とある科学の魔法士たち   作:過労死志願

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《メンバー》

――なんだこれは? 弱すぎる。

 

 トマス=プラチナバーグが潜むビルに襲撃をかけたサクラが、真っ先に感じた感想がそれだった。

 

 警備と思われるのは、能力も使えない一般的な銃を持った戦闘員に、ソコソコ戦闘用に改造された犬型ロボットが十数体。これが今のところ桜が出会ったこのビルを守る戦力だったが、

 

「この程度の護衛しか用意できていないとは……。本当にここは統括理事会のメンバーを守るビルなのか?」

 

――これならむしろ、そういった噂を流した囮だと考えた方がまだ納得がいく。と、内心で呆れきりながらも、真昼が提示する情報の正確さは知っているため、彼女は淡々と戦闘を続けていった。

 

 こちらに向かって建物の壁をうまく利用し体を隠しながら、マシンガンの掃射をしてくる男たちを、彼らの背後に作り出した氷の弾丸で滅多撃ちにし、マシンガンがやんだと同時に襲ってくる犬型のロボットたちは、ゴーストハックによって生み出された二メートル近い巨大なコンクリートの拳によって粉砕する。

 

 まさしく鎧袖一触。一騎当千。

 

 魔法士の中でもっとも汎用性に富むと言われたサクラの異能は、あらゆる角度から自分に向かって襲い掛かってくる外敵を薙ぎ払い、彼女の体どころか着用している衣服にすら傷一つつけずにビルの戦力を沈黙させていく。

 

「な……なんなんだお前」

 

 そんな彼女の足元に倒れ伏した一人の男が、うめき声交じりの詰問をサクラにぶつけた。

 

 黒いスーツに黒いサングラス。典型的な裏社会にいそうな男で、手には先ほどサクラを狙っていたマシンガンが握られている。

 

 そして、二つの肺と心臓を氷の弾丸によって抉られ、多量の血を流し倒れ伏している彼は、《冥土返し》でも呼んでこない限りもう決して助からない状態にあった。

 

「そ、のちから……。複数能力の……同時、使用だと!? どこの狂人だ……多重能力(デュアルスキル)なんて生み出した化物は!!」

 

 彼がそう言った瞬間、桜が放った氷の鎖が彼の首に巻きつき、瞬時に締め上げ首の骨をへし折る。

 

「あなたの不幸は二つある」

 

 首をおかしな方向に捻じ曲げたまま息絶えた男に手を合わせながら、サクラは痛ましげな顔をしながら告げる。

 

「一つは私の降伏勧告を受け入れなかったこと。もう一つは……」

 

 そして、サクラは立ち上がり、再び自分の行く手をさえぎる犬のロボットや黒服の男たちに向かって……告げる。

 

「うちのリーダーが、殺人を禁止しなかったことだ」

 

――これは、学園都市に対するデモンストレーションでもあるのだから。と、サクラは忌々しそうにつぶやいた。

 

 彼女の言うとおり、この作戦はトマス=プラチナバーグを殺し、学園都市統括理事会の席を一つ開け、そこにサクラたちの誰かを滑り込ませる……ということだけが目的ではなかった。

 

 統括理事会を守る暗部勢力を徹底的に叩き壊し、完膚なきまでに殺しつくし、自分たちが決して触れてはいけないパンドラの箱だと教えるためのデモンストレーション。

 

 そのため、普段は口を酸っぱくして「殺しはだめだよ?」と、再三警告してくる真昼は作戦説明の際、一度もその言葉を口にはしなかった。

 

 他のメンバーもその意味は理解しているだろう。天樹寮の父と言われる黒沢祐一ですら、今頃どこかの裏路地で待ち伏せていた、どこぞの暗部部隊と交戦して、おびただしい数の死体を量産しているはずだった。

 

 だからこそ、サクラも決して手は抜かない。向かってくる敵は、たとえどれほど脆弱で、憐みを誘うほど無謀な戦いをしていると知っていても、彼女は淡々とIブレインに指令を下し、ハエでもつぶすがごとく敵をたたいていく。

 

「あの子たちの笑顔が守れるなら……」

 

――私は鬼にも悪魔にもなろう。彼女がそうつぶやいた瞬間だった。

 

「では、地獄に落ちても文句は言わないですよね?」

 

「っ!?」

 

 彼女の背後から声。瞬間、彼女のIブレインに一枚の小さな窓が開く!

