卒論就活と忙しいのですT―T
九月一日。
学園都市のとある高校にて。
「おはよう、みんな」
錬はいつもの通いなれた自分の教室の扉を開け、新学期の挨拶を教室に集っている皆にしようとした。
だが、
「うぉおおおお! やった! 俺達だけじゃねェ、仲間はほかにもいた!」
「バンザーイ! 先生の注目浴びんのはどうせ不幸な上条だけだから、俺たちの被害は軽減されるかも! バンザーイ!!」
「っつかテメェら全員宿題やってねぇのか!? 小萌先生泣くんじゃね!?」
何やら新学期早々、テンションが高いことをやっているらしい、いつものクラスメイト連中に、錬の挨拶はすっかりかき消されてしまった。
まぁそれは良いとして……。
「宿題忘れている連中之率高いでしょ!?」
「おっ! 錬、お前からもなんか言ってやれっ!!」
「当麻、さも『俺は違いますよ?』と言いたげな態度しているけど、宿題忘れている時点で君も小萌先生泣かせる要因の一つだからねッ!?」
「おいおい、錬くん。何甘いこと言うてんねん。俺なんか小萌先生に怒られるためだけに、宿題全部できてんのに忘れてきたで?」
「小萌先生が怒る前に、僕がお前を怒る! そこになおれ、青ピ!!」
いつも通りすぎるバカどもの饗宴に、錬は思わず頭痛を覚えながら、不埒なことを言ってのける
「いいよ。お前らが小萌先生の涙を見るために、宿題を忘れるなんて抜かすなら……まずは、その幻想をぶち殺すっ!!」
「ちょ、それ俺の台詞!?」
「たまには自分で味わったらどうだい?」
そして、教室の床にゴーストハックをかけて作り出した人間大の拳と共に、錬は当麻と青ピに殴りかかり、
「静かにしろ、この四バカがぁああああああああ!!」
我がクラスの
…†…†…………†…†…
それから数十分後。頭に巨大なタンコブを作った錬たちは、予鈴と共に自分の席に戻る。
クラスの問題児たちは固めて管理するという思想のもとなのか、錬たちの座席は窓際の席に固められている。
教室左手の窓際最後列に青ピ。左隣に土御門。青ピの前には当麻で、その隣には錬といった感じだ。
――この問題児たちの列に入れられるというのは甚だ遺憾だよ……。と錬は内心で呟きながら、いまだに激痛をお届けしてくるタンコブを、眉をしかめながら撫でていた。
「僕はただ人として正しいことを言っていただけなのに……」
「まぁまぁ、騒いどったんは、俺らと一緒やろ?」
「なんで俺まで……不幸だー」
「当麻が言い訳するなんて、恥を知ればいいよ宿題忘れ組」
「そういう錬は忘れてないのかよ」
「あたりまえでしょう。ぼくはちゃんと……」
そう言って錬はごそごそと鞄をあさりだすが、
「………………………………………」
「錬?」
「ん? どないしたん」
「い、いや……。べ、べつに?」
――し、しまったぁああああああ!? フィアの登校用意をするのに夢中で、宿題を鞄に詰め込むのすっかり忘れてたぁああああああ!? と、何も入っていないカバンの中身に、錬は思わず冷や汗を流す。
本日は授業がないので、筆記用具とノートの忘れ物はまだ何とかなるが、宿題だけはいかんともしがたい。しかも錬は先ほどまでさんざん宿題を持ってきてない当麻たちを、叱りつけていた立場だ。そんな奴が宿題忘れましたとか、恥ずかしくて言えない!
