どうも、疲れ果てて満身創痍のハピナですよ。 レポートの量多過ぎなんじゃあ……
執筆も間に合わず本日はストック分を使用、遂に余裕が無くなった!\(^o^)/
これでうえマギもかつかつの投稿になります、やっていけるのかなぁ……ちょっと不安。
さて、今回より6回目の前後編に入ります。 前後編の文書は長くなりがちなのでご注意を。
誰が孵化してしまったのは予想がつくでしょうか? ついでにイラスト付き、本編に期待。
いつもより短くて申し訳ない……それでは幕を上げましょう、目を覚ましたのは利奈以外。
友人といたのはとある部屋、時間としては夕方だったそんなの、結界の中じゃ関係ない。
知己が目を覚まし辺りを見渡そうとすると、揺らぐような視界に思わず吐き気を催した。
記憶を思い起こす余裕も無い、場を把握出来ていない事もあって混乱してしまった。
ハチべぇ「何をしているんだい? 生身の状態だと適応しないに決まってるじゃないか」
……またか、一体ハチべぇはいつの間にこの場にいたのだろうか? わかるわけもない。
気になるところだが、今はハチべぇの言う通りにした方がいいだろう。
指輪をソウルジェムに戻すと、その身を桜色の魔法少女に変えた。
目元を擦って辺りを見回し状況を確認、それで分かった第一印象。
ここは現実世界じゃない、場所からしてどうやら結界の中盤辺りにいるらしい。
眼下に広がる光景、淡い水色と桃色に黄色も混じって広がる空を滲ませる。
乗っていた謎のパネルは表示の切り替わりを繰り返し、示す情報を変えていた。
ほんの微かな時計の音がどこかで鳴っている、耳の奥でなっているかのような音。
見渡せば異世界を模す宇宙、ストップウォッチの足場が周辺で浮いている。
表示されている記号が違うのが影響しているのだろうか?
乗ろうとする者を拒むかのように、激しい上下運動を繰り返す。
今自分がいる結界の状況を把握したところで、一番大事なことを思い出した。
廃墟に入ってまで追いかけたはずの人物……津々村博師の姿がどこにもいない。
その先のもっと恐ろしい現実を認識する前に、事態に進展が起きた。
何か風を切って回るような音が聞こえたかと思えば、見た先にいるのは『化け物』。
違う2種の針を回し又は動かし、それらは侵入者を排除しようと飛んでくる。
胴体となるであろう円盤は透けて、向こう側の景色を映し出していた。
壊れたネジ巻きを巻くような空回りの音を立てながら、その役割を全うしようと迫り来る!
泡沫の使い魔、役割は記録。
根岸「ぼっ……! ボア・レオメッガ!」
知己は反射的に魔法を使うと、頭を押さえてその場にしゃがんだ。
すると、彼女に覆いかぶさるように木製のテーブルがそこに現れる。
無論容赦なく襲い来る使い魔は知己を突き刺そうとその針を持って特攻してきたが、
その針は木製のテーブルに突き刺さっただけで終わってしまった。
ハチべぇ「気を付けて! この場にいたら危ない、移動した方がいいよ!」
根岸「いっ、移動って!? どこに行けばいいの!?」
ハチべぇ「とにかく進むしかない、結界の出入口か結界の主を目指すんだ!」
ハチべぇの言う通りだ、木の板である頭上を見上げてれば見えたのは針の先端。
その数はどんどん増えていく、これではテーブルが壊れるのも時間の問題だろう。
テーブル下から辺りを見回すと、上下する足場の中で比較的ゆっくりなのを見つけた。
先を行くにはこのルートしかない……このままではテーブルごと串刺しだ!