 

警告(Alert):一般処理・『高密度AIM拡散力場感知』】

 

 

 

…†…†…………†…†…

 

 

 

 黒沢祐一は、裏路地を進んでいた。

 

 弾丸の雨に打たれながらも、無数の兵隊が彼に対して当たれば即死の弾丸を放つ銃口を向けていても、まるで彼は平素と同じような態度を崩さず、その弾丸の雨の中を悠々と歩き続ける。

 

 当然だ。彼の視界はすでに能力を使い、知覚速度を通常の120倍、運動速度を通常の60倍というでたらめな速度に設定し、弾丸など止まっている程度の速度にしか見えなくなっていたのだから。

 

 歩いているように見えるのは、彼の運動速度にその場にいる人間の知覚速度がついていけないから。弾丸を斬り飛ばす剣が見えていないため。

 

 彼は進行上にある弾丸をすべて情報解体し、分子単位の粒子にしながら進んでいる。

 

 圧倒的といってもいい戦力差だった。たとえ学園都市のレベル5を相手取るにしても、第四位から下までなら、むしろこっちと戦うよりかはましだ。そう思えるほどの圧倒的な理不尽。

 

 通常の人間の60倍の速度で動ける。たったそれだけのことが、今彼に敵対している人間にどれほどの絶望を与えているのだろうか?

 

「とはいえ……手を抜くわけにもいかんが」

 

 ぼそりと呟いた彼の体が今度こそ本当に消える。敵を殲滅するために、彼が本気で動き始めたからだ。

 

 狙うは先ほどの弾丸を薙ぎ払っていた時に、Iブレインの演算領域を裂いて検索した指揮官と思わしき兵士(ユニット)

 

 おそらく5人単位の小隊を統括していると思われるその兵士の数は10人。

 

 祐一はそんな彼らに向かい一直線に駆け抜け、

 

「どいてもらおう」

 

「っ!?」

 

 その進路の邪魔になる兵士の片足を斬り飛ばす。

 

 突如亡くなった自分の右足に気付いた兵士が悲鳴を上げ倒れ伏す。だが、そんな彼に一瞥すら送らず祐一は、ただまっすぐ指揮官に向かって歩を進めた。

 

 邪魔になる兵士は先ほどの兵士と同じ目にあってもらう。

 

 あるものは右足を。あるものは左腕を。あるものは右耳を。あるものは肩口を。

 

 情け容赦なく斬られ貫かれ、薙ぎ払われ、彼らは怒号と悲鳴を上げて倒れふし、

 

「ひっ!?」

 

 その光景に気付いた指揮官と思われるヘルメットと、ガスマスクで完全に顔を隠した男は、そんな光景に悲鳴を上げかけ、

 

「終わりだ」

 

 その声が空間に振動を与える前に、祐一の手によって首を跳ね飛ばされ絶命する。

 

 その時一時的に足を止めた祐一の姿が兵士たちに目撃される。

 

 絶句。瞬間兵士たちは一斉に銃を向けるが、それでも引き金を引くような馬鹿はいない。

 

 当然だ。先ほどの祐一の蹂躙は、その兵士たちの目には映らないほどの速度でなされた。おそらく、実際あの光景を生み出したのは祐一だと、声を大にして言えるほどしっかり見た人間はこの場にはいないだろう。

 

 だがしかし、それでも……血を噴水のように吹き上げる首がなくなった人間の死体の隣にたたずむ祐一に、自ら殺してくれと言わんばかりに弾丸を放つ勇気がある人間は、この場にはいなかった。