「どうする……どうするべきだ僕。おちつけ、クールになるんだ僕。先ずはサイバーグを使って自己領域使用で亜光速に加速してから……」
「おい、なんかすごい不穏なこと言ってね?」
ダラダラ冷や汗を流しながら、手を組んで黙考する錬に思わず当麻は顔を引きつらせる。
その時だった。
「はいは~い。それではホームルームを始めますよ~。始業式まで時間がおしちゃっているので、てきぱきすすめちゃいます~」
小萌先生の登場である。
相変わらずの、成人しているとは思えないロリボディと童顔を見せつけながら、教壇の上に立つちびっこ先生(自称成人済み)は、
「先生。土御門が来てへんのやけど?」
「お休みの連絡は受けてませんー。もしかしたらお寝坊さんかもしれませんー。まぁ、モシそうだったらあとでそれ相応の態度をとるにして」
――まぁ、土御門の遅刻・無断欠席癖は今に始まったことではないし、いまさら取りざたされることでもないか。と、軽く土御門の欠席を流した小萌先生に、頷きながら、
「えぇー出席とる前に」
きた。と、ほんの少しだけ頬を緩める。とりあえず宿題に関しては、また終業式が終わってから考えるにして、今はそれよりもこの転校生の方が重要だ。
今までのパターンから考えて、まず間違いなくこのクラスに来る転入生はフィアだろう。なぜならこの教室は、某T・K氏が助けた女の子が、様々な事情でこのクラスの転入生としてやってくる確率が100%となっている不思議空間だからだ。
――ならばその恩恵に、僕もきっとあやかれるはず!
と、半ば確信した様子で、教室に入ってくるであろう金髪碧眼の少女を笑顔で出迎えようとした錬に、
「クラスのみんなにビッグニュース……の前に!」
「ん?」
裁きの鉄槌が振り下ろされた。
「天樹ちゃーん。親御さんからお届け物なのですー。家に忘れていたからってもって来てくださいましたから、天樹ちゃんの宿題はもうもらいましたからね~」
「……………………………………………」
氷結する錬の斜め後ろと左側から、ニヤニヤとした視線が飛んでくる。
錬はその視線にプルプルと震えた後……。
「い、いっそ殺せっ!!」
錯乱しながら机に突っ伏すのだった。
…†…†…………†…†…
「はい、ではビッグニュースの方に移りますよー。なんと今日からこのクラスに転入生が追加ですー。ちなみにその子は女の子ですー。喜べ野郎どもー、残念でした子猫ちゃん達―」
そして、錬の尊い犠牲という名の公開処刑が終わった時、小萌先生はようやく本題に入ってくれた。
――いつまでも突っ伏しているわけにはいかない。僕にはフィアを笑顔で出迎えるという使命があるんだっ!! と、錬はプルプル震える腕を支えにし、何とか机の上から顔を上げる。
その隣では、
「い、いけない! それも楽しそうだと思った自分がいけない!!」
「何やってんのさ、当麻……」
なぜか自分の友人が身もだえしているのを見て、錬は思わずドン引きする。
というか、
「いや、ついうっかりミサカシスターズが全員うちの学校の転入して来たり、一方通行が鈴科百合子になって転入して来たりする光景を思い浮かべてしまって……」
「当麻、君疲れてるんだよ……」
「否定はしねぇよ!?」
昨日はほとんど徹夜だったしな!! と、なにやら泣きそうな顔でうなだれる当麻に、闇坂さんそんなに大変だったの? と、錬は首をかしげるが、フィアとの約束があるあるからと、先に帰った自分が掘り返すのもどうかと思いスルーしておく。
「だいたい、この時期に転入なら、そっちじゃなくてフィアでしょうが。今日転入してくるって言ったよね?」
「あぁ、そういえばそんな話していたな。でもまて……俺が提示した可能性も無きにしも非ず。もしかしたら年齢詐称をした神裂が来るかもしれん!」
「なら賭ける? フィアが来たら放課後、フィアと一緒に入学祝をしに、遊びに行く予定だから、そこのお金当麻が払ってよ」
「乗った! じゃぁ俺が買ったら料金はお前もちな! じゃぁ俺はさっき提示したやつらの誰かが転入生の方に賭ける」
「あとでほえづらかかないでよ」
「そっちこそ」
そして、錬と当麻はじっと教室の入り口を見つめる。
――こいこいこいこい! 僕(俺)の勝利よ……やってこい! と。
そして、
「あ、とうまだ!」
「ぶげふぁぁ!?」