知己はタイミングを見計らって飛び出す、同時に元いた場所は剣山になった。
根岸「ストール・セッメーガ!」
両手に桜色の魔力を込めて、まるで祈りでもするかのように両手を握った。
魔力を解き放つと、クッション部分が青ではなく桜色のパイプ椅子が生成された。
これが彼女の主な武器らしい、今の役割は大盾となってしまっているが。
パイプ椅子で追いかけて来る使い魔を追っ払いながら、とにかく先へと進んだ。
主な足場となるストップウォッチを見極め、軽い跳躍で飛び乗り移る。
基本足場は充分な数は確保できそうだが、上下するスピードが速すぎて足場もある。
切り裂こうとしてくる使い魔が厄介だが、数が少ないので何とかなるだろう……
だなんて、そんな砂糖を直に舐めたような甘い考えは通用するわけがなく、
望まれることが無かったピンチは苦々しくもすぐにやってきた。
根岸「斬られる! ダメっ、無理だ、対処しきれな……っ!?」
高速回転の同時な複数斬撃を避けるのに必死になった結果、彼女は致命的なミスをした。
何をしでかしたって、避けるのに意識を持っていかれて乗る足場を間違ってしまったのだ。
乗せた片足は激しい上下運動の前では安定することなく、 落 ち た 。
そのまま異世界の宇宙へ落下の一途を辿る、思わぬ展開に思考が止まった。
滲む視界の先はわかず終い、単独であれば死にはせずとも大怪我はしただろう。
……
上田「っと、危ない! 間に合った!!」
月村「何が間に合ったよ、私が魔法で加速しなきゃ危なかったじゃない」
篠田「あれっ、根岸さんだ! いつも一緒にいる人はどうしたの?」
根岸「……えっ、と……博師、君は…………」
月村「混乱しているじゃない、その辺の状況確認は後回しよ。 前を見なさい!」
篠田「はわわ!? さっきの使い魔が迫ってきてるよ!?」
上田「とにかく今はこの場を凌ごう! 細かい話はその後だね!」
利奈は反動をつけて知巳の腕を掴んでいた手を上へと振り上げると、
同時に持ち上がった知巳の体を上手い具合に棍の箒に乗せた。
上田「しっかり捕まっててね? アヴィオン・アンヴォカシオン!」
……ふむ、恐らく『知巳に飛行魔法が無い』という事は俐樹から聞いた事があるのだろう。
新しく棍の箒を作り出すと、知己を元の箒に残して使い魔に特攻していった!
器用な物で知己に対する使い魔の攻撃は利奈による棍の箒の操作でかわされていった。
まぁ、魔法使いである知己も黙って見ているわけではない。
カラーボックスを使い魔に被せ邪魔をし、その両手にパイプ椅子を持って振り回す!
空を回りながら舞う使い魔を叩き落としたのなら、そのまま落ちればそれで良い。
だけども使い魔もヤワじゃない、すぐにでも再度空を飛んで襲い掛かってきた。
それでも何のダメージも無いというわけじゃない、その動きは確実に鈍ってくる。
そこが後衛を務める絵莉と芹香の狙い目だ、彼女らは上を見上げながら足場を飛び移る。
魔法をぶつけるかの判断は芹香がする、正確に時を見て魔法を放っていった。
月村「第三章! 雷の巻「落雷」! 対象は使い魔!」
時には1冊の本から魔法によって放たれたページは弾け、麻痺を起こす落雷となり……
篠田「ルビーニ・エカン!」
時には魔法によって作り出された縄跳びが、隙だらけの使い魔を縛り上げた。
事の展開は順調、確実に滲んだ宇宙を突き進み先の景色を次々に目に捉える。
浮かぶ足場を飛び移り、滲んだ宇宙を飛び交い、やがて1つの場所に辿り着いた。
さて、道筋の曲がり角を示すかのように存在していたパネルだが……様子がおかしい。
何故おかしいかって、意思を持ったかのように移動しどんどん
空を飛ぶ使い魔もその針を絡ませ、幾つもの塊となって歪な像を作っていく。
ハチべぇ「……驚いたね、使い魔が集団という形で協定を組み融合している。
ボス級の割には結界の構造が単純だったからイレギュラーかと思ったけど、
