世界は情報でできている。森羅万象あらゆる現象、物体は、物質が支配する通常の世界と、数値パラメーターが支配する《情報の海》の二重映しによって構成されている。
二十年前に一笑にふされ、学会から世迷いごとと追放された理論だ。だが、この理論を発表した人物たちはむしろこうなる事を望んでいたふしがあった。
自分達の研究結果が否定されたことによるショックを建前に学会を抜け、姿を暗ました三人の天才学者たち。
物理学者、天樹健三。
数学者、アルフレッド・ウィッテン。
大脳生理学者、エリザベート・ザイン。
彼らは世間から身を隠し一人の少女の協力のもと、当時の科学技術を一千年近く先取りした技術の研究に没頭した。
それにより、彼らの研究はある結論を叩きだした。
いわく、一定の演算速度以上の演算速度をもつ計算機は《情報の海》に介入、改変ができるということ。
いわく、《情報の海》に介入することにより、まるで鏡のように平行して存在する現実世界に影響を及ぼすことができるということ。
いわく、世界干渉に必要な演算速度はツリーダイヤグラムの数千倍というでたらめな演算速度。それほどの演算速度を出せるのは、人の脳に埋め込む、または生まれつき持っている……《Iブレイン》という特別な生体コンピューターだけだということ。
そうして生まれたのが、《魔法士》。情報を操り世界を改編する、超高速演算能力者達だった。
…†…†…………†…†…
セラが事件に巻き込まれた当時の朝に、時間は巻戻る。薄暗い部屋の中で少年は目を閉じて頭の中の窓にうかぶ、数千近いファイルを消去したり合成したりすることを繰り返していた。
《「能力創生」を開始……》
《エラー。演算速度不足。プログラムを破棄。能力創生を強制終了》
「やっぱりダメか……。相変わらずヘイズさんの演算速度は異常だな。ボクの演算速度の3000倍ってそれもう人類の限界を越えていると思うんだけど……」
少年はそういいながら新しい能力を発動させるために何か方法はないかと思考を始める。
その時だ!
「れーん。起きてんの? だったら早く下に降りてきなさい!! ご飯冷めちゃうでしょうが!!」
「えっ、ちょ、月夜ネエ!? わかった、起きるから今は開けない……」
「ったく、朝からなにやってんのあんたは…………………」
扉を開けて少年の部屋に入ってきたのは、少年と少し似ている印象を受ける活発な雰囲気をだす女性だった。
彼女はしばらく少年をみつめたあと、バツが悪そうに目をそらす。
「いや……確かに悪ふざけで『高いところにぶら下がると背が伸びる』って嘘を教えたのは私だけど。まだまだ成長期なんだから、そんな切羽詰まった顔でぶら下がる必要はないわよ。きっとそのうち……伸びるって……」
「ウワァ───────────ン!!!!」
泣きながら下に降りていく少年を見送り、月夜はため息をつきながら少年が今までぶら下がっていた、ぶら下がり健康機を片付けるのだった。
…†…†…………†…†…
『天樹荘』
管理人黒沢夫妻が管理するこの下宿には、情報制御理論に関わった関係者たちが、集まり住んでいた。
魔法士に研究者。傭兵に商人。そして医者。
多種多様な人物たちが、アレイスターに情報制御理論を気付かれないようにここで暮らしていた。
先程、姉に恥ずかしい場面を見られて心に大きな傷を負ったのは、天樹錬。魔法士である。
天樹健三の遺伝子をもとに人工培養された彼は、本当の意味で天樹健三の子供である天樹月夜・天樹真昼の弟だった。
彼のIブレインは、始まりの魔法士にして、学園都市に原石として追われていたアリス・リステルのIブレインの複製品が使われている。
能力名は悪魔使い。能力の内容はおいおい告げていくとしよう。
