コ、ン、バ、ン、ワァ……_:(´ཀ`」 ∠):_
遅くなってすみませぬ、小説執筆の時間が全く取れない!
スローペースって言ったんで頑張って執筆は続けてます。
結構頑張って書いてますよ?
最近になってやっとこさ花組の設定が出揃ったんです。
ネタバレもあるんであんまり細かい事は言えませんが……
これで執筆が楽になるってもんです! 。゚ヽ(゚´=Д=`)ノ゚。ヤッターン!
……暗い前書きもあれなんで、ポジティブにいきましょうか。
2016年最初の2桁の日に投稿になります! ア リ ガ タ ヤ ー !
さて、今回は昨年に投稿した唇の魔女戦の続きとなりますね。
ちょうどスランプになって書くのに苦戦した回だこれw
確か魔女の部屋に突入した所で幕は降りていたはず。
今作3体目の魔女、一体どんな姿をしているんでしょうね?
さぞかしねっとりとしてるのでしょう。
まぁ、それは後の本編で明らかになります。
それでは、早速物語の幕を上げましょう!
舞台は化粧品の匂いが鼻を刺す空間、削れた鏡の扉を開けた先。
《2016年8月16日》
○変則改行の本格修正
○『w』の削除や『「」』の変更
○その他修正(追加、索敵等)
あれも、欲しい。
これも、欲しい。
それも、欲しい。
欲しい、欲しい、欲しい!!
君も欲しい、あなたも欲しい。
君のも欲しい、あなたのも欲しい。
ちょうだい、私にちょうだい。
欲しい、欲しい、欲しい……
……あれ? あれれ?
本 当 に 欲しいのは、どれだっけ?
……まぁいいや、そんなの忘れちゃった。
全部……全部! 全部!!
私 の モ ノ に な る の ……!
あぁ……なんと哀れなことか。
辛抱強かった彼女の愛情は、枯れ腐り、周囲にばらまかれたのだ。
果てしない欲は黒く荒み、何が欲しいのかわからないまま、
満足しきる事のない欲を延々と満足させてゆく。
……異質な欲の、赴くままに。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
無駄に鏡のような光沢を放つ……ある程度は1つ1つの色が明白になった、
熟れた苺色。 極彩色の空間。
蓋を無くした巨大な口紅が周辺にゴロゴロと転がっている。
それら全ての表面は削れ、使われたような痕跡が残る。
美しいダイオプライトの床は空間の光沢の光り具合に負けてどこか鈍った雰囲気だ。
ぽつぽつとある紫陽花に至っては、その花びらや葉さえ散り、
もはや小さな枯れ木同然と化していた。 花だった頃の面影なんて残っていない。
所々に紐上の口紅の跡があるが……あぁ、彼女が原因か。
彼女もまた、他の魔女のように空間のど真ん中に鎮座していた。
簡単に言うならば……取ってがついていないがま口がついた、
巨大な『化粧ポーチ』と言ったところか。
キルトに合わない淡い紫と汚い苺色のつややかな材質を無理矢理キルト生地にした
千鳥格子はごつごつと無駄に出っ張っていて、まるで病気になったワニの皮のようだ。
もし商品にしたとしても、売れずに即生産中止となるだろう。
そしてその正面、ど真ん中には、巨大な 唇 がそこにはあった。
口紅を落とす事無く何色にも重ね塗りされ、
辛うじて紅を保っていると言ったところか。
中野「これが……今回の魔女」
「あぁ、俺達はあいつから逃げて来たんだ」
篠田「不気味すぎるよ……」
「ぁんだよ、手足も付いてないのか?」
「なら余裕じゃない! 私先に行くわ!」
「俺が一番乗りぃ〜〜!」
月村「っ!? 待ちなさい!」
男女のペアが集団から抜け出し、魔女へ向かって走っていった。
それぞれの武器を魔法で出し、何も考えずに突っ込んで行く。
……ところが、ピシャアンっ! と激しい音がしたと思うと、
その男女は吹き飛んで集団に戻った。 どさっと体を強く打ち付けて倒れる。
「きゃっ!!」
「のわっ!!」
上田「うわっ!? 大丈夫!?」
月村「……自業自得ね、誰か治療してあげてちょうだい」
吹気「あぁ私がやるよ、症状軽いし。
紙吹雪バラード用!」
風香が魔法を唱えたなら、パステルカラーの紙吹雪が2人の頭上に舞うだろう。
わずかながらの回復魔法だが、打撲程度なら余裕で治る。
いやはや、魔法というのはつくづく便利なものだ。
……それよりも、今ので良い知らせと悪い知らせが出来た。
良い知らせは魔女の全貌が明らかになった事、
がぱっと空いたがま口からは大量の触手が溢れるとのこと。
触手は市販の口紅を引き伸ばし、触手にしたてあげたような模様。
口紅の写真を触手に巻きつけたとも言える。
そして、その中には……
「ちょ!? あいつらだぞ!」
「やっぱり触手に……魔女の中に捕まってたんだな」
宙滝「え……絵莉、み、見れる……?」
篠田「へ? あ、そっか」
目を抑える丸に棒がついた黒い器具を左目に押し当て、
抑えていない方の瞳を緑に光らせ魔法使い一同のより遠くを見る。
これはさっきも使った、視力を高める視力検査の魔法だ。
絵莉が魔法で覗いた先、確かに何人かの魔法使いが触手に絡め取られ捕まっていた。
捕まった誰しもが生気がなく、目を虚ろにしてぐったりしている。
中には口をだらんと開き、よだれを垂らしている者もいた。
篠田「みんな無事だけど……なんか様子が変だよ、なんか変な薬かがされたみたいな顔してる」
地屋「完全に無事って訳じゃねぇのか」
空野「早いとこ助けなきゃね」
中野「よし、みんな! 早いとこ隊列を組み直してぎゃっ!?」
……さて、ここで悪い知らせだ。
早速何か言おうとした蹴太が、魔法使いを持った触手で殴ってきた。
『魔法使いで魔法使いを物理攻撃する』といった感じか、なんとひどい……
蹴太は口紅にぶつかりピシッと決まった衣装が紫の口紅でまみれになるが、
今度は上手いこと受け身をとり水色の魔法で口紅を取り除いた。
標的も決めず放った魔女の一撃が偶然、蹴太に当たるとは……
なんという ア ン ラ ッ キ ー !
