「買い物……ですか?」
「そう。そろそろフィアの学生服とエドのランドセル買いに行った方がいいでしょ?」
夏休み目前の天樹寮にて、朝食の皿洗いをしていたフィアは突然顔を出した錬の言葉に目を丸くした後、
「じゃ、じゃぁ!!」
「うん。夏休み開けたらフィアはうちの学校に編入だって。エドも近くの小学校に行くみたいだよ。シオンさんいわく『もう基礎的な治療は終わったからな。あとは経験でなんとかしていく領域だし』だそうだよ」
「そうですか。よかったですね、エドさん!!」
まるで花がほころぶような笑みを浮かべ、隣に立ってゴーストハックを使い食器の片づけをしていたエドに笑いかけた。
「はい」
エドは相変わらずの無表情のままだったが、付き合いが長い錬とフィアの二人はその中にほんの少しだけ嬉しそうな色が浮かんでいることに気付く。自分たちよりも後に培養漕から出てきたこの少年を、二人はまるで弟のようにかわいがっていた。
「じゃぁ、今日の授業は午前中だけだから13時ぐらいになったら校門前に来ていて。帰りがけにパパッといっちゃおう。品物そのものはウィドさんが事前に仕入れてくれているみたいだし」
「はい!」
そして、錬と一緒に出掛けることも手伝いフィアはとてもウキウキした様子で皿洗いを終え、まだ家に残っている月夜のところへ今日の服を選んでもらうために、エドを連れて走っていくのだった。
…†…†…………†…†…
「まずい……遅刻確定だ」
しかし、そんなフィアを裏切ってしまうかのように錬はしっかりと待ち合わせ時間に遅刻してしまっていた。
現在の時刻は13時30分。つまり30分の遅刻――人によっては怒りだして帰ってしまう時間だった。
う~。フィア怒っているかな? いや、あの子に関しては絶対そんなことないんだろうけど、でもちょっと落ち込んでいるかも……。
錬は内心でそう頭を抱えながら、うなり声を上げた。
そして、
「それもこれも……お前たちが僕の帰りを遅らせたからだっ!!」
「そんなんいうたかてしゃーないやんかぁああああああああああああ!?」
「課題がぎりぎりまで終わらなかったんだぜぃ……」
「いや~。錬の頭はほんと計算だけはスパコン並みの速度で出してくれるからな……助かったぜ!」
「何サムズアップしてんのさ、当麻っ!! 大体なんで期限が一週間前の課題が残ってんだよ!? おまけに期末の点数も信じられないくらい悪かったし! テスト前に勉強に付き合ってやった僕の苦労を返せよ
「あっ! なんやその呼び方! こいつ自分だけバカ連合から逃れようとしてます!!」
「なにぃ~!? それは聞き捨てならないんだぜぃ!!」
「そうだそうだ! お前だって吹寄に
「残念でした!! 成績だけなら学校一の雲川先輩に並んでんだよ、バ~カバ~カ!! ちなみに僕だけ補習もありません! ざま~みさらせ! お前らが必死こいて補習している間に僕は悠々自適に夏休み過ごしてやんよ!!」
「なん……だと!?」
「おいおい……さすがにそれはちょっと聞き捨てならないんだにゃ~?」
「どうやら、錬の霊圧が……消えたっ!? って、誰かに言わせなアカンみたいやな……」
というかまぁ、いつも通り悪友たちにつかまってしまっただけなのだったが……。どういうわけか期末の時に出す課題をしていなかった三人に泣きつかれてしまい、こんな時間まで課題を手伝わされてしまったのだ……。
まぁ、こんな文句を言いつつもしっかりと課題が終わるまで付き合ってしまったところに錬のお人よし具合がにじみ出てしまっている。当然三人は、そのことをしっかりと理解しているため先ほどまでの険悪な会話は全部演技だったりする。
「土御門! 左右から挟み込んで挟撃すんで!!」
「おっけ~だにゃ~。フィジカルな喧嘩で俺らに勝てると思うなよ、錬やん!」
「はっ! そっちこそ、僕が一応能力者だってこと忘れていない?」
「だが、その幻想をぶち殺す!!」
「ちょ、当麻それ卑怯!!」
わ、わかっていると思われる……。
いつも通りガチの喧嘩を展開する4人に、女子は無言でため息を漏らしながら我がクラスの名物委員長を呼びに行き、男子たちは集まって三人対錬のどちらが勝つかちょっとした賭け事を始める。