さて、月夜によって傷つけられた彼だが、基本的にいつまでもそのことを気にしていられるほどネガティブな性格ではないため、気持ちをあっさり切り替えて寮の食堂に向かっていた。
ちなみにこの寮、個室はあるが基本的な生活空間は殆ど共同である。
大人数で集まれる食堂や、何人かでだらけることができる居間。
能力特訓のための道場など……設備はかなり整っていた。これは、二年ほど前に黒沢祐一と結婚した七瀬雪、あらため黒沢雪が考案したもので、
『せっかくの仲間なんだし大人数でたのしくやりましょう!』
という意見のもとに作られたものだ。
両親や肉親がいない錬などといった人工培養型の魔法士たちにとって、正直このシステムは有り難かった。
おかけで本来親がいない彼らだが、特に不自由することなく人の愛情に包まれて育つことができた。
まあ、寮の人達の前では気恥ずかしくて言えないことだが……。と、内心で赤面しつつ廊下を歩いていた錬だったが、
「ん? 錬か。今日は早いな」
「おはようございます祐一さん」
漆黒のスラックスに同じく黒の細身のセーターを着こなした、寮の管理人黒沢祐一がケータイを片手に、誰もいない道場から出てきた。
って、あれ? こんな時間から道場に来てるなんて……何かあったのかな? と、思わず首をかしげる錬。そして、
「もしかして……浮気?」
「不穏当な発言はやめろ。雪が聞いたらお前が学校から帰ってくるころにはウチが半壊しているぞ」
「すいません、祐一さん。それは洒落になりません」
手術によってIブレインを埋め込んだ彼は、黒沢雪、レノア・E・クラインと並び称されるこの寮の魔法士の中で最強の一角と謳われる男だ。
基本的に寡黙な人だが、意外と相談にはのってくれるため、頼れるお父さんのポジションに君臨している。
「セラから迷ったと連絡があってな。少し食堂から席を外していた」
「ああ。セラは今日から常盤台でしたね。あれ? でもどうして席を外したんですか? 別に食堂から指示をしても……」
そして食堂についた瞬間、錬は絶句し祐一は額を押さえた。
そこには、真っ赤になって机に突っ伏したレノア・E・クラインが一升ビンに囲まれて眠っていた。
「あれの前では、セラの話しはしないほうがいいだろう?」
「ていうか、まだショックから立ち直っていないんですか!? セラの常盤台入りが決まったのは一週間前でしたよね!!」
レノアは重度のチャイルドコンプレックスだった。子離れができないダメ親の典型例である。
「セラぁ……なんでいっちゃったの? お母さん寂しすぎて死んじゃうよ〜」
「レノアさん……正直ひきます……」
「レノア、ほらいい加減にしろ! 寝るならせめて自分の部屋でねろ!」
「うっさいわね、祐一……。こんなものまだ序の口よ! あんたも飲みなさい!! どうせ雪を働かせてのヒモ生活なんだから朝から酒飲んでも大丈夫でしょう!」
「………………………」
「祐一さん! 表情が物凄く怖いですよ!? あ、蒼蘭を取りにいくって……なにをするつもりなんですか!?」
完璧な無表情になって愛剣を取りにいこうとする祐一を必死に止めながら、錬がそう叫ぶ。そのとき、
「あ、錬さんおはようございます」
「フィア! 助かった、ちょっと祐一さん止めるの手伝って!」
「え? あ、はい! わかりました!!」
バジャマ姿で起きてきたのは金髪碧眼の美少女。フィア。最近になって培養槽から出てきた天樹健三が作った最後の魔法士である。
培養槽にいたときから面倒をよく見ていてくれた錬に恋心を抱いている《同調能力者》の少女だ。
この能力の説明も後に回すとしよう。