まぁ簡潔に述べてしまうと、先程この魔女を軽視して突っ込んで行った
男女のペア魔法使いによって、一同は魔女の怒りを買ってしまったらしい。
『あはん』だとか『うふん』だとかの音が
混じりに混じった、
鼓膜を濡らすような高笑いが一同の頭を揺さぶるだろう。
人間が聞き取れる音に表現するならば……
【ahauhaauhaahauhauhuahuaha!!】
……うん、なんとも不気味で気持ちが悪くなる。
それはさておき、襲いかかる大量の触手。
魔女の欲は結界を荒らされた怒りと共に、魔法使い達に向いたらしい。
「ぉぃ……おいおいおい!? こっちに来てるぞ!?」
「ちょっと2人とも!! 何で何も考えないで突っ込んだのよ!?」
「え? だって、弱そうだったし」
「どんな魔女かわかってないとこに突っ込むバカがどこにいるんだよ!?」
青冝「喧嘩してる場合じゃない! もう触手が近くまで来てるよ!」
中野「みんな隊列を組むんだ! 他の花組を救うために戦え!!」
「んなこと言われたってよ!?」
「あんなの相手にどうすればいいの!」
御手洗「きゃ……きゃあああ!!?」
中野「なっ!? 琴音ぇ!!」
次に放たれた触手のランダムな一撃は、琴音に向かって突き進んだ。
そのまま弾くような勢いを琴音は受
…… け な い !
真っ赤な棍の一撃が、重たい魔女の一撃を弾いた。
鋭い音が辺りに響き、焦りと喧嘩で逆立っていた一同の正気を呼び戻した。
何の準備もなく早さのみを求めた一撃は、
琴音を守った代償に利奈の腕に強めの痛みを与えた。
痛む二の腕を強く掴み、棍を落とす事なく痛みに耐えて利奈は声を出した。
上田「私『達』のやるべき事は……何? 私は清水さんをを助けたい、花組のみんなを助けたい」
魔女の容赦無い猛攻は続く、その中でまず、真面目達が解答を出した。
月村「もちろん、『助ける事』よ。
グリーフシードの事もあるけど、じゃなきゃここまで来てないわ」
宙滝「わ、私も……助けたい! 魔女の中に捕まるなんて……
か、考えただけで……頭がおかしくなりそうだよ!!」
珍しい
芹香の言う事も正論で最もだったが、普段声を大きく出さない大声が
その名前の通り『大声』をあげたことで、さらにクインテットが活気ついた。
吹気「魔女の中身……絶対とんでもない事になってるわね」
録町「考えただけで苦しいよ……よっし!
私達が頑張って、とっとと助けてあげよっか!
新PV出来たみたいだし!」
吹気「(男性アイドル)君の新PV出たの!?」
青冝「私も見たいわね、さぁその新PVの為にも花組のみんなの為にも頑張るわよ!」
篠田「……うんっ! あたしはぴかりを守るよ、みんなファイトだ~~!」
クインテットが掛け声をする直前、大声はふと芹香と目があった。
大声はビックリしてしまったが、芹香は静かに笑ってこう言った。
月村「なによ、大きな声出せるじゃない」
宙滝「え……?」
月村「……頑張ってきなさい」
そう言って、芹香は優しく微笑んだ。
宙滝「……! あ、ありがとう……!」
それに答えるように、大声は今までに無い位の……
例えるなら橙色のガーベラのような暖かで優しく、彼女らしい最高の笑顔を見せてくれた。
青冝「ほら! 行くわよ大声!」
宙滝「わかったよ、リーダー!」
「「「「「全ては(男性アイドル)君の為に!!」」」」」
目に見えて大声の魔力が明るい、今日の大声は活躍しそうだ。
クインテットが掛け声と共に、魔女の元へと出撃して行った。
周りの真面目な魔法使い達も、後に続き立ち向かう。
魔女に攻撃を開始する真面目達を見つめる不真面目達……
利奈の発言を聞いた彼ら彼女もまた、何もしないわけでは無い。
地屋「俺も助けてぇな」
空野「うん、みんなまだ捕まってるもんね」
地屋「……おい、離せって、もう大丈夫だってば。 俺達も出撃するぞ!」
空野「あ、あぁ、ごめん。 僕達も助けに行こう!」
「ったく面倒だなぁ……」
「あの子達の尻拭いをさせられるなんて、一言も聞いてないわよ!」
「でも助けなきゃ……だな、今までバカやってきた仲間なんだし」
「早く助けてすぐ帰ろう!」
「おう! 帰ろうな、みんなで!!」
こうして動くことを知らなかった不真面目達も立ち向かう。
だるそうな者も何人かいたが、目的が同じなのに代わりは無い。
ある者は魔法を唱え武器を手にし、ある者はは魔法で攻撃をした。
こんなに大勢の花組が協力したのは全員ではないが、これが初めてだろう。
今ここに花組は団結した!
さぁ、立ち向かえ魔法使い達よ!
