とある科学の魔法士たち   作:過労死志願

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幻想御手《レベルアッパー》編
決闘よっ!!


「ご苦労さまでした御坂さん」

 

「すっかり日も暮れちゃったし、コンビニで立ち読みして帰ろっか?」

 

「そうですね。御坂さんが教えてくれた漫画の続きも気になりますし」

 

 セラの能力の正体を美琴が知ってからしばらくたった。

 

 真昼が裏から色々と手を回したのか、セラの身体検査(システムスキャン)での結果は『レベル3・空間制御能力』という結果に落ち着いた。Iブレインの存在は上手く隠蔽できたのである。

 

 その際、美琴や白井も色々と暗躍していたがそれはまた別の話。

 

 現在、美琴とセラはとある事件を解決した直後で常盤台の寮へと帰ろうとしている最中だった。

 

 そんな二人がコンビニに入ったとき……。

 

 

「不幸だァアアアアアアアアアアアアアアアアアアア! なに!? どうしろっていうの、神様!!」

 

「笑えばいいと思うよ?」

 

「笑えるか! 少し黙れ、バカ!!」

 

「あ……」

 

「あら?」

 

「「あ……」」

 

 

 二人は不幸な少年と、悪魔使いに出会ったのでした。

 

 

 

…†…†…………†…†…

 

 

 

 一ヶ月前。

 

 美琴は見るからに不良そうな集団に囲まれてナンパをされていた。

 

 まあ、見た目がか弱い中学生(笑)をごつい男たちが囲んでいるところを見ると、ナンパというより恐喝に近いものだったが、とにかく美琴は襲われていたのだ。

 

『ふ──────。私に声をかけてくるなんてバカな連中ね……。まあ、あんまりしつこいようなら電撃を食らわせて追っ払えばいいか。けど……』

 

 

 美琴は内心でそんなことを考えながら周りを見渡した。

 

 眼鏡をかけた少年も、ヘアピンをした少女も、みんなこちらに目を合わせようとしない。

 

 唯一こちらを心配そうに見ていた学生も、それに気づいた不良たちに脅されて逃げ出していた。

 

『まぁ、それもそうか。見ず知らずの人間のために自分を犠牲にする奴なんて……』

 

 その時だ、

 

「お────! イタイタ。こんなところにいたのか。だめだろ────勝手にはぐれちゃ」

 

「は?」

 

 不良たちを掻き分けて美琴の前に現れたツンツン頭の少年は、わざとらしく言葉を連ねながら美琴の手をとり不良たちから逃げ出そうとした。

 

 だが……………。

 

「ちょっと、誰よあんた。馴々しいわね」

 

「「「「……………………………………………」」」」

 

 空気が瞬間冷凍されたかのように冷え込んだ。

 

 数秒後。

 

「おまっ……。『知り合いのふりして自然にこの場から連れ出す作戦』が台無しだろう─────!!」

 

「なんでそんなことしないといけないのよ」

 

 せっかくの親切を無下にされた少年は頭を抱えてブチキレるが、美琴はとくに気にした風もなく轟然と言い返した。

 

 しかし、不良たちは二人の言い争いが終わるまで待ってはくれない。

 

 案の定、少年こと───上条当麻はあっさりと不良たちに囲まれてしまった。

 

「ああ?んだぁテメェ」

「文句あんのかよ、コラ!?」

 

 不良A・Bがそういって凄んでくるのをみて、当麻は観念したようにため息をついたあと、鋭い目つきで不良達を睨み返した。

 

「ああ、そうだよ。恥ずかしくねーのかよ、おまえら!」

 

「なんだと?」

 

「こんな大勢で女の子囲んで、情けねぇ」

 

『こいつ……』

 

 そういって、多数の不良に啖呵をきる姿をみて、美琴は感嘆の息をもらした。

 

 特別な能力があるわけでも、身体能力が高いわけでもなさそうなのに、この人数の不良を相手にひるまず、少女を助けに入ったその姿勢を美琴は評価したのだ。

 

 

 もっとも、

 

 

「大体おまえらが声をかけた相手、よく見てみろよ! まだのガキじゃねーか!!」

 

 ピシッ……………。

 

 当麻の余計な一言によってその評価は大暴落することになるのだが……。

 

「さっきの態度を見ただろ、年上に敬意を払わないガサツな態度!」

 

 ピキ…………。

 

 怒りのあまり氷結していた美琴の額に青筋がうかぶ、

 

「見た目はお嬢様でも、まだ反抗期もぬけてねーじゃん!」

 

 ピキッ、ピキッ!!

 

 美琴の目元が影に隠れて見えなくなった。

 

 漫画で静かに怒るひとの目が影で見えなくなるあれである。美琴はそれをリアルに体得しているようだ。

 

「おまえらみたいな群れなきゃガキも相手にできないようなヤツらはムカつくんだよ!!」

 

バチバチバチバチチチチチチチチチチチチチ!!!!!!!!