小萌先生が見たらため息をつきそうなバカ騒ぎだったが、それはいつも通りとんでもなく素早く収束することになる。
「夏休み目前まで何やってんの、
教室の扉を開けるとともに弾丸のように飛び込んできた、広いデコを持つ委員長がとんでもないキレを持ったボディーブローと頭突きで四人を瞬時に沈めたからだ。
「「「「がはっ!?」」」」
そんな風に間抜けな悲鳴を上げて吹き飛ぶ四人と、いつも通り吹寄が勝つことによって親の総取りとなった掛け金たちに悲鳴を上げる男子生徒たち。ちなみに賭けの親は出席番号順で移動しているため、いまのところ本気での不満の声は上がっていなかったりする。
「まったく。ちょっと目を離したスキに油断も隙もあったもんじゃないわね。あと、錬……あんたにお客さんよ」
「ちょ、お客さんがいるならこんな大ダメージ与えるのやめてよ、吹寄……」
見事に決まったボディーブローの余韻でちょっとした嘔吐感にさいなまれながら何とか立ち上がった錬は、不満の声を上げながら吹寄が指差した方へと視線を向け、
「あ、あの……錬さん? 大丈夫ですか?」
と、いいながら教室を覗き込んでいたフィアの姿を確認した。
「キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!! 金髪美少女キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!!!」
「ちょ、だれなんだにゃ~!! その女の子! 錬やんの知り合いかにゃ~!!」
変な感じにテンションが上がるバカ二人をゴーストハックで吹き飛ばしながら、錬はあわててフィアの方へと駆け寄った。
「っ!? フィア!? どうしてこんなところに!?」
「え、えっと……いつまでたっても錬さんが学校から出てこないから、ちょっと心配になって様子を。幸い吹寄さんにも会えましたから、案内してもらったんです」
今度は別の意味で嫌な汗をかき始めた錬を見て、「大丈夫ですか?」と、心配した様子で吹寄に殴られたところを触りながら説明をしたフィア。正直怒るよりも自分の身を心配してくれたフィアには申し訳ない気持ちでいっぱいだったが、今はそれよりも危険なことがある……それは。
「え? 何その桃色の空気? え、まさか錬……その子と?」
「おいおい……。お前だけは俺たちの仲間でいてくれると信じていたのに、なんですか? お前も上条属性の仲間入りですか?」
「これはちょっと審問を開く必要性がありそうだな……。とりあえずは殴ることになるだろうから、手の保護のためのテープをボクシング部に借りてきて?」
背後に控える嫉妬に狂った男子の同級生たちが問題だった……。
まずい……僕ここで死ぬかも。と、割と真剣に命の危機を感じる錬。そんな彼の危機感をしり目に、着々と審問の用意を進めていく男子生徒たち。そんな彼らを無視するかのようにクラスの女子たちはフィアの方へと集まり、錬とのなれ初めについて根掘り葉掘り聞き始めていた。
というか、そんなことする前に助けてよ……。吹寄もなんか唖然としていて動かないし……。
錬が内心でそう悲鳴を上げたときだった。
「おいおい、待つんだぜぃみんな! まだあの金髪ちゃんが錬の彼女だって思うのは早計だにゃ~!」
「そうやそうや! 審問の方は俺ら親友連合のまかせてもらおか?」
「だいたい、あのヘタレの錬に彼女作るような甲斐性があるわけないだろ? きっと何かの間違いだって!」
親友三人が突如そんなことを言いながら、錬の両脇を固めフィアと一緒に強制的に教室から連れ出した。
「え? え?」
不思議そうに首を傾げる錬に、三人はニヤッと笑いながらウィンクをかます。
「流石に彼女の前でボッコボコにされるのは嫌だろう?」
「そのくらいの気ィは使ったるよ、錬。友情に感謝しーや」
「まったくだぜぃ。これでお前は俺たちに貸しひとつだにゃ~」
「当麻、土御門、青ピ……」
「僕だけなんか呼び方へんちゃう!?」
そんな三人に感謝の涙をうっすらと浮かべる錬。やっぱり持つべきものは親友だね……。と、内心で小さく笑った後。