囚われの仲間を救う為に!!
上田「ボス、ステージ!」
飛び交う魔法と不気味な魔女の攻撃、殴って弾いて捕まって助けて間違って治して……
『乱戦』、この言葉を例えるならばこういう事だ。
その片隅、最初に吹き飛ばされた者はその光景をその目に写している。
中野「信じ、られな……い……!」
蹴太は衝撃を受けていた、何故こんな事になっているのかと。
吹き飛ばされた先で、唖然として立ち上がる事が出来ず彼はその場から動けない。
そりゃそうだ。
あれだけ揃うことを知らない統一に苦労した不真面目が、
たった一言の言葉で真面目達同様の働きを目の前で見せているのだから。
蹴太は、自らに激しい嫌悪感が湧く。
中野「……何故? 何故、僕は駄目なんだ?
あんな一声でまとまるんだ? 言葉の数も多いだろう!?
ど う し て ? 言い方は間違ってないだろ!?
それとも……願いは叶っていないのか?」
ハチべぇ「君の願いは確かに、エントロピーを凌駕しているよ」
中野「……え?」
蹴太が自問自答をする中……ふと、別の声が介入する。
隣を見るなら、そこにはハチべぇがいた。
相変わらずの無表情で、魔女と魔法使いの戦いを見つめている。
中野「ハチべぇ? あれ、君は確か……上田さんの肩の上にいたはずじゃ」
ハチべぇ「あんな乱戦の中にいたら、僕に飛び火するだろう?」
中野「邪魔になるからとか言わないのがなんとも君らしいな……
それより、どういう事だい? 僕の願いが叶っている!?」
驚く蹴太を横目に、ハチべぇは淡々と語り始めた。
ハチべぇ「君の願いは『指導者の技量』だろう? 確かに願いは叶っている。
君自身も、前より楽に指導出来ているという明らかな実感があるはずだ」
中野「じゃあ何だって言うんだ!! 何故僕の話は聞き取られない!?」
ハチべぇは1つ瞬きをしたあと、ただただ事実を語り続ける。
ハチべぇ「君の《不幸体質》もそうだけど、彼女の一言にあった事が、
君の幾多にも及ぶ言葉には全く無かったという事だと思うよ」
中野「なっ……何で、何故、それを僕にくれなかったんだ!?」
ハチべぇ「それは願いに含まれていないからね」
中野「そん……な……!」
ハチべぇ「そうなってしまうなら、願いをもっと慎重に考えるべきだったね」
中野「……っ!!」
蹴太は両手を拳にして握りしめ、真っ赤になるまで力を入れた。
ぶつけようのない怒りに歪む顔面の上で、
キレイな光沢を放っていた彼の水色ふちのメガネは黒んずんでいく。
中野「…………」
しばらくうつむき暗く考えこんだ後、ふと蹴太は自らのメガネを二本指で整えた。
その顔はどこか、納得した様子。
中野「……そうか、そうだね」
ハチべぇ「?、何の事だい?」
中野「あぁごめんハチべぇ、勝手に自己完結してしまった」
そう言って見上げる彼の顔、蹴太のソウルジェムでもある
水色ふちのメガネは穢れるのをやめていた。
中野「《不幸体質》と僕にはない『何か』、辛いけど今ここで落ち込んでいたって時間の無駄だ」
蹴太は両手を前に差し出すと、そこに白と青を均一に混ぜたような
清々しい水色の魔力がその両手に溜まっていく。
中野「今より強くなる必要がある、その為にも……僕は、この魔女戦にも貢献しなくてはね。
何せ今の僕の立ち位置は……
『指導者』だ!
イキシサコネス!!」
蹴太が魔法を使ったなら、魔法使い達を相手に暴れまくっていた触手は
まぁ全てではないが、水色の魔力を帯びて動きが鈍る。
中野「ぐっ……重、い!
で、も……『指導者』ならば、言葉は伝わらなくとも……
その仲間が有利に出来るように、動く……べきだ!!」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
武川「な、うおっ!?」
篠田「ぴかり!? どうしたの?」
武川「あ、いや……急にオイラでも吹っ飛ばせるようになったなって」
篠田「え!?」
武川「うわ、また来た! なんっ! でやっ!! ねんっ!」
確かに、今まで光の振るう鉄のハリセンは触手攻撃の
軌道をずらす事しかできなかったが、今の攻撃はなんと弾き飛ばす事が出来た。
武川「まっ、また出来た! 何かあったのか?」
ふと絵莉が光が弾いた触手を見ると……触手の動きが早くてわかりずらかったが、
そこには確かに魔力の光が見えた、色は……恐らく青系。
篠田「誰かが、魔法を使って動くのを邪魔してるんだ!
