更新再開っ!!!!
「って、結局見つかんないし……」
「ですわねぇ……。レベルアッパー。介旅はネットで無料配信されている音楽ファイルだといっていましたが、彼がそれを手に入れたサイトは数日前に閉鎖されていましたし……。手がかりが全く見つかりませんわ……。わたくしたち風紀委員としては早く大本をたたきたいのですが」
「……」
いや、そっちじゃなくてね……。と、美琴は黒子の返答に、わずかにほほをひきつらせながら、かき氷屋へと訪れていた。
美琴が錬の能力に疑問を抱いてから数日が経った。
以前からずっと続けていた上条捜索もほっぽって、彼女は天樹錬の足跡を探し回ったわけだが……まぁ、いないいない。
ここまで来ると、私の接近を察知して避けてんじゃないでしょうね、あいつ? と、美琴は眉をしかめながらあの何の特徴も見られない、ギャルゲ主人公顔の少年を思い浮かべる。
あの爆弾事件のとき、私に能力のことを気付かれたと思い避けているの? と、美琴は考えていた。
だとしたら、ますますあいつの能力が怪しくなってくるわね……。とも。
だが、彼女は一つ勘違いしている。顔合わせたら喧嘩ふっかけてきて対軍級の能力を情け容赦なくぶっ放してくるような女子中学生は、能力云々がなくてもあいたくない相手だということを……。
まぁ、そんなこんなで、錬を見つけることを断念した美琴は結局黒子と合流し、最近捜査に行き詰っている様子の後輩に何かおごることにしたのだが、
「それにしても……音楽ファイルね……」
「えぇ。ディーさんの解析ではなんでも、特定の脳波をベースに作った音楽を聞かせ、共感覚を利用し脳波を合わせるシステムだそうで……。もっとも、それでなぜレベルが上がるのかはディーさんもわからないといっていましたから、今専門家の方を呼んで話を聞こうという段階ですわ。サイトのほうは、いまディーさんが全力を挙げてアップしているサイトをたたいていますが、結構な数がある上にそのどれもが貸しサーバー。レンタル者の個人情報もすべてダミーでしたので、直接犯人につながる情報は何も……」
「う~ん。となるとこの事件、かなり根が深そうね……」
意外と進んでいる捜査の進捗状況に感心しつつも、さらにそれの上を行くレベルアッパー製作者に美琴は思わず舌を巻く。
そんな時だった。
「あれ? 二人ともどうしたんですかこんなところで?」
「あ!」
「佐天さん」
かき氷を買い、近くのベンチに二人が座ろうとしたとき、片手に小さなビニール袋を持った友人――佐天涙子がやってきた。
そして、そんな彼女の顔を見て美琴はようやく思い出す。
「あれ? そういえば初春さんは? さっきの捜査状況の話にも名前出てこなかったけど?」
「あぁ、えっと、初春は今……」
…†…†…………†…†…
「うぅ……す、すいませんセラさん。お手間おかけして」
「何言っているんです。困ったときはお互い様です。ディー君も早く病気治してねって言ってましたよ?」
初春が住む学生寮では、現在かぜっぴきとなり寝込んでいる初春が、学校帰りにお見舞いに来たセラのかいがいしい看病を受けているところだった。
…†…†…………†…†…
「というわけで……」
「あちゃー……それ大変ね。お見舞いに行ったほうがいい?」
「あ、それは大丈夫ですよ。症状自体は大したことないし、私が病院からもらってきたのも、風邪薬じゃなくて熱さましですから」
ぽんぽんと薬が入ったビニール袋をたたく佐天を見て、美琴はひとまず安どの息をついた。
「そう。お大事に……って、そうだ! 佐天さん。黒子今、レベルアッパーに関していろいろ調べているんだけど、何かそっちで情報ない? レベルアッパー配っている人とか?」
「レベルアッパーですか?」
なんでそんな都市伝説を? と、言いたげな瞳で佐天は黒子を見るが、一応その顔は真剣な表情をしていたので、自分の知っていることを教えることにする。
「そうですね……。といっても、配っている人っていうのは聞いたことないですね……。あ、でも」
「「でも?」」
「レベルアッパーで商売している学生がいるっていうのは掲示板で見たことあります。確か昨日もアップされていましたから、まだ残ってるはず……。あ、でも、結構素行がよくない人たちみたいで、あんまりかかわらないほうがいいかも」