 

「一度だけ告げよう」

 

――場の支配は終わったな。そんな彼らの尻込みをする様子を見て、とてつもなく長い戦闘経験からそれを悟った祐一は、深みのある声音で一言だけ告げる。

 

「死にたい奴から前に出ろ。相手をしてやろう」

 

 そう言って青い大剣を振り下ろし地面すれすれで止めた祐一の姿に、兵士たちは完全に沈黙した。

 

 戦意喪失。まさしくその言葉が兵士たちの様子にはふさわしかっただろう。そんな彼らの様子に、

 

――とりあえずひと段落か? と。祐一が思った瞬間だった。

 

「あらあら? これはこれは……」

 

 祐一が立っていた地面から――いや、正確に言えば彼が立っていた地面にあったマンホールから、突然少女の声が響き渡ったのは。

 

「メンバーだけでは人手が足りないかなと思い出張ってきましたが……まさかここまで一方的にやられているなんてね。わざわざ援軍として呼んであげたのにホント使えない。それでも学園都市暗部で真っ先に挙げられる猟犬部隊(ハウンドドッグ)にならぶ暗殺部隊なのかな~? 追跡怪人(ファントムストーカー)?」

 

 瞬間、祐一の脳裏に一枚の窓がひらめく。

 

【高密度AIM拡散力場感知】

 

 瞬間、祐一は自身の体内の運動エネルギーを完全掌握し、信じられない高さまで跳躍。同時に、彼の足元にあったマンホールが銀色の何かによって寸断され突如崩壊する!

 

「もういいわ。帰っていいわよ。どうもあなた達じゃ相手にならないようだし、ここからは私がやるわ」

 

 そう言って崩れ落ちたマンホールの中から出てきたのは、金属光沢で光り輝く、女性の形をした珍妙な人影だった。

 

 

 

…†…†…………†…†…

 

 

 

 メンバーの統括役である《博士》はトマス=プラチナバーグのビルの中にある小さなバーに居座っていた。

 

 さすがに仕事中なので酒を飲むようなことはしていないが、どうやらノンアルコールのカクテルを楽しんでいるらしく、その手には鮮やかな赤色の飲み物が入ったカクテルグラスが握られていた。

 

 とはいえ、純粋にカクテルを楽しんでいるかといわれるとそうでもない。

 

 なぜなら、その彼の視線は常に、手元に置かれた映像端末に向いていたからだ。その映像端末の画面には、下の階で起こっている不法侵入者と、自分の部下たちとの戦いを映し出した監視カメラの映像が映し出されていて、

 

「ふむ……。どうやら彼らだけでは荷が重いようだな」

 

 彼が重い腰を動かすに足る、敵の強さを十分に提示してくれていた。

 

「というわけで、私はしばしここから席を外すが……統括理事会の護衛はしっかりしてくれよ。黒雲くん」

 

『言われなくてもわかってるっすよ博士……』

 

 舌打ちしかねない不機嫌そうな声で通信端末から返事を返してくる自分の部下に、博士は思わず肩をすくめた。

 

「そんなに統括理事会のお守がいやかね?」

 

『数式いじってりゃ満足するアンタとは違うんすよ』

 

 なんで俺がこんないけすかねェクソ野郎の護衛なんか……。と、今度こそ盛大に舌打ちをした自分の部下に、博士は見えないと分かっていても小さく肩を竦めつつ、バーの席から立ち上がり目の前に見えているエレベーターに向かう。

 

「これも仕事だ。君も暗部に身を置く人間なら割り切りたまえ。それに、護衛任務の時はそのチームのジョーカーを護衛対象のもとにおいておくのが鉄則ではないかね?」

 

『ジョーカー……ねぇ』

 

 切り札ではなく……鬼札(ジョーカー)。本来なら提示しないに越したことはない、制御不能の番狂わせカード。

 

