とある科学の魔法士たち   作:過労死志願

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虚空爆破《グラビドン》発生!!

 小学生用の用品売り場。ヴィドと無事に会うことができた錬とエドは、そこでヴィドがエドのために仕入れてくれたランドセルの品定めをしていた。

 

「へ~。虚空爆破(グラビドン)って、そんな大事になってるの……」

 

「いまんところ、ディーががんばってくれているおかげで人的被害は出ていないみたいだがな。店舗自体や商品への被害は甚大で、被害にあった店の連中が嘆いているぜ。おまけに襲撃される店はコンビニやら洋品店やら百円ショップやら……。雑貨店狙ってんのかと思えば、今度はヘアサロンが爆破されたっていうし……。共通点が全くないから、次にどこが狙われるのか全く分からなくてこっちも参ってる」

 

「まぁ、少なくともここにはだいたいの店が入ってるから狙われる可能性かなり高いよね……」

 

「だからこうしてお前に相談しているんじゃないか」

 

 青いランドセルを背負い鏡の前でくるくる回るエドを、ベンチに座りながら眺める錬とウィドは、最近学園都市を騒がせている連続爆破事件……虚空爆破(グラビドン)の情報交換をしていた。

 

 ウィドにはいろいろお世話になっているうえに、外にいる情報制御理論関係者たちとのつなぎも取ってもらっている。ここが爆破されてはいろいろ困るということと、何より恩人の彼は被害をこうむってほしくないということで、ここ最近は天樹寮の手の空いたものが交代で出入りしながらこうして情報交換をしていた。

 

「それにしても、風紀委員(ジャッジメント)も大変だな~。もう虚空爆破(グラビドン)で10人近くが怪我をしかけたってディーが言っていたぞ」

 

「そんなに? ただの連続爆破事件にしては珍しいね……予兆がわかるから爆破の前に駆け付けてしまうってこともあるんだろうけど、それにしたって10人っていうのはちょっと多すぎだよ」

 

 黒の背負いやすいランドセルと、青のシオンが好きそうな模様が入ったランドセルの前で無表情でありながらも悩んでいる感情が染み出すような雰囲気で首をひねっているエドをのんびりしながら見つめていた錬は、その件数を聞いて少しだけ眉をしかめた。

 

 もとより、爆弾事件は不意打ちだからこそ被害が拡大するのであって、予兆がわかっている爆弾など近づきさえしなければ大した被害は出ないはずだ。ディーが危ないことをしていると愚痴を漏らしていたセラの話を聞く限りでは避難する余裕がある場合も結構あるようだし、風紀委員(ジャッジメント)だけがこれほど被害をこうむりそうになるのはかなり異常……

 

「ん?」

 

「あ……そう言われりゃ変だな?」

 

 そこまで考えて、この事件の異質さに気付いた錬とヴィドはお互いに顔を見合わせて意見のすり合わせを行う。

 

「いくらなんでも風紀委員(ジャッジメント)の被害が多すぎるよね? どうしてその風紀委員(ジャッジメント)たちはそんな被害にあっているの?」

 

「避難誘導するために、予兆があった店内を歩いていて、ちょうど爆弾になったぬいぐるみの前を通りかかった時に爆発したそうだ。運が悪かったね……って、ディーは言っていたが」

 

「いやいや……それが10件も続いたら運うんぬん以前の問題だと思うんだけど」

 

 まるで、風紀委員(ジャッジメント)そのものを狙い撃ちしているような……。二人が同時にそうつぶやいたとき、錬とウィドの顔に驚愕の色が浮かんだ。

 

「おいおい……まさか」

 

「ホントに、風紀委員(ジャッジメント)を狙い撃ちしているんじゃ……」

 

 その時だった!

 

 エドが黒いランドセルを手に取り二人のもとへかけてきて……その頭上のスピーカーから『店長へ連絡。山田様が来られました。至急社長室にお越しください』という特殊な放送が入ったのは!

 

 その放送はセブンスミストの緊急スクランブルの隠語。

 

『爆弾が設置された』と言うことを関係者だけにわかるように告げられた、店の関係者だけにわかる緊急放送だ!!