「というわけで、こんな情けない奴の彼女やめて俺とつきあわへん?」
「あっ! ばか、そこはふつうに考えて超クールな不良ファッションで決めた俺に譲るんだにゃ~!!」
「いやいやお二方。ここは女日照りでいつも喘いでいる上条さんに譲ってくれるパターンじゃないんでせぅ?」
「「鏡見ていえ!!」」
「やっぱり、そんなことだろうと思ったよ、三バカがぁあああああああああああああああああああああ!!」
自分の目の前で遠慮なくフィアを口説き始めた三人を、怒声を上げてゴーストハックで殴りつけた。
そんな彼らの姿を見て、フィアは「楽しそうですね」と、小さく笑い声を漏らすのだった。
…†…†…………†…†…
「まぁ、冗談はともかく一応自己紹介しておくぜぃ。俺の名前は土御門元春。んで、こっちのツンツンが上条当麻で、そこにいるデカいのが青髪ピアスな?」
「ちょ……僕だけ名前」
「俺はべつに自己紹介いらないんだけど……」
「全然冗談に聞こえなかったんだけど……。ちょ、青ピはフィアに近づかないでよ。アオガミ菌が移ったらどうすんのさ?」
「移らんわ!? てか、ないわそんな病気!!」
「錬さん……失礼ですよ?」
結局フィアと錬を助けたいつものメンバーは、校門でおとなしく待っていたエドと合流し炎天下の中にもかかわらず元気にだべりながら、セブンスミストへと向かっていた。
フィアが来学期には自分たちの学校に編入すると聞いてから、青髪ピアスも土御門の仲良くなっておくに越したことはないとばかりに同行を申し出てきたのだ。
ちなみに当麻は以前からの知り合いだったため、そういった打算は関係無しに普通によかったな~と思いつつ、ついてきていたりする。流石は上条属性……女の子と仲良くなるための幸運に関してはえらく高い補正を持っていた。
「まぁ……いいけどさ」
「錬? どうしたの?」
「いや、べつに?」
そんな三人と楽しそうに話すフィアを見て、エドの手を引いていた錬は複雑そうな顔でため息を漏らした。エドはそんな錬を見て小さく首を傾げている。
べつにフィアが三人と仲良くなるのはかまわない。まぁ、あまり人に褒められるような奴等ではないが、悪い奴等でもないと親友の錬は知っている。
だが錬は不安を覚えずにはいられなかった。
今までフィアの男性との交友関係は一部例外を除くと寮の関係者たちで完結している。そんな中で自分に好意を抱いてくれたのは単純に運がよかったからだと、錬はいまだに思っていた。
もしも、彼女が色々な人と付き合いだして人間関係について、より複雑なものを構築し始めたとき果たして自分は彼女の彼氏としていられるのかどうか……。
錬は自分よりも魅力的な男子がいることを十分自覚していた。自分の親友を引き合いに出すだけでも結構自分よりも勝っている物を持っている連中だ。
頭悪そうに見える格好をしている土御門は、ああ見えてけっこう博識で度胸もある。また腕っぷしも強く彼が喧嘩で負けるところは見たことがなかった。普段のバカっぷりが演技に見えるほど、実はかなり高水準なステータスを持つ奴だったりする。
青髪ピアスは変態だが、ビジュアルは四人の中では一番高いのではないだろうか? 実はこの年齢でパン屋のヒモをしていたりする……。本人は下宿だと言い張っているが、あの店で修業している
当麻に関しては言わずもがな、不幸でバカだが、お人よしで、熱血漢で、他人であってもその人物を助けるためなら命を懸けられる好漢だ。彼に出会えば惚れない女の方が少ない、と錬は最近本気でそう思い始めていたりする。
そんな彼らに対して自分は何を持っているだろう? 錬は内心でそう考え、自分の平凡な容姿を初めて呪った。何一つ張り合えるものがない気がして、だんだんと歩みが遅くなりフィアと話しているメンバーとの距離が開く。
その時だった。
『錬さん』
「!?」
脳裏に白の羽が舞うと共に、フィアの声が聞こえてきて錬はあわてて顔を上げる。そして、その視線の先には錬の方をちょっとだけ振り返り優しい笑みを浮かべているフィアの姿があった。
『私は初めて会った男の人だから錬さんを好きになったわけじゃありませんよ?』