培養槽をでたその時に錬に告白をして、1週間ほど迷った錬がOKの返事を返したため、現在幸せ真っ盛りのフィア。今も錬の後ろから抱きついて、祐一を止める手伝いをしながら、幸せそうに頬を桜色に染めながら微笑んでいた。
「たっだいま……。なにこの騒ぎ?」
「なんや? なんかあったんか……って、酒臭っ!!」
「あ、おかえりなさい。お母さん、イルさん」
寮の玄関から入ってきたのは、長い髪をボサボサにした女性と、真っ白な関西弁の少年。
女性の名前は如月弥生。現在では、唯一Iブレインの埋め込み手術ができる外科医にしてフィアの里親となった人だ。学園都市では《
白い少年はイル・N・ファクトリー。天樹健三救出のためにアルフレッド・ウィッテンが作り上げた三人の特殊魔法士の一人だ。能力は反則級といっていいほどとてつもない物を持っているが、現在は冥土帰しのもと、彼の助手として医療の現場に携わっている。
「レノアさんかいな……。またえげつない飲み方しよったな、おい!」
「私にはこの気持ちわかるわ……。フィアがうちから出ていくなんてことになったら……。ああ、でも常盤台の制服をきたフィアも見てみたい!!」
「少し黙っとけや、このチルコン」
「お母さん……」
そして、もう二人この寮の住人が二階からおりてくる。
「あなたという人はいつもそうだ!? なぜことを起こす前に私に相談しない!? 聞いているのか真昼っ!!」
「あぁ、はいはい。ごめんね心配かけて」
「なっ!? だ、誰があなたの心配など!! 私はただあなたの勝手な行動でこの寮が危険にさらされることを憂い手いるだけであって、別にあなたのことなどまったくもって心配などしていない!!」
「それは、僕ならなんとかするって信頼してくれているってとっていいの?」
「―――――――――――――――っ!!」
おそらく月夜に起こされたのであろう彼らは、いつものように騒がしくケンカをしながら、それでもどこか仲はよさそうな雰囲気で、食堂に入ってきた。
「おはよう」
「なにかあったの、錬?」
「あ、真昼ニイ、サクラ姉さん。おはよう!」
「おはようございます!!」
そのカップルの片方は、月夜から活発さを抜いて落ち着きをプラスしたうえで男にしたような人物。月夜の双子の弟にして、錬の名付け親兼実兄。天樹真昼だ。
この寮に引きこもっているかれだが実はネットワーク上で多数のビジネスや、株式市場での荒稼ぎをなりわいとしている
他にも悪魔使い二人のシステムフレームの構築。光使いの新しい補助デバイスの設計。アレイスターの計画を未然に、こっそりと潰すなど――頭脳面や策略が必要な仕事では間違いなくアレイスターに並び立つほどの鬼才だ。
女性のほうは、黒髪のツインテールに落ち着いたシックな服装できめた雪のように白い肌をもつ美少女。
サクラ・ウィッテン。名前からわかるとおり、アルフレッド・ウィッテンの実の子にしてアリス・リステルの子供……つまり、アルフレッドとアリスの子供だ。
セラと同じく遺伝的にIブレインを保有しており、能力は錬と同じく悪魔使い。実力のほどは、おそらくこの寮にいる魔法士の中でもトップクラスの戦闘能力を保有している。
「ディー君はどうしたんだい? こういうレノアさんを宥めるのはセラのフィアンセの彼の仕事だろ?」
「ディーなら風紀委員会のしごとよ。あと真昼さん、勝手にディーを婚約者にしないで。あの二人はまだ手も繋いだことないだから、不用意なことを言って関係が崩れたら大変でしょ!」
そう言って、またまた二階から降りてきたのはブルネットの肩まで伸ばした髪を持つ、金色の目に光を宿さない少女。
