魔法少女うえだ☆マギカ 希望を得る物語   作:ハピナ

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週に1度はハピナの日! ……はい嘘です、そんなことありませんよもちろん(´・ω・`)


こんばんは! 9月最初のハピナですよ、最近は涼しくなってきて良いですね。

まだまだ暑いところもありそうですが、とりあえず私のところは涼しくなりました。

今度は風邪に気をつけないと……あぁ、暑い地域は熱中症にご注意を。


さて、前回のあらすじとしてはやっとの復帰なのに新たな波乱の予兆が起きて終了でしたね。

今まで怪しい様子だった芹香が暴言、一体何がどうなっているのでしょう?

流石に利奈も泣いてしまいましたね、2人の仲に溝が出来てしまった訳ですが……さて。

今回はいつもより長くなります、総文字数はざっと15000字以上と大ボリューム。

それでは幕を再び上げましょう、物語はビビりな男子と柔らかな女子との出会いから。



(32)ビビりな空手家と柔軟少女

そのコンビとの出会いは唐突、予想だにしない思わぬ場面で巡り会った。

 

時刻は深夜とも呼べない午後、暗がりを帯びた夕方がオレンジに雲間から照っている。

 

その色からはメガネの彼女を連想させるが……だから利奈は、足跡を意識して歩いてたのか。

 

利奈はそんなに怒っていないのに、未だ少年は少女の後ろに隠れて様子を伺っている。

 

この2人は既に知名度の高い利奈の事は知っていたらしく、

用事があるので進む先を走りながら簡単に自己紹介を聞くことになる。

 

 

御手洗「私は御手洗(みたらい)琴音(ことね)って言うのぉ、気軽に琴音ちゃんって呼んでくれると嬉しいよぉ」

 

上田「あぁ、うん。 よろしく琴音ちゃん……えっと、そっちの人は?」

 

御手洗「ほら唐手君、全然怒ってないよぉ? 隠れてないでご挨拶!」

 

山巻「…………や、山巻(やままき)唐手(からて)……ねぇ本当に大丈夫なの琴音ちゃん?」

 

御手洗「もう大丈夫だってば! ほらぁ、へっぴり腰になってないで走る!」

 

 

唐輝は見た感じでは運動系らしく、体つきも比較的がっちりしているのだが……

雰囲気からして弱い、例えるなら琴音がいてやっとこの場に入れると言った様子だ。

 

弱そうな彼見つけた2人が進む先……まさか、自分の家だとは言うまい。

 

まぁそんな予想は良い方向で外れ、行く先は広めの芝生な広場だったわけだが。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

3人がしばらくして到着した先、そこには遠目で見た通りの広々とした公園があった。

 

ブランコ、滑り台、シーソー、鉄棒…….基本的な遊具は揃っているそれなりの公園。

こんな広い土地があるのなら、もう少し遊具があっても良いのに……という印象。

 

この公園には何脚かベンチがあるのだが、その上でで誰かが寝転んで眠っていた。

 

 

 

 

悪夢を見るかのような顔で……()()()()()()()ような印象で、魔法少年が。

 

 

 

 

上田「……えっ、え? 空野さん!?」

 

山巻「っあ!? 人が死んで……いや、じゃなきゃあんな気は感じれない」

 

御手洗「利奈ちゃんの知り合いぃ? まぁとにかく、唐輝君のは当たってたねぇ」

 

 

のんきな事を言いつつ、眠り切っている彼の元に一番急いでるのは琴音だった。

 

何故急いでいるのかって? 真冬という環境下で寝ている事自体が異常だからだ。

 

それもぐっすりと……こんな状況、正常だと言う方が確実におかしい。

 

琴音はいち早く八雲の元へ駆けつけると、その容態を観察しだした……

 

唐輝が言うに、彼女の魔法は回復専門なのでおかしい事ではないらしい。

 

 

御手洗「……身体にも魔力にも問題は無いねぇ、それどころか浄化したてだよぉ」

 

上田「浄化したて? ソウルジェムを浄化したばっかりってことですか?」

 

山巻「こっ、怖い……どんな経緯でこうなったのかが、理解……出来ない」

 

ハチべぇ「どうやら魔女と戦ったばかりのようだね、休憩をしてるのだろう」

 

上田「ハチべぇ! またなんの前触れも無く……どこに行ってたの」

 

 

まぁ、そんな事を聞いたとしてもどこかから来たとしかわからないだろう。

 

ハチべぇほど、協調性が無く自由な存在はなかなかいない。

 

……ともかく、ハチべぇは八雲の経緯を知っていたらしく3人に話して見せた。

 

 

ハチべぇ「先ほど力強と八雲が雑魚級の魔女を討伐したんだけど、

落としたグリーフシードの分じゃ1人分しか浄化出来なかったみたいだ。

 

それだけ、2人にとってその魔女が強敵だったということになるね。

 

どのようにソウルジェムを浄化するかって話になった直後、

力強がほぼ強引に八雲のソウルジェムを浄化したのさ。

 

身もふたもない結果だ、それによって力強は孵化をしてしまったんだから。

 

それらの現象が今に至っているんだよ、利奈」

 

 

一通りの事情を聞いた利奈……その行動の理由に、彼女は心当たりがあった。

 

 

 

 

『空野「荒れ狂う風よ! かけがえない相棒の風を反転さ」……

 

地屋「ちょ!? バカ野郎!! ここは俺の重量操作だろ!!

 

っ……! くそっ!!