 

 放電現象が発生する。触れるな、危険状態だ。

 

 そんなとき、

 

「ちょ、当麻なにしてんの!!」

 

 悲鳴じみた声を上げながら駆け寄ってきたのは黒髪のどこにでもいそうな平凡な少年──天樹錬。

 

 錬は当麻の肩を掴みあわててその場を離脱しようとしていた。

 

「大丈夫だ、錬。この程度の奴らにはまけねぇ!」

 

「必勝できんのはタイマンの時だけのくせに何言ってんだこのバカ。人数も数えられないのか! 大体僕は不良から逃げるなんて一言も言ってない!!」

 

「ああ!? じゃあ誰から逃げるって……」

 

 瞬間、

 

「私が一番ムカつくのは……」

 

「え!!!?」

 

「まず!!」

 

「お前ダァアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」

 

 絶叫と共に美琴の体から食らえば気絶間違いなしの電撃がほとばしった!

 

「「「「「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」」」」」

 

 瞬時に黒焦げになって倒れ伏す不良たちを、鼻をならしながら見下したあと、美琴はまずったとばかりに額を押さえた。

 

「しまったな〜。こんな雑魚相手に能力を使っちゃうなんて……」

 

 その時だ。周囲を見渡した美琴の目に信じられないものが映った。

 

 まずは錬。彼はいつのまにか地面に手をついており、その周囲には人の手の形に変形したアスファルトが乱立し、美琴の電撃を吸収していた。

 

 おそらくは自分の能力を利用して即席の避雷針を作成したのだろう。

 

 まあ、これは別に驚くべきことではない。いくらレベル5といっても、能力には相性と言うものがある。電撃だけなら、低レベル能力者でも避けることはできる。

 

 問題はもう一人、当麻の方だった。

 

「な、なんだあれ!」

 

「当麻……もうちょっと新聞とか読もうよ」

 

 ツンツン頭の彼は、右手を突き出すだけで、美琴の電撃を消滅させたのだ。

 

「当麻……彼女の名前は御坂美琴。常盤台中学在席のレベル5第三位。《超電磁砲(レールガン)》だよ」

 

 錬の解説に当麻は額を押さえた。また厄介な相手に関わっちまったと。

 

「ちなみに《超電磁砲(レールガン)》はバトルジャンキーという噂が」

 

「先に言えぇええええええええええええええええええ!」

 

 サッと逃走態勢に移り背中を向ける当麻と錬に向かって、美琴は情け容赦ない電撃を放った。

 

「当麻うしろ!」

 

「つっ!」

 

 錬の警告に当麻は慌てて後ろを向き右手で電撃を打ち消した。

 

『やっぱり……。電撃を消したのは錯覚じゃない?』

 

 美琴は優秀な頭脳をフル回転させながら、相手の正体を探ろうとするが、あいにく美琴の知識のなかには、右手でレベル5の電撃を打ち消す能力なんてでたらめな物は存在しなかった。

 

「あんた……一体何者なの?」

 

「ほら当麻ご指名だよ!」

 

「まて、お前! なに逃げようとしてんだ!!」

 

「真昼にいからレベル5はやばいのが多いからあんまり関わるなって言われているの!」

 

「テメェ、またオレにだけ厄介ごと押しつけるつもりだろ! そうはいくか!!」

 

 醜い喧嘩を繰り広げる二人にイライラがつのった美琴は再び電撃を放ち返事を促した!!

 

「いいから答えろォオオオオオオオオオオオオ!」

 

「「ギャアアアアアアアアアアア!!」」

 

 二人は右手とアスファルトの腕を使い、なんとか美琴の電撃を散らした。

 

「こ、答えろって言われても……」

 

「俺たち身体計測(システムスキャン)ではレベル0なんだけど……」

 

「当麻………僕はレベル1の《偽獣使い》だよ」

 

「は!?」

 

 美琴が二人の予想外の返事に硬直した瞬間!

 

「いまだ!」

 

「にげろ!」

 

「あ、ちょっと! 待ちなさい!!」

 

 美琴の一瞬のスキをついて、二人は猛ダッシュでその場を離れるのだった!