聞かれた! 内心の恥ずかしい葛藤を聞かれてしまい、顔を真っ赤にする錬。そんな彼の反応に気付いた三バカが「どうした?」と首をかしげながら彼に声をかけるが、今の錬にはその声は届かない。
『培養漕からなかなか出られない私の面倒を根気強く見てくれて、私のことをいつも心配してくれている優しい人。そんな人だから、私は錬さんが好きになったんです』
「あう……」
フィアの内心の声は嘘をつかない。彼女の『能力』はそういう力だから。だから、その言葉に込められた気持が本当に強くてゆるぎない……温かいものだと悟った錬は、今度は違う意味で顔を真っ赤にして、情けないうめき声をあげた。
『大好きです。錬さん』
『…………………』
錬はしばらくパクパクと口を開閉した後、
「な、なんでもないよ!!」
「なんや? 突然顔真っ赤にしたかと思たら怒りだして……」
「へんなやつだにゃ~」
「………………」
首をかしげる土御門と青髪ピアスだったが、上条はフィアの能力について知っているので何が起こったのかだいたいのことは悟っていたのだろう。ニヤニヤしながらこちらを見ていた……。
そんな彼の表情に舌打ちを漏らしつつ、足早にエドの手を引きフィアたちのもとへと歩き出す錬。そして、彼らの隣に並ぶと同時に。
『僕も……その、好きだよ。フィアのこと』
『はい』
恥ずかしいので、できるだけぶっきらぼうな口調を演出しようと苦心しながら、フィアにできるだけそっけなく内心で告げた。もっとも、それを聞いたフィアの頬が桜色に染まり、表情が今まで見たことがないほどうれしそうな笑顔になっているところを見ると、あまりうまくはいかなかったようだが……。
…†…†…………†…†…
「おやおや? お兄様御一行ではないか?」
「え? 舞夏?」
そんな風に春色の雰囲気を垂れ流す二人が正気に戻るのを待ってから、三バカが「いや~。なんかあついわ~」とか言い出しながら冷やかし始めたときだった。
ドラム缶型のロボットを手にもったモップで巧みに操るメイドの少女が通りかかったのは。
「あ、舞夏さん!」
「おやおや、フィアさんも一緒? そう言えば来学期はお兄ちゃんの学校へと編入するんだっけ?」
「はい! 今日は制服を買いにセブンスミストに行くんですよ!」
「あぁ。あそこか。あそこはいいぞ? どんな無茶な注文でも大抵のものは出てくるからな。さすがに医療用のモルヒネ出されたときには少し引いたが……」
「舞夏……それ一体何に使ったの?」
「詳しくは兄貴にチェケラだな、錬お兄ちゃん」
「舞夏。それはともかく、君のお兄さん何とかして……。『なんでお前がお兄ちゃんって呼ばれているんだ?』って、地獄の底から這い出るような低い声で聴いてきているから……って、土御門肩イタイイタイ!?」
メイド学校の実地研修とやらで広い範囲で活動している土御門の妹(義理の)……土御門舞夏の交友関係は意外と広かったらしい。兄貴である土御門の友人の錬は言わずもがな、普段から学園都市になれるために散歩をしているフィアとも知り合いだったらしく、のんびりと会話をしながら近況を報告し合っている。
「ふ~ん。つまり、錬お兄ちゃんがフィアの言っていた
「ちょ、舞夏さん……その言い方は……」
小指を立ててニヤニヤして聞いてくる舞夏に、顔を真っ赤にしながらも否定しないフィア。そんな二人の背後では嫉妬に狂った土御門と、それを取り押さえるために迎撃している錬・上条・青髪ピアスの激突が行われていたりする……。エドがそれを必死にそのことを知らせようとフィアの服の裾を引っ張っているが、残念なことに彼女たちがしているのは女子の好物である恋バナだ。彼女たちが背後の騒ぎに気付くのはしばらくかかるだろう……。
「つまり今日は半分デートみたいなものか?」
「ち、違います。エドさんもいるじゃないですか!」
「エドは二人の邪魔をするなんて空気読まないことしないよな~?」
「空気?」
「あ~。まだそれを理解する段階までは至っていないか……。まったく、シオンさんも変なことを教える前にそこらへんの機微を教えればいいものを」
あのおおざっぱなシオンさんにそれを求めるのは少し難易度が高いですね。と、舞夏の言葉にフィアが苦笑を浮かべる。そんな彼女の優しい笑みを見て、舞夏は少しため息を漏らした後、