どうやらこの魔男は戦力の方に力を注いでいたようだね。
『チョーク』という黒板の使い魔の結果といい、僕のシステムは先駆者よりも」
月村「あなたの自慢話は後にしてちょうだい、今は聞いてる暇は無いわよ」
根岸「協定、って? 使い魔同士で協力しているって事? あんな風になってまで!?」
上田「でもあり得ない話じゃないと思うよ、チョークみたいに考える事は出来るしそれに……」
篠田「ボス級の魔女の使い魔だもんね、やっぱりボス級となると格が違うよう!」
月村「……あなたのそのおめでたい単純思考、治る気配が一向に来ないわね」
ハチべぇ「気をつけて! 使い魔同士が融合する事で、黒い魔力の量が上がっているよ!」
ハチべぇが明確な注意を4人に呼びかける頃、既に使い魔は融合を終えていた。
元々融合するような身体構造でもない、融合体の身体のあちこちから針が飛び出している。
利奈の感性で言うなら『中ボス』が妥当だろう、それでもこいつは使い魔に過ぎない。
篠田「……見た感じだとすっごい強そうだよ、どうしよっか?」
根岸「融合って……下手に攻撃したら、また分裂しちゃうんじゃない?」
月村「最善策は分裂させる事なく、この足場の真下に落下させる事ね。
まぁ、そもそも攻撃したら分裂するかどうかも確定じゃないから危険だわ。
下手な判断をすれば最悪な結果を生む羽目になる、そうなれば後続に影響は確実……」
まとめて言うと、単純にこの融合体は『やっかい』って事になる。
ある程度の距離を置いている為利奈たちの存在には気がついていない様子だが、
これを無視して先を行くにしても後に来る魔法使いが大変な目にあるだろう。
そりゃそうだ、魔法使いが全員飛べる魔法を持っているとは限らない。
この場には実力がある者が3人もいる、倒せないなんて事はまず無い。
最も悩んでいたのは芹香だったが、彼女の滞りを変える者がいた。
上田「あれってまだ魔男じゃないんでしょ? だったら何とかなるんじゃないかな」
月村「何とかってあなたね!? そんな生半可な感情だったらろくな結果が」
上田「その結果がダメだったら誰かがフォローすれば良いよ!
今回は私がするからさ、悩んでも仕方ないしまずは戦ってみるしかない!」
ハチべぇ「利奈の言うことは一理あるね、あの融合体は今までのデータには無いね。
前例が存在しないというのに、この場で脳内の検証を行うのは無意味に近いよ」
月村「ハチべぇあなたまで……! どんな結果になるかわからないというのに!」
そんな不確定要素を否定しつつ、芹香の頭にはとある言葉が浮かんでいた。
『利奈よりも結果に囚われているね、かわいそうな子』……
自覚があるのかこの言葉が頭にこびりつく、ずっとまとわりついている。
改善どころか悪化していると言えるだろう……今の状態というのは。
唇を噛んで俯いた、やっと出た言葉は思った事とは真逆だった。
それが彼女にとっての『抗い』でもある、14年間刷り込まれ続けた固定概念への対抗。
彼女はこの魔男との戦いで何か変わろうとしている、変われるのだろうか? 或いは……
月村「そこまで言うのなら行きましょう、即興だけど私に考えがあるわ」
上田「……ありがとう芹香、必死だったけどちょっと言ってる事が雑過ぎたかな」
月村「元々難しく考えれる性格じゃないでしょう、その位わかっているわよ」
篠田「その考えってどんな感じなの? あまり時間無いだけど、手短に説明出来そう?」
月村「余裕よ、結果から言うとあの融合体を倒すのにはあなたの力がいるわ」
使い魔の融合が完全に終わる頃、あちこち針が飛び出した不完全な巨人が完成する。
『手』という形にならなかった針の束がついた片腕を引きずり、向く先は2人の魔法使い。
いるのは2本の棍を構えた赤色の魔法使いと、独特のパイプ椅子を構えた魔法使い。
融合して攻撃性が増したのか、ある程度の距離があっても襲い掛かってくる!