 

 

 

…†…†…………†…†…

 

 

 

 小さな女の子と手をつなぎながら歩くフィアの隣を、つんつん頭の少年が恥ずかしそうに頭をかきながらあるいていく。

 

 上条当麻は意外とうぶである。

 

 友人たちからはフラグ乱立男などと揶揄されることのある彼だが、彼としては人として当然の行動しているだけだ。当然そんなことしか考えていない彼に対して淡い恋心を抱いた少女も多かったが、結局は上条の鈍感さに愛想を尽かしてしまい、ほかの男に流れてしまうことが大半だったりする。

 

 そのため、上条は女性を助けることに関しての抗体はできているのだが、これほど近くに女子がということに対する抗体は意外と無かったりする。親しい女性もいるにはいるが……

 

「それもあの、吹寄だしなぁ……」

 

「はい? 何か言いましたか?」

 

「ああ、いや。なんでもない」

 

「…すいません。こんなことにつき合わせてしまって」

 

「いや。女の子連れてきたのは俺だし。俺のほうこそ悪いなんか邪魔しちまって」

 

「いえ。あの状況なら錬さんも同じことをしていましたよ」

 

「あいつはお人よしだからな」

 

 苦笑を浮かべる上条にフィアは同じように苦笑する。

 

 あなたも似たり寄ったりですよ?

 

 内心でそんなことを考えながらフィアはようやく見えた洋服店を指差した。

 

「見えましたよ。あれがお洋服屋さんです」

 

「わぁ!! きれいなおようふくいっぱいだ!!」

 

 目をキラキラ輝かせて洋服売り場に走っていく少女のあとをフィアは慌ててついていく。

 

「あ、上条さん!! しばらくここで待っていてもらえますか? お洋服の買い物なんて男の方には退屈でしょうし……」

 

「いやいや、錬にお前たちのこと頼まれているしついていくよ」

 

「え……でも?」

 

「荷物持ちぐらいならさせてもらうぜ、お姫様」

 

 ふざけ半分でどこかの執事のように一礼をかます上条にクスッと笑いながら、フィアはうなづいた。

 

「わかりました。お願いしますナイト様」

 

「喜んで」

 

 笑いあう二人は服を手に取ってはしゃぎまわる少女のもとへ急いだ。

 

 

 

…†…†…………†…†…

 

 

 

「何してんだおまえ? 挙動不審だぞ……」

 

 突然後ろから声をかけられてしまい、子供っぽいデザインのパジャマを体に重ねて、鏡で見ようとしていた美琴は飛び上がった。

 

「な、な、なんであんたがこんなところにいんのよ!!」

 

「いちゃいけないのかよ?」

 

 美琴が顔を真っ赤にしてめちゃくちゃなこと言うのを見て、上条はまたややこしい奴につかまったとため息をつく。

 

「おにーちゃん、このお洋服……あ、常盤台のお姉ちゃんだ!!」

 

 きれいな洋服を持った少女が上条のもとへ駆け寄り、そして隣に立っていた美琴に気づいた彼女は美琴にも笑いかけた。

 

「この前のカバンの女の子?」

 

 ずいぶん前に上条に戦いを挑むちょっと前に巻き込まれた事件で助けた女の子だったので、御坂は笑みを浮かべてその子の頭をなでる。

 

「あんた妹なんていたの?」

 

「ちげーよ。この子が洋服屋を探していたから案内してやったんだ。あと一緒にここに来たツレの彼女の護衛だな」

 

「ツレ? ……ああ、あのジミオのことね」

 

「錬さんそんな風に呼ばれているんですね……」

 

「へ!?」

 

 再び後ろから聞こえてきた声に美琴は飛び上がり後ろを振り向いた。

 

 そこには若干悲しそうな顔をして微笑む、天樹寮のフィアが立っていた。

 

「ふぃ、フィアさん!! あいつフィアさんの彼氏だったんですか!?」

 

「ええ……一か月前ぐらいからおつきあいを。錬さんが何かご迷惑をかけているみたいですね。すいません」

 

「い、いえ、ち、違うんですさっきのはなんていうか言葉のあやというか……」

 

 悲しそうな微笑みを浮かべながら頭を下げてくるフィアに完璧に恐縮してしまう美琴。この前あった時は何かと気配りをしてくれたフィアに対して、美琴は全く頭が上がらなくなってしまっていた。

 

『あのビリビリをあんなふうにするなんて……。フィアっていったい何者だ? あと、フィアのこと知っているってことは、ビリビリもあいつらの秘密知っているんだろか?』

 