触手が明らかに弱ってる! ぴかり、こっち行こう!」
武川「うえぇ!? 待っておくれよ! そっちは魔女のいる方向じゃないか!」
篠田「これ『遠い方が不利』なんだよ!」
武川「え、近い方が有利?」
光の手を取って魔女の方へと走り出す絵莉、それを見ていた芹香は評価を付けた。
月村「自分でその事に気がついたようね。 また成長したのね、絵莉」
どうやら彼女に対し高評価のようで、芹香も魔女へと接近していた。
炎の魔法で触手を焼きながら、確実に前へ前へと進む。
ふと芹香の死角から攻撃が来たが、利奈の振り下ろされる棍の攻撃で地面に叩きつけられた。
利奈は崩れ落ちる触手の上を走り、芹香の隣に来て共に進む。
上田「芹香! 大丈夫!?」
月村「相変わらず尋常じゃない身のこなしね……ごめんなさい、攻撃が来てたの?」
上田「うん、芹香の死角から結構簡単に倒せたから大丈夫」
月村「簡単ってあなたね……」
2人は触手攻撃を避けながら、ダイオプタイトの地面を走り抜けた。
上田「っと! それよりも、絵莉ちゃんが魔女の近くに?」
月村「念話で伝えるまでも無かったわ、自分で思いついたみたいよ」
上田「絵莉ちゃん、最初よりもかなり賢さを生かせるようになったね!」
月村「……他にも要因はありそうだけど」
上田「え?」
月村「なんでもないわ、早く魔女との距離を詰めましょう。
第一章! 炎の巻『火炎』! 形式は『放射』!」
芹香は目の前に立ちはだかる触手を先程と同じ魔法で焼き切ると、
利奈に「行きましょう」と言って先へと進んでいった。
利奈も横から来た触手を弾き飛ばし、芹香の後に続いて進む。
さて、4人が移動をする間少し説明でもしようか。
『遠い方が不利』、つまり『近い方が有利』。
どういう事かというと……
元々、歯ブラシ並の密度を誇る量の触手は動かぬ魔女の体内に収まっていた。
伸び縮みはせず、『折りたたまれて』入っていたという事だ。
魔女の触手は魔女の腕、その欲深さが長さに転化されたのだろう。
確かに、長いのなら余裕で遠くまで届く。
広範囲の欲の対象を捉え、簡単に捕獲出来るだろう。
なら、
伸び縮みしない触手だ、折りたたむなり、ネジ曲げるなり、工夫をしないと届かない。
根元で捕獲しようとも、触手の元の性質は口紅。
ケース模様の部分はかなり硬質で、簡単には曲がらない。
物理的攻撃は紅の部分よりは火力が上がってしまうが、
蹴太の魔法で動きが鈍っている事を計算に入れるならお釣りが出る。
まぁそういう事だね、『遠い方が不利』『近い方が有利』というのは。
所変わって、魔女の近く。
何人かがその事に気がついたようで、既に魔法使い達の救出に乗り出している。
篠田「あっ、利奈! 月村さん!」
武川「ふぉっ!? 2人とも魔法使い!?」
月村「花組全員そうなんだから当たり前でしょう?」
あからさまのオーバーリアクションで驚く光に、芹香の反応はいつものように冷ややかだった。
上田「もう何人かが助けに入ってるみたいだね」
周りの状況を冷静に判断する利奈に対し、絵莉は何かあるのかどこか辛そうだ。
篠田「……は、早く助けにいかなきゃ!!」
月村「そうね、私と利奈が助けに行きましょう。
触手を弱らせるなり切り落とすなりするから、2人は絡まった触手を外してちょうだい」
武川「ハゥイ!」
篠田「…………」
武川「ん? どうしたんだい絵莉?」
篠田「……え? あ、うぅん、なんでもないよ! なんでも、ないの……」
その様子は、もはやあからさまと言った所か。
心配した利奈が声をかけようとしたが、芹香はそれを無言の片手で止めた。
武川「……絵莉、大丈夫! 確かにあいつがいなくなってから、
紫香は狂ってしまった。 実際オイラも弄ばれた」
篠田「っ……!!」
武川「……でも、それと同時に紫香自身も苦しんでいる。
それをこんな魔女になってまでしなきゃ理解できなかったオイラ『自身』が情けない。
元カノの前に、友達なんだ! 絵莉と、オイラと、紫香と……」
光は精神的に苦しむ絵莉の肩に、軽く優しく手を置いた。
武川「『仲直り』しようじゃないか、絵莉。
あんなのになって暴れるより、オイラのピン芸を見る方が面白いって!」
篠田「こ、こんなときまでお笑いなの?」
武川「もっちもちのロンロン!」
篠田「なにそれ、面白くない」
そうは言いつつも、絵莉は笑っていた。
武川「えぇ~~!? ダメ? なら……」
篠田「あっ、ははは! それは面白い!」
月村「……行きましょう、利奈」
上田「うん、早く捕まった魔法使い達を……ぅわ!?
アロンジェ!」
咄嗟に利奈が棍を伸ばした先、そこには魔法使いを捉えたまま攻撃を仕掛けて来た触手があった。
利奈の棍に邪魔され、その攻撃は鈍い音を立て寸前で止まる。
武川「え、何ぅわ!?」
篠田「大丈夫ぴかり!?」
武川「ぉうっ!? ギリギリで助かった!」
月村「触手攻撃……!? どういう事? この距離でこの威力なんてかなり矛盾しているわ」
現状を理解した芹香は、すぐに辿り着いた答えに青ざめた。
月村「まさか……!
捉えた魔法使いを『重し』に!? 遠心力を利用して攻撃を!?
そんなの、リスクが大きすぎるわ! 下手したら魔女自身にも当たる。
それなのに、何故?」
武川「……オイラだ、紫香の最後の恋人はオイラだった。
寸前までオイラに復縁を迫ってたんだ、目的がオイラだって事なら」
篠田「使い魔が持ち場を離れてた事にも……えっと」
月村「……なるほど、『辻褄が合う』って事ね絵莉」
篠田「そうだよ!」
月村「一刻も早く魔法使いを救う必要性が出てきたわね、なら私達は……っえぇ!?」
芹香が見た先、そこに利奈はいなかった。
上田「ごめん! 私この人助ける!!」
見上げるなら、そこには先程2人を襲った触手が捉える魔法使いに捕まる利奈の姿があった。
月村「……ハァ、仕方ないわ。 私は利奈と逆方向に行ってくる。
あなたたちは十分に警戒して、なるべくその辺にいる事ね」
武川「ハゥイ! 気をつけるよ!」
篠田「うん、月村さんも気をつけて」
月村「当たり前でしょう?」
そう言って軽く笑うと戦っている魔法使いを見つけ、フォローの為に芹香は走り出して行った。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
上田「離して! 離してってば! ……っ! この!!」
利奈は伸ばした棍に魔力を込め、そのまま触手を斜めに大きく叩いた。
衝撃で触手は緩み、双方とも解放される。
無理な体制だった為、棍を手放しどさっと地上に落ちる。
打ち身は痛いが、魔法使いを助ける事が出来たらしい。
……ん? その魔法使いは青に近い、黒のジャケットに……白のシャツ!?