初手の針の雨、範囲に強い知己が全身の力を使ってパイプ椅子で薙ぎ払った。
不気味な事に全身のありとあらゆる部位から針が飛び出してきたが、
束にもならない単体なら利奈の速さで余裕の対応が出来る。
まだ中学生ではあるが、今前衛を務める2人が女というのには変わりない。
力が無いなら他の部分で補えばいい、利奈なら速さで知己は広範囲。
それぞれの得意な面、より伸びた面を生かして未知なる融合体に立ち向かう!
不意に融合体の拳が腕を伸ばし殴りかかってきたが、橙色の風が隙をついてその身体を押す。
すると、でかい図体はバランスを崩し……大きく倒れこんでその腕を折ってしまった。
芹香の予想通りその腕は蠢いて単体になっていく、再度融合しそうな気配は無い。
さて、事前に組まれた作戦で狙っていたのはこの場面だ!
芹香が隣にいる絵莉に指示を出したのなら、絵莉は行動に出た!
篠田「ルビーニ・エカンっ!!」
先ほど放った縄跳びを魔力で生成する、今度は魔力多めで3本同時にだ。
絵莉が操作をすると、3本は三つに編み上げられてその強度を増す。
さらに細かな操作をすると、分裂した使い魔同士が離れないように縛り上げた!
単体の使い魔にも使った絵莉の魔法、まさかこの場でも生きるとは思わなかっただろう。
ある種当然、いくら融合しようと使い魔は使い魔……元々融合出来るような構造じゃない。
月村「成功よ絵莉! 融合体の動きが鈍くなっている、その調子で拘束しなさい!」
篠田「う~~ん……ごめん! この前出来たばかりの魔法で、
縛っているのがあんまり長く持ちそうに無いの!!」
月村「使い慣れていないって事かしら? ……困ったわね、なら私の魔法で」
絵莉の表情は見るからに辛そうだ、魔力を込めたその両手は若干震えている。
散々使い魔は弱いだなんて言ってきたが、やはり相手は数が多く物量作戦。
いくら優秀といえども魔法使い1人で大量の使い魔に対処するなんて、
そんなことが出来る魔法使いは片手で数えられる人数に限られる。
流石に魔法が出来た時期までは把握していなかったらしい。
まぁ、そんな細かいところ知っているのなんて1人しか思い浮かばないだろう。
自らの持つ本のページをめくり急いで魔法を探す、対策は既に考えてあったようだ。
……が、短時間で完成したその即興かつ入念な考えは結局無駄になることになる。
何故無駄になったかって、彼女が一番会いたくない人物が登場してしまったからだ。
その魔法使いは3人組、先を行くリーダーはよりにもよって芹香のライバル。
下鳥「俐樹に手伝ってと言われて来てみれば……どうやら、お困りのようね」
月村「……呼んでもいないし別に困ってもいないわよ、甘く見てもらったら困るわ」
下鳥「呼ばれてここに来たわけじゃないわよ、勘違いする前に落ち着きなさい」
橋谷「すっ、すみません! その、1人で結界に入るのは不安で……」
月村「謝る必要は無いわよ、その3人と合流した経緯によるけど」
優梨が後ろにいる2人の魔法使いに目配せをすると、魔法使いは移動をした。
来た先は絵莉の隣、どうやら彼女の魔法の手助けを念話で指示されたらしい。
手伝いというと『融合体の拘束』だが、彼女の魔法ならそれが可能なのか。
浜鳴「サンチュー・ベロー!」
片手に魔力を込めて一直線上に放てば、そこから丈夫なベルトが生成された。
融合体が縄跳びで離れないよう縛っているのと他の場所を補助的に縛っていく。
絵莉は隣にやってきた最上に驚いたらしいが、魔力の負担が格段に減ったようだ。
浜鳴「よぉ~~し! しっかりばっちり、身動き取れないなう!!」
篠田「っはぁ!? ふえぇ、助かった……すごい負担だったよ」
浜鳴「うは、軽く汗かいてるじゃん! 大変じゃないの? そんな私は救世主なう!」
魔法使いの増援が来たおかげで、事はますます順調に進むだろう。
ただ……違和感が残った、優梨が目配せをしたのは
優梨が自身の斜め後ろにいる魔法使いを見たが、上の空で明後日の方向を見てる。
下鳥「あら、最上は行ったけどあなたは行かないのかしら? 美羽」
木之実「…………」
下鳥「……それどころじゃないみたいね、なら私の補助に回りなさい」
美羽はまるで思考を投げ出してしまったかのように呆然としていたが、
ここまで来たのと同じように移動することくらいは流石に出来る。
上田((優梨! それに俐樹ちゃんも! 2人共来てくれたんだ!))