 何気にIブレインのことを知っている上条だが、彼の場合は美琴と違い完全な事故であったため美琴たちのように協力を求められてはしていない。むしろ、真昼、雪、レノア、祐一というあの寮のリーダーたちにそろって頭を下げられるという貴重な体験をしていたりするが……その話は今は関係ないので割愛。

 

 とにかく今は買い物だ。

 

「あ、このパジャマかわいい!!」

 

「へ!?」

 

 ひとしきり恐縮のしあいを終えたフィアは美琴が後ろ手に隠しているパジャマを目ざとく見つけ、目をキラキラと輝かせた。

 

「かわいいですねこれ。美琴さん買うんですか?」

 

「え、ええ!! そうなんですよ! もう一目見たときにこれしかないと思っちゃいまして!!」

 

 自分と同じ趣味を持つ年上の出現に、美琴は二ヘラと顔を崩しながらこのパジャマの良さを力説する。

 

 なかなか良好な関係を築くことができたみたいだ。

 

「で、これが、私が最近集めているキャラクターなんですけど!!」

 

「わぁこれもかわいい。カエルさんなんですね。御坂さんいいですね。こんな可愛いものいっぱい持っているなんて」

 

「そ、それほどでもぉおおおおお!!」

 

 白井がいたら気絶してしまいそうなほどのキャラずれっぷりである。今まで理解者がいなかった分、うっぷんがたまっていたのだろう。

 

「あの、フィア? この子の買い物先にいっていいか?」

 

「あ、はい! 私も後で行きますので」

 

「あ、そ、そうか……………」

 

 中学生と楽しくかわいいものを見せ合うフィアに、意外と子供っぽいところもあるんだなと驚きつつ、上条は女の子の手を引き姿を消した。

 

 本来なら近くにいたいところではあったが、隣にいるのは仮にも学園都市最強だ。護衛という面では自分よりも頼りがいがあるだろう。

 

 それからしばらく、これらのグッズがどこで買えるのかとか、この中から買うとしたらどういうパジャマを買う? などといった談義でフィアと会話の花を咲かせていた美琴はすっかりフィアになついてしまった。

 

 類は友を呼ぶといったところだろうか?

 

 そんな時だ。

 

 

『店長へ連絡。山田様が来られました。至急社長室にお越しください』

 

 

 その放送を聞いた瞬間、フィアの顔色が変わった。

 

「どうしたんですかフィアさん?」

 

「御坂さん、お連れの人とかいましたか?」

 

「え? はい、友達二人と来ましたけど……」

 

「今すぐ連絡を取ってください。そしてすぐにこの店から出てください」

 

「え、ちょ、いきなりどうしたんですかフィアさん!?」

 

 その時、店員を伴った初春が美琴のもとに駆け寄ってきた。

 

「御坂さん!! 虚空爆破(グラビトン)の前兆を風紀委員(ジャッジメント)本部が感知。この場所が爆発されます!!」

 

「な、なんですって!!」

 

「そういえば初春さんは風紀委員(ジャッジメント)でしたね。一緒に来ていたお友達とは彼女たちのことだったんですか……」

 

「フィアさん!? どうしてこんなところに?」

 

「お買い物に来ていたんですが……大変なことになりましたね」

 

「ええ。まったくですよ。とにかくここは危険です。早く避難を……」

 

「いえ。ここは私の知り合いのお店です。内部構造も把握しています。私も避難誘導を手伝います」

 

 今までのようなはしゃいだ雰囲気は一切なく理路整然とした口調で話すフィアに初春や御坂は若干驚いてしまった。

 

 おっとりしているだけじゃなかったんだ……。

 

 内心結構失礼なことを考えつつ、御坂たちはうなづく。

 

「わかりました。だったらこのフロアの避難誘導を頼みます」

 

 初春の言葉に頷いた後、フィアは美琴を伴い避難誘導を開始した。

 

 客としてきている学生たちがパニックにならないように、嘘の理由で避難を行い、あらゆる隙間を見逃さず一人ひとりフロアへの出口へと丁寧に誘導していく手腕に美琴は舌を巻いた。

 

 おまけに彼女は魔法士だという。

 

 常盤台でもここまでクオリティ高い人なんていないわよ……。

 

 その時、階段を凄い勢いで上ってきた錬が、フィアの前に姿を現した。

 

「フィア!! 無事!?」

 