 

 

 

…†…†…………†…†…

 

 

 

 そして現在。

 

「久しぶりね……」

 

「ゲッ、ビリビリ中学生!?」

 

「錬さん!?」

 

「セラ? 何しているのこんなところで!!」

 

 不幸なことに、二人は美琴に再開してしまうのだった。

 

 

 

…†…†…………†…†…

 

 

 

「当麻……君って奴は……」

 

「いうな。俺だって好きでこうなった訳じゃねぇ」

 

 さて、物語はコンビニでの不幸な再会から時間を少し遡って始まる。

 

 学校が午前のうちに終わり天樹荘に帰った錬はフィアの今日半日の散策の報告を聞いていた。

 

 培養槽から出てまだ日が浅いフィアは、よく1人で学園都市の散策に出かけて町に慣れようとしている。

 

 理由は早く錬と一緒に学校へ行きたいから。その言葉を聞いたとき錬は悶え死にそうになったのだが、別に詳しく掘り下げる必要はないので割愛。

 

「それでですね、私路地裏に迷い込んでしまって……」

 

「ちょ、大丈夫だったの、フィア!」

 

 その話の中で聞き捨てならない単語を聞き、錬は声を上げた。

 

 学園都市は学生の街。と言っても、悪い奴、酷い奴がいないわけではない。むしろ、子供特有の罪悪感の欠如や、強力な能力を持っている分、普通の犯罪者よりも悪質な連中が多い。その最たるものが路地裏を拠点に暴れ回るアウトロー。レベル0武装集団、《スキルアウト》。

 

 錬も何度かお世話になった連中だ。

 

 まあ、この界隈を縄張りにしているスキルアウトは、最近はリーダーが変わったようで随分と硬派な組織になったようだが、末端にはまだその思想が行き届いていないようで、あいつらが行っている厄介ごとは一向に減っていないというのが現状だった。

 

「はい……。変な入れ墨を入れた人たちに囲まれてしまって……」

 

 瞬間、錬は無言で食堂を後にする。

 

「錬……さん?」

 

 そしてしばらくして帰ってきた錬は、シオンが作った《どうみても普段着にしか見えない! でも実は防弾スーツ》というなめきった名前の服を着て、腰には巨大なサバイバルナイフ《エクスプローラ》を下げ再び食堂に現れた。

 

 その目の瞳孔は完全に開いており、全身から空気を震わせるような殺気を放出している。

 

「フィア……その場所がどこか教えて。そいつら血祭りにしてくるから」

 

「錬さん、落ち着いてください! そのときは祐一さんに助けていただきましたから何もなかったんです!!」

 

「え、そうなの? フゥー、良かった……。でも、フィア、あんまり危ないところに行ったらダメだよ。フィアに何かあったらボクも寮の皆も悲しむからね」

 

「………………はい!!」

 

 フィアは満面の笑みでそう答えたあと、錬に抱きつきその体をギュッと抱き締めた。

 

「心配してくれてありがとうございます、錬さん」

 

「え、えぇっ! あ、ああ、うん! ど、どういたしまして!!」

 

 顔を真っ赤にして頭を茹らせながらも、錬はしっかりとフィアの背中に手を回し、その体を抱き締めるのだった。

 

 

 

…†…†…………†…†…

 

 

 

「と、いうわけで当麻に来てもらったんだ」

 

「どういうわけだよ……なんで俺はさっぱらから、友達ののろけ話を聞かされてるんだ? 不幸だぁあああああ……」

 

 そんな話が合った数時間後。場所は当麻が住んでいる寮の前。

 

 錬はそこに当麻を呼び出し今日の事情を話していた。

 

「それで………おまえは俺に何をしてほしいんだよ」

 

「当麻には僕と一緒に町を巡ってもらいたい」

 

「何でまたそんなこと?」

 

 呆れ顔の当麻に、錬はどこぞの探偵のようなポーズをとりながらこう宣った。

 

「僕としては今後フィアにはあまり危険な目には会ってほしくないんだ。彼女ってことを差し引いても、女の子があんまりヤバイことに首を突っ込むのはいただけないしね」

 

「まあ、それに関しては大いに賛成だけど」

 

「よって今日は、学園都市で入ってはいけない場所(非公式)を探して地図に書き込もうと思うんだ」

 

「ああ、なるほど。確かにそういうのあったほうが安心していられるよな。で、なんで俺を呼んだの?」

 

「決まっているじゃないか。当麻は歩けば不幸に当たるからね。路地裏適当にぶらついていたら、勝手にヤバイ場所に出ると思って」

 

「上条さんは不幸を捜索するためのダウジングマシーンなのでせぅ!」

 

 思わず怒鳴ってくる当麻を軽くあしらい、錬は路地裏に突撃した。

 

 

 

 結果から言おう。面白いぐらいにヤバイ場所に出まくった。

 

 出るわ出るわ不良の大群。実のところ面白半分で当麻を巻き込んだ錬だったが、この結果にはさすがに引いた。

 

 まあ、二人は仲良く協力し、不良の皆様にあつい御灸を据えたわけだが……。

 

 流石の当麻の不幸っぷりに、錬は愕然とするのだった。

 

 と、ここで冒頭に戻るわけなのだが、

 

「何か……今日はもう疲れたな」

 

「うん。ヤバイ場所は大体書き込んだし。これでいいよ」

 

 ゲッソリとやつれながらへこむ当麻の言葉に、錬は大きく頷いた。

 