 

 

激! 増! 減!! 」』

 

 

 

 

以前、八雲は自分を危険に晒してまで力強を助けたことがある。

 

その時は今よりも魔法は安定せず、下手をすれば死もあったかもしれない場面。

 

まぁ結果的に特に大きなケガはなく無事だったから良かったのだが、

命がかかってしまったんだ……彼なりに思うところはあっただろう。

 

だがなんの考えもなしに浄化を譲った結果、最後は孵化してしまったという事だ。

 

脳筋による失態だが、思いやりあるこの失敗は一概に否定することも出来ない。

 

ソロ討伐なんて後衛向きの魔法使いに出来る訳もなく、親友を救えない事に絶望したのだろう。

彼にとっては幸いにも、その分の穢れも譲られたグリーフシードで賄えたとハチべぇは言う。

 

ようは八雲のこの状態は一種の『ふて寝』なのだろう、現実逃避の身体は眠りについた。

 

 

御手洗「じゃあ、この子はその力強って人に庇われたって事情があるんだねぇ」

 

山巻「孵……化!? よく、そっ、そんな……浄化を放棄して、孵化なんて!!」

 

御手洗「落ち着くのよぉ唐輝君、怖いのはわかるけど今はこの人の為にも怖がらないのぉ!」

 

山巻「……ぅ、うん。 それと、その人まだ起きないのかな? 起こしても……怒らない?」

 

上田「どちらにしろこんな環境下だし、詳しい事情を知るなら起こすしかないね」

 

 

とりあえず3人である程度話し合った結果、眠っている八雲を起こす事が決まった。

 

琴音が八雲を優しく起こす間、利奈は孵化してしまった力強……魔男を探す。

 

……ん、唐輝? あぁ彼なら、不安そうな顔で八雲が起きるのを琴音の傍らで待っている。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜[数分後]〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

空野「……っ、うぅ……」

 

山巻「ぅわっ!? 琴音ちゃん起きちゃったよ、ど……どうしよう!?」

 

御手洗「まだ何の反応もしてないねぇ、怖がるにはまだちょっと早すぎるよぉ!」

 

 

あまり時間が立たない内に八雲は目を覚まし、頭を抱えて起き上がった。

 

唐輝は相変わらずのビビりだが、琴音はそんな彼を落ち着かせ八雲に事情を話す。

 

最初は寝起きの放心状態だったが、しばらくして重々しい口を開いた。

 

 

空野「そう、だったんだね。 あれは夢じゃなく、紛れもない現実だったんだ」

 

御手洗「……もうそんな暗くなることないじゃないのぉ、ほら元気出して!」

 

空野「暗くもなるさ、この分だとハチべぇから話は聞いたんでしょ? 僕は……」

 

御手洗「それなら次はこっちの番、これから助けに行けば良いじゃない!

ほらぁ、利奈ちゃんもこの場にいるんだから大丈夫よぉ!」

 

空野「……え? 海里のチームにいるエースが?」

 

 

ふむ、利奈への信頼はかなり高いようだ。 誰が言いふらせば高くなるのやら。

 

当の本人は魔男を探している、正確には魔男の結界の入口と抜け殻と言ったところだ。

 

遊具の裏や茂み中を探していった結果、見つけたのは案外簡単な場所だった。

 

無駄に遠回りをしてしまったのに気が滅入ってしまう……何故って?

 

まさか、八雲が寝ていたベンチの後ろに抜け殻があるとは思わないだろう。

 

わかりやすく言うなら……『灯台下暗し』という言葉がこの状況には妥当か。

 

とにかく利奈は3人に抜け殻の存在場所を告げ、抜け殻を魔法で保護する。

 

 

上田「これで、この寒い状況でも彼が危なくなっちゃう事は無いと思うよ」

 

山巻「確かに、見るからに暖かそう……でっでも、長くもってくれるのかな?」

 

御手洗「私の魔法も追加でかけておくからぁ、かなりの時間大丈夫だと思うよぉ」

 

 

抜け殻の状況は何重にも毛布にくるまれて、巨大な1つの泡の中に入っている。

 

一瞬その泡はきらめいたかと思えば、中の抜け殻の姿を見えなくしてしまった。

 

まるでそこには何もないようななってしまったが、琴音はその説明を始める。

 

……そういえば、琴音の事に関しては唐輝はあまりビビるような様子を見せない。

 

それだけ信頼しているという事だろうか? まぁ、今は関係の無い話だけどね。

 

 

上田「えっ……消えた!? いやそんなわけないけど、どうやって見えなくしたの?」

 

御手洗「光の屈折の原理を利用しているんだよぉ、泡自体も100%魔力製だから大丈夫だねぇ」

 

上田「一般人は疎か魔法使いにも見えないって事か……確かに、これなら大丈夫かな」

 

山巻「時間も時間だし、他の人も来る気配がないから 大 丈 夫 ……とは思う」

 

上田「唐輝さんかなり信用しているんだね、琴音ちゃんの事」

 

 

それを聞いた唐輝は何故か怯えるのも忘れ、そっぽを向いてしまった。

 

何か悪い事を言ってしまったのかと利奈は不安になったが、そんなことは無い。

 

何故って、隠れる彼の顔は赤面だからだ。 ビビりの裏は素直、可愛いやつめ。

 

 

さてと、これで抜け殻の保護は終わった。 次に探すのは魔男の結界の入口だ。

 

……とは言っても、それはすぐに見つかることになるわけだけどね。

 

利奈が隠れて指輪を使ったのだ、その輝きの点滅でその場所を探すことが出来る。

 

 

上田「……あ、あったよ! 意外とわかりやすい場所に結界が出来てた!」

 

 

彼女が皆を呼んで指さす先、そこには割と広さのある砂場があった。

 

そのど真ん中に結界の入り口がある、淡く光る魔なる物のエンブレムが。

 

例えるなら激しく燃える業火を象る紋章、裏腹に溢れ出るのは熱気ではなく冷気。

 

 

上田「冷たい炎か、気を引き締めて挑まないと感覚が狂っちゃいそうだね」

 

山巻「不気味な雰囲気……うぅ、何度目にしてもこっ怖いのは……怖い」

 

御手洗「そんなにビビらなくても大丈夫よぉ、慣れちゃえば楽に戦えるわ」

 

 

彼女はそう言うが、魔なる物の結界の世界観に慣れる事はまず無いのが普通だ。

 