上田「清水さん!!」
その魔法使いは清水海里だった。
他の魔法使いと同様、生気を失っている。
流石によだれは垂らしていないが。
上田「清水さん! 起きて、起きて下さい!」
いつものように強めに揺さぶろうが、海里は反応を示さない。
一体、魔女に何をされたんだか……
上田「清水さん、清水さんってばぁ……!!」
揺さぶろうが叩こうが海里は一向に虚ろな意識から解放されない。
上田「清水さん、清水さ……もおおおお!!」
ついに利奈の中の何かがふっ切れたのか、利奈は両手で海里の胸ぐらを掴む。
利奈らしくない言葉を、これでもかと海里に対して浴びせた!
上田「海里!! 起きろ!! それでも男かへっぽこめ!!
なんかよくわかんないけどそんなのでぐったりするなんて情けない!!
こんな 女 にどやされてなんとも思わないのか!!」
やはり起きない海里、それでも利奈は怒鳴り続ける。
上田「海里!! バカイリ!!
こんなでも起きないなんてこのっ、 寝 ぼ す け がああぁぁ!!」
……不意に、利奈は胸ぐらをガッと掴まれた。
清水「やかましいんじゃボケェ!!
誰が『バカイリ』だ!!
大概にし……ろ、あれ?」
上田「か、海里、手を離して! 苦しいし衣装千切れちゃうよ」
利奈は驚いた顔で胸ぐらを掴む拳をギブアップとばかりにぺしぺし叩いた。
清水「……あ、あぁすまん」
意識を明確に出来た海里は、慌てて手を離した。
利奈はホッとしたように、胸を撫で下ろしながら衣装を直す。
上田「良かった……!
海里を偶然見つけて、それで必死になって起こそうとしたの。
無事なようで良かった」
清水「……まだ頭がグラグラするがな。
魔女の中で何をされたかは後回しにするとして、現状を説明してくれ利奈」
そう言われた利奈は、現状を簡単に説明した。
魔女の目的は光である可能性、捉えられた魔法使いについて。
その他の事項も、補足として付け加える。
清水「……その戦況だと、捉えられた魔法使いが武器として
魔女に使用されているせいであんまり先に進めてないんだな」
上田「今は助けるのを重点においてみんな戦っているよ」
清水「だがジリ貧だな、助けてもそれ以降は捕まらない保証はねぇ……現実的じゃねぇな」
上田「そうなんだよね……」
清水「そんな暗くなるなよ、改善はとっても簡単だからな「えっ?」
ヴェルクツォイク!」
海里が魔法を唱えたなら、海里の周りには道具が纏った。
清水「確か、月村さんが『炎の魔法』が触手に有効だって言ってたよな?」
上田「う、うん! 芹香は化粧品は熱に弱いって言ってた」
それを聞いた海里は、道具のうちの1つを手に取った。
清水「良いものがここにあるぜ?」
本来は赤色なそれは青色で最初は何かは分かりづらかったが、
それはどこのメーカーでもない、青色の『発火筒』だった。
上田「車に常備されてるやつだ!」
清水「火力はかなり上げてあるがな、この場では活躍出来るだろうよ!」
海里が魔力を込めて青色の発火筒を投げたなら、
同じようなものが大量に生成され四方に飛んで行った。
そのうちの1つを見てみよう、魔法使いを捉える触手のうちの1つに。
発火筒じゃないだろと言えるほどの威力で発火し、触手を焼くどころか次々と焼き切っていく。
触手から解放された魔法使いはそのまま落下するわけだが、
近辺の戦っていた別の魔法使いがその魔法使いを受け止め地上へと降りる。
起こる同じような光景に、利奈は驚きを隠せない。
上田「あんな簡単に焼き切れるんだ……」
清水「どうやら上手くいってるようだな。 さて、俺らも探すぞ」
上田「探す? 何を探すの?」
清水「……まぁ、この状況だったら忘れるのも無理はねぇな。
いいか? 例をあげるなら……黒板の魔女の時は『効き腕』、運転の魔女の時は『止まる事』」
上田「……あ!
『弱点』を探そうってこと!?」
清水「理解が早くて助かるぜ、弱点を叩いてとっとと倒せばジリ貧からも解放されるだろ?
それじゃあ、早速行こうぜ!」
上田「りょーかい!」
上田「アヴィオン!」
清水「フリューゲル!」
棍の箒に淡く光り輝く翼、赤と青の魔法使いは飛び立つ。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
清水((おい、聞こえてるか?))
中野((あ、君は……ってええぇ!? 清水海里!?
君は確か灰戸八児を助けて魔女に捕獲されたんじゃ))
清水((んな事も知ってのか。 心配させてすまんな、仲間に救われて今は健全だ))
中野((そうか、だいぶ助け出されたんだね))
清水((で、お前の魔法なんだが))
中野((……え?))
清水((なんだよその反応? あんな大量の触手を痕跡を魔力だけ残して
動きを制限出来るのなんて、サイコキネシスの魔法が使える
水色の魔法少年『中野蹴太』、お前しかいねぇじゃねぇか))
中野((それはそうなんだけど……な、なんなんだいその情報量))
清水((俺は情報屋だぞ? この位当たり前だろ?))