「錬さん! はい。まだ爆破は起きていませんから」

 

「ああ!! あんたあのむかつくやつの腰巾着!!」

 

 そんな錬の姿を見て、つい反射的に食って掛かりかける美琴を錬はぴしゃりとはねのけた。

 

「黙っててよ!! 超電磁砲(レールガン)今はもめ事をしている余裕はないんだ!! 当麻はどこに行った?」

 

「女の子と一緒に違う場所で洋服を選んでいたんですけど……」

 

「わかった。ここの避難が終わったらフィアもちゃんとここを出るんだよ。いいね!?」

 

「はい!!」

 

「ちょっと、あんた……」

 

「僕は当麻を探してくる。この事件を未然に防げるのはあいつだけだ」

 

「わかりました。お願いします」

 

「私の話をきけぇええ!!」

 

「御坂さん。早く誘導を終わらせましょう。初春ちゃんたちのほうも気になりますし」

 

「うう。フィアさんがそういうなら……」

 

 マシンガンのようにフィアとの会話を終えた錬が再びすごい勢いで走り出す。

 

「あれ? あいつアスファルトを生物みたいにして操る能力じゃなかったっけ?」

 

 あの速さはどう考えても能力を使っていると思うのだが……。

 

「御坂さん!! 早く避難を終わらせましょう、いつ爆弾が爆発するのかわかりませんし」

 

「あ、はい!!」

 

 そうだ、今はとにかく避難を完了させないと。美琴は頭を振り、錬のことについての考えを追い出す。

 

「慌てず騒がず! こちらに並んでください!! 大丈夫、まだ時間はありますから!!」

 

 美琴がそう叫ぶのを見て、フィアは微笑んだ後自分の仕事に戻るのだった。

 

 

 

…†…†…………†…†…

 

 

 

 「くそ…………あの子はどこに行ったんだよ!!」

 

 ほんの少し目を離したスキに少女を見失ってしまった上条は、そんなことを言いながら、店内を走り回る。

 

 爆弾があるということで避難が開始されてからすでに三分が経過している。早く見つけ出さないとあの子が危ない。

 

 そんな焦りが上条を突き動かす。

 

「当麻!!」

 

「っ!! 錬か!?」

 

 そんな上条に声がかけられ、彼は慌てて振り返った。そこには能力を使って全速力でかけてくる悪友の姿があった。

 

「この事件は最近話題になっている虚空爆破(グラビドン)事件だ。当麻の右手で未然に防ぐことができる。爆弾本体は人形の中に収納されたアルミ製の何か。それを見つけ出してそのアルミ製の何かに当麻の幻想殺し(イマジンブレイカー)で触れておけば問題解決だよ」

 

「待ってくれよ!! あの子を見失っちまったんだ!!」

 

「な……!?」

 

 錬は焦った顔で、申し訳なさそうに告げられたその言葉を聞きしばらく氷結した後、

 

「こんな状況下で女の子から目を離しちゃうなんて、何してんのさバカ当麻!!」

 

「返す言葉もみつからねぇよ!!」

 

「くっ、仕方がない……先に女の子のほうを探そう。当麻は御坂さんの所に行って、あの子を見なかったか聞いてきて!!」

 

「わかった!!」

 

 上条は錬の指示を聞き店の入口へと駆け出す。

 

 爆弾爆発の一分前のことだった。

 

 

 

…†…†…………†…†…

 

 

 

「よっし!!」

 

「とりあえずこれで全員ですね」

 

 避難誘導を終えた美琴たちに向かって上条は慌てて駆け寄った。

 

「ビリビリ!! あの子のことしらねーか!!」

 

「え、あんたと一緒にいたんじゃなかったの!?」

 

「途中ではぐれちまって!!」

 

「なにやってんのよ!!」

 

 言い争いを始めてしまう二人を見て、フィアは慌てて間に入り仲裁する。

 

「二人とも、もめている場合ではないです。早くあの子を探さないと……」

 

 その言葉にひとまず二人が落ち着いた時だった、初春の携帯電話がけたたましい音を立てて鳴り響く。

 

「白井さん!?」

 

『初春!! 初春、聞きなさい!!』

 

「今全員の避難が終わったか確認……」

 

『今すぐそこを……あ、ディーさん!?『今すぐそこを離れてください!! 初春さん、今までの事件を統括すると風紀委員(ジャッジメント)の被害が大きすぎます!! つまり犯人の目的は…………』