まぁ利奈の一例のように何回も訪れたならわからないが、それは被る事ないレアケース。

 

利奈が口には出せない違和感を抱いていると、ふと頭に念話が聞こえて来た。

 

 

御手洗((唐輝君の戦ってる姿を見れば、どういう事かすぐわかると思うよ))

 

 

琴音の方を見れば、負の感情など微塵もない柔らかな笑みで利奈を見ている。

 

ようは時期が来ればわかるという事だろう、ならその時が来るまで展開を待とう。

 

……さて、結界への道が見つかったとなれば、その先行うべきことは1つ。

 

 

山巻「またあの不気味な世界に行くことになるのか……うぅ、やっぱりこっ……怖い」

 

 

彼はそうは言いつつ、震えてはいるが琴音の後ろに隠れしっかりと行く先を目に捉えている。

 

 

上田「私たちはこれから魔男を倒しに結界に入るけど、空野さんはどうしますか?」

 

空野「……行くよ、今度は僕が命を賭けて助けに行く番だ」

 

上田「命なんて賭けなくていいよ!? 1人じゃないんだからさ」

 

 

八雲も最初は暗い表情をしていたが、決意したかのように前を見据えた。

 

それでも固い表情に変わりなかった様子だったものの、

利奈のかけた言葉を聞いて少しは安心したような顔をする。

 

まぁそれでも、親友が孵化してしまったことによる不安は取り除けないが。

 

とにかく、これで全員魔男に挑む心構えが整ったということだろう。

 

周囲に一般人がいないかの簡単な確認を終えて、作戦会議を実施。

 

 

話の結果、『利奈と唐輝が前衛』『琴音と八雲が後衛』ということに決まった。

 

前衛で利奈はわかるが、ビビりな唐輝が前衛で大丈夫なんだろうか?

 

琴音が言うに彼は前衛向きな魔法らしいが……魔法が前衛向きならそうなるか。

 

人数が多ければ他に回すことが出来るが、4人しかいないとなれば仕方ないだろう。

 

八雲は以前見た通り風の魔法、琴音は回復などの補助魔法。 ふむ、後衛は妥当。

 

 

上田「助けに行こう! 目標は孵化して魔男になっちゃった地屋さんの救出!」

 

 

決意したかのように利奈がそう言えば、琴音はふわふわとした雰囲気でおー!と言った。

八雲も決意を固め、唐輝は怯えながら弱くももうなづいて見せた。

 

4人の意志が固まったのなら……さぁ、その身を魔法使いに変えて行こうか。

 

砂場のど真ん中に位置する結界の入口に足を踏み入れたのなら、

視覚を完全に裏切る形での冷やかな冷気が4人を出迎えるだろう。

 

 

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脈打ちマグマが流れる岩石、それがこの結界を形作る主流の物体だ。

 

まるで、火山の火口を取り出し草原のように引き延ばしたかのような世界。

 

頭上を見上げれば漆黒の空、この火口のような空間から出るのは恐らく危険だ。

 

先に行けるような道も無い……これはどういうことだろうか?

 

どちらにしろ今までに無かった形式、周囲を探索するなりして展開を待つしかない。

 

 

ところで、いるだけでも暑そうな光景だが……4人が感じるその気温は全くの真逆だ。

 

口からは白い息が出るほどの寒さ、それこそ結界の外の冬の気温と変わらない。

 

こんないるだけでも気が滅入りそうな場所、この場の把握は早めが吉らしい。

 

 

御手洗「う〜〜ん……先に進めそうな道は無いよぉ、結界に存在するのはこの場所だけだねぇ」

 

空野「先が無いってことなの!? じゃあ、僕らはどこに進めば良いって言うの?」

 

上田「……もしかしたら、先に進んで魔男を見つけるって形じゃないかもしれない」

 

空野「え、先に進まない形だって? この場で色々と戦ったりするってこと?」

 

上田「うん、私は前にも同じような状況だった別の結界を知っているんだ」

 

 

利奈がふとした時の脳裏に思い返すのは、抹茶チョコレートが腐敗したような世界観。

 

もう随分と前の話だ、それは「蜜毒の魔女』での戦いの不気味に甘い記憶だろう。

 

そこでは使い魔を全て倒し切ってから魔女が現れた、この魔男も恐らくは……

 

 

上田「あれ? そういえば唐輝さんの姿が見えないけど、どこに行ったんだろう」

 

 

別の結界について話そうとした彼女だったが、1人足りないことに気が付いたようだ。

 

そういえばと八雲も気が付き周囲を見渡したが、どこにも唐輝の姿が無い。

 

相方の姿が無くても琴音は焦らず、この状況の理由を微笑んで話した。

 

 

御手洗「大丈夫だよぉ、姿見えないだけでちゃんと近くにいるからぁ」

 

 

全く確証の無い発言だっただが、こんな状況で嘘をつく事は考えられない。

 

とにかく、何かしらの準備をしているということは確かだろう。

 

今は、もう遠くはない脅威への襲来に戦いへの準備をするのがベストだ。

 

 

 

 

……そう、()()()()()。 戦闘の時は既に、目の前にまで迫っている。

 

 

 

 

ひび割れた岩が脈打ったかと思えば、隆起し陥没し変形を繰り返した。

 

不格好な岩たちが形作ったのは、結局不格好なモノに仕上がる。

 

頭の上でハナズオウが焦げようとも真っ黒に燃え盛る、激しく燃え続ける。

 

塊となった岩石から生えるの歪な手足、流動するマグマはまるで浮き出た血管。

 

空いた3つの穴からは燃えるようなマグマが垂れる、恐らくこれが顔だろう。

 

 

業火の使い魔、役割は先導。

 

 

空野「っ!? こっこれが、力強の使役する使い魔……!」

 

上田「気をしっかり持って! じゃないと助ける前にやられちゃうよ!」

 

御手洗「唐輝君も準備が出来た頃じゃないかなぁ? みんな、戦うよぉ!」

 

 

そうと決まればやる事は1つ、相変わらず唐輝の姿はわからないが……

 

とにかく挑もう、利奈の憶測が正しければ使い魔を倒し切らなきゃいけない。

 

後衛の2人は既に覚悟も準備もできている、その両手に魔力を込めている。

 

 

上田「ゲーム、スタート!」

 

 

その台詞はもはや違和感ない定番、彼女の中である種のスイッチが入った。

 

 

上田「アンヴォカシオン!」

 

 

その手に召喚したのは赤色の棍、彼女の主力武器といえる品。

 

軽くその場で振り回すと、湧き出る使い魔の集団の内の1つに突っ込んで行った!