 なんだか、十数年分の不幸にみまわれた気分だ。

 

「ご苦労様、当麻。お礼に何か奢るよ」

 

「!? マジか!?」

 

「マジマジ。財布の中にある一万円以内の物だったら何でも奢っちゃう」

 

 錬の全財産であったが、今の当麻にお礼として払うには足りないぐらいだと錬は思っていた。それ程にまで今日の当麻は不幸だった……。

 

「よーし!ファミレスに何か食いに行こうぜ! 実は朝から何も食ってないんだ」

 

「……………何でまたそんなことに?」

 

「実は生活費が……あ」

 

 そこで当麻は何かを思い出し、申し訳なさそうにこちらを振り返った。

 

「ワリィ。ちょっとコンビニ寄らせて」

 

「別にいいけど、どうしたの?」

 

「いや、今月分の生活費無くなっていてさ。今日両親から追加が届くから引落に行きたいんだけど……」

 

「なんだ、そんなことか。いいよ、別に。立ち読みでもして待っているから」

 

「スマン! あ、ちょうどいいところに」

 

 珍しく運が良く、早々にコンビニを見つける事ができた錬と当麻はさっとコンビニに入りATMの前に移動した。

 

 だが……。

 

『ERROR。暗証番号が違います』

 

「え……」

 

「当麻……君って本当にアレだね」

 

「いや、待て錬! 何かの間違いかも……『ERROR。暗証番号が違います』何でだぁあああああああ!」

 

「……」

 

 錬から送られてくる生暖かい視線に頭を抱えながら、ERRORを出し続けるATMに当麻はため息をついて両手を上げた。

 

「しゃーない。別のATMで引き出すか」

 

 そういいながら取り消しボタンを押し、カードを取り出そうとする当麻だったが、

 

「あれ……………あれ!?」

 

 何度取り消しを押しても一向に反応を返してこないATMに当麻は冷や汗を流した。

 

「嘘だろオイ」

 

「飲み込まれたみたいだね」

 

 錬の冷徹な一言に上条ダムは決壊した。

 

「不幸だァアアアアアアアアアアアアアアアアアアア! なに!? どうしろっていうの、神様!!」

 

「笑えば……いいと思うよ?」

 

「笑えるか! 少し黙れ、バカ!!」

 

 そんな風に当麻と錬が騒がしく騒いでいたときだ。

 

 コンビニに二人の少女が入ってきたのは。

 

「あ……」

 

「あら?」

 

「「あ……」」

 

 セラと御坂美琴であった。

 

「…………久しぶりね」

 

「ゲッ、ビリビリ中学生!?」

 

 くらい笑みを浮かべて放電を始める美琴に当麻は顔を引きつらせた。

 

「錬さん!」

 

「セラ!? 何しているのこんなところで?」

 

 魔法士二人は久しぶりにあった兄妹のような相手に、驚きの声を上げながら顔を綻ばせた。

 

 なんとも真逆の反応をする二組である。

 

 

 

…†…†…………†…†…

 

 

 

 とあるコンビニにて。

 

「今日という今日は決着つけてやるんだからぁあああああああ!」

 

「み、御坂さん!? どうしたんですか!!」

 

「大丈夫だよセラ。いつもの発作みたいなものだから」

 

「あ────。カードがないと再発行されるまで無一文に……。冷蔵庫の中は空っぽだし、やっぱ買い溜めしとかないとダメかな?」

 

 カオスが存在していた……。

 

 いやぁ、皆好き勝手言っているな……という状況である。

 

「……えっと……錬さんと上条さんは御坂さんと知り合いなんですか?」

 

「腐れ縁だよ。そういうセラは?」

 

「御坂さんとは学校が同じなので色々とお世話になっています。私達の秘密も知っているのです」

 

「え? じゃあ僕の能力も?」

 

「あ、いえ。サクラさんは秘密にしていましたからまだ……」

 

「それはそれで面倒だね。じゃあ僕の立ち位置は、秘密は知っているけれど、魔法士じゃない超能力者ってことで」

 

「わかりました」

 

 当麻と美琴が揉めている間に、錬とセラの二人は素早く情報交換。自分達の《バレたらまずい情報》を隠すための芝居をする部分を決定していく。

 

 長年学園都市を騙し続けている経験の賜物といったところだが、あまり人に褒められるようなスキルではない……。

 

「ところでフィア姉さんはお元気ですか?」

 

「まずはお母さんのことを聞いてあげようよ……」

 

 余談ではあるが、セラは自分と同じ金髪のフィアを姉として慕っており、クレアから、

 

『おっとりした姉としっかり者の妹という、はまり過ぎた兄妹』

 

 と言わしめる程の姉妹っぷりを発揮していたりする。

 

 さらに余談だが、他の寮のメンバーは、クレアのこともこっそりとこの中に入れており、

 

