で告げることはできなかった。
自分が、自分をのし上げた露出狂の女――神裂火織から教えられた、信じられない真実を。
彼女たちが必死に隠していたその事実を、自分がインデックスに教えるのはどうしてもはばかられたから。だから当麻はインデックスの前でその話をできず、彼女の姿を視界の端でちらりとらえた瞬間、当麻はそこで口をつぐんだ。
当然、長い付き合いである錬は、そこで当麻がどういう考えをしているか気づく。
――インデックスちゃんに聞かせたくないことでもあるのか? と。
事件の当事者にも話せないとなるとそれはかなり重要なことなのだろう。錬はそう判断を下しつつ、フィアに視線で合図を送る。
フィアはそれに呼応するかのように、Iブレインで能力を起動。錬と心の思考で会話をするためのパスとつなぐ。
『ごめんフィア。どうやら当麻はこの事件でインデックスちゃんに言えない隠し事をしているらしい。インデックスちゃんと一緒に席を外してくれない? 話を聞いたら、後で説明するから』
『……わかりました』
フィアはそんな錬の提案に一つ頷くと、インデックスの手を引き立ちあがった。
「事情は分かりました上条さん。じゃぁ、とりあえずインデックスさんを一か所に置いておくのは危険かもしれませんね。動き回っていたほうが安全かもしれませんから、私がインデックスさんを連れて外に行っています」
「え、で、でも襲われたらフィアも危ないことに」
「安心してくださいインデックスさん。私の能力は戦闘には向きませんけど、そもそも戦闘をさせないことに関してはすごいんですよ? それに、今の上条さんは到底戦える状態ではありません。こんなところにあなたを狙って魔術師さんたちがやってきたら大変でしょう?」
そういって笑いかけるフィアの表情に、確かな自信を感じ取ることができたのか、インデックスは心配そうな顔で当麻を見ながらも、フィアについて立ち上がる。
「当麻……ごめんね」
「謝るなよインデックス。俺が好きでやってることだ」
そんなインデックスの謝罪をいっぱいいっぱいといった様子で返す当麻の姿に、錬はやはり彼が何かを隠していることを確信する。
――これは早急に事情を聴く必要がありそうだね。と、錬がそう考えながら、部屋から出て行こうとするフィアとインデックスを見送ろうとした時だった。
『あれあれ? うちの家に何か御用ですか? えっと……神父さん?』
「「「「!?」」」」
扉の外から聞こえてきた小萌の声に、四人は思わず氷結する。
だがそんな彼らが復帰するのを待たずに、
「やぁ、お邪魔するよ」
「………………」
当麻の話の中で出てきた、炎を操る赤毛の魔術師と、昨日煉瓦一発殴ってしまった露出狂の女が、扉の前で佇んでいた。
…†…†…………†…†…
インデックスは目の前に突然現れた魔術師たちの姿に思わず固まる。
思い出されるのは薄暗い裏路地の中、自分を執拗に追いかけてくる、炎と斬撃。
《歩く教会》の結界があったため、その攻撃によって彼女が傷ついたことは一度だけしかなかったが、だからと言って他者に攻撃されるという異常事態に、彼女が何のトラウマも植えつけられていないかと聞かれると、そんなわけはない。
死ぬほど怖かったし、死ぬかとも思った。
何でこんなことにと自分の身の上を呪ったこともあったし、なにより……自身の一年以上前の記憶がなくなっていることがそのことに拍車をかけた。
何が味方なのかわからない。
誰が敵なのかわからない。
そんな状況でせめて確実に頼れる場所へと、イギリスの教会へと行こうとしても、敵はそれを許してくれなかった。
そんな絶望しかない中で、ようやく彼女は見つけたのだ。
『……ちったぁ俺を信用しやがれ。人を勝手に値踏みしてんじゃねーぞ』
そういって、手を差し伸べてくれた一人の少年。自分を助けてくれるヒーローみたいな人。あの時はどれほどうれしかったことか……どれほど救われたことか、インデックスはその気持ちを伝えられる言葉を知らない。
でも、その人は今怪我をして倒れている。
目の前の魔術師たちにやられた。彼の友人がこの場にいるから、彼だけは何とか守ってくれるかもしれない。でも、それでも、
――私はもう、この人を巻き込んではいけない。この人にこれ以上、傷なんか与えちゃいけない。
そう決断したインデックスは、何の迷いもなく、隣に立っていたフィアの制止すら振り切り、
「もう……もうやめてよ!」
あれほどおびえて逃げ回っていた魔術師たちの前に飛び出した。