クレア・N・ファクトリー。イルと同じく特殊魔法士の一人。現在はある男と傭兵稼業をやっており世界中を(アレスターにばれないようにこっそりと)飛び回っている。真昼と月夜ともう一人の寮の住人の共同作品、高速150メートル級高速機動艦『Hunter Pigeon』(これまたこっそりと作った地下シェルターに格納されている。近くの海底から発進しているようだ)のマスターの一人。
最後の特殊魔法士の一人、ディー・N・ファクトリーのよき姉でありセラの恋を応援するよき理解者だが、いささか過保護すぎるきらいがある心配性の姉だった。
「おはようございますクレアさん。あの……レノアさんどうにかなりませんか?」
「雪姉さんに期待するしかないわね」
もはや混沌と化しつつある食堂をみて、錬とクレアはお互いにため息をついた(ちなみに祐一はなんとか思いとどませることができた)。
そして再び食堂のドアが開き、今度こそ雪姉さんか!? と振り向いた錬や、雪の登場を期待していたクレアは同時にため息をつく。
「はいったと同時にため息をつかれたのは初めてだぞ」
若干額に青筋を浮かべているのは、イルとは逆に真紅な青年。
燃えるような赤い髪に一房だけ青くなった前髪。船の整備でもしていたのか、油に汚れたコートやズボンも全て紅で統一されていた。
ヴァーミリオン・CD・ヘイズ。アルフレッド・ウィッテンが作り上げた魔法士の中で唯一の失敗作にして、学園都市を騙し8人いるレベル5の一人として君臨する、学園都市第7位《
現在はクレアと相棒として名を馳せており、学園都市にいる時間のほうが少なかったりする。
先ほどあげた《Hunter Pigeom》のもう一人のオーナーだ。
「ヘイズ……雪姉さんしらない?」
「雪? いや知らないな。お前なら見つけだせるだろクレア」
「雪姉さんに勝手に私生活覗かれるの嫌がるから……」
二人はそんなことを話ながら食卓についた。ほかのメンバーも、朝食を作りにいった、祐一・フィア・真昼……そして、意外にもイル──以外は食卓につき朝食がくるのを思い思いの姿勢で待っていた。
そして食堂の扉が再び開き、ここにいなかったメンバーが全員顔をだす。
「うっわ…………予想通りあれてんな~レノアちゃん。アルコール中毒になってね?」
まず顔を出したのは、刀匠・シオン。Iブレインを持たない一般人である彼だか、武器作成の腕はぴかいちで、
佑一と雪の愛剣《紅蓮》《蒼蘭》や、
錬の武装である《サバイバルナイフ・エクスプローラ》。
サクラの武器である《飛刃・桜花》。
ここにはいないディーの愛剣《双剣・森羅、万象》。
そして光使いの補助デバイス《D3》も彼が作り上げた。
天樹健三の幼馴染を
「みんな……おはよう」
続いて顔を出したのは、シオンの助手的ポジションに納まっているエドワード・ザイン。
机上の空論を作り上げることに従事したエリザベート・ザインが死ぬ間際に唯一作っていた魔法士《人形使い》の少年だ。
エリザベート・ザインはそのことを誰にも言わずに死んでしまったので、彼が見つかったのは三日前とかなり最近のことだ。
ウィッテンやザインの遺産を探して回収していたヘイズ達が見つけたのだが、誰とも接してこなかったためか、エドワードからは感情がスッポリとぬけおちてしまっていた。現在は無駄にハイテンションなシオンの隣で助手をやりつつ、心のリハビリをしている。
「アァアアアアアアアアアアアアアア!! 私の大吟醸!! 今日飲もうと思って楽しみにしていたのにぃいいいいいいいいい!!」
絶叫をあげたのは先程からちょくちょく出ていた天樹月夜。真昼の双子の姉であり、錬の実姉。
天樹健三から工学の才能を受け継いだ彼女は情報制御の技術をいかした装備品や生活用品を作ることでこの寮に貢献している。おそらくそこらへんの廃材で建物一つぶち抜く