中野((それはそうだけどさ!))
清水((って話したいのはそうじゃねぇよ。
お前の魔法、もう切っても大丈夫だぞ))
中野((は? いやいや、ダメでしょ!))
清水((俺の魔法で触手を焼いたからかなり動きは鈍くなってるはずだぜ))
中野((……って事は))
清水((おっと? 間違っても用無しだとかくだらん事を考えるなよ))
中野((え? あ、いや僕は))
清水((言っとくけどな、俺はしばらく捕まってて何もして無かったんだぜ?
お前が魔法で動きを鈍らせなかったら今よりひどい状況になってだだろうな。
情けねぇ、利奈の言葉を取るなら、俺だって『不真面目』を
まとめる立場なのに結果的にはこの有様だぜ?
ありがとよ! 中野、『真面目』まとめてくれて助かってる))
中野((……清水海里))
清水((おいおいフルネームかよ?
今は時間がないからこの辺で切るけど、次からはもっと気軽に呼んでくれよな!))
中野((あ、待っ……))
中野「……切れてしまった。
あぁ~~あ!彼にはかなわないな。
逆にいろいろと教えられちゃったよ」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
上田「あれ? 触手から魔力が消えてくよ」
利奈は乱舞をしながら触手を焼く海里について行く中、状況の変化を感じ取った。
利奈の言う通り、何かを期に触手の動きを制限していた
水色の魔力が引いていき、やがて消えてしまった。
清水「俺が念話で魔法をやめるように頼んだんだ。
もう制限しなくても、触手は多数焼けてんだし、明らかに動きは鈍るからな。
さてと、そろそろ着くぞ」
気がつくと、2人は魔女の目の前まで来ていた。
目の前ではがぱっと空いたがま口がそこから大量の触手を出し、
その中身を外にさらけ出している。
いくつもの巨大なアクセサリーや化粧品が整理されて入っている位だ。
上田「意外とちゃんとしたのが入っているんだね、これが……魔女の弱点かな?」
清水「それに間違いねぇな、だが弱点にしちゃあ量が多い、恐らくこの中のどれか1つだ」
上田「……どれなんだろう」
清水「残念ながらそれを今知る手段は無い、片っ端から壊すしかねぇだろうよ」
上田「そうなっちゃうね……じゃあ、近くて壊しやすいのから」
利奈がどれから壊そうかと、魔女の中を覗いた……その時だった。
武川「のわああああ!?」
篠田「タンリュカ・ルシウム!!
タンリュカ・ルシウムってば!!」
突然の悲鳴、思わぬ声。
声をした方を見るなら、そこには触手に捕まった光がいた。
絵莉は光の腹にがっちりとしがみついている。
その捉えている触手も普通ではない、極彩色の口紅模様だ。
それは不気味にドクドクと脈打ち、いくつものシワがあり
気持ちが悪い光沢を放っている、表面はちょっと溶けている。
上田「ぴかりさん!! 絵莉ちゃん!!」
清水「どういう事だ!? かなり焼いたはずなんだが……
もう捉える程の力は残っていないはずだぞ!?」
月村((今回の魔女は賢いわ、焼けた触手を編み上げて無理に使っているのよ。
かなり気味が悪いけど、さしずめ『巨大触手』と言った所かしら))
光と絵莉が捕まるその根元は芹香が巨大触手を必死に焼いていたが、
ドロドロと表面が溶けるばかりで一向にその衰えをみせない。
上田「いけない!!
アンヴォカシオン!」
利奈は芹香の元へと飛び、二本流の棍の乱舞を駆使して共に巨大触手を止めにかかる。
清水「あんなんになってまでぴかりが欲しいのかよ……!」
海里はまた発火筒を手に取ると、投げてその数を増やして
利奈達の邪魔をしようとする周りの触手を焼き切った。
リュミエールの連携、強き眩しい程の『光』が魔女の闇を照らし切ろうと団結し強力な光を放つ。
だが、その闇は『一般人』という名の使うにはあまりにも残酷な盾を仕掛けた。
闇は徐々に、徐々に、その世界を侵食していく……。
あぁ……もう少し、もう少しで私のモノ!
篠田「おねがい……やめて!」
欲しい! 欲しい!! 全部全部全部全部私のモノ!!
篠田「もうやめてよ! 紫香ぁ!!」
欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい!
ほしいほしいほしいホシイホシイホシイ!!
篠田「……紫香が、本当に欲しいモノは」
ホシイホシイホシイホシイホシイホシイホシイホシイホシイホシイホシイホシイホシイホシイホシイホシイホシイホシイ!!!
篠田「もう、この世には……無いのに……」
ホシ……ぇ?
上田「芹香!! どいて!!」
月村「!?、 わかったわ!」
魔女ががま口ごしの体内に、絵莉と光を放り込む直前だった。
今は……何故かはわからない、とにかく魔女に明らかな隙が出来た。
ほんの一瞬、魔女が硬直したのだ。
利奈は2本の棍を1つにし、本来とどめに使うその刃を2人を救う為に全力で振るった!