「それは……」
「ん~。ほかに情報もないですしね。あたってみる価値はあるかと?」
「そう! わかったわ、佐天さん! 協力ありがとね!!」
そういいつつ、美琴と黒子は自分たちの眼前を通った清掃ロボットの前に、かき氷の使い捨て容器をポイ捨てし、それをしっかり清掃ロボットが回収するのを確認したのち、足早にその場を去っていた。
そんな二人を見送った佐天は、
「え……風紀委員が調べてるってことは、もしかしてレベルアッパーって、ホンモノ?」
余計なことに首を突っ込むフラグを立てることとなる。
…†…†…………†…†…
夜。夏休みに入った当日のことだ。暑い気候のせいで寮に飲み物がなくなってしまい、ジュースのお使いを頼まれ繁華街にやってきていた天樹錬は参っていた。
なんだか最近特定のレベル5に付け狙われている気がするからだ。
「まったく……やたらとニアミスすることが多いと思ったら、あっちが僕のこと探してたのか。やっぱり《
爆発からいろんな人物を守るため展開した氷の盾が、こんなところでネックになってくるとは錬も思っていなかった。やはり自分の能力は軽々しく人に話すものではない……。
「どうしよっかな……。当麻と美琴ちゃんがそれほど親しくなかったら、こっちも『あれは当麻の能力だよ? 僕は全然関係ないよ?』っていえたんだけど……」
どうにも美琴は当麻の右腕が怪しいと既に気づいているらしいので、この手は使えない……。そうなってくると本気で言い訳が難しくなるのだが……。
「まぁ、会わなきゃいいよね。会わなきゃ」
そのために、わざわざ自身のIブレインの容量を使い美琴のAIM拡散力場を登録。数十メートル内に彼女が入ればIブレインが警報を発するように、クレアの能力をコピーしたのだ。当分は接触を回避できるだろう。と、錬が油断していた時だった!!
【ノイズ発生――
「はぁ!?」
突如自身のIブレインが告げた異常事態に、錬が思わず間抜けな声を上げたとき、
「だぁああああああああああああああ!! 不幸だぁあああああああああ!!」
「って、当麻……」
君が原因か。と、大勢の不良に追われながら逃げてくる友人の姿に、錬は思わず嘆息を漏らす。
「あ、錬! た、頼む!! 助けてくれ!!」
「まったく、夏休み初日ぐらいもっと落ち着いて過ごせないの、当麻?」
「好きでこうなったわけじゃねーよ!! ったくあいつら、恩をあだで返しやがって!!」
「はぁ? なにいってんの?」
不良を恨みがましい視線で睨み付ける当麻に、またわけのわからないことを……。と、錬が呆れながら、不良たちに向き直った瞬間、
「ねぇちょっと……レベルアッパーについて聞きたいんだってば!!」
「…………………………………」
あんまり見たくなかった茶髪に特徴的な制服を着た少女が疾走して、不良たちを追いかけているのを見て思わず固まる。
「せ、せっかくあのビリビリから助けてやろうとしたのに!!」
「な、なにさらしてくれてんのさ、君はぁあああああああああああああああ!?」
「って、あぁ!? 錬……ちょ、逃げんなぁあああああああああああ!!」
当然、錬は全力疾走で逃げた。捕まったら根掘り葉掘り能力について聞かれるとわかっている相手に、捕まるわけにはいかないからだ。
「って、あんた……ジミオ! あんたにも聞きたいこといろいろあるから、逃げてんじゃないわよ!!」
「ぎゃぁあああああああああ!? 見つかったぁああああああ!! 当麻、後でほんと一発殴るから!! これ本気だから!! だからとりあえず今は、僕のために犠牲になれぇええええええ!!」
「って、お前!? また一人だけ逃げる気だな! させるかぁあああああああああああ!! またまた俺の不幸をおすそ分けぇえええ!! 上条菌が感染しました!!」
「はいバリア!! バリア張った!! だから上条菌の感染は防がれました!!」
「はい残念!! その幻想をぶち殺す上条菌にバリアはきかねぇ!!」
「どんだけ強力な細菌なんだよ!? っていうか言ってて悲しくならないの!?」
「絶賛トラウマ掘り返しているところだよ、ちくしょぉおおおおおおおおおお!!」
けたたましい絶叫を上げながら、男子高校生二人と、不良をノシながら近づいてくる
彼らの騒がしい夏休みが、今始まった。