魔法少女うえだ☆マギカ 希望を得る物語   作:ハピナ

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一昨日は、水曜日の『平日』でした。

昨日は、木曜日の『平日』でした。

本日も、金曜日の『平日』です。


滅 び よ ゴ ー ル デ ン ウ ィ (殴


どうも! 1週間と6日ぶりのハピナですよ、本日も絶賛祝日出勤実施です!

どんどん社会の闇に埋もれ……まぁいいや、それよりもうえマギですね(泣

前回の後書きにて記載した通り、今回は15000字越えの長文なので、
文を読む際は休憩を挟みながらご覧下さい、ちなみにイラスト付き。

あらすじとしては、舞が発端となり魔法使いの大半が集まって
魔法の練習、いわば『魔法演習』をするところから物語は始まります。

それでは物語の幕を上げましょう、今回は戦闘シーンも織り交ぜています。



(40)逃げの依存と感じぬ希望

それは夕暮れ、とある日の放課後にあった出来事だ。

 

今日は約束された日、舞を含めた魔法使い一同は久々に裏山にやって来ていた。

 

目的は魔法の練習だ、これによって複雑化した魔法の習得も図ることになっている。

 

舞は病室でも魔力操作くらいは練習していたらしいが、まず自分の魔法を知る所から始めた。

 

そこで、早速舞は魔法を唱えた……のだが、それはかなり豪快な物だった。

 

 

車道「ライドオン! ライト・モードトラック!」

 

 

舞の武器は直径30cm程の鈍色の立方体だった、何かの金属らしく両手じゃないと持てない重さ。

 

一見なんの変哲もない物体だったが、練習を進めていく内にその正体は明らかになった。

 

この金属の立方体、舞の魔法によって()()する性質を持っていたのだ。

 

どんな形にでもなるという訳ではなかったが、かなり便利な物ではあった。

 

時には町中でよく見かけるような軽自動車、時にはかなりの速度が出せそうなバイク、

ゴツい大型トラックにだってなった、要するにこれは乗り物に変形出来る武器。

 

 

車道「軽トラにまでなるのぜ!? すっごい万能なのぜ!」

 

ハチべぇ「現段階ではその立方体のみのようだ、魔力の消費量も少し多目だ。

今の舞の状態だと、攻撃方法は轢く事しか無さそうだね」

 

車道「なんか物騒な攻撃方法なのぜ……とにかく、これにも試しに乗ってみるのぜ」

 

上田「あっ、ちょっと!? 1人で動いたら危ないよ!」

 

車道「そこまで心配しなくても大丈夫だぜ、そろそろこの身体にも慣れてきたのぜ。

しっかし足での走り方を忘れてるなんて……当分は車での移動が主流なのぜ」

 

 

舞は最初、変身をした魔法少女の身体なら大丈夫だと意気込んでいたらしいが……

 

実際は俐樹よりも弱い身体だった、ただの徒歩もどこかふらついている。

 

結局は利奈から貰った棍を杖にして、ハチべぇの魔力管理付きで手伝ってもらっている状態だ。

 

それでも舞は仕方ないと受け止めることができた、行動も豪快ならその心も豪快な反応を示す。

 

舞の魔法少女姿が鈍色のつなぎであるのがせめてもの幸運だろう、いくら転ぼうが痛い傷は無い。

 

一度車に乗ってしまえばあとは手慣れた者で、座席の調整を終えれば話は早い。

 

座席に乗った舞はパワーウィンドウを開け利奈に手招きをした、指差しているのは隣の座席(助手席)

 

 

車道「せっかくだし利奈も乗のぜ! さっきから見てるだけなのぜ、それじゃつまらんのぜ」

 

上田「えっ、いいの? 逆に邪魔になったりしない?」

 

車道「それこそ練習になるのぜ、これから他の魔法使いを機会はあるのぜ。

誰かを乗せても安全に走れるようじゃなきゃ、レーサーの名が廃るのぜ」

 

 