橋谷((はっ、はい! リュミエールから招集がかかったのですが、
近くに優梨とそのお友達がいたので先に来ました!))
下鳥((乱入して悪いわね利奈、今から前衛に私と美羽も入るから把握しておいてちょうだい))
根岸「えっ、何!? ……新手の使い魔じゃなくて増援か、ちょっとビックリしたな」
上田「前衛2人と後衛1人が増えたの、私たちは引き続きこの融合体にダメージを与えよう!」
根岸「……うん! この調子なら、目の前にいる融合体を倒せそうだもんね」
さて、改めて身構えよう。 相手は使い魔、ここで無駄に魔力を削るのは避けたい。
使い魔も融合が離れてしまった塊がだいぶ増えてきた、これなら停止も時間の問題。
それじゃあ、早く終わらせようか。 周りを見ると、使い魔は融合体の他にいない様子。
上田「ゲーム、再スタート!」
紫の魔法少女が加わり、融合体の破壊が目的の前衛はその全体的な火力を高めた。
融合体の攻撃を弾くのは知己が引き受け、利奈は融合体に攻撃する事に務める。
融合体が分裂する一環で束縛を逃れる個体も何体か出て来たが、これには優梨が対処。
逃げた使い魔を2本のムチで素早く捉え、モーニングバスターの容量で遠心力を生かしている。
融合体にダメージを与えると同時に束縛を支援する……
この融合体を倒す場でこれ以上の効率の良い攻撃は無いだろう。
分裂しては縄跳びで縛られる、分裂してはベルトに縛られる、融合体はどんどん歪になっていく。
やがて巨体を支える脚さえ丸く潰れ、その場に崩れ落ちてしまった。
どうやらとどめの時が来たらしい、今まで見てきた中で最も強い使い魔の終わりの時が。
下鳥「今よ!! 総出で押し出すの!!」
根岸「おっ、押し出す!? 押し出……クロウステト・キャストヌガネン!!」
上田「いっけえぇ!! 一気に押し出せええぇぇ!!」
知己は咄嗟にパイプ椅子を床に叩きつけると、そこに魔方陣が展開された。
この判断は正しかった、『咄嗟に家具を作る』なんて事があまり無かった経験を補うフォロー。
要するに本来判断をすべき頭が追いつかないのを見越し、魔方陣に魔力の使用を任せたのだ。
魔方陣が光を発して消えたかと思えば、融合体の目の前に大きめのタンスが現れた。
融合体が行動を起こす前に自らの引き出しを全段飛び出させ、初手の押し出しを実施。
これをきっかけに利奈が物理的な体当たりをした、引き続く優梨も利奈とほぼ同時に体当たり!