『妹二人の面倒をみる姉御肌の長女』

 

 などとよんでいる。

 

 寮の中で三姉妹と言えばこのメンバーと言われるほど定着していた。

 

閑話休題。

 

 さて、当麻の絶対的無視(心理的にファイアウォールが働いて、美琴を視界から外すようになっているようだ)に、いい加減頭に血が上り始めた美琴は電撃を纏った拳をERRORを出し続けるATMに叩きつけた。

 

 瞬間。幸か不幸か、ATMはERRORを出すのを止め正常に稼働。当麻のキャッシュカードを吐き出した。

 

「オオォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!」

 

「珍しく幸運だね、当麻」

 

「珍しくって付く時点で相当ダメだと思います」

 

 そのことに当麻は泣いて喜び、錬は少しだけ驚きを含んだ声を出す。セラは錬の発言に若干顔を引きつらせた。

 

「ありがとぉおおおおおおおおおおおおおおお、ビリビリ!」

 

「ビリビリじゃなくて御坂美琴!」

 

「名前を覚えて欲しいなら喧嘩をうるのを止めたら」

 

「ウッサイ地味男!」

 

「……ごめんね、セラ。今日は君の友達が消えてなくなることになるそうだよ」

 

「錬さん!? エクスプローラに手をかけないでください!!」

 

 再び店内がカオス化仕掛けたその時!

 

 錬は気付いてしまった。ATMがプスプスと煙を上げていることに。

 

「当麻……」

 

「ああ? どうした錬。俺は今の猛烈に感動しているから、どんな望みも聞いちゃうぞ!」

 

「どこのシェンロンだよ。そんな事より、可及的速やかにここを離れよう」

 

「え、なん……」

 

 うかれきった表情で美琴と握手をしていた当麻は錬の警告によって漸く、ヤバそうな煙を上げるATMに気付いた。

 

「何か……嫌な予感が」

 

「というか、それしかしないね」

 

 そう言って二人は同時にため息を着いた。

 

 その直後!

 

『警報! 攻撃性電磁波を感知!!』

 

 画面にその文字を浮かべたATMはけたたましいアラートを鳴り響かせ、アンチスキルに攻撃を受けたことを通報した。

 

「「不幸だァアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」」

 

 同時に叫びながら店内から神速の早さで脱出する当麻と錬に、美琴とセラは茫然としたあと、

 

「ちょっ! どこ行くのよ!?」

 

「対応が早すぎますよ、錬さん!? どれだけ慣れているんですか!!」

 

 足にモーターでも付いているんじゃないかと錯覚してしまう程の早さでコンビニにから離れる当麻達を、二人は慌てて追い掛けるのだった。

 

 

 

…†…†…………†…†…

 

 

 

「う────。故障とかしてないといいな。監視カメラに映っているだろうし……。って俺なにもしていないのに何で逃げているんだ?」

 

「ハブロフの犬って奴だよ、当麻。悪いことが起こったら逃げ出すという本能が、遺伝子単位で刻み込まれているんだよ」

 

「それは……真剣に嫌だな」

 

 川原にやってきて黄昏る二人を見て、ようやく追い付いた美琴は運動のしすぎでちょっとむせてしまっているセラの背中を擦りながら、こう言った。

 

「んなことはいいから、勝負しなさいよ、勝負!」

 

「「……」」

 

 あくまでもしつこく食い下がってくる美琴に三白眼を向けて、錬と当麻はため息をついた。

 

「というか、今のところ美琴ちゃんの全戦全敗じゃないか。なんでそんなに偉そうなの?」

 

「腰巾着のあんたに言われたくないわよ地味男!」

 

「え、当麻さんってそんなに強いんですか!?」

 

 錬が学校に行くようになってから、よく遊びに来ていた当麻を見てセラは驚きの声を上げた。

 

 彼女がまだ小学生だったときはよく遊んでもらっていたため、セラの当麻に対する評価は高めなのだが、喧嘩をしたら錬にボコボコにされていたため、いまいち強い人のイメージが定着していないのだ。

 

「当麻は強いよ……。一定の条件が整わないと本気を出さないけど」

 

「いやいやいやいやいやいやいや。ない。それはないわ」

 

 錬の言葉を勢いよく首を横に振ることで否定したあと、当麻は美琴に向き直った。

 

「とりあえずきいてみるけどさ、どうやったらこの戦い終わるわけ? どうすれば満足してやめてくれんの?」

 

「それは……」

 

 美琴は少しの間黙ってしまったが、しばらくすると貧相な胸を張りながら堂々と言い切ってきた。

 

「私が勝ったらよ!」

 

「「ハァ〰〰〰」」

 

「そこさっきより大きなため息つかない!!」

 

「御坂さん……」

 

「せ、セラちゃん。呆れたような目で見るのは止めて、そこの二人より結構刺さる」

 

