とある科学の魔法士たち   作:過労死志願

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打ち止め《ラストオーダー》

「は~い、飯できたでお前ら~」

 

「わ~い!! ご飯だっ!! と、ミサカはミサカは、初めて見る湯気たつ白米とやらに感動してみたりっ!!」

 

「むぅ。同じ顔のロリがこんなに純粋に喜びの表情を浮かべるとは……。なんだか納得がいきませんと、ミサカは世の中の理不尽に首をかしげます。同じクローンのはずなのに、私はなぜこのような無表情がデフォルトなのでしょうか? とミサカは、意外と危険だったかもしれないテスタメントによる教育に戦慄を覚えます」

 

「チッ……」

 

 子供特有の高い声で歓声を上げるミサカ(小)と、そんなミサカ(小)をみて、複雑な表情をしながらも、朝食を食べる橋の手を止めないミサカ(大)。

 

 そんな二人の姿に舌打ちをしながら、一方通行はコーヒーを片手に、イルが作ったトーストをむさぼった。

 

 そんなとき、一方通行は気づいた。

 

 自分を見ているイルの目が、なぜかとっても嬉しげ――というか、ニヤニヤしているのを。

 

「なンだよ」

 

「いやいや、べつに。ただ困ってるみたいやった打ち止め(ラストオーダー)ちゃんをここに連れてきたんは、お前らしくないというか……えらい成長したなと思って」

 

「はっ。何愉快な勘違いしてンだァ、お前」

 

 バカバカしいイルの言葉に、一方通行は憤然と鼻を鳴らし、嘲笑を浮かべる。

 

「俺が連れてきたんじゃねぇ。こいつが勝手についてきたんだ」

 

「あれれ!? もしかしてミサカって不法侵入!? って、ミサカはミサカはそうじゃないよねって一方通行の援護射撃を求めてみたりっ!?」

 

 けたたましい抗議の声が上がったが、一方通行はそれを無視して話を進める。

 

「俺がもし、お前らとの生活にほだされて、こいつを保護するために連れてきたンだって、ゆかいな勘違いしてンのなら、今すぐそいつは改めろ。俺はこいつがどうなろうと知ったことじゃねェし、お前らが何にかかわろうが一切関知しねェ」

 

「そうか? まぁ、おまえがそう言うんやったらそうなんやろうけど」

 

 と、イルはそんな一方通行の暴言に小さく肩を竦めた後、

 

「そのわりには、家に押し入ってくる不届きものは基本ミンチにするお前が、追い払うわけでもなく、腕の一本を折るわけでもなく、ましてや殺すぞって言ったわけでもなく……この子を大人しく、自分の拠点についてこさせたんは、ちょっと意外なやな~? と思っただけやねん」

 

「……………………」

 

 自分の気持ちを全部見透かしたかのようにふるまうイルの態度に、一方通行の嘲笑は崩れ、彼は苦々しげな顔でブラックコーヒーの缶を傾けた。

 

 

 

…†…†…………†…†…

 

 

 

『ほな、俺らは仕事と検査に行って来るし~』

 

『一方通行。彼女の事情は聴いていましたね? 私たちが病院で情報を集め終わるまで、しっかり面倒を見ていてください。と、ミサカはニート一方通行を鼻で笑いながら、外出します』

 

 あの騒がしい朝食から数分後。

 

 イルとミサカ10032号は、そう言って職場と検査施設である病院に出かけて行った。

 

 朝食の間にさりげなく打ち止めの現状を聞いた二人は、打ち止めのことを知るためにはそれがベストな選択だと判断したのだろう。実際、何らかの理由で研究施設から抜け出すことになった打ち止めは、現在体の調整ができていない状態だという。打ち止めはそれをなんとかしたくて、とりあえず実験を知っている一方通行を見かけて頼ってきたのだとか。

 

 そういうことなら、とりあえず、あの超能力染みた医療技術を持つ二人がいる病院に行くというのは、間違った選択肢ではない。

 

 一方通行もそれは理解していた。ただ……。

 

「俺と娘のガキ二人で、留守番させるっていうあいつらの感性はどうかしていると思うがな……」

 

「ねぇ、ねぇ! 一方通行!! お昼何にする?」

 

「………チッ」

 

 まるで子供の用に、こちらをゆさゆさ揺らしてくる打ち止め(ラストオーダー)に、ソファーに寝転がっていた一方通行は舌打ちを漏らす。

 