かなり傾いたが、まだ足りない! タンスは最大出力で2人は体重もかけて体当たりをしたはず。
単体での浮力でギリギリ耐えているのか? だが使い魔は落ちた、
緑の学校の縄跳び、黄緑の花を咲かせた蔦、頑丈そうな柿色のベルト……
それらが魔方陣によって床に固定され、足場の無い空へと融合体を思いっきり引っ張っていく。
本来は4本なのだが……残された蘇芳色の柔らかなリボンは
何をする事もなく、ただふわふわと魔方陣から生えて揺れるだけ。
とどめを刺されて、滲んだ宇宙をボロボロと崩れながら落下する融合体。
ゼンマイが巻かれ過ぎて壊れたかのような悲鳴をあげながら、
融合体はドロりとした黒い魔力となりただ静かに消えていった。
どうやら、泡沫の使い魔を一通り倒す事が出来たらしい。
進む先に新たな足場が出来ると、最奥には扉が現れた。
襲い来る前章はもう無い、一時的な休戦の訪れに魔法少女たちは歓喜に満ち溢れた。
篠田「やっとだあぁ……! 結界の主がいる扉の前まで来るのが
こんなに大変になる時が来るなんて思わなかったよ」
根岸「すごい数だったけど、大勢いればボス級でも割りと何とかなるんだね」
上田「ボス級の魔女や魔男とあまり戦った事無いの?」
根岸「数は少ないかな、いつも2人だったから雑魚級ばかり倒していたんだ」
橋谷「とっ、とにかく増援を待ちつつソウルジェムを含めて回復しましょう……っ!?」
俐樹は場が落ち着いて気が抜けたのか、最上の存在に気がつき絵莉の後ろに逃げた。
浜鳴「えっ? ……あ」
下鳥「無理もないわね、美羽と最上の回復は私がやるからあなたたちは4人で回復なさい」
ハチべぇ「身も蓋もないね、俐樹はいつになったら立ち直ぎゅっぷぃ!?」
余計な事を言いかけたハチべぇだったが、突然頭を掴まれて言葉は途中で途切れてしまった。
見れば芹香がハチべぇを止めたらしく、微動だにしないハチべぇの顔を睨みつけていた。
優梨は微笑んで軽く礼をしたが、芹香は見ただけで特に反応せず利奈たちの元へ戻る。
橋谷「……はい、これで浄化も含め治療は一通り終わりました。
やはり前衛と後衛の役割分担がしっかり行われていたのか、
目立つような怪我や穢れは見当たりませんでしたね」
上田「俐樹ちゃんたが3人を呼んでくれて助かったよ、やっぱり人が多い方が心強いね」
橋谷「いっ、いえ! 私は何も……声をかけたのは優梨だけでしたし」
上田「だとしたら、他の2人は優梨が連れて来たのかな?」
月村「時間が立ったのを見越して、あなたが克服出来たかどうか兼ねたんでしょうね」
上田「いや、単純にいつも一緒にいる2人だから連れて来ただけだと思うよ」
月村「どうかしら? 裏の意図があるかもしれないわよ? ……また喧嘩になってるわね」
「「…………」」
篠田「……とっ、とにかくだよ! この先はボス級がいるんだし、増援が来るまで待とう!」
俐樹の魔法も含めた治療は一通り終わったが、相変わらず2人はギクシャクしている。
まだ引きずっているのか……それだけ、互いの間に深い溝が出来たという事か。
本当はすぐにでも溝を埋めたいが、現状はそうじゃない……早急な討伐が求められる。
妙な空気になってしまったが、今は一時的な安全も得られたし討伐に向け増援を待とう。
そんな感じで休憩も兼ねて待っていると、利奈は突然後ろからの軽い強襲を受けた。
チョーク「久しぶりの利奈だ! 利奈、久しぶり!