 

まぁ雑魚級の使い魔なので数があってもそんなに苦戦することは無いが、油断は禁物。

 

火傷の危険性は無いものの、その逆の凍傷の危険性は存在する。

なるべく距離を置くなどを工夫を欠かさず、そして素早くその岩の身体を砕いた。

 

1匹そのひび割れ方を見抜き、殴る事でその使い魔を粉砕していく。

 

時折蹴りで応戦するが、その度に靴底には霜が付いた……気は一切抜けない。

 

1人前線で舞い狂う利奈、孤高の舞が使い魔の数を確実に減らしていった。

 

 

順調に戦況を進めるその一方、利奈はもう1人の存在になんとなく気が付いていた。

 

姿自体は目の片隅で一瞬捉える程度だが、鉄色の魔法少年は確かにそこにいる。

 

鉄色の道着、紫の帯。 表情も一転して鋭い、ビビりの面影なんて見受けられない。

 

最初は左の回し蹴り、その蹴った足を右ななめ前、相手と近くなるよう置く。

その状態から後ろ回し蹴り、距離が短い為よけきれる訳もなく使い魔は粉砕。

 

……なるほど? 現時点でどの階級にいるかはわからないが、唐輝の空手の技術は高い。

 

 

山巻「琴音! 時間が立ったが、こいつら(使い魔)はあとどのくらい残ってるんだ!」

 

御手洗「う〜〜んとねぇ、あと10体か15体くらい使い魔が残ってる感じだよぉ!」

 

山巻「おう! それじゃ、ここからは一気に決めるぞ!!」

 

 

前線で利奈と協力して戦うと共に、そんな大きめの声が聞こえてきた。

 

決意の言葉が言い終わったかと思うと、利奈の周囲で共闘する唐輝の動きが早くなる。

 

無駄な事は考えていられない、利奈もその早さに喰らい付くが如くそれについて行く。

 

遅れを一切取ることなく早さにすぐ適応をする辺り、伊達にエースと言われない強さを感じる。

 

 

山巻「オリャアァッ!!」

 

 

さて、最後の1匹は唐輝に脳天から拳で殴られひび割れ、焦げた花を枯らし崩れ落ちた。

 

使い魔が一通り片付いたのなら、それらの残骸はドロリと赤黒く溶けて床に染みていく。

 

ひと段落着いたようだ、利奈が一旦戦い抜いた自らの身体を確認すればあちこちに凍傷。

 

 

御手洗「みんなおつかれさまぁ〜〜! 今軽く治療するよぉ、怪我はあるかなぁ?」

 

山巻「僕はまだ大丈夫だ琴音、それよりも上田さんの傷を治した方が良い」

 

上田「私の? あ、じゃあ……まだ次が来るまで時間はありそうだし、お願いしようかな」

 

 

唐輝も前衛にいたし、それなりの凍傷を負っているはずだが……なるほど?

彼が着ているのは鉄色の()()、素手とはいえ厚手の生地が寒さを凌いだのだろう。

 

……そういえば、またしてもいつの間にやら唐輝がこの場に現れる結果となった。

 

この突然な出現は何かの魔法だろうか? まぁ、今それを気にする場面でも無いけど。

 

 

周りの状況に対する見張りは当分八雲がしてくれるらしい、これで琴音は治療に専念出来る。

 

琴音は両手に魔力を込めてすり合わせたかと思えば、空気を含んで泡立った。

 

彼女の魔法は『入浴』の魔法、攻撃全般が苦手な回復専門の魔法少女だ。

 

その泡で利奈の怪我した部位を洗えば、たちまち怪我は回復の兆候を示す。

 

これならすぐにでも治るだろう、回復に関して利奈は琴音に任せる事にした。

 

 

空野「……………………」

 

 

一方見張りの八雲、真面目に周囲を見張ると共に考え事で頭の中を巡らせていた。

 

それは久しい孵化、グリーフシード不足による孵化、庇われた結果目の前で起きた孵化。

 

これが『コンビ』の限界だ、人数が少ないとどうしてもグリーフシードが足りなくなる時が来る。

 

自らの魔力の限界を知ろうとしない魔法使いと同じく、主な孵化源となる……皮肉な事にね。

 

時に、ハナズオウの花言葉は『疑惑』『裏切り』『不信』……その成れの果てを見て何を思う?

 

 

空野「…………ん、あれは?」

 

 

ふと顔を見上げて見つめた先、八雲の横目で1点で冷ややかなマグマが泡立っているのが見えた。

 

しばらくは泡立っていたが、そこまで間を置くことはなくその沸騰は止まってしまった。

 

それで終わりかと思われたが、八雲は行動に出た。 単純に嫌な予感がしたからだ。

 

 

 

 

そうだ、力強はいつだって……何の前触れも無く行動を起こすやつだったっけ。

 

 

 

 

空野「荒れ狂う風よ!! 僕らを……!」

 

 

対象を言い切るまでには間に合わなかった、それでも守り切るのには間に合った。

 

そりゃそうだ! 魔法で重要なのは唱えることじゃなくて、発動をしようとする意思。

 

暴風は天色の魔力を帯びて意思を持った、飛び交う破片を風が4人から守る。

 

 

何が起きた? 答えは簡単、その一点から地面を割って冷たいマグマが噴き出した。

 