 何気に反射を切っている一方通行だったが、これはあの戦いから同居しているイルの教育的指導のたまものと言えた。

 

『ひとりで住んどるんやったらまだしも、他の連中と同居しとる場合は、反射常時がけはメリットよりもデメリットの方がデカいやろ? できるだけ普段から意識して、能力きっとく訓練しとけ』

 

 と言われ、できなければ拳骨を使った鉄拳制裁だ。反射を悠々抜いてくる拳によって、三回ほど、頭にタンコブを作られたときから、一方通行は嫌々ながらも反射を切るようになっていた。

 

 というわけで、現在不用意に自分に触れている打ち止めが、反射の猛威によって吹き飛ばされるということはなくなっているわけだが……。

 

「鬱陶しい」

 

「久々に口を開いたと思ったらそれっ!? と、ミサカはミサカは愕然としてみたりっ!! こんなに可愛らしい女の子に、愛らしい仕草で話し掛けられているのに何もないなんて……。と、ミサカはミサカは自分の可愛さにちょっと自信を無くしてみる」

 

「それでほだされるようなら、そいつは警察に呼ばれるべきやろォだろうがよォ。なんだったか? 未成年略取とか言った罪状で」

 

 一方通行は鬱陶しい打ち止めのユサユサ攻撃に、閉口しながらそんなことを漏らす。

 

 そして、

 

「まぁ、確かにもうそろそろ昼飯時ではあるわな」

 

 ほだされるわけじゃねェが。と、一言断りを入れて立ち上がる。

 

 反射を切っているせいか、最近ホルモンバランスが安定してきた一方通行は、イルによって行われる清く正しい生活のせいで、すっかり食事をとる時間も整いつつあった。

 

 要するに、昼時になれば腹がすくようになった。

 

 打ち止めの鬱陶しい問いかけがなくとも、もうそろそろ腹の虫が騒ぎ出す時間だ。

 

「さてと……」

 

「どこ行くの? お昼ご飯の材料を買いに行くの? って、ミサカはミサカは慌てて一歩通行についていきながら尋ねてみる」

 

「はぁ? お前俺が料理するような殊勝な奴に見えんのかよ?」

 

「そこはほら、ギャップ萌えという最近はやりの行動をあなたに期待してみるって、ミサカはミサカは、っていったぁ!?」

 

 何やらとんでもない属性を自分に付けようとした、クソガキの脳天に、手刀(チョップ)を叩き込みながら、一方通行は玄関まで歩いていく。

 

「おいてくぞクソガキ。昼は外食だ」

 

「うぅ。ほんのちょっとした冗談だったのに……って、ミサカはミサカは痛む頭を押さえながら、一方通行に抗議してみる」

 

 そんな抗議の声をあげながらもトテトテト自分についてくる打ち止めに、一方通行は鼻を鳴らし、相手の歩幅や速度など考えず、自分本位で行動していく。

 

 そんな一方通行に必死について行こうとする打ち止めは、さながら親に続くアヒルの雛といったところ。

 

 当然、明らかに凶悪な殺人犯にしか見えない目つきをした一方通行が(間違いではないが)、打ち止めのような少女をうしろにつけ、なおかつその娘を引き離さんばかりの速度で歩いていたら目立つわけで、

 

「あらあら、お兄ちゃん。妹さんの面倒はちゃんと見てあげないといけないわよ?」

 

「なにあんた? 妹嫌いな奴?」

 

「信じられないくらい可愛い妹キャラがいると聞いてやってきたんだぜ、ぶっ!?」

 

「はいはい、お兄ちゃんは犯罪者になる前にまずはわたしを構え~」

 

「……………………」

 

 道行くおばさんに呼びとめられて説教され、

 

 打ち止めをかわいがっていた高校生に呆れられ、

 

 何やら怪しいグラサンをかけたアロハシャツの学生が、清掃ロボに載った幼女メイドに殴られ連行したあたりから、一方通行に我慢の限界がやってきて、

 

「あ、あそこっ! あそこで食べようよ一方通行!!」

 

「……………………………………………」

 

 たどり着いたファミレスのカウンターにて、

 

「何名さ」

 

「俺とこのクソガキの、二名だ!!」

 

「か、畏まりましたっ!?」

 

 ヤクザ顔負けの鋭い眼光で、店の店員を恫喝してしまったのは、まぁ彼なりによく我慢した部類と言えるだろう。

 

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