 どうやらこの場に美琴の味方はいないようだ。だが……。

 

「わかったよ。それで気がすむっていうなら……」

 

 いい加減この関係を終わらせたいと思っていたのか、はたまたただ単に早く帰りたかったのかは定かではないが、

 

「相手になってやるよ」

 

 立ち上がった当麻の瞳には、仮初めのやる気が宿り強烈にきらめいた。

 

「ようやくやる気になったみたいね」

 

 今までとは覇気が違う当麻の様子に、美琴は不敵にほほ笑みながら冷や汗を流す。当然だろう。今までの戦い(と思っているのは美琴だけだが)の結果は錬が言ったように全戦全敗。こちらも攻撃を食らっていないとはいえ、レベル5の自分が攻撃を通せなかった時点で、それは紛れもない敗北なのだ。

 

『コイツがどんな能力を持っているかも未だにわからないし……面白くなりそうね!』

 

 美琴の心の声が聞こえたのか、美琴の笑顔をみた当麻はブルリと震えるのだが、雰囲気に飲まれた女子二人は気付くことはなく、唯一気付けたであろう錬は帰りが遅いので心配して電話をかけてきたフィアに、涙まじりの不満の声を聴いていた……。

 

 

 

…†…†…………†…†…

 

 

 

 川原に立つ二人を見下ろすような形で、巻き込まれないように堤の頂上に座っている錬とセラはこの勝負について話し合っていた。

 

「御坂さんがいつも言っていた《ムカつく奴》って当麻さんのことだったんですね」

 

「まぁ……いろいろあってね。それより僕は他のみんなが美琴ちゃんにIブレインの話をしたほうが驚きだよ。一体なにがあったの?」

 

「話せば長くなるんですよね……。あ、始まりましたよ」

 

 セラの言葉どおり川原では文字どおり戦いの火蓋が切って落とされたようだ。

 

 美琴の額から伸びた電撃が凄まじい早さで当麻に襲い掛かる。

 

 しかし、当麻はそれを、右手を突き出すだけで防ぎ切った。

 

 当麻の右手にぶち当たった電撃がまるでガラスを割るような音とともに幻のように消え去る。

 

「え……! な、何ですか今の!?」

 

幻想殺し(イマジンブレイカー)。セラは見るのは初めてだっけ? あの右手に触れた異能の力は《魔術》も《超能力》も………そして僕らの《魔法》すらも、かき消されてしまうんだ」

 

「何ですか、その滅茶苦茶な能力は……」

 

「僕も初めて見たときはびっくりしたな……。どうなっているのやら」

 

 一度真昼に解析を頼んだこともあったのだが、結果は《UNKNOWN》。現在、錬が知る中で最も不可思議な能力である。

 

「まあ、美琴ちゃんは仮にもレベル5だし、いつまでも電撃一辺倒で攻めるような愚策は起こさないよ」

 

 セラは初めて見る本格的な戦闘を食い入るように見ているが、小萌先生の事件に当麻と一緒に巻き込まれた事がある錬としては、別段たいしたことではないので今回は初心者のセラのために解説に回るようだ。

 

 錬の言うとおり、美琴が戦闘スタイルを変えた。右手に漆黒の粒子を集め、剣のような形を作り出したのだ。

 

「あれは……?」

 

「多分砂鉄だね。能力を使って強力な磁力を発生させて集めているんだよ」

 

 そういいながら、錬は木の葉を手のひらから飛ばし、《マクスウェルの悪魔》を使い気流を制御。木の葉をピンポイントで砂鉄の剣の上に落とした。

 

 瞬間。

 

 何の抵抗もなく、木の葉が真っ二つに切り裂かれるのを見て、当麻とセラが悲鳴を上げた。

 

「ちょ、オマエ、獲物使うのはズルいんじゃ?」

 

「そっちなのですか、当麻さん!?」

 

「砂鉄を高速振動させてチェーンソーのような効果を得ているんだろうね。歯となっている粒子がチェーンソーより細かいから、あんなえげつない切れ味を持っているみたい」

 

「いっている場合なのですか!? このままでは当麻さん死んでしまいますよ!?」

 

「大丈夫大丈夫。当麻は悪運強いから」

 

 平然と言ってのける錬にセラが食って掛かるが、錬が言ったとおり当麻は美琴が振るう砂鉄の剣を全て紙一重で躱し、なんとか距離をとることに成功していた。

 

 だが……!

 

「ちょこまか逃げ回ったってコイツには……」

 

 瞬間、直前の回避運動によって体勢が固まってしまっている当麻に向かって砂鉄の剣が蛇のように伸びた!