それはレーサーではなくドライバーのような気もするが……まぁ、意図が伝わればそれで良い。

 

利奈が助手席に乗り込めば、魔法の効果か自動的にシートベルトがかかった。

 

周囲を確認して前を見据えたなら、舞はしっかりとハンドルを握りしめる。

 

 

車道「利奈、準備は良いのぜ?」

 

上田「うん! 心の準備は出来てる、いつでも行けるよ」

 

車道「ハチべぇ、一応ガソリンは持ってきたけど魔力管理は頼むのぜ」

 

ハチべぇ「その辺りは僕に任せて、舞は練習に集中するといいよ」

 

車道「それじゃ、出発するのぜ! 舌を噛まないよう気を付けるのぜ!」

 

 

舞の掛け声に答えるようかかる車のエンジン、前を見据えるその瞳は炎の如く燃えていた。

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

清水「……しっかし、ここまで団結するのに結構時間がかかったな」

 

中野「最初はみんなバラバラだったからね、僕としても驚いてるよ」

 

白橋「あれ? でも、ちらほら魔法使いの数が足りないね」

 

中野「みんながみんな集まれた訳じゃないからさ、僕だってこういうのに参加したの久々だし」

 

清水「特に力強と八雲は用事があって嘆いてたな、舞が心配だどうだと言ってたし」

 

 

舞の車が裏山を周るように走る中、花の魔法使い達は魔法の練習に励んでいた。

 

最初はリュミエールと舞だけで行う予定だったが、

集まりに集まって結局花組のほとんどが集まってしまった。

 

『クインテット』や『ゲマニスト』に所属する魔法使い、

チームに入っていないコンビなどの魔法使いまでいる。

 

流石に『星屑の天の川』は来なかったらしいが、かなりの人数がいるのは間違いない。

 

ちらほら塾やその他用事でいない魔法使いもいたが、その辺はチームもごちゃ混ぜで練習する。

 

 

録町「ん〜〜? なかなかCDが飛び出してくれないな、中の構造はかなり直してもらったのに」

 

切通「うぅ……射出部分に歪みがあるかもしれない、もうちょっと削ってみる」

 

月村「貴方が落ち込む意味がわからないわ、知識なら貸すから落ち着いて作業なさい」

 

吹気「まぁ別に上手くいかないなら、上手くいかないなりにやってけば良いと思うけどね」

 

砥鳴「私たちゲマニストに任せれば大丈夫よ! 機械の事ならお任せ!!」

 

 

強い遠距離魔法が無い魔法使いは、後衛中心の魔法使いと一緒に新たな武器を創っていた。

 

特に花奏は自身の魔法であるCDを素手で投げていた程の、遠距離に関してはかなりの弱さだった。

 

主に花奏の新しい遠距離武器の作成を中心に、一同は強化も含めた作業に勤しんでいた。

 

しばらくして花奏の新しい武器の調整を終えた操太郎、

試し打ちをしたのなら弾であるCDは勢い良く飛び出した!

 

どうやら上手くいったらしく、操太郎は安心したような表情をして喜びを共有する。

 

 

白橋「わあぁ……! すごい器用だね海里、新しい武器が出来た!」

 

清水「ゲマニストは由来にもあるように、ゲームといった機械系に強いからな。

特に切通はポリゴンの魔法を扱うからな、メンバーの中でも機械には詳しい」

 

白橋「僕の魔法にオリジナルって無いから、こういうの普通に凄いって思うんだ!」

 

清水「おおぅ、花奏に操太郎を紹介した紗良の計らいも良かった」

 

中野「……試し打ちはもうちょっと考えてやって欲しかったかな?