上田「ソリテール・フォール!!」
塊の肉を強引に断つ音が辺りに強く、鳴り響く。
さらに響くは、甲高い魔女の悲鳴。
武川「わっ!?」
篠田「ぴかり!!」
やっとの思いで、魔女の魔の手ならぬ魔女の触手から光を手放させる事に成功した。
上田「や、やった!!」
……そんな喜びもつかの間、利奈は周囲の触手に魔女の怒りに弾き飛ばされた。
上田「っ!? ああぁぁぁぁ!!」
肉が潰れ骨がきしむ鈍い音がし、空中から真下へと向かい、豪速球で落下して行く……
清水「利奈!? っくそ!!」
このままでは打ち身だけではすまない、海里が利奈を追いかけ急降下。
武川「わ!? しまった! 解放されたあとの事考えてなかったあああぁぁ!!」
続いて支えを失った絵莉と光が、真っ逆さまに落ちて行く。
そんな中、絵莉はぴかりの手を取り……
篠田「パラフィン・ナフテン!」
本来手足から噴出するはずのジェットエネルギーを一点から出し、光を遠心力で投げ飛ばした!
武川「絵莉!? 何をしていrのわあああぁぁぁ!!」
魔法使いでもない一般人なのに、光はよく飛ぶなぁ……ホント。
光が投げ飛ばされた先は勢いを無くす頃にはギリギリ、芹香の魔法の許容範囲に入っていた。
月村「第五章! 嵐の巻『上昇気流』! 性質は『保護』!」
芹香が魔法を使ったなら、橙色の激しい風が光を竜巻状に包むだろう。
武川「 目 が 回 る ぅ ……」
流石の光も、精神力の限界らしい。
ぐったりして吹き抜ける風に身を任せ、ふわりふわりとその場に留まる。
ふと、恐ろしい事に気がついた芹香は再び顔色を真っ青にして叫んだ。
月村「絵莉ぃ!!!!」
見るなら、絵莉の姿は す で に 無 か っ た 。
触手もほとんど焼け落ち、身を隠せそうな物はこの辺りにはない。
慌てて芹香は飛行魔法で向かおうとしたが、
不意に何かが横すれすれを通り、芹香より遥かに早く横切る。
「僕に任せて」……そう、言われたような気がした。
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落ちる、落ちる、落ちる……
吹き抜ける風は強い香気が鼻につくようなレベルだったが、絵莉には何故か……懐かしく思えた。
篠田(紫香の、香水)
思い出すのは幼い頃の記憶、あの頃は楽しかったなぁなんて考えた。
それは小学校低学年の頃、バカをやってきた幼馴染。
篠田(懐か、しい……な。
光……
紫香……
あたし……
……倉、
ぐら、それは絵莉のご近所さん。
ぐら、それは光のお笑いの相方。
ぐら、それは紫香の……本当の恋人。
武川「オイラピカピカ金ぴかりん! 月にも負けないまぶしい電球!
腹筋に笑いを即蓄電! 池宮の電気屋といったら電球少年ぴっぴかり!」
酒松「俺っちグラグラぐらぐらりん! 俺が歩めば地は揺れる!
速攻揺さぶる貴様らの腹筋! 池宮のクリーニング屋といったら振動少年ぐらぐらり!」
武川「 2 人 ! 」
酒松「 揃 っ て ! 」
「「池宮少年ぴかぐらり!!」」
「こらぁ! 病院で騒いじゃダメ!」
「「ギャーース!!?」」
顔馴染みの看護師から逃げ回っては、他の患者さんを笑わせて歩いていた。
2人の将来の夢は『お笑いコンビ』、漫才の番組に出て優勝をする事。
絵莉は4人の中で妹的で、紫香は3人のお母さんのようなしっかりとした存在だった。
倉の体調が優れない時は、病院で延々とゲームやお喋りをして
仲良し4人組は会う度に楽しんでいたらしい。
……唐突だった、その時は。
ある日突然言われた面会拒絶、後日会ったのは集中治療室。
耐えきれなくなった紫香は深夜病院に忍び込み……一度だけ、倉に会いに行ったらしい。
……その日が『倉の命日』になってしまったのは、
もはや運命のいたずら、悲劇としか言えないだろう。
『
倉に3人で遊びに行く時に紫香は必ずお見舞い様の花を大切そうに持っていっていた。
そのお返しにとある時、倉が紫香にあげた雑貨が紫陽花のモチーフだっだ。
酒松「紫陽花にはね、『元気な女性』って花言葉があるんだよ。
……うん、紫香ちゃんみたいな女の子。
紫香ちゃん、いつもお花ありがとう……この花は、君にピッタリだと思うよ」
頰がこけ弱り果てても笑う倉、その儚げな笑みは今でも思い出として浮かんでは沈む。
篠田「っ……ぐすっ、うぅ……」
日々の何股にも及ぶ、欲求不満の埋め合わせ。
その裏にはどれだけの……悲しみがあったのだろうか。
埋まらない欲を抱えたまま、叶わぬ愛を抱えたまま、どんなに苦しんで生きてきたか。
紫香の辛さを考えると、あとからあとから涙が溢れてくる。
((泣いている場合じゃないだろう!!))
篠田「……あ、そっか、今は」
よく考えれば、今の絵莉は魔女の体内を落下している最中だった。
涙を拭い、現実を見る。
((飛行は僕が制御する、君は魔女の弱点を探すんだ!))
篠田((わかった! 探す!))
「魔女の弱点……あれ、かなぁ」
絵莉には心当たりがあった、すなわち今回の魔女の弱点。
……紫香の、弱点だ。
見渡すとそれはすぐに見つかった、目的が明確だと割とすぐにわかる物である。
それは『紫陽花の手鏡』だった。
倉が、オシャレが好きな紫香の為いつでも自分を確認出来るようにと贈った品。
その鏡の部分からは何本もの管のような物が伸び、ドクドクと脈を打っている。
さしずめ、魔女の心臓と言った所。
篠田「……紫香、ごめん!