最初は流動体のマグマだったが、それは急激に冷え固まって黒い岩石となる。

 

脈動しながら細かにヒビ割れ、黒い岩石は破片となって中の物から剥がれ落ちた。

 

 

破片は意思を持ったかのように幾つかに集まって塊になり、新たに形を造っていく。

 

塊は風船が膨らむが如く8本の棒状の部位を示し、やがて彫刻のように生物を象った。

 

例えるなら真っ黒な頭の無い馬、頭の代わりに十字に生えるのは4つのヒトの肩。

 

 

業火の魔男、役割は分岐。

 

 

さて、一方の崩れた岩石の中身はというと……あぁ、やはりこれが主で間違いない。

 

魔女や魔男は同じ物は無く唯一無二、異色なのがあれば間違いなくそれは主。

 

2つの顔と2つの肩に4本の腕、

腹も胸も無い上半身は数珠の輪。

団扇状に広がる花びらが足にあたり、蜘蛛の足のように動くらしい。

 

炎のような頭の顔の内、片方には黒縁メガネ……どこからそんな要素が生まれた?

 

事情を知るのは八雲だけだ。 その事情はきっと、他人が安易に聞ける物じゃない。

 

 

業火の魔男、性質は諦念。

 

【挿絵表示】

 

 

 

空野「力、強……っ!」

 

 

八雲はバカの部類には入らない、彼に声をかけても届かない事は実感している。

 

それでも……死の運命ではないとしても、やはり親友の魔男姿を見れば同様する。

 

最初の風が止む頃に魔男は目の前にいる魔法使いを見た、ヒトではない色の瞳に八雲が映る。

 

 

山巻「おい下がれ! 見た様子君は後衛向きだろ、前の方は上田さんと僕に任せろ!」

 

 

突然の出現、口調の明らかな変化……声をかけた唐輝を一瞬別人かと思ってしまった。

 

それでも、動揺で魔男に固定化されていた意識が目覚めたのには変わりない。

 

新たに緑の帯を腰に縛る唐輝の傍ら、八雲はその場を後にして後ろに下がった。

 

 

山巻「亀の如く、万年の時をこの身に!」

 

 

これは彼の魔法の呪文だろう、そう唱えて身構えると帯が鉄色の魔力を得る……彼の準備は出来た。

 

 

上田「琴音ちゃん! あ、えっと……」

 

御手洗「全部じゃないけど大体は治ったよぉ? さぁ、唐輝君のお手伝いをしてあげてぇ!」

 

上田「えっ!?……うん、ありがとう琴音ちゃん!

 

 

アンヴォカシオン!!」

 

 

無駄に優しさが働いた利奈は治療途中なのを気にしたらしいが、琴音は心情を察してくれた。

 

あの極度なまでのビビりを相方として成立させる事が出来ているのだ、この位余裕で読める。

 

琴音の了承を得た利奈は魔法で新たに棍を作り出す、それも本気モードの2本。

 

雑魚級とはいえ挑むのは4人で前衛は2人、油断して気を抜く事は許されない。

 

さぁ、始めようか。 この見た目は暑く実際は寒いという、気が狂うような結界での()()()

 

 

上田「ボス、ステージ!」

 

 

気合を入れたら走り出す、主を守ろうと走ってくる使い魔を棍で弾く……やはり岩は固い。

 

2本同時の打撃で倒れてはくれるものの、これがボス級だったらと冷や汗が垂れる。

 

魔法使いの身体なのが幸いだ、濃く白い吐息が出ようともしばらく凍える事は無い。

 

冷や汗さえ凍ってしまいそうな冷気が一帯を覆う……これも魔男が出て来たからだろうか?

 

とにかくまずは使い魔を減らさなければ……と思った矢先だった、()()が起きたのは。

 

 

上田「……ぇ、え?」

 

 

その光景に利奈は思わず足を止めた、理解には多少の時間を要するこの状況。

 

何が起きたって、周囲の爆音と共に使い魔が半数程その頭を失って倒れたのだから。

 

しかも全てが同時にだ、気がつけば目の前に唐輝がいた……息切れが激しい様子。

 

 

御手洗「あ、こらぁ! 唐輝君無茶し過ぎだよぉ、今限界考えて無かったでしょ?」

 

 

周りの使い魔は大半が倒された、後衛の琴音が来たが特に問題は無いだろう。

息切れする唐輝の背をさするが、唐輝の目は虚ろでどこも見ていない。

 

 

山巻「……ごめん、ちょっと無茶し過ぎた。 琴音、軽くでいいから治療頼む」

 

御手洗「はいはぁ〜〜い、私にお任せぇ! 流石にあちこち傷だらけだねぇ……」

 

上田「……よ、よくわからないけど私は先に行くよ! 使い魔が減った今はチャンスだから」

 

空野「僕も上田さんに同行する、力強を……出来れば早く助けに行きたいんだ」

 

御手洗「うんうん、ここは私に任せて2人共先に行ってぇ! 特に八雲君、はね?」

 

 

ふとした時、残った少数の使い魔の内の1匹が4人の方に突っ込んできた!

 

……が、琴音が近くに並べて置いたボトルの内の1本を投げつけると中身全部が使い魔にかかる。

 

使い魔一瞬震えたかと思えば、イガグリのように大量のトゲを作って倒れ込んだ。

 

立ち上がって再度動こうにも、身体中に生えた巨大なトゲが邪魔して身動きが取れない。

 

なるほど? 倒す程の力は無いが対応出来ないという訳ではないらしい。

 

 

御手洗「ほらほらぁ! 私は大丈夫だからぁ、早く魔男を討伐しに行くのぉ!