僕の魔法が間に合ってなきゃ、頬かおでこにCDが刺さってるよ」

 

 

蹴太の不運は相変わらずだ、反応が遅ければ流れ弾をくらっていただろう。

 

なんというアンラッキー! 前より目立った災難は減ったが、

彼が持つ《不幸体質》は簡単には治ってくれないらしい。

 

蹴太の顔は苦笑いだった、どうしてこうも不幸が自分の方に来てしまうのか。

 

 

それはさておき、この場で練習をしているのは後衛の魔法使いだけではない。

 

他にも戦いの技術を向上させる為に来ている魔法使いもいる、それが前衛の魔法使い。

 

あちこちで組み手が執り行われていた、一部、 本気でやっている所もあるが。

 

その一角、そこでは魔法少年2人による近距離の激しい組み手が行われていた。

 

拳とランスの攻防……唐輝が教える側らしく、その組み手は真剣に執り行われている。

 

 

山巻「遅い!! 拳を振り上げるなら、その武器を振り降ろせ!」

 

津々村「んなこと言われなくたって分かってる! だからこうしtのわっ!?」

 

山巻「やばっ、うおぉ!?」

 

 

互いの戦いに慣れが出てきた頃、放たれた博師の攻撃の1つが急所に向かってしまった。

 

唐輝は思わずカウンターで反応したが、傾く博師の服を掴んで共に倒れてしまう。

 

そのまま受け身も取れずに地面に激突する……かと思われたが、

地面から生えるようにして現れた桜色のベッドに受け止められた。

 

 

津々村「痛い……ごめん、自分のせいでアンタも倒れちまった」

 

山巻「……え? ああぁ!? ごごごごめんなさい! 僕のせいで博師が!!」

 

津々村「へ? いやいやいや、アンタが謝るんじゃなくて自分が謝るんだって」

 

御手洗「もぉ〜〜2人悪くないよぅ! 怪我が無くて良かったねぇ、知己もナイスだぁ!」

 

根岸「ありがとう琴音、唐輝君も博師君も思う存分戦って良いよ! 私達がついてるから」

 

 

これらの組み手は練習とはいえ、数をこなせば僅かにも失敗が出てくる。

 

慣れた強者なら安心出来るが、唐輝と博師が組み手をするのは初めてだった。

 

どうやら2人を見守る者がいて正解だったらしい、

練習とはいえ知己の魔法が無ければ怪我をしていただろう。

 

 

 

 

前衛も後衛も共に協力し、そんな感じで魔法使い一同はそれぞれ魔法の練習を進めた。

 

耳を澄ませば車を走る音が遠くで聞こえる、舞の走行復習も順調に進んでいるようだ。

 

海里が全体の管理、直希は蹴太に教えてもらいながら飛び交う様々な魔法を見ている。

 

直希はたまに自分に必殺魔法が無い事を密かに嘆いたが、

魔法使いが魔法を使いこなす様を見れば感動でそれも忘れた。

 

練習を風景を眺める中、ふと様子がおかしな魔法使いを彼は見つけた。

 

いや、魔法侍……と呼ぶのが正解だろう。

 

直希が気になって念話で声をかければ、その侍は人を探していると言った。

 

 

白橋((組み手をしてる最中に突然いなくなったって?))

 

火本((そなんだよ、戦っちょったらいっの()めかいねごっなっちょったんだ))

 

清水((……方言が強くて何を言ってるかさっぱりだぞ、よく言ってる事が分かるな直希))

 

白橋((ヒトの言葉はたくさん練習したからね! 関西弁とか、博多弁とか、広島弁とか))

 

火本((そや日本語ちゅうより、方言(ぢご)のよな気がするけど……気にしたら負けか))

 

 

徳穂が言うに、彼は相方である魔法少年と先程まで組み手を行っていたらしい。

 

時には刀と苦無で刃を交え、茶色と黒茶の魔力がぶつかり火花を散らした。

 

その中で、視覚に頼らない気配による剣術を徳穂は手伝ってもらっていたが……

 

攻撃の機会を伺っていたはずの相方の気配が突然、徳穂の場を急に離れてしまったらしい。

 

何も言わずにその場を離れた相方、何事かと行方を探して今に至るのだとか。

 

 

清水((火本の相方と言うと、古城忠義の事か? お前に相対して、魔法忍者を名乗っていたな))

 

火本((忍者の魔法少年姿でも木の色に近けから、見つけづらくて困っている……念話をしても返事(へし)(もど)()ん))

 

中野((それなら、僕らを中心にみんなで手分けして捜索!