「仕方がない。兄貴の不始末ぐらい私が何とかしてあげよう」
「?」
唐突にそんなことを言ったかと思うと、ロボットを再び巧みに操りだし兄の土御門元春のもとへ急行した。
「ほら兄貴。いくぞ……たまには家族サービスしたらどうだ?」
「え、ちょ!? 舞夏!! お兄ちゃんはまだやらないといけないことが……」
「錬に関しては私があとで話してやるから……今は空気読もうな~兄貴」
「お? 土御門は脱落かいな? この隙にフィアちゃんの好感度を……」
「あぁ、ちなみに青髪ピアス。第三学区の駅前のファミレスで最近噂になっている脱ぎ女が出たという情報が……」
「錬、上やん! おれちょっと第三学区に用事ができたから、これにてドロンするわ!!」
瞬く間にお邪魔無視二人を排除してのけた舞夏の鮮やかな手際に唖然とする錬とフィア。そんな舞夏は最後に当麻を見て、
「上条は……あー。なんか向うに泣いている女の子がいたぞ?」
「お前それで俺が騙されると思ってんのか!?」
心外だ!! といわんばかりに憤激する当麻に、舞夏は薄ら笑いを浮かべて一言。
「別に信じる信じないは上条の勝手だけど……かわいそうに、お前が助けに行かないならあの子ずっと泣いたままだろうな……」
「………………………」
舞夏の言葉に当麻は頬をひきつらせた後、
「はぁ……。ちょっと行ってくる」
ため息を漏らした後走り出した。何ともお人よしな行動だった。
「それじゃぁお二人さん。エドと一緒に楽しんで来いよ~」
それを見送った舞夏は、土御門の耳を引っ掴みながらドラム缶ロボットのモーターを使い彼の体を引きずりながらどこかへ行ってしまった。
まるで嵐のように現れて去っていた舞夏に、唖然としながら錬とフィアは顔を見合わせた後、
「いかない……の?」
エドのそう尋ねられて、苦笑を浮かべる。
「うん。いこっか。せっかく舞夏が気を使ってくれたわけだし」
「エドさん、どんなランドセルがいいですか?」
お互いに手を握り、錬がもう片方の手でエドをひきつれながら、ほんの少しだけ嬉しそうな顔でセブンスミストへと向かうのだった。
その数分後。本当に泣いていた女の子を連れて当麻がセブンスミストにやってきたのを見て錬は絶句することになるのだが、それはまた別の話。
…†…†…………†…†…
「まったく当麻は。女の子とみれば見境なく助けるそのくせどうにかした方がいいと思うよ」
「待てよ、錬。それだと俺がまるで下心を持って女に接しているように聞こえるだろうが!!」
「あれ、違ったの? この前困っている男の子に『助けて!!』って頼まれたのに『いえ、すいません。遠慮します』って言っていたからてっきりそうなのだと思っていたよ」
「人聞きの悪いこと言ってんじゃねぇよ!! してねぇしそんなこと!!」
「錬さん、いくらなんでも失礼ですよ」
「お兄ちゃん喧嘩はだめだよ!!」
「喧嘩……ダメ」
結局、少女を連れてきてしまった当麻と合流した錬とフィア……そしてエドは、五人仲良くセブンスミストにやってきていた。当麻が連れてきた女の子は同姓で優しそうなフィアにえらく懐いており、フィアもうれしそうな顔でその世話をしている。なので、
「当麻……ちょっと、フィアとその女の子とのこと任せて大丈夫? 僕はエドとランドセル買ってくるから」
「え? いいのか」
「いいも悪いもないよ。あの女の子フィアに懐いているし、学園都市に住んでいる時点で保護者がついている可能性はゼロに近いでしょ? だったら、面倒見てくれる年上がいた方があの子も安心するでしょ」
「……人のこととやかく言えないだろお前。なんやかんやでお人よしだな」
「うるさいよ」
自分のデートをつぶしてまで自分が助けてきた女の子に気を使う錬の言葉を聞き、当麻は思わず苦笑を浮かべ錬は舌打ちを漏らした。
「とにかく、フィアのことは任せたからね! フィア……当麻にラッキースケベされたら遠慮なくぶちのめすんだよ!!」
「錬さん……」
「しねーよそんなこと!!」
エドをひきつれウィドに会いに行った錬の言葉に怒声を上げつつ、上条とフィアは遠ざかっていく二人を見送った。