 

 その時、上条たちが探していた女の子が、初春の姿を見つけて人形をもって駆け寄ってきた。

 

「おねーちゃーん! メガネをかけたお兄ちゃんが、おねーちゃんに渡してって!」

 

 その人形を見た初春の顔が引きつる。数秒後、瞬く間に形をゆがめていく人形を見て、初春は何の迷いもなく女の子から人形を奪い取り、遠くに放り投げた。しかし、インドア派の初春が投げたところでその飛距離はたかが知れている。結局は近くに落ちてしまった人形を見て、初春はせめてこの子だけでも守ろうと、少女を抱きかかえ爆弾に向かって背中を向ける。そんな初春の耳に上司の最後の言葉が聞こえてきた。

 

『君なんだよ! 初春さん!!』

 

「あれが爆弾です! みんな逃げて!!」

 

 

 

…†…†…………†…†…

 

 

 

 初春の声を聴いた美琴は、即座にスカートにポケットに手を突っ込んだ。だが爆発のタイミングが少しばかり早い!! 間に合うかどうかはギリギリだ。

 

 隣にいた上条も、自分の右手で爆発を掻き消そうとしたが初春との距離はかなり空いている。こちらもギリギリ……。

 

 間に合わない!?

 

 二人の頭にそんな言葉がよぎった時だ、

 

「フィア……大丈夫?」

 

 一人の少年の声がそこに響き渡った!

 

「エドさん!? 来ちゃダメです!!」

 

 後ろを振り向いたフィアが、店内に入ってきてしまったエドを見て悲鳴あげた。その時!

 

「「!!」」

 

 上条と美琴の瞳が驚愕で見開かれる。見る見るうちに形をゆがめ小さな黒い点になろうとしていた爆弾が、その収縮と止めたのだ!!

 

「なにが!?」

 

 美琴がそう言いかけた時……周囲に変化が起こった!!

 

 

 

…†…†…………†…†…

 

 

 

「呆けているんじゃないよ、当麻!!」

 

 そんな怒声を上げて、女の子を入り口付近で見つけ、形が変形しだしている人形をみた錬は即座に能力を展開する。

 

『《チューリング》起動。仮想精神体を解凍。《ゴーストハック》オートスタート。並列起動。《マクスウェル》展開。エントロピー制御開始』

 

 Iブレインの中に収納されていた仮想精神体を解凍し、手を通してその情報を店の床へと伝達させる。

 

 情報の変質の影響受けた床は即座に形を変え人の腕になり、爆弾を包み込むように展開する。ついでとばかりに展開される無数の氷の盾は、とある人物以外を守るように多重展開される。

 

 そう……上条当麻以外の人間の前に。

 

「当麻!! ゴーストハックごとやれ!!」

 

「いわれなくてもぉおおおおおお!!」

 

 当麻が拳を叩き込むと同時に、錬のゴーストハックは大量のノイズを受け強制終了。ぼろぼろと崩れるコンクリの腕を貫通し、当麻の腕はもはや黒い点となっていた人形を直撃した!

 

 ガラスが砕けるようなおとともに、爆弾は元の形を取り戻し、その場に静寂が訪れた。

 

 

 

…†…†…………†…†…

 

 

 

「はぁはおぁはぁはぁ……なんで、なんであんなところに!?」

 

 荒い息をしながら、介旅は暗い裏路地を走る。

 

 先ほど爆破に失敗してしまった介旅は、なぜか現場に来ていたエドから逃げるようにその場を後にした。

 

 彼の頭の中には自分になついてくれた無表情の少年の顔が、自分をさげすんだような瞳で見つめる幻像が浮かんでは消えている。

 

 違うんだ。俺ただ見返してやりたかっただけなんだ。無能な風紀委員(ジャッジメント)に鉄槌を下したかっただけなんだ!!