 

「あ、すごい」

 

「当麻さん!!」

 

 錬が感嘆の声を漏らし、セラが悲鳴を上げる。

 

 しかし、当麻はあわてず騒がず冷静に、右手を砂鉄にぶつけた。

 

 再びガラスの破砕音。瞬時に砂鉄に戻っていく剣を見て美琴は一瞬だけ目を見開くが、即座に次の攻撃に移る準備を開始した。

 

「しょ、勝負あったみたいだな」

 

 ハタから見れば余裕綽々といった様子の当麻だったが、錬はそれを見て苦笑を浮かべた。

 

『あいつ………今の結構ギリギリだったみたいだね。滅茶苦茶動揺しているよ。にしても、喧嘩であんなおっかないもの持ち出すなよ』

 

『あ、あっぶね〜。右手がたまたま当たっていなかったら今ので死んでたぞ。ていうか、喧嘩であんなおっかないもの持ち出すなよ!』

 

 錬と当麻の思考は大体こんな感じである。流石は親友と言うべきか、錬はフィア以上の以心伝心を当麻と体得しているのだ。

 

「勝負あった? さぁて、それはどうかしら!」

 

「は?」

 

 瞬間。

 

 当麻によって砂鉄に戻され、空気を漂っていた黒い霧が再び意志を持ち当麻に襲い掛かった!

 

「オマエ、空気中にある砂鉄も操れるのか!?」

 

「パッと考えれば予想できただろうに。相手は磁力を操っているんだから、どこだろうが関係なく発動するに決まっているじゃないか」

 

 錬の適切な指摘を聞きながら、セラはもう悲鳴をあげようとはしなかった。当麻と美琴の戦いに見入られていたのだ。

 

 

 

 あれが……お母さんや、祐一さん───錬さんに……ディー君が立っているのと同じステージ。

 

 自分の思い人が脳裏を掠める。いつもキズだらけになりながらも自分を守ってくれた白い少年の顔が……。

 

「錬さん」

 

「ん?」

 

「私…ディーくんの隣に並べるようになれるのでしょうか?」

 

「……」

 

 セラの言葉をきいて、錬は少しだけ困った表情になりながら、無難な返事を返した。

 

「セラ……僕らはできれば君に戦って欲しくはないんだよ」

 

「わかってます。でも……私も皆の役に立ちたい。御坂さんのように、当麻さんのように───強い人になりたいんです」

 

「……」

 

 錬が黙りこくるのと同時に、当麻が右手をふるい砂鉄の剣をかき消す。

 

 あのどうしようもないお人好しの親友が人を助けるときと同じ目をしているセラを見て、錬は大きくため息を着いた。

 

「真昼ニィとレノアさんには話を通しておくから、あんまり危ないことはしないでね」

 

「……………はい!!」

 

 嬉しそうにセラが笑ったとき、決着が着いた。

 

 砂鉄が粉末状に戻り空気中に飛び散った瞬間、いつのまにか当麻の後ろに回り込んだ美琴が当麻の右手を掴んだのだ。

 

「あ、詰んだね」

 

「はい。御坂さんの勝ちですね!」

 

「いいや……当麻の勝ち」

 

「へ?」

 

 セラが驚きの声を上げるが、錬は苦笑を浮かべながら二人を指差し解説を締めくくる。

 

「美琴ちゃんが掴んでいるのは右手だよ。あれじゃ能力は発動しない」

 

「あ」

 

 指摘をうけ、セラはようやくそのことに気付いた。

 

 彼女が戦闘に本格的に参加することはまだまだできそうにない。

 

 

 

…†…†…………†…†…

 

 

 

 決着がついた。

 

 不意をつき、右手を握り締め、ゼロ距離からの電撃をしようとしていた美琴だったが、当麻の謎の力によって電撃は不発。普段から素手で殴りあいを行っている当麻が最も力を発揮する間合いに入り込むだけの結果となってしまった。

 

 いくらダーティーな戦いが他の女子より得意といっても、美琴はか弱い(笑)女子中学生である。普段から、不幸なことに喧嘩に巻き込まれてしまい、自然と鍛えられてしまった男子高校生・上条当麻に殴りあいで勝てるわけもない。

 

「えーっと……」

 

「あ!」

 

 電撃が流れないことに動揺し、暫く固まってしまっていた美琴に困ったように頬をかく当麻。

 

 取り敢えず勝負の途中なので、あいている左手を振りかぶってみたが。

 

「うぅ!」

 

「ハア~」

 

 まるで小動物のように手で顔をかばい震える美琴を見て、当麻は大きくため息をついた。

 

 そして、

 

「ギャ───────」

 

 突然右手を押さえて悲鳴を上げ地面に倒れこんだのだ。

 

「??」

 

 突然倒れた当麻にわけもわからないまま、ちょっとだけ泣きそうになっていた美琴は首を傾げる。

 

「マ、マイリマシタ───────」

 

 あからさまに棒読みで降伏する当麻にセラは半笑いになり、錬は頭を抱えた。

 

「当麻……それは死亡フラグだよ」

 

 そして、

 