「せいぜい君が仕事をしなくていいことを祈っているよ。暗黒雷雲(ノイズクラウド)

 

『当然っす。さっさと行って殺してきてください』

 

 じゃないと、あんたのコレクション全部ぶち壊すぞ。と、吐き捨てた部下の声に見送られ、博士はエレベーターに乗り込む。

 

 当然彼自身は老人といってもいい年齢で、自分自身の戦闘能力は非常に低い。戦場に直接行くわけではない。

 

 彼は戦場に近づいただけ。

 

 そう……彼が手元に持った端末の電波が戦場に届く場所まで。

 

 

 

…†…†…………†…†…

 

 

 

「ねぇ……。どうして真昼さんはトマス=プラチナバーグを選んだんだと思う?」

 

「あぁ? いきなり何の話だよ、クレア?」

 

 ビルの壁に設置された生体認証が必要な扉の電子キー。その端末のジャックにケーブルをつないだ千里眼(クレアヴォイアンス)№1は、そこを通してビル全体の電子障壁のハッキングを行っていた。

 

 もう片方のケーブルの先はまるで肌に溶け込むように、クレアの腕の中に消えている。情報制御によって人間の神経系に直接接続できるそのケーブルは、神経系を通してクレアのIブレインに直結し、電子的障壁を瞬く間に食い荒らしていた。

 

ツリーダイアグラムを軽く凌駕する性能を持つIブレインが相手だ。その性能を完全に生かせれば、クレアが全く自身の手を動かさない完全な自動ハッキングでも、ビル内で行える電子的防壁を、ほとんど紙にも等しい扱いで破り捨てられる。

 

瞬く間に浸食されていく障壁。

 

――守護神(ゴールキーパー)のような一癖も二癖もある障壁を張っているわけでもないようだし、この調子ならあと1分弱でこのビルの電子的機器の完全掌握が完了するだろう。

 

だからこそ、クレアはほとんどそちら側の進捗状況を気にすることなく、傍らに立って周囲を警戒している白衣姿に化けたヘイズとの雑談ができるのだ。

 

「というか、あんたの警戒よりも私がIブレインの領域裂いて知覚した方がまだ性能いいから、あんたのその行為も限りなく無駄じゃない?」

 

「おい、お前……人の努力をなんて言葉で切り捨てやがる」

 

 まぁ、否定できないけど……。と、ちょっとだけ情けない顔でそんなことを言ってくる相棒に、笑いながら肩を竦めた後、クレアは再び真剣な顔に戻り、

 

「で? どう思う? 今の状況をかんがみても、私たちなら潮岸も落とせたと思う。だとしたら、真っ先に統括理事会からどけないといけないのは、こんないつでも倒せそうな小物の議員なんかじゃなくて、あのパワードスーツ野郎じゃない?」

 

「俺もそれは考えたんだが……」

 

 そんなクレアの当然の疑問に、ヘイズも同じように真剣な顔になりながら何かを考え込んでいた。

 

 ヘイズはクレアや祐一たちといった《情報制御理論を立ち上げた三人の博士に育てられた》魔法士たちとは違った生い立ちを持つ人物だ。

 

 天樹健三を学園都市から救い出すために、ウィッテンとアリスの手によって作り出された先天性、後天性魔法士たち。ヘイズも元々はウィッテンが培養装置を使い無から作り出した《先天性魔法士》だった。

 

 だが、その後彼のIブレインに欠陥が見つかり戦闘では全く使えないということが判明したため、彼は作られてからある程度たち社会常識をつけられた後、かろうじてIブレインの存在について聞いていたエリザベート・ザインの弟子――リチャード・ペンウッドに預けられた。

 

 その後の彼はかなり荒れていたらしい。何せ戦えないと分かっただけで、不良品の烙印を押され、ほぼ捨てるような形で他人に預けられたのだ。

 

 いくらリチャードが人格者だろうが、

 

 いくらウィッテン達が申し訳なさそうに謝罪していようが、

 