そこには、三毛猫を抱えた白いシスターが立っていた。
「まさかの……大穴だとぅ!?」
「そんな、なんでインデックスなんかがここでくるんだよっ!?」
「再会して早々その言いぐさはひどいかもっ!?」
錬は机を殴りつけ、当麻は額を抑えて悔しがりはじめる。そんな二人のあんまりな態度にインデックスが憤っていると、
「………………………………………………………あ、あれ? し、シスターちゃん!? な、なんで!? どこから入ってきたんですか!? 転入生はあなたじゃないでしょ。ほら、出てった出てった!!」
「あ、ちょ、まって小萌。私はとうまにお昼をどうするのか……」
「いいから早くっ!!」
そう言ってインデックスを追い出す小萌をしり目に、教室に一人の女の子が入ってくる。
その女の子は黒くて長い髪をなびかせながら、黒板にチョークで四文字の名前を書き。
「ちなみに本物の転校生は私。姫神秋沙。よろしく」
そんな彼女の自己紹介を聞き、錬と当麻はそっと嘆息した後、
「「やっぱり大穴じゃないかっ!?」」
「君たちの言葉にそこはかとない悪意を感じるのだけれど?」
転校早々の姫神の額に、青筋をうかばせていた。
ちなみにフィアは、普通に隣のクラスに転入したらしい。
…†…†…………†…†…
始業式。
学生にとっては新しい学期の始まりを告げる――もっともかったるい行事の一つである。
ぶっちゃけなくてもいいし、面倒なら校内放送でよくね? と、全国の学生が思っているであろうこの行事。いちおう真面目に分類される錬はおとなしく体育館に集合し、他の学生と共に参加していたが、正直校長の挨拶が前学期の焼きまわしな気がして脳に入ってこない。
――そろそろ立っている足もつらくなってきたし、フィアも転校初日でこのロング挨拶はつらいだろうから、早く終わってほしいんだけどな。と、体の重心を入れかえ、体重がかかる足を何度も変えながら、錬は周りを見回した。こんなことができるのは『天樹』という名前の前に入ってくれる、ア形苗字の人がいるからだ。
――ありがとう。
そんな面々の名前を思浮かべた錬は、しばらく考え込み。
――いまさら思ったけどうちのクラス「あ」から始まる名前の人多くない?
無論この思考はただの現実逃避なので、そんなとりとめもない考えは即座に記憶の彼方へ押し流し、周りの学生たちを観察していく。
さすがに夏ではないので、熱中症で倒れる学生はいないが、それでも体の弱い学生にとって、立って誰かの話を長時間聞くというのは、結構な負担になるのか顔色を悪くしている面々がチラホラ。
そんな学生たちがいる中で、錬が心配していた少女――如月フィアは、初めて見る体育館が新鮮なのか、キョロキョロとあたりを見廻していた。
そして錬の視線に気づいたフィアは、にっこりと笑って校長先生にばれないように、錬に小さく手を振ってくれる。
錬もそれにこたえて小さく手を振りかえし、それを見たフィアがぱあっと明るい表情を浮かべた。その時だった。フィアの背後にいた女子生徒が、フィアの肩を指でトントンとたたき、ニヤニヤした笑みを浮かべてこちらを指差しフィアに何か話し掛けたのは。
フィアは顔を真っ赤にして小さく頷き、女子生徒が小さく嬌声を上げる。その動きがフィアのクラスに伝播し、フィアの前後にいる女の子が、積極的にフィアに話しかけはじめた。
――大方僕との関係を根掘り葉掘り聞かれているんだろう。と、顔を赤くしながらも嬉しそうに笑うフィアの姿に、錬は苦笑いを浮かべつつも一つ安堵の息をつく。どうやらフィアは隣のクラスでもうまくやっていけそうだと。今の様子を見てそう確信できたからだ。
だが、
「ん?」
同時に錬は一つの問題点を発見した。
うちのクラスの、カ行生徒の一部に欠損が見られることだ。
言うまでもなく、その欠損は「かみ」ではじまり「うま」でおわる生徒で、
「何やってんだよ、当麻……」
遠慮なく始業式を無断欠席している悪友に、錬はそっと嘆息した後、こっそりと列から外れ背後に回る。そして、そこに並んでいる教師の一人に話しかけ、
「すいません。トイレ行きたいんでちょっと外れていいですか?」
「ん? あぁ。はやくもどってこいよ」
一つ断わりを入れた後体育館を脱出。教師の列に小萌先生がいなかったことから、きっと当麻を探しているんだと察し、極力早く当麻に猟犬がいることを知らせて、体育館に引きずってこようと決意するのだった。