現在は《
そして、最後。この寮の肝っ玉母さん――黒沢雪がにっこりとした笑顔でレノアに近づき、
耳を引っ張り、レノアを叩き起こした。
「イタイイタイイタイ! ミミチギレル、ミミチギレル!!」
「レノアッ! いつまでへたれてんのアンタは! 子供はいつか親から離れていくものなんだからしゃきっとしなさい!」
「ハィイイイイイイイイイイイイ!!」
幼なじみである彼女等は実は常盤台出身で、学生時代はターミネーター寮官とともにバカをやっていたお転婆娘たちである。現在はふたりともとある事件でお世話になった黄泉川愛穂に誘われ
黄泉川愛穂や月詠小萌とは同僚で、錬の学校の新米教師である。
これが現在、天樹錬をとりかこむ煩いながらも賑やかな、大切な家族たちである。
…†…†…………†…†…
結局、混沌としてしまったため、朝食にありつけたのはかなり遅くなってからだった。
現在時刻はAM8:30。全力疾走しなければ普通に遅刻ギリギリの時刻だった。
「いや、まあ……もうすぐ夏休みだし、授業は午前中だけだけどさ……」
担任の教師が泣いてしまうと真剣に心が痛むため、錬はそれなりのはやさで町を疾走していた。そんな時、後ろから物凄い勢いで追い上げてくるツンツン頭の少年に錬は気付く。
「だあああああああああ!! 不幸だぁああああああああああああああああ!?」
言わずもがな、Mr.アンハッピーこと、上条当麻だ。
「当麻! 当麻も遅刻なの?」
「錬!? お前が遅刻なんて珍しいな!」
「いや……ちょっと、レノアさんがね……」
「……ああ。セラのことか」
「当麻はどうして……って、きくまでもないね」
どうせ、いつものように信じられないほどやっかいな不幸に遭遇していたにちがいないと予想して、錬は多分に呆れが含まれたため息を漏らした。
「で、今度はどんな事件? 空から女の子が降ってきたの? 女の子をくしゃみで全裸にする魔法先生にでもあったの? リリカルマジカルっちゃう魔法少女に砲撃されたの? ああ、最近では女性しか動かせない機械を動かして女子校に編入させられてたよね?」
「そんな事件はねーよ!? お前、ほんと最近青髪ピアスに影響されすぎだぞ!」
何時ものように無駄話をしながらも二人は必死に足を動かす。
〜数分後〜
錬は《魔法》を、上条はいつも遅刻ギリギリで登校をしているため、鍛えられた足を、フル回転させ閉まり始める校門へと飛び込み、そして……!!
ガシャン。
無情にも門にぶつかり、学校のそとに締め出された。
「「…………………」」
思わず無言になる二人の前に巨乳と広いデコが特徴的な少女が、後ろに仁王を顕現させながら門の向こうに出現していた。
「お前たち……今までは黒星がないから見逃していてあげたけど……」
「ちょっとまってよ、吹寄。僕はいつも間に合っているよね? 怒るんなら当麻だけにしてよ!!」
「てめぇ! 卑怯だぞ、錬!? 俺を見捨てる気か!!」
「うるさいよ、当麻! 吹寄は怖いんだから、怒られるのはMr.アンハッピーの当麻だけで十分でしょ! 巻き添えを食らうのはあれだから切り離し作業に移ります!」
「させるかああああああああ! 俺の不幸をお裾分けぇええええ!」
「やめてよ、当麻! それは人間の耐えられる物じゃない、致死性の毒よりも悪質だよ!」
「どういう意味だ、それ!?」
「いい加減にしなさい! このバカ二人があああああああああああああああ!」
平和な学校を揺るがすほどの雷が校門に落下し、委員長による私刑が二人に行われたのは言うまでもない。
…†…†…………†…†…
「にゃはははははは! そいつはけっさくだぜ!」
「さいなんやったな、カミやん。錬……」