 戦うために生み出され、戦えなければ捨てられるというその事象は、生まれたばかりの赤ん坊にも等しい精神状態のヘイズにとっては我慢できない代物だった。

 

 だから彼は自分の足りない脳を使い、本当の意味で足りない自分の武器(Iブレイン)をつかいウィッテン達の度肝を抜くかを考えだした。

 

 そんな彼を苦笑い交じりに見つめていた育ての親であるリチャードは、彼にこんな提案をした。

 

『ちょうどいい。私も君の生みの親の一人が、一体どのような研究をしていたのか知りたかったところだ。お前のその脳……私に調べさせてもらえるなら、お前の力になれるかもしれないぞ?』

 

 ヘイズは悩みに悩みぬいて、リチャードの申し出を受け入れた。預けられてずっと過ごしていたため、この学者が悪い人間ではないことがわかっていたし、この言葉も単純に世界のどこかに消えてしまった敬愛する師の背中に少しでも追いつきたいからだと分かっていたから。

 

 その後ヘイズは、彼を先生と呼び師事しながら自分の欠陥だらけのIブレインを使い戦うすべを実地(・・)で学んでいった。

 

 とあるイギリス艦隊内に潜んだ死神を打倒し、とあるキャラバンを守ろうとしていた巨漢の傭兵と轡を並べ、不気味に笑うロシアの怪物殺し専門の修道女たちを相手取り死のタップダンスを踊った。

 

 そうして戦場で経験を積んでいった彼の経験値は、こういった場所では祐一なみの勘の鋭さを発揮し、戦術予測では祐一を軽く凌駕する性能を彼に与えていた。といっても、所詮は付け焼刃の現場兵士の視点なため、最近では軍師の真昼にそういった小難しい考えはすっかりまかせっきりだが……。

 

 だからこそ、クレアはこういった場面ではよくヘイズを頼りにしている。

 

 長い間共に旅をし、学園都市の外ではソコソコ名の知れた(偽名だが)便利屋として働いている二人。その経験が、クレアがヘイズに向かってこんな質問をする理由となっていた。

 

「そんな期待されても困るんだが……。俺真昼よりかは頭悪いぞ?」

 

「でも、トップが真昼さんで、あんたはその次点でしょ? つまり寮で二番目に頭がいいってことよ」

 

「なんだよその不釣り合いな称号……」

 

 うれしくともなんともねー。むしろ厄介ごとが増えそうで面倒だ。と、つぶやきながらもそれでもヘイズは、

 

「まぁ、ぱっと考えつく理由が一つほどあるんだが……」

 

「なになに!?」

 

 答えてはくれた。

 

「トマス=プラチナバーグて男は実はここ最近入ってきた若手の統括理事会議員なんだよ。この席に座るために外で相当あくどいことをしてきていたらしい」

 

「あぁ……まぁ、統括理事会の面々ではよくある話よね」

 

――なんでこういった席には善人が座りにくいのかしら? と、クレアはわずかに眉をしかめながら、続きを促す。

 

「そんで、そんな経歴を持つ人間は当然色々な戦力を持っているわけだよ。情報収集班やら、傭兵とのコネクションやら、自分の邪魔もの殺す暗殺者集団やら……。そして、このトマスは最近学園都市に入ってきたがゆえに、そういった戦力はすべて外に配置されている統括理事会議員なんだ」

 

「――それって?」

 

――単純に自分の戦力が学園都市内に移し終えていないだけなんじゃ? と、クレアが思ったその言葉は、当然ヘイズも予想していたのか、

 

「まぁ、それも一つの事実としては……ある」

 

「あるんだ……」

 

――やっぱりたいしたことないじゃない、こいつ? と、クレアが呆れかけた瞬間、

 

「だがそれよりも大きな理由としては……学園都市の外の情報が、他の統括理事会議員よりも、より多く、より速く、より深く手に入れられる可能性がある議員だということも示している」

 

「……!?」

 