…†…†…………†…†…
それから数分後。
「で、インデックスちゃんは一体ここで何をしているの?」
「あ、れん! この機械壊れているんだよっ!!」
食堂にある、タッチパネル式食券自動販売機の前で、敗北感に打ちひしがれている空腹シスターを、当麻より先に発見してしまい、錬は思わず頭を抱えた。
――賭けのせいですっかり忘れていたけど、そういえばこの子うちの学校に不法侵入していたな。当麻がいない理由はこの子に事情を聴くためか。と、とりあえず友人のボイコット動機にひとまず納得しながら、錬は投入金額と、それによって買える食券をモニターに映し出す、食券自販機についてインデックスに説明する。
「あのねインデックスちゃん。これはここの画面に出ているメニューから、好きなものを選んで画面に触れたら、食券が出てくるんだよ」
「れん! 私がいくら機械音痴だからって、バカにするのはやめてほしいかも! テレビに触れても何も変わらないってことくらい知っているんだからっ!」
と、自慢げにフンスと鼻を鳴らすインデックスに、どう説明したものかと錬は頭を抱える。
その時だった。
「あの」
「ん?」
自販機の《取り消し》ボタンにピット触れたしなやかな指が、自販機から吐き出された1000円札を錬に差し出してきた。
「ん!? お、お金が戻ってきたかも!?」
「いや、取引を取り消したんだからそれは当然で。って、そうじゃなかった。ありがとうね。そういえば先にお金を出しておくべきだったな……」
錬はその1000円札をうけとりながら、助けてくれた人物――見なれない制服を着た女の子に頭を下げた。
「い、いえ。大したことじゃありませんから」
どこか気弱そうな雰囲気を放つその少女は、制服越しでもわかるその豊満な胸部装甲を揺らしながら、頭を上げてくださいと手を振ふる。
「僕の名前は天樹錬。こっちの子はインデックスっていうんだ。君は?」
「あ、はい。私は
そして、まずは自己紹介と言わんばかりに告げた錬の名前に、どこか言い訳がましい自己紹介をした眼鏡をかけた少女に、錬は思わず苦笑いを浮かべて「怪しんでなんかいないから、落ち着いて」と、とりあえず健全な友好関係を築くために、彼女を落ち着かせるところから始めるのだった。
…†…†…………†…†…
「それでね、私はとうまの名前をきちんと呼んだのに、答えてくれるどころか目をそらしたんだよ! まったく、お昼のこと説明し忘れたのはとうまの方なのに」
「インデックスちゃん、そう言ってあげないでよ。当麻が抜けているのなんて今に始まったことじゃないでしょ?」
「あ、あの、それフォローになっていない気が……」
結局、当麻より先にインデックスを何とかすべきだと判断した錬は、こうして食堂の椅子に腰かけながら、烈火のごとく怒り狂うインデックスの話を聞いていた。
傍らにいる風斬氷華には「ここは僕に任せて始業式に行くんだ!」と言ってみたが、「ここまで関わったら放っておくのはちょっと……」という彼女の意見によって錬の気遣いはあえなく粉砕。
――ええこやなぁ。と、どこぞの白髪青目の兄貴分のような口調になりながら、申し訳ないけど一緒にインデックスをなだめるのを手伝ってもらっている。
「それにインデックスちゃん。当麻が気まずそうにした理由、僕もわかるっちゃわかるんだよね」
「れんまで私が悪いっていうの!?」
「悪いとまでは言わないけどさ……」
「が、学校は基本的に部外者の立ち入りが禁じられていますから……」
「? でも氷華だって入ってきているよ」
「あの、私は転入生だから……」
「じゃぁ私も転入生になる!」
――何とも難易度の高いことを……。と、インデックスが唐突に言い出したそのセリフに、錬は思わず顔をひきつらせながらなんと説明したものかと頭を抱える。
そして、
「でもインデックスちゃん。君今はとうまの所にいるけど、基本的には
風斬に妙なワードを聞かれないよう、最低限の予防措置を施した錬の指摘に、インデックスは少し驚いたように顔を上げ、首をかしげる。
「え? 授業うけなきゃいけないの?」
「うん。転入生になるっていうことは、この学校に入学して当麻と一緒に勉強しなきゃいけないってことだし。当麻も夏休みにあいだに真昼兄さんに、インデックスの編入はできないかって聞いていたけど、