唐輝君の治療が終わったら、私もすぐ後を追うよぉ!」

 

上田「うはぁ……回復以外にもえげつない魔法が使えるんだね、確かに大丈夫そう」

 

空野「ありがとう琴音……ちゃんさん? 僕らは先に進んで力強を助けに行くよ」

 

 

そう言った八雲が見つめる先、燃えるような渦巻いた目が八雲の姿を捉えている。

 

()()()()を? 力強は魔男に成り果て、そう考える思考は残っていないはずだが……

 

これが『コンビの強さ』だろうか? とにかく、早く先に進むに越した事は無い。

 

 

再び走りこむ先、明らかに使い魔の数は減っていた。 これなら利奈だけでも大丈夫そう。

 

棍を構え直して先へ進む、八雲の風の補助もあって進みやすさは過剰なほど。

 

時には打撃に倒され、時には風に煽られ倒れる……ボスの前に来るのはあっという間だった。

 

魔男は静かにその場に浮いていた、感じ取れるのはまるで諦めたかの様な脱力。

 

……それでも、目の前に2人の魔法使いが迫ったなら4つの手に冷たい炎を灯す。

 

一瞬高い火柱を上げたかと思えば、円形の刃が付いた巨大な刃物が生まれ出た!

いわゆる『チャクラム』という品だろう、取って部分は魔男のエンブレムの様な形。

 

花びらの様な足を地に付け、いよいよ魔男は動きだし攻撃を開始した!

対する利奈も立ち向かう、八雲も覚悟を決めて友人を迎え打つ!!

 

 

上田「ボス、ステージ!!」

 

 

魔男の主な攻撃はチャクラムによる斬撃、利奈は器用に棍を扱いそれらを受け流していった。

 

一撃一撃はそんな重くは無いが、4本の腕から繰り出される斬撃は手数が多い。

 

八雲の風の援護が無ければ、今よりもっと苦戦していただろう……ボス級ならどうなってた?

 

細かい事は置いといて、雑魚級であればダメージが蓄積すれば自然と倒せる。

 

それにしてもだ、雑魚級にも弱点は存在する……素早く倒し魔力を節約するに越した事は無い。

 

 

最初の斬撃が上から来たなら、それを片方の棍で受け流し数珠の身体に打撃を加える。

 

次は振り下ろしでの斬撃が来たようだが、これは八雲が起こす風に軌道がずれる。

 

かわしやすさが上がったのだ、意識する事軽々とかわし更に地面にチャクラムを沈めた。

 

これで魔男の手数は4つから3つに減る、怒りを買ったがこれで戦況は明らかに有利になる。

 

さらに振り上げで襲い来る二重の振り上げた斬撃、利奈は高く飛んで顔に打撃を加えた!

 

燃え上がる顔は炎であり手応え無くすり抜けたが、赤々とした瞳の緑の目玉に打撃が当たる。

 

弱点かどうか明確な事はまだわかっていないが、いくら魔男でも目玉をどつかれたら流石に激痛。

 

悶え苦しみ奇声を発して明らかな効果を示しているが、完全に倒し切るまでには至らない。

 

これには八雲の表情も歪む……そりゃあ相手は親友だった物、やはり早急な討伐が必要だ。

 

一旦利奈は目つぶしを喰らった魔男との距離を離す、距離を置いて遠くから状況を確認した。

 

 

上田「冷たっ……!? 目玉は他より効くみたいだけど、容易に狙えそうに無いな」

 

 

要するに魔男の目を狙って攻撃しようとするなら、冷たい炎の中に棍を突っ込むという事だ。

 

現に利奈の両手はかなり冷えてしまっている、一歩遅かったら凍傷の危険性があった。

 

となると、他の場所を狙いたいが……目玉以外に通用する場所なんてあるだろうか?

 

 

ハチべぇ「どうやら、今の攻撃で魔男の魔力が集中する部位が出来上がったようだね」

 

 

ふと、魔男の明確な魔力の変化を感じ取ったハチべぇがそう利奈に語りかけた。

 

 

上田「魔力の集中する部位?」

 

ハチべぇ「今までは全体的に偏りが無かったけど、君の攻撃によって上部の魔力が弱まった。

 

現に上部の頭の燃え方が弱まっていないかい? それが証拠と言っても良い。

 

狙うなら中部が良いと思うね、あのダメージだと上部は警戒されてると僕は見解するよ」

 

上田「中部……でも、中部となるとちょっと難しくなってくるかな」

 

 

利奈の言い分はわからなくもない、確かに中部を狙うとなると難易度は上がってくる。

 

何故って、その頭は数珠の身体に囲まれているからだ。 突きしか通じない位置にある。

 

序盤で数珠の身体に打撃を加えたが、それに関してはほとんど効いていない印象。

 

それにチャクラムの攻撃が止んだ訳でも無い、利奈の必殺魔法で丸ごと切り裂くのも難しそう。

 

珍しくソロだと多少の無茶が必要な相手が出てきてしまったらしい、

ここは周囲の魔法を組み合わせ協力が必要……そう思った時の念話だった。

 

 

御手洗((唐輝君の治療が終わったよぉ! 今頃2人と合流しているんじゃないかなぁ?))

 

山巻「ようはそういう事だ、見た感じかなりの痛手を与えれたらしいな」

 

上田「へっ、痛手? ……うわっ!?」

 

 

何の物音も前触れも無く彼は利奈の隣にいた、そりゃあ驚かない訳が無い。

 

合流した唐輝が見る先、未だ魔男は目に打撃を喰らいもがき苦しんでいた。

 

段々と落ち着きを取り戻して来ているが……ふむ、作戦を組む時間はありそうだ。

 

利奈は棍、八雲は風、唐輝は拳。

 

全く種の違う魔法たち、どのように連携して魔男を攻略するのだろうか?

 

 

魔男が目つぶしから解放された後、燃え上がる音で吠えてその怒りを示す。

 

上部の頭の炎は小さくなって目玉が安定する事なく炎の中をさまよい、

中部の頭の丸い炎はその火力を上げて前よりも激しく燃え盛った。

 

周囲の冷たさはその冷気を増す、生物の吐息は明確な白となる程の寒さだ。

 

性質に反する諦めきれない怒りの感情に、魔男は苛立ちを持ってチャクラムを振り回した。

 

そんな中目の前で揺らぐ一瞬の残像、チャクラムで斬り捨てようとするが斬ったのは空。

 

 

山巻((気の流れが特に集中していいるのはメガネらしい、狙うならそこだぞ))

 

上田((わかった! メガネを壊せば良いんだね!))