この場にはかなりの人数がいるから、山一つ位は捜索))

 

車道((あぁ〜〜、確か名前は蹴太だっけか? 悪いが、その必要は無いのぜ))

 

中野((出来る……え?))

 

 

意気込む蹴太に割り込む様に聞こえて来た念話、それは山中で走行練習をしている舞からだった。

 

 

車道((忍者姿の魔法少年と言ったのぜ? あぁ、うん……そいつなら))

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

車道((さっき走ってる最中、いきなりあたしと利奈が乗る車の荷台に飛び乗って来たのぜ))

 

中野((……え? とっ、飛び乗ったああぁぁ!?))

 

古城((吹き抜ける風が最高でござるよ! 山道に揺れてジェットコースター気分でござる!))

 

車道((だからってルーフ(車の屋根)の上で直立しないで欲しいのぜ!? 危ないったらありゃしないのぜ!))

 

清水((……おおぅ、とにかくその魔法忍者を探す手間が省けたのは分かった))

 

古城((ごめん徳穂! 急ぎの用事が出来たでござる、残りは徳穂だけで練習してくれでござるよ!))

 

火本((急な用事(ゆし)が出来たのか……そいなあ仕方ない、気をつけっ()たっくっんだよ!))

 

 

一通りの念話が終わると、舞は運転を続けながら呆れた様なため息をついた。

 

 

車道「ったく、どうしてもそこから降りるつもりは無いのぜ? 怪しい忍者」

 

古城「飽きたら降りるでござる! しばらくは山の風景を楽しむでござるよ!」

 

車道「あぁもう、転がり落ちて怪我をしても自己責任なのぜ」

 

上田「あはは……それでハチべぇ、魔女の存在が見つかったって本当なの?」

 

ハチべぇ「ここからそれなりの距離はあるけどね、誰かが孵化したのは間違いないよ」

 

 

ここに至った要因は舞の走行練習中の出来事だ、

利奈と共にいたハチべぇが突然魔女の存在に感づいた。

 

それをハチべぇは利奈に告げたのだ、魔力の規模からそれが雑魚級であるとも判断する。

 

孵化した魔女の周囲で、感知した魔法使いはたった1人だけ……

 

そこで、利奈は舞にお願いし急いで現場に向かってもらっているのだ。

 

雑魚級なら少人数でも何とかなる、練習の邪魔をしたら悪いだろうという利奈の基づいて。

 

 

ハチべぇ「魔女と1人きりの魔法使いの距離が縮まり始めたよ、

どうやらどちらかかが互いの存在に気がついたようだね」

 

上田「ハチべぇそれ本当!? 舞さん!」

 

車道「分かってるのぜ! ちんたら走ってたら間に合わないのぜ、しっかり捕まってるのぜ!」

 

 

舞の行動はとにかく早かった、素早くギアを切り替えたかと思えば急に曲がり道を変える。

 

 

古城「え、ちょ!? そっちは思いっきり森の中でござるよ!? ひいいぃぃ!?」

 

 

迫り来る大枝や木の葉の束、忠義はそれを避けようとして車の荷台に落ちてしまう。

 

ところが、鉄の板は痛いはずなのに受けた感触はそこまで固くはなかった。

 

代わりに振り向けば、誰もいなかった筈の荷台には4人の魔法使いがいた。

 

 

山巻「痛た……わぁ!? ごっ、ごめんなさい! 気が逸れたから僕の魔法が!」

 

津々村「いやアンタ、慌てなさんな……不意打ちで強い衝撃が来たら自分でも途切れる」

 

古城「ええっと? つまり、拙者と同じ様にこの車に?」

 