 チラッ。と様子を伺うように目を開いた当麻にたいして、美琴は、

 

「ふ、ふ、ふ

 ふ

 ざ

 け

 ん

 ナアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!」

 

 連続で落雷をおとした。

 

「ウギャアアアアアアアアアアアア!」

 

 当麻は悲鳴を上げながら逃げ回るが、今回ばかりは当麻が悪いので(錬は『もっとちゃんと芝居しないからだ』とおもい、セラは『御坂さんに失礼です』という内容でそれぞれ有罪判決を出していた)誰も助けようとはしなかった。

 

「まじめにやんなさいよ!」

 

「だっておまえびびってんじゃん!」

 

「な、びびってないわよ!」

 

「うそつけ、どうみても涙目になってこんな風にビクってしてたら……はっ!」

 

 そこで当麻はようやく言い過ぎたことに気付いた。

 

 目の前でバリバリ放電をしまくる美琴をみて当麻の顔から血の気が引く。

 

「死ねぇええええええええええええええええええええええええええええええ!」

 

「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアア!」

 

 即死級の電圧の雷を放ってくる美琴から逃げながら、当麻は錬の方へと走ってきた。

 

「ちょ、錬! にげっぞ」

 

「あ、ごめん当麻。僕はセラを寮に送り届けないといけないから」

 

「おまっ! またお前だけ逃げるつもり……ギャアアアアアアアアアアアアアアアアア!」

 

 なにやら文句を言い掛けた当麻だったが、自分の頭に向かって放たれた極太の電撃をみて即座に回避、堤の上を走りだした。

 

「待ちなさい! 逃げんなぁあああああああああ!!」

 

 そのあとを追う美琴を見ながら、セラはぽつりとつぶやいた。

 

「錬さん」

 

「ん?」

 

「やっぱり……強くなるのはもう少しあとでいいです」

 

「……そうだね」

 

 月明かりがてらす、美琴と当麻の姿はなんとなく仲が良さそうにも、見えなくもなかった。

 

 

 

…†…†…………†…†…

 

 

 

 早朝。ようやく寮に帰ってきた美琴を出迎えたのは何時ものように際どい寝巻を着た白井黒子だった。

 

「お帰りなさいませ、お姉様。寮監の目を誤魔化すのも大変なのですから夜遊びも程々にしてほしいですの」

 

「別に遊んでた訳じゃないわよ」

 

「あ、お帰りなさい、御坂さん」

 

 その時、基本的に早起きのセラがその美琴達の部屋のまえを通りかかった。

 

「一晩中おっかけっこしていたんですか?」

 

 流石に呆れを滲ませるセラに美琴は肩をすくめて部屋の中に入っていった。

 

「まったく……お姉様は誰と喧嘩をしているのやら」

 

「まあ、喧嘩するほど仲がいいといいますし」

 

「……わたくしとしては喜べない言葉ですわね」

 

「知り合いが言うには痴話喧嘩らしいですよ」

 

 最後に爆弾を投下したあと、セラはさっさと能力の訓練へと向かった。

 

「ま、まままままま、まさかお姉様にかぎってそんな」

 

 その時、一人の女子中学生が壊れかけていたのは言うまでもないことだろう。

 

 

 

…†…†…………†…†…

 

 

 

「錬さん。」

 

 ビクッ。

 

 眠たい目をこすりながら朝食を食べていた錬は、後ろから聞こえてきた声に肩を震わせた。

 

 おそるおそる振り返るとそこには、明らかに悲しそうな表情をしたフィアが立っていた。

 

「夜遊びは控えてくださいって、あれほどお願いしたじゃないですか……」

 

「あぅ。ごめんフィア! これにはやむにやまれぬ事情があって!!」

 

「許しません!」

 

 目に涙をためながらぷいっとそっぽをむくフィアに、錬は苦笑をしながら一枚の地図を渡した。

 

「はい、プレゼント」

 

「……………アリガトウゴザイマス。これは?」

 

 不機嫌であってもお礼を言ってから地図を受け取ったフィアに脱帽しつつ、錬は昨日作った地図の説明をした。

 

「と、いうわけで塗り潰してある場所ははいっちゃダメだよ?」

 

「……錬さん」

 

「ん? なに」

 

「き、今日一緒に散歩をしてくれたら機嫌がなおるかもですよ」

 

「……………………」

 

「あ、あと危ない場所とか実際に教えてくださった方がよく覚えますし……その……えっと……」

 

 そこでフィアは少しだけ上目遣いになりながら錬を見つめた。

 

「ダメ……ですか?」

 

 それを見て、錬は苦笑を浮かべながら頷いた。

 

「いいよ。お昼は開けておく」

 

「ありがとうございます。錬さん!!」

 

 その日の朝は、やたらと上機嫌なフィアが寮の各所で目撃されたのだが、それはまた別の話。

 

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