 

空野((ホントに弱点がわかるんだ!? 業火の魔男のメガネが、弱点……))

 

 

その念話の終わりを待たずして、唐輝は突然また前触れも無く魔男の目の前に姿を現した!

 

2つの炎を支える魔男の燭台の双頭、その中間を唐輝は拳で殴り飛ばす。

 

勢いで大きく仰け反らせる事には成功したものの、代償に攻撃の刃が迫り来る。

 

そのまま喰らうかと思われたが、ふと遠くから投げられたボトルを先に斬り裂き中身を散らした!

 

無論その洗剤は唐輝にまんべんなくかかってしまうだけだが、それだけでは終わらない。

 

何が起こったかって、チャクラムの刃を一切受け付けずに()()で受け止めてしまったのだ。

 

いくら強化された魔法使いの身体とはいえここまで強力ではない、考えられる要因は……

 

 

御手洗「もうぅ! 唐輝君無茶しちゃダメだって言ってるじゃないのぉ!!」

 

山巻「ごめん琴音、助かった! でも作戦通り役割は果たしたぞ!」

 

御手洗「効力が切れる前に早く下がるのよぉ!!」

 

 

琴音の言葉を聞いた次の瞬間、またその場から姿を消してしまった……どんな魔法の効果だ?

 

それよりもだ、次の段階に入ろう。 仰け反って独立した中部の頭に当たる炎。

 

その真下に八雲が走って到着、その両手に天色の魔力を込め一気に解き放った!

 

 

空野「一時(いっとき)の疾風よ! その意を持って冷やかな炎を一瞬でも打ち消せ!!」

 

 

彼の起こす風は全体的なのが主流だが、この時は一点に集中している。

 

傾いた隙を狙い中部の炎を消したのだ、2つの目玉は燭台に転がりメガネは宙に浮いている。

 

さて、これで遠慮無くとも凍傷を負う言葉無くなった。 とどめを刺すには充分な条件下!

 

傾いた魔男の身体を駆け上がって高く飛び、両手の棍を1つまとめ赤色の魔力を多めに込める。

 

放つ、利奈の必殺魔法。 赤色の刃からなる魔力の大剣!

 

 

上田「ソリテール・フォール!!」

 

 

メガネはプラスチック性だったのか、容赦無い必殺の斬撃はバキッと音を立てて真っ二つ!

 

メガネを失い同じ顔が2つになった魔男は、今までにない尋常じゃない苦しみ方をした。

 

……が、それでは終わらなかった。 禍々しい光を放ちながら、メガネが元の形状に戻って行く。

 

もっと粉々にする必要があるようだ、魔男のこのアイテムへの執着は激しいらしい。

 

利奈は無理をしてもう1発必殺魔法を放とうとしたらしいが、その前に八雲が先を行く!

 

 

空野「もうやめてよ!! それに縛られる必要はもう無いだろう!!?」

 

 

叫ぶのは限界の声、先程より込める魔力の量が多い……どうやら八雲も必殺魔法を使うらしい。

狙う先は言わずとも直りかけのメガネ、どんな魔法かわからないが全力を放つ!

 

 

空野「慈悲無き鎌鼬(かまいたち)よ! 本心を縛りし冤罪を粉々に斬り裂き存在を消しされ!!」

 

 

その言葉と共に込められた魔力はその手を放れ、狙う先へと飛んで直撃した!

 

天色の魔力を帯びたかと思うと、風刃に幾度も裂かれ深い傷を増やしていく……

 

それはまさしく『粉』と化すまでに粉々になった、ここまでとなれば修繕は不可能。

 

要するに弱点の修復不可、待ち受ける結末は何だろう? そんなのは決まっている。

 

……魔男の()()だ、燭台からは炎が消え黒い魔力が噴き出す。

負の勢いに飲まれ行く目玉、その視線は八雲の方を向いている様に見えたが確証は無い。

 

 

御手洗「早く離れるのよぉ! 近くにいたら危なくなっちゃうのよぉ!!」

 

 

八雲はその視線に気がついていたらしく、釘で打たれたかのように視線の先を見ていた。

 

唐輝は八雲の動かない身体を無理やりに腕を引き、その場から退散した。

 

利奈も唐輝の後を追ってその場を離れる、空気が若干暖まっていくのを感じながら。

 

 

そして全てが1点に飲み込まれる。

 

ドロドロに溶けた冷たいマグマも、もはや火を灯すことは無い魔男も、

使い魔の残骸も全て吸い込み、結界ごとその結界にあるもの全て飲み込まれる……。

 

あとに残ったのは、濁りなき濃紅色のソウルジェムとマグマがモチーフのグリーフシード。

 

 

魔法少女は……業火の魔男を救った。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

気がつけば元いた公園に4人は辿り着いていた、そこは見覚えがある広々とした公園。

 

琴音が何も無い空中に両手をかざすと、泡が弾けるような音と共に抜け殻の姿が現れた。

 

どうやら間に合ったらしい、周囲も幸運な事にこれと言った人の気配は無い。

 

利奈は周囲を確認して変身を解いた、卵型に戻ったソウルジェムには多少の穢れ。

 

同様に他3人も変身を解いた……が、唐輝は突如ガクッとその場に崩れ落ちてしまった。

 

 

上田「わっ!? 山巻さん大丈夫!? ソウルジェムは……ええっと」

 

御手洗「慌てなくて大丈夫だよぉ、唐輝君頑張ったもんねぇ? おつかれさまぁ!」

 

上田「……がっ、()()()()?」

 

 

琴音は相変わらずの笑みで屈む唐輝の背中をさすっている、落ち着かせるように声をかけながら。

 

肝心の唐輝はその身を震わせている、今までは恐怖を我慢していたのか?