ごめん橋谷さん、みんなを集めるのにちょっと遅れちゃった」
上田「わっ!? チョーク?」
ハチべぇ「多数の念話が漏れていたと思えば、君の念話だったようだね。
どうやら元々使い魔である個体だと、念話をするのはあまり得意じゃ無さそうだよ」
橋谷「ちょ、チョークは念話が得意ではないんですか?」
清水「個体とはひでぇ言い方するじゃねぇか……
だが集めるのを手伝ってくれたのは助かった、チョークがリュミエールを呼んでくれた。
俺は別の連中を集めるのに集中出来たし、結果的に時間の短縮になったからな」
海里も来たかと思えば、それに引き続いて多数の魔法使いが利奈たちの元に集まって来た。
中には花の闇も混じっているが……今回はそんな事を言ってられそうな相手じゃない。
ふと、集団から抜け出して数夜が優梨の元へやってきた。
周囲は軽い警戒を示したが、芹香がそれらを止める。
前坂「……美羽はずっとその調子なのか?」
下鳥「えぇ、最近はこうやって思考を投げ出してしまう事が多いのよ」
前坂「……そうか」
数夜はそれだけ言うと、前にも見た事あるような不格好な杖を召喚し美羽に向かって振った。
すると……呆然としていた美羽はハッとなり、目の前を見てその瞳を数夜に向けた。
木之実「リーダー……? リーダーじゃないですか! あぁ、私を助けてくれたんですね!!」
下鳥「良かったわね美羽、さっきより顔色も良くなって元」
木之実「会えて嬉しいです! リーダーも討伐に来たんですね?
一緒に戦えるなんて……あぁ、なんて幸せなんでしょう!!」
下鳥「ちょっと美羽、私の話を聞いてるの? そもそも聞こえてるのかしら?」
浜鳴「メロメロなう、美羽ってばリーダーの事となると周りが見えなくなるんだから」
下鳥「……それにしては、様子がおかしいような気がするんだけど」
前坂「あまり俺に固執するなと言ってるだろう美羽、今は優梨について行け」
そう数夜に言われ優梨の方を向いた時点で、やっと美羽は瞳の輝きを取り戻した。
木之実「……あれっ、2人共いたんだ。 今まで全然気がつかなかった」
下鳥「
木之実「え? だって私……何をしていたんだっけ、記憶が曖昧になってるな。
まぁ特に支障無いんだったら良いんじゃない? とにかく3人一緒にいたんでしょ」
浜鳴「団体行動なう、一緒にいたのは間違いないんだけど……」
下鳥「覚えてないないなら仕方ないわ、もうすぐ作戦会議も始まる頃だし後にしましょう」
優梨たちは一連の話を終えると、残りはギャル特有の雑談を始めて作戦会議を待った。
篠田「月村さん、何でさっきはあたしたちを引き止めたの? 花の闇の長だよ!?」
月村「色々あったのよ、特に悪い事をしていないのなら無駄な警戒で気力を使うのはやめなさい」
篠田「でもっ……!」
上田「芹香の言う通りだと思うよ、今まで芹香が言った事で間違いだったことないもん」
月村「……利奈」
清水「みんな! 中野はいないから今回は俺が割り振りをする、みんな集まってくれ!」
チョーク「海里が集まってだって、利奈も橋谷さんも行こうよ! ほら、絵莉と芹香も!」
チョークは利奈と俐樹の腕を掴むと、無邪気に海里の元へ引いて行った。
芹香はやれやれといった様子で後を追い、絵莉は慌てて3人を追った。
知己は……行く先であろう扉をしばらく眺めていた、その瞳は涙で潤んでいる。
まぁ、知己がこうなるのも無理はない……待ち受ける主は壊れてしまった相方なのだから。
………………………………
次回、
清水「……前衛の中で、重傷者が出たそうだ」
軽沢((ここまで余裕が無いのは久々だねぇ……ぅわ!? ちょっと、あれは流石にマズいぞ!))
篠田「……あたし、利奈たちが心配だから加勢に行くよ!」
根岸「う、そ!? こ、れ、博師……君が?」
〜終……(35)儚げな裏で友情の行末[前編]〜
〜次……(36)儚げな裏で友情の行末[中編]〜
魔法使いは運命に沿う。
……はい、いかがでしたか? 久しぶりにチョークの登場です、相変わらず利奈に懐いている。
強い主の手下も強い、単純な構造もあって融合してしまいました。
様子がおかしいのも1人存在、利奈と芹香の仲も気になる所。
今回簡潔で申し訳ない……次回の私はもっと上手くやれるでしょう、多分。
それでは皆様、また次回。 今週の日曜日も遅くまで授業! 身も蓋もないね!!