 ヘイズのその言葉によって凍りつく。なぜならその事実は、

 

「俺達の力が研究されていた研究施設はすべて学園都市の外にある。当然だ。あの三人は学園都市の横やりを入れられないために、隠れ潜んであの研究を続けていたんだから。おまけに学園都市そのものが外への情報漏えいを防ぐために、出入りがかなり制限される都市だ。外から中を調べるのよりかは少し難易度が下がるが、かといって中から外を調べるのが簡単かと言われればさすがに首は横に振られる。だからこそ、今まで俺たちの研究施設は学園都市の調査の手からはある程度守られていたわけだが……」

 

 トマス=プラチナバーグは違う。ヘイズはそういった。

 

「おそらく学園都市が本腰入れて俺たちを調べに入った時、まっさきに俺達についての情報を手に入れるのはこのトマスだ」

 

「……」

 

 ヘイズのその言葉にクレアが一筋の冷や汗を流した時、

 

「っ!? 伏せろクレア!!」

 

「えっ!?」

 

 ヘイズが突然飛びかかってきて、クレアを地面に引きずり倒す。

 

 無理やり引き抜かれたジャックに走る痛み。ちょっとぶつけた程度の痛みではあるが不快であることに変わりはなく、クレアは文句を告げようと口を開きかけ、

 

【攻撃探知。ステータス・金属片。データ照合。攻性金属名――反射合金。通称《オジギソウ》】

 

「なっ!?」

 

 いつのまにか脳内で開いていた一枚窓と、まるで夢か幻のように、砂のように構造物をむしりとられ開いていたドアを目撃し愕然とする。

 

「ふむ。君たちの顔は私があらかじめハッキングして抜いておいたこのビルの職員の名簿には登録されていないな。だとするなら、とりあえずは不法侵入……もしかしたら下の階を襲っているあの娘の仲間という可能性も考えられるか。だとすると私もよくよく運がない」

 

 その扉の向こうから聞こえてくる声に、クレアは慌ててIブレインを全力起動し、知覚を開始する。

 

――なんて馬鹿なの私! 話に集中しすぎて、攻撃警告の発生に気付くのが遅れるなんて! と、自分に舌打ちを漏らしながら、クレアは慌てて懐から銃を取り出し、

 

「ごめん。助かったわ。で、作戦はいつも通りでいいのよね?」

 

「あぁ。お前が相手の攻撃見て」

 

「あんたがあいつをたたく!!」

 

 そう言いながら二人は肩を並べ、白衣を着た老人――《メンバー》統括役・博士に挑みかかる。

 

「全く運がない。私自身には戦闘能力はほぼないといってもいいのに」

 

 そんな二人の様子をみても、博士は泰然とした様子で踵を返し。

 

「仕方がない、別の隠れ場所へと向かうとしよう」

 

 元来た通路を戻り始めた。隙だらけの背中。今なら戦闘能力が低いクレアであってもたやすく殺せる。

 

 そう思えるだけの材料があるにもかかわらず、ヘイズとクレアは彼を追うことができなかった。

 

「くるわよ!」

 

「了解!!」

 

 空中に散布された目に見えないほど小さな金属片たちが、彼らの体を細胞単位でむしりとろうと、全方位から襲いかかってきたからだ!

 




 更新再開! 夏休みのバイト地獄を乗り切ったぞぉおおおおお!!

 ようやくメンバーとの全面戦闘に。まぁ一人ほど違うやつがいる気もしますがそちらはご愛嬌。

 超電磁砲(レールガン)の単行本でメンバーが活躍していて助かっている作者です。おかげで何とか書きあがった。

 ちなみに途中に出てきたメンバーのメンバー(ややこしいな……)は、ショチトルの前任者……のつもり。あのアステカ娘は大覇星祭が初任務だったらしいですからね。補充される前には前任がいたのではないかと……。

 ちなみに能力の方はウィザブレにあるものからインスピレーションを受けたものです。
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