 

いや、我慢というよりは忘れていたような……長い間恐怖を忘れていたのだろう。

 

 

御手洗「こっちは大丈夫だよぉ、それよりも早くソウルジェムを元に戻してあげてぇ」

 

 

そう言って琴音は濃紅色のソウルジェムを差し出す、砂場に転がっていたらしい。

 

どちらにしろ唐輝は動けない状態のようだ、琴音が離れられない理由は見るからにわかる。

 

とにかく今は抜け殻の安否確認だ、受け取ったソウルジェムを抜け殻へと返そう。

 

八雲と手分けして抜け殻をベンチの上に移動させたなら、ソウルジェムを手の上に置いた。

 

それは淡い光を放ったかと思うと、持ち主の意識を身体に呼び戻した。

 

 

地屋「……っ、うぅ……あれっ? 俺今まで何を……あぁ、そういう事だっけか」

 

空野「力、強……君って奴はなぁ!!」

 

地屋「見た記憶が二重になってて歪んでやがる、なぁ俺どうなって……うおっ!?」

 

 

目元を擦って力強は起き上がったが、八雲に突っ込まれてまた倒れてしまった。

 

 

地屋「ちょ、おま!? わかったから離れろよ! 相変わらず《女々しい》な!?」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

唐輝はまた《ビビり》に戻ったものの、大きなケガは無く事を終える事が出来た。

 

対する琴音も魔力安定、利奈にお礼を言うのと共に力強の無事を柔らかに祝った。

 

八雲は寒空の中眠ってしまうほどに絶望をしていたが、今では安心しきった顔で泣いている。

 

目覚めた力強も身体と精神共に無傷、視覚的な記憶が曖昧らしいが……まぁ良かった。

 

2組のコンビがそれぞれの喜びを分かち合う、利奈は出る幕は無いと思案しその場を静かに去る。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

既に外は完全な闇に包まれていた、白い吐息を吐きながら元進んでいた道を行く。

 

先程の戦いにより多少の余裕が心に出来たらしく、空を見上げれば珍しく星が見える。

 

ぼんやりと星の灯りが頼りの闇を見つめていると、ふと頭の片隅の記憶が過った。

 

 

月村『利奈!』

 

 

そう名前を呼んで微笑みを投げかける少女の姿、それは唯一の親友の姿。

 

徳穂と忠義、唐輝と琴音、八雲と力強……今日1日で様々な2人組に出会った。

 

私も彼女彼らのように仲を戻す事が出来るのだろうか? そう思うと不安が募る。

 

 

上田「……あっ!?」

 

 

不意に握りしめた手を見たが、自分のソウルジェムを指輪に戻していない事に気がついた。

 

穢れが溜まっていたまま放置していたらしい、そんなことしたら危ないというのに……

 

とにかくだ、利奈は慌ててシルクハットを出しグリーフシードを取り出した。

 

ソウルジェムにかざせば、溜まっていた穢れは全てグリーフシードへと吸収されていく。

 

と同時に、使いかけだったグリーフシードが震え出したが……まさか孵化をする?

 

 

上田「えっ、あれ、おかし……いな? なんで?」

 

ハチべぇ「利奈! そのグリーフシードは孵化を仕掛けている、早く僕の背中へ!」

 

上田「ぁ……あぁ、うん!」

 

 

バックから出てきたハチべぇが背中を向ける、そこに利奈はグリーフシードをかざす。

 

すると、グリーフシードはハチべぇの背中に飲み込まれそのまま消えてしまった。

 

危うく孵化しかけたという状況でも、ハチべぇは慌てることなく無表情のまま。

 

 

上田「ごめんハチべぇ、声かけてくれなかったら危なかった」

 

ハチべぇ「選ぶグリーフシードを間違えるなんて、君らしく無いね」

 

上田「……そうだね、さっき勝ったばかりなのに……なんか、調子が悪いや」

 

 

ヘラヘラと笑って空を見る、星の光は相変わらずで可笑しいのは私だけかと利奈は笑った。

 

……まさか思わないだろう、ちょうど同じ頃に()()が同じ空を見ていたとはね。

 

互いを思い空を見た、ふと瞳に写ったのは一筋の流れ星。

 

 

………………………………

 

 

次回、

 

 

 

ハチべぇ「ソウルジェムを浄化しなくて良いのかい? 穢れが溜まっているようなのに」

 

 

 

月村「私の言った事が聞こえなかったのかしら? あなたに付き合ってる暇は無いんだけど」

 

 

 

「そうだ、自分は、耐えなきゃならない……」

 

 

 

「それはお前が1番知っているはずだ、リュミエールのエースでない『上田利奈』をな」

 

 

 

〜次……(32)ビビりな空手家と柔軟少女〜

〜終……(33)偽否定と意外な救い〜

 

 

 

魔法使いは運命に沿う。

 




魔女・魔男戦=イラスト、それがこのハピナの勝手な定義になりますw 大変でしたが。

文書では格闘の組み手の組み合わせ、イラストでは炎の動画を見たりと工夫は欠かさず。

久々だし上手く描けていれば良いのですが……まぁ、感じ方は個人差か。




さて、今回の雑談としては『アイスクリーム』について話しましょう、いや何故にw

自分としては『moo』が好きですね、ソフトクリームとかの牛乳くさいのが至高。

あぁ以前地元の観光地で『ホワイトチョコ』なる物を食べたのですが、
そのまんまホワイトチョコで面白かったですね、自分の中で2番目。

有名な明治なんたらカップはカロリーおばけなので食べませんw
あれ1つでご飯一膳分のカロリーあるんですよ?

痩せていたいなら1回につき半分食べるのが良いでしょうね、
そうすれば2回楽しめるメリットが生まれるので。




それでは皆様、また次回。 次回は視点を返えいつもと違う目線からお送りしましょう。
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