…†…†…………†…†…
「もうやめてよ!」
少女の絶叫を、当麻は止めてやることができなかった。
「私ならもう逃げたりしないから……おとなしくあなたたちについていくから!」
――違うんだ。そういってやることができなかった。
インデックスの絶叫を聞き、何よりもつらい言葉を聞くように、一瞬顔をゆがめた魔術師たちを見ても、
「だからこれ以上……当麻を傷つけたりしないで!!」
なにも……いえなかった。
何よりも誰よりも、一番つらいであろう魔術師たちが、
「どうやら《足枷》の役割はきちんと働いているようだね」
つらい顔を一瞬で押し隠し、まるで能面のような無表情でそう吐き捨てたから、
「……………………」
彼らに負けてしまい、真実を知り、彼らと同じように何の打開策も見つけられていない当麻には、何も言うことができなかった。
…†…†…………†…†…
あれからしばらくして、魔術師たちは「時間になったらまた来る」といって、アパートから去った。
そんな彼らの姿に、泣き崩れるインデックス。彼女を落ち着かせるためにフィアは彼女を伴い近くの公園へといき、空気を読んでくれたと思われる小萌先生は、黙ってどこかへ行き錬と当麻を二人っきりにしてくれた。
「で……当麻。どうしてそんなつらそうな顔しているの?」
長い長い沈黙を続ける友人に、らしくないな! と、無理をして明るい声をだし、場の空気を和らげようとする錬。
だが、友人から帰ってきたのはまた沈黙で、錬は小さくため息をついた。
「当麻……話してくれないと僕には何もできない」
「……」
「だから、つらいだろうけど、言いたくないことなんだろうけど、頼むから……」
――僕に頼ってくれ。
そういった錬の言葉に、ようやく答えが返ってくる。
「あいつらは……イギリス清教の人間なんだ」
「ん? それって……」
「あぁ。インデックスがはじめ逃げ込もうとしていたイギリスで幅を利かせている教会勢力らしい」
「え?」
――つまりそれは。と、錬は結論に行き着く。
「彼らは……インデックスさんの味方?」
「同僚だって言っていた」
――その言葉は、つまり、すくなくとも、そういえるだけの近くの場で彼女たちはともに働いていたということで、
「な、ならどうして、どうしてあの人たちはインデックスさんを襲っているの!?」
「インデックスには、完全記憶能力っていうのが備わっている。見たものは絶対に忘れない、忘れることができない能力だ。インデックスの十万三千冊の魔道所もその能力を使って覚えたらしい」
「それが?」
――どうしたっていうんだい? と、錬は首をかしげた。
完全記憶能力。確かに珍しいものではあるが、超能力の一つにすら数えられない、近代医学で十分説明可能な――体質だ。
「インデックスの脳はその十万三千冊を覚えることによって85%の領域が占領され脳が圧迫されているんだ。だからあいつは本来使えるはずの記憶領域を15%しか使えず、たった一年で記憶領域がいっぱいになる」
「……うん?」
――あれ? そんな話しあったっけ? と、錬は思わず首をかしげた。
「だからあいつは一年のうちに記憶を消さないといけない。そうじゃないと、あいつの脳は完全記憶能力で覚えた記憶でいっぱいになって……最後にはあいつは死んじまう! だから、せめて記憶を消すときつらくならないよう、あいつらはその記憶が惜しくないと思わせるためにインデックスを……」
「う、うん。ちょっと待とうか当麻」
「え?」
そんな風に泣きそうな顔で説明する当麻を遮って、錬は非常に申し訳ない気分に陥りながら、
「とりあえず君は……もうちょっと小萌先生の授業を聞くべきだね」
以前とある授業で雑談交じりに話してくれた、小萌先生の専門分野の話――サヴァン症候群の事例として挙げられた、完全記憶能力者の話を思い出しながら、錬は思わず辛辣なツッコミを入れた。
…†…†…………†…†…
曰く、完全記憶能力者は脳領域の圧迫なんて理由で死んだことは一度もない。
曰く、たとえ完全記憶能力者がその日見た記憶をすべて覚えているのだとしても、それはあくまでエピソード記憶に分類され、書籍を覚えた記憶である意味記憶によって圧迫を受けることはない。
曰く、人間の脳はもともと数百年にわたる記憶が可能な生体演算器であり、15%しか脳領域を使えなくとも、たった一年の記憶で脳がパンクすることなんてまずない。
結論――ぶっちゃけその魔術師さんたち誰かに騙されてるんじゃないの?