「…………………………………」
『当麻と一緒に』というワードに一瞬ぐらつきかけたインデックスだったが、そこはさすがに魔術世界の最高峰の一つに数えられる人物。科学と魔術が微妙なバランスで、今の均衡状態を保っていることを知っているからか、それ以上の無茶を言うのはやめた。
だが、それでもやはりとうまの態度は気に入らないようで……。
「うぅ……」と、かわいらしく唸り声をあげて、不機嫌そうに机に突っ伏した。
そんなインデックスの様子に、ようやく落ち着いたかと思った錬と風斬は、ほっと安堵の息をつきながら、うんうんうなりながらゆらゆら体を揺らすインデックスに苦笑する。そして、
「まぁ、それでも説明不足だったのは当麻が悪いから、今度会った時にせいぜい制裁してあげればいいと思うよ?」
そのくらいで手打ちにしてあげて。と、錬に言われ、インデックスは渋々ながら頷き、当麻を許す下準備をようやく整え、大人しくなったようだった。
それをみて錬はようやく安堵の息をつき「これで当麻を探しに行ける」と、席を立ちあがりかけたとき。
「あ、いたっ!? インデックス、お前何で食堂に……はっ!? まさか俺の家で足りなかった分の食糧をここで詰め込んで、上条さんの家系のエンゲル係数をさらに跳ね上げる気か貴様っ!?」
なんて騒がしい怒号を上げながら、件の人物――上条当麻がやってきて、
「あ、当麻! 始業式さぼって何やってんのさっ!?」
「げっ!? 錬!? って、人のこと言えた立場かお前っ!?」
「せっかく心配して探しに来てやった親友に対して、言うセリフがそれかっ!? 小萌先生という猟犬が放たれているという事実を教えに来てやったのに……仕方ない。ここは小萌先生に来ていただいて、「どうしてさぼったりするんですか……!」と小萌先生を号泣させて、『児童虐待の現行犯で逮捕 K氏(15)』として明日の一面見出しを飾るといいわ!!」
「わっ!? 待て錬、それマジでシャレにならないっ!!」
「あ、あの、先生って言っているからにはその人成人しているんじゃ……」
と、いつも通り騒ぎ出す二人に、目を白黒させながら風斬がとりあえず気になったところを指摘する。そんなカオスな空間を切り裂いたのは、
「と~う~ま~」
「ん?」
「あ……」
「いまするんだ……」
取りあえず理不尽にためられた怒りを発散すべく、ゆらゆらと立ち上がったインデックスだった。
インデックスはそのまま大きく口を開き、ガチガチと歯を打ち鳴らし始める。それはもはやどこからどう見ても飢えた肉食獣そのもので、
「あ、あれぇ? インデックスさん? 怒りたいのはこっちなのに、なんでそちらの怒りが天元突破!?」
「大丈夫かも。トウマが言いたいことは全部錬が言ってくれたから、あとは当麻が悪かった部分を私が制裁するだけ」
「まて、よく考えろインデックス! その構図をよく見たら俺だけが滅茶苦茶損していることに!!」
「問答無用なんだよっ!!」
「不幸だぁアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!?」
瞬間。がぶりと擬音が聞こえてきそうな噛みつきで、見事に当麻に食らいついたインデックス。それがガリガリ削ってくる頭蓋骨の痛みに、当麻はたまらず絶叫を上げる。
「あ、あわわわわ!? た、大変……大変なことに!?」
「あぁ、大丈夫。いつものことだから」
「い、いつも!?」
「むしろ当麻も最近癖になって「はぁはぁ、もっと噛んでください!」って内心では思っているから」
「そ、そうなの?」
「錬テメェ!? 何不名誉な根も葉もない噂を、関係のない人にさも事実のように語っていやがる、信じちゃったらどうするんだアイタタタタ!?」
当麻が怒り狂う真っ白シスターの制裁から解放されたのは、それから数分後のことだったという。
当然その間中響き渡っていた当麻の悲鳴は、当麻を探していた小萌先生を見事に召喚してしまった。
無論その数分後、当麻と錬とインデックスは、勝手に始業式を抜け出したり、学校に不法侵入したりしたことを、小萌先生にしこたま怒られることになるのだが、それはまた別の話。
そして、その時三人の隣には、あの気弱な少女の姿はなかった。