教科書を開けっ!」
指示棒を召喚し、慣れた手つきで目の前の空中に魔力で素早く数式を描いた。
直角三角形から展開する数式……3つの数式は絡み合い、1つの大きな魔法陣となった。
これは絵莉の必殺魔法、最強の追尾弾!
篠田「サイコ・サタン!!」
呪文と共に魔法陣が強く光を放ったかと思うと、魔法陣は魔力を放ちながら変形し、
緑色に輝くデフォルメの悪魔を象って魔力を散らしながら飛んでいった。
3つの数式の複雑に絡んだ魔法陣は、悪魔を守りながら悪魔にまとう。
そのうち、悪魔は鏡にぽみゅっと当たって柔らかな潰れて膨張し、
ドゴオォンッ! と大きく爆発した、あとに迫るは数式の魔力の雨。
……魔法が収まった頃には、紫陽花の手鏡は跡形もなく無くなっていた。
管から大量の液体が吹き出し、辺りに魔女の断末魔が木霊している。
【ahauhaauhaahauhauhuahuaha!!】
篠田「っああぁ……!!」
((よくやってくれた! 引き上げるよ!))
飛行魔法なんて使ってもいないのに、絵莉の体は上へと飛んでそのうち魔女の体内から脱出した。
がま口のへりには、両手に魔力を込めて絵莉に手をかざす蹴太がいた。
その肩にはハチべぇがいる……なるほど? 今までの念話は蹴太の物か。
蹴太は絵莉を自分の元へと移動させる。
中野「飛行魔法は使えそうかい?」
篠田「ごっ、ごめんなさい! 弱点を破壊するのに必殺魔法使っちゃって」
ハチべぇ「絵莉は魔力を使い過ぎたようだね」
中野「構わない、僕が君を運ぼう。 早く魔女から距離を離さなくては!」
絵莉は水色の魔力をまとったまま、魔女から勝手に距離が離れた。
その横では蹴太も浮遊しており、共に空中を進んでいく。
周りを見渡したなら、光を背中に背負った芹香と利奈をお姫様抱っこした海里がいた。
篠田「海里は……なんで、利奈をお姫様抱っこしてるのかな?」
清水「いや、怪我してたから念のためにこうして支えてやってんだよ」
篠田「みんなの前に行く前に降ろしてあげてね」
利奈、顔が真っ赤っかだよ。
魔女から距離をおいてその結末を見渡すなら、溶けゆく有様を見る事が出来るだろう。
焼けた触手も無事な触手も全て溶け出し、魔女は断末魔をあげながら激しく揺れ出した。
そのがま口から尋常じゃなく大量の黒い魔力を噴き出した。
それほど、強力な魔女だったのだろう。
やがて、魔女のがま口から噴き出すどころかその生地の間からも黒い魔力が噴き出す。
しぼむように魔女が消えゆく一方、全てが1点に飲み込まれる。
魔女も転がる口紅も、焼け落ちた触手も、枯れた紫陽花も根から取れて
全部全部、結界ごとその結界にあるもの全て飲み込まれていく……
ふと、利奈は見た様な気がした。
手術着を着た、弱々しい少年を。
彼は魔女に手を振ったかと思うと、その身を煌びやかな衣装に変えて上へ、上へと、昇っていった……。
次に一同が気がついたなら、全員最初にいた4階の室内広場に立っていたり座っていたりした。
1、2、3……花組全員揃っている、どうやら上手くいったみたい。
あとに残ったのは、濁りなき苺色のソウルジェムと化粧品と紫陽花がモチーフのグリーフシード。
魔法少女は……唇の魔女を救った。
………………………………
次回、
?「触るな!!」
【僕の目?】
中野「……僕を」
三矢「2人ともぉ……!」
〜終……(15)底無しの独占欲[後編]〜
〜次……(16)仲直りと五つ目の光〜
魔法使いは運命に沿う。
……あれ、え? 1 5 2 4 9 字 ! ?
スランプだからって書き過ぎじゃないか私!?
ま、まぁそれはさておき……(実際スマホを持つ手が震えたよ)
うっへっへw ( ̄▽ ̄)
気がつきました? 気がつきました?w
今回より『ルビ』の使用を開始しました!
プレビューで確認したら、上手い事いってくれたようですね。
かなり前より読みやすくなったんじゃないでしょうか?
今回、読者の皆様を若干泣かせる気で書いたのもあるんで
泣いてくれたならスマートフォン持ったままガッツポーズをしますw p(。-∀-)q
師匠に一歩近づいた感じがしますね。
すぐにでも追いつきますよ! 嘘です! 無 理 で す ! !
ちょっとだけ雑談を挟みますか。
最近勉強の事もあって『肉』について調べているんですよ。
料理やその地域によって調理法や肉の種類が変わるから、学んでて面白いですね。
え、私ですか? 私の地域はどっちかっていうと海鮮の方が有名ですからねぇ……
あぁ、池宮にも港はありますよ。
強いていうなら、私の家庭は昔から『鶏肉』を使うって事くらいw
肉じゃがもカレーも鶏ですよ? 普通豚肉ですよね、ワカリマス。
おかげで好物は唐揚げです、まぁそんなに多くは食べませんが。
甘 党 だし (´-ε-`;)
ったく女なのに肉を食うなんて……女子力捨ててますね知ってますよハイ。
私は道産子なので、リアルな本州の肉事情も知りたい所。
旅行以外北海道から出た事が無いですからね。
ついでに言えば道外の友達いないのでゴッフォ(吐血`;:゙`;:゙;`(゚Д゚;)
それでは皆様、こっちは猛吹雪ですがw
季節はずれな暖かな気温に体調を崩されないようお気をつけくださいな。
ばぃちゃっ☆(´ゝ∀・`)ノシ