当麻が絶望し、魔術師があきらめたその事象を、錬はあっさりと打破し、むしろ「馬鹿なの君?」と言わんばかりの視線で当麻を見詰めつつ、
「だからいつも言ってるでしょうが! 授業はちゃんと受けろ、宿題はちゃんとやれ、人の話は最後まで聞け!! 何度言ったらわかるの!? 何でこんな簡単な答えも出せずに絶望しちゃってんの!? 夏休み前に僕に宿題見せてもらった時の言葉をもう一回復唱してみなよ馬鹿当麻!!」
「……こ、こんな勉強しても将来は何の役にも立たないんじゃね?」
「もう一度」
「こ、こんな勉強しても将来は何の役にも立たないんじゃね?」
「も・う・い・ち・ど!!」
「もうやめてください錬さん、俺が全面的に悪かったですからぁああああああ!」
結局錬の携帯電話で小萌にも確認を取ったが、その話はどうやら正しかったらしく、インデックスが苦しむ理由はどうやら完全記憶能力のせいではないということが分かった。
ではいったい、何が……。
「順当に考えるなら、彼らの上司であるイギリス凄教が何らかの手段を使って……ていうのがお約束だよね」
「ということは魔術か……。でも」
――インデックスの体を触っても、
その発言にはさすがの錬も頭をひねりつつ、
「どこかに核みたいなのがあるのかも。君の右手が届かないところに……。具体的にいうと内蔵とか、頭がい骨とか」
「おいおい、そんなの俺たちじゃどうしようもねぇぞ」
と、当麻が顔をしかめたとき、
「れ、錬さん! 上条さん!!」
先ほどインデックスをつれていった少女が、血相を変えて飛び込んできた。
彼女の能力によって重力場が改変された空間に、意識を失い苦しそうにうなされるインデックスを浮遊させながら。
「い、インデックスさんが!」
「「!?」」
どうやら猶予はないらしい。それを悟った二人はすぐさま行動を開始した。
…†…†…………†…†…
そして、どうにも体の内側にあるらしいという推察をしていた彼らは、意外とあっさりとそれを見つけることができた。
インデックスの喉の奥。そこでおぞましい気配を放つ、奇妙な刻印を……。
「はは……ありがとう錬」
「お礼はこの子を助けてからにしたほうがいいんじゃない、当麻。はっきり言ってその刻印がまだ原因と決まったわけではないし、僕の予想通りその刻印が彼女の上司からつけられたのだとしたら、それはたぶん彼女を守る機能も持っているはずだ。一番最悪のなのは、あの魔術師さんたちが恐れた原典に載った魔法がすべて襲い掛かってくることだけど……」
「はっ……上等じゃねぇか!」
だが、そんな状況でも上条当麻は笑う。
ようやく前へ進めたと、笑う!
「たかだか異能の力だろう」
今まで感じていた絶望に比べれば、そんな事実はあまりに些末で脆弱なものだ。
「いいぜ神様。この
だから当麻は迷うことなく、インデックスの喉の奥でうごめく闇へと、何のためらいもなく手を伸ばした!
激動の禁書一巻!!
でも、介入する時期が時期だったため意外と早くに終わりそう!?
どうする……おれ!!
……桜と真昼の暗部編でも書くか。