 

 頭の中で無数の言い訳を叫びながら、介旅はふらふらと裏路地の中を進んでいく。そして、

 

「よぉ。クソガキ。悪いがここからは『チガウセカイ』だ……」

 

 怒れる銀色の刀匠に出会った。

 

 

 

…†…†…………†…†…

 

 

 

「うちのエドを傷つけなかったのは褒めてやるが、それとこれとは話が別だ。きっちり罪を償ってもらうぞ」

 

 腰に長い刀を佩いたシオンは、そういいながら裏路地をふらふらと歩いてきた介旅に近づいて行った。どうやら相当な精神的ショックを受けているようだ。その視線は焦点を失っており、全身からは大量の汗があふれ出ている。

 

「な、なんだよ。俺が爆破したっていう証拠でも……」

 

「あるっちゃあるが、それは警備員(アンチスキル)が提示するべきものであって俺が提示するべきものじゃぁないな。正直このまま見逃してもよかったんだよ。すぐに警備員(アンチスキル)風紀委員(ジャッジメント)に捕まるんだろうし、魔法使いの俺が出張るとアレイスターあたりがうるせぇからよ。いつものように魔法士の連中に任せてのんびりと傍観を決め込むつもりだったんだ。禁書のガキがここにもぐりこんできたからそっちも忙しいし、こんなことしている暇はないほど多忙なんだぜ、シオンさんはよぉ」

 

 そういいながらシオンは刀を引き抜き、白銀の刀身を介旅に見せつけるように構えを取った。

 

「だがなぁ……ガキが騙されて黙っていられるほどできた人間でもねぇんだよ!!」

 

 瞬間、まるで瞬間移動でもしたかのような速度で介旅の懐に踏み込んだシオンは、刀を一閃させる!!

 

「ひぃ!!」

 

 思わず腰を抜かした介旅はその刀を運よく回避。這いずるようにその場から逃げだす。

 

「にがすとおもって……」

 

 シオンがそういうおうとしたとき、足元に金属が転がるような音が聞こえた。

 

「ああ?」

 

「うわぁあああああああああああ!!」

 

 介旅がそう絶叫を上げると同時に、シオンの足元に投げられたスプーンが爆発!! シオンの体を真紅の炎が包み込む!!

 

「お、お前が悪いんだ!! お、おれをだまってにがさないから!!」

 

 介旅はそういいながら逃げ始める。裏路地の分かれ道を利用し、複雑に入り組んだ迷宮のような道をひた走る。

 

『ったく……魔法使いなめてんじゃねぇぞこら!!』

 

 しかし、そんなことはまるで意味をなさなかった。

 

 突如、介旅の前に出現した十字架のような剣がそうつぶやくと同時に、介旅の体はちょっとだけ煤で汚れてしまっているシオンの前に投げ出された!!

 

「な!?」

 

「俺から逃げたいなら追跡封じ(ルートディスターブ)でも雇うべきだったな。わりぃが……古今東西の魔剣妖刀のたぐい……すべての術式を持っている俺から逃れることはできねェ」

 

 そういって再び刀に手をかける、シオンに介旅は絶望の涙を浮かべた。

 

「てめぇにはてめぇの事情があるんだろうし、てめぇが何に憤って、何がつらかったのかなんて他人の俺にわからねぇよ。だがなぁ……」

 

 シオンはそういいながら、刀を振りぬき介旅の体を切り付けた!!

 

「ああ……」

 

 しかし、介旅の体からは不思議なことに出血はなく、代わりに今までの思いと記憶が濁流のように介旅の脳を駆け抜けた。自分がいじめられている姿。金をとられる姿。風紀委員(ジャッジメント)の無能な姿……悪い思い出ばかりが、介旅の中を支配する。

 

 しかし、最後に出てきたのは……無表情ながらも、公園で楽しそうに遊ぶエドの姿。また明日会おうと約束した時の少年の姿。

 

「お前が約束した日……あいつはずっと公園で待っていたんだ。雨が降っても、暗くなっても……ずっとお前を信じて待ち続けていたんだよ」

 

 泣きながら、呆然自失とする介旅を見つめてシオンは鞘を一閃。介旅の頭を殴りつけてその体を地面にたおした。すさまじい衝撃によって朦朧とする意識の中

 

「さっきてめぇがしたことが、てめぇを慕ってくれたエドを危険な目にあわせてまで、成し遂げたいことだったのかよ……クソガキ」

 

 最後にシオンの悲しそうな声を聴き、介旅は小さく謝罪をした後意識を失った。

 

 

 

…†…†…………†…†…

 

 

 

 それからしばらくたって、介旅が何かに額にふれられている感触を感じて重たい瞼を開いた。そして、

 

「だい……じょうぶ?」

 

 無表情のまま瞳に大量の涙をためながら自分の額をなでてくれているエドがいた。

 