放課後、上条と錬は金髪にグラサンアロハといった明らかに頭の悪そうな不良のような恰好をした少年―─土御門元春と、
このメンバーの中でも随一の変態。美少女であれば、他の全てが美徳となる草食系男子ならぬ、雑食系男子──青髪ピアスと一緒にダベりながらゲーセンへとむかっていた。
この四人、実は吹寄からクラスの4バカと呼ばれており、意外と仲がいい。まあ、錬としてはフィアにはあまり紹介したくない、悪友にカテゴライズされる人種ではあるのだが……。特に青髪ピアスは……。
「ああ、そういうたらみんな。《レベルアッパー》って知っとる?」
「ああ? なんだそりゃ」
その話題が出たのは、何かの馬鹿話のついでみたいに軽いものだった。
最近やたらと暑いから、何か涼をとれる話をしようと言うことで最近噂になっている怖い都市伝説を話そうと言うことになったのだ。
上条が《恐怖の脱ぎ女》を披露し(青髪ピアスが物凄く興奮していた。)、土御門が《ドラム缶に乗って移動する少女の幽霊》(途中で妹だとわかり凹んでいた。)、錬が《幽霊が動かす車》(途中に本当に無人で動いている自動車を見つけて、四人は興奮して追い掛けたが小萌先生が運転していた。)を話したあとに青髪ピアスが唐突に話題にあげたのだ。
「形、内容、正体は一切不明。でもそれを使ったら、あっという間に超能力のレベルアップができるんやって!!」
「それはなんだかうさんくさいにゃー。今までの中で一番信憑性がないにゃ」
「うるさいわ、妹が都市伝説になっとるくせに!」
「それは、今は関係ないだろぉおおお! ていうか、誰だぁあああああ!? ウチの舞夏を幽霊呼ばわりしやがったやつはぁああ!! 見つけたらただじゃおかないにゃぁああああああああああああ!」
重度のシスコンである土御門は妹のために気炎を上げるが、他の面子はきいていなかった。
「ていうかさ、そんな便利なものがあるなら能力開発なんかしないっての」
「そうそう。大体本気でそんなものがあったらスキルアウトなんてその存在意義をなくしちゃって解散するでしょ」
まあ、真昼にいなら何か考えつくかもしれないけど、超能力には興味ないって言っていたしな……。と、現在も(言っちゃ悪いが)寮で引きこもっている兄の顔を思い出しながら錬はかわいた笑みを浮かべる。
「やっぱ夢物語やんなー」
「青髪は能力が手にはいるなら何がいい?」
「そら勿論、
犯罪者予備軍に錬と上条が一緒に制裁を加えていたときだ、
「風紀委員です。そこ! なにしているの!」
慌てた声と共に、腰に長い棒を包んでいるように見える竹刀袋を二つつりさげた少年が、緑の腕章を見せつつこちらにやってきた。
「あれ、ディーさん!」
「錬くん!? なんでリンチなんかしているの!」
「平和のためです」
「その言葉の使用は国連にしか許されていないよ!?」
声をかけてきた
事実、青髪ピアスは、
「うあ、ごっつい美人さんやん! 紹介して錬君!?」
といってしまい、ディーの心に深い打撃を与えていた。
現存する魔法士最後の一人ディー・N・ファクトリー。祐一や、雪と同じ能力を持つ彼は、現在は鍛練のためわざと能力を封じて風紀委員の仕事をしていた。
「つ、次からはこんなことがないように」
「ごめんなさい」
結局、ディーに簡単な事情聴取がされたあと厳重注意を受けて四人は解放された。時刻は夕方になってしまっていたため、四人はゲーセンにはいけなかったが、今日は土御門の家で舞夏が新しい料理に挑戦すると言うことをきき、上条、青髪とともに錬もご相伴に与ることになった。
錬はフィアに電話をいれて夕飯をつくってもらうことをつたえて(フィアは電話の間中ずっと不機嫌だった)、土御門の部屋へと足を向けるのだった。