「おまえ……」

 

「だい……じょう……ぶ?」

 

 無表情のままポロポロと涙を流し始めるエド。介旅はその時、エドの足元に置かれた救急箱と、シオンから逃げるときにできてしまった擦り傷に張られた大量のガーゼに気付いた。

 

 ああ……おまえは……こんな俺でも心配してくれるのか……。

 

 そう考えた瞬間、介旅の瞳からは涙があふれ出た。今までの自分が情けなくて、この少年を裏切った自分が許せなくて。

 

「ごめん……ごめんな……エド。おれ、俺……」

 

 泣きながらエドにすがりついてくる介旅に、エドは少しだけ驚いた表情を浮かべたが……。

 

「大丈夫……大丈夫」

 

 自分の生みの親であるエリザベート・ザインがいつもしてくれていたように、エドは介旅を抱きしめながらその頭をなで、彼が落ち着くまで……ずっとそばにいた。

 

 

 

…†…†…………†…†…

 

 

 

虚空爆破(グラビドン)事件解決!! 犯人自首する!?』

 

 常盤台の寮食堂でその新聞を読んでいた美琴はため息をつきながら口にくわえていたパンをかみちぎった。

 

「お姉様、お行儀が悪いですわよ……」

 

 そんな美琴のダイナミックな食べ方に若干の嘆息をしつつ、黒子が注意をするが美琴は態度を改める様子はない。

 

「それにしても捕まったんですね……虚空爆破(グラビドン)の犯人」

 

「なんでも心境の変化とかで。昨日のうちに自首して来ましたわ……。爆破の直後だったのでディー先輩がかなり驚いておられましたが……」

 

「結局犯行の動機はなんだったのよ?」

 

「我々風紀委員(ジャッジメント)への逆恨みですわ。とはいっても、その逆恨みの原因は少し笑えませんでしたけど……」

 

 結局自首した介旅はすべてを風紀委員(ジャッジメント)の取調官に話した。確かに介旅の動機は逆恨みといってもいいだろう。だが、その原因を作った風紀委員(ジャッジメント)が本来守るべき生徒を守り切れていなかったことも事実。

 

 この事件をきっかけにもっと隅々まで目を届かせるように訓練しなおすべきか? と固法とディーが警備員(アンチスキル)のお偉いさんと話しているのを白井は知っている。正直白井としては、一部の風紀委員(ジャッジメント)が無能だったことを組織全体におしつけられるのは勘弁してほしいのだが、だからといって自分が完璧に仕事をこなしているのかと聞かれれば完全に頷くことはできない。そのため、ディーと固法の意見には、やや懐疑的ではあるが一応は賛成寄りである。

 

「しばらくは風紀委員(ジャッジメント)も忙しくなりますわ。捜査権限の拡大やら、人員の増強やらいろいろやるみたいですから……」

 

「ディー君もかなり張り切っていましたけど……。最近は皆さんのところにも帰っていないようなのでちょっと心配です……」

 

 最近徹夜づけになっているディーを心配するセラに苦笑いを浮かべながら、美琴は違うことを考えていた。

 

 それは天樹錬についてだ……。

 

(あの時……あの爆発の時あいつは、いつも使っている《物質を生物的な形に変換して自由に動かす=偽獣使い》の能力のほかにも……《空気中の水分を使って氷の盾を作る》能力も使っていたわ。もしあれが勘違いじゃなくて、本当に起こったことならあいつの能力は……)

 

多重(デュアル)スキル?」

 

 天樹錬……ちょっとお話を聞く必要がありそうね……。

 

 美琴はそんなことを考えながら朝食を完食し、即座に立ち上がる。

 

「そんじゃ、黒子。私ちょっと行くところあるから!!」

 

「あ、お姉さま!? ちょっと待ってください!! だったらわたくしも!!」

 

「ダメですよ白井さん。今日は風紀委員(ジャッジメント)の支部で会議をするって初春さんが言っていたじゃないですか」

 

「きぃいいいいいいいいいいい!! 何たる失態!! 何たる無様!! お姉さまについていけないなんて!!」

 

「白井さん……怖いです」

 

 そんな騒ぎが食堂から聞こえた気がしたが、美琴は全力で無視した。

 




外道少年探偵虹が終わったので、ようやくこちらを更新!!

第三次世界大戦まで、頑張るぞぉおおおおお!!
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