御手洗「見た感じ只事じゃなかったからねぇ、唐輝君の力を借りて乗っちゃったのぉ」

 

根岸「何がともあれ……勝手に乗り込んじゃってごめんなさい、私たちも力になりたいです」

 

 

その光景はバックミラー越しに舞にも見えていた、利奈が見るその表情は苦笑い。

 

 

車道「気が付かない内に随分にぎやかになったものなのぜ……

軽トラじゃ座席が少なくてキツい、ちょっと魔法を使うのぜ!」

 

上田「魔法? でも、今は走ってる最中……」

 

車道「なぁに、ちょいとばかし変形するだけなのぜ」

 

 

舞は利奈を見ているニヤリと笑ってみせると、利き手に魔力を込めてクラクションを鳴らした!

 

 

車道「ライドオン! ライト・モードワゴン!」

 

 

魔法発動と同時に、舞は上手いこと運転して車体を跳ねさせ一瞬宙に浮かせる。

 

その隙に車体全体が眩しい鈍色の輝きを放ち、膨れ上がるようにして変形!

 

地面に着地する頃には、軽トラだった車体はワゴン車へと早変わりしていた。

 

 

車道「さっきとは別の車体になったのぜ、みんなシートベルトを締め直すのぜ!」

 

上田「りょーかい!」

 

古城「何で拙者だけ後ろの荷物入れる所でござるか!?

まぁ、ここに乗るのも新鮮で楽しくはあるでござるが」

 

車道「楽しいのぜ!? そこに行ったのは偶然、直す暇は無いし我慢してくれなのぜ」

 

ハチべぇ「魔法使いにおける男女のコンビが2組、4人も無断乗車していたようだね」

 

上田「えっと……仲間が多いに越したことは無いと思うし、良いんじゃないかなハチべぇ」

 

 

無感情に辛辣なハチべぇを利奈が苦笑いで止める傍、

頑丈さを増した舞の車は更に険しい道へと突き進む。

 

やがて車体は森を抜けた、裏道を多用しながら舞はハチべぇの案内に沿って走る。

 

若干スピードが出てしまっているが、それによって人を引くなんてことは彼女には絶対無い。

 

 

ハチべぇ「次は北西の邦楽に向かって車を走らせればいいよ」

 

車道「はぁ? そっちの道を進んじまったら路地裏を抜けちまうのぜ」

 

ハチべぇ「身も蓋もないね、何故急がなきゃいけない状況で一般人の目を気にするんだい?」

 

御手洗「えっとねぇ……私の魔法で車全体を包んでおくよぅ!

これで一般人のみんなから見えなくなるからぁ、思いっきり走ってねぇ」

 

車道「おぉ! 恩に着るのぜ、これで最短の距離で進めるのぜ!」

 

 

車体を包む魔力の泡を確認したのなら、躊躇なく進路は山の外に向いた。

 

コンクリートで塗装された道路、一般の車が何台もまばらに走行している。

 

その間を潜って猛スピードで舞の車は進んだが、それに気がついた一般人は1人もいない。

 

 

高速のドライブをして5分程立った頃、舞の目に1人の少女が目に入った。

 

そこはとある路地裏の一角、明らかに不安そうな表情をしている。

 

どうやら、ハチべぇが遠くから感知した『1人きりの魔法使い』が彼女らしい。

 

 

上田「あの人……浜鳴さん?」

 

車道「あれが例の魔法少女か、とにかくサッと乗せてくぜ!」

 

上田「え? サッて、ちょっと!?」

 

 

舞は驚いた事に運転席から離れ、後部座席に乗っていた琴音を跨いでスライドドアを開いた!

 

不思議な事にそれによって車の運転が途切れる事はなかったが、

それでも周りから見れば気持ち的に危なっかしいのに変わらない。

 

まぁ、魔法使いならその不思議な事の原理は魔法。

 

 

車道「よっす! いきなりだが失礼するのぜ!!」

 

「……え、ひゃああぁぁ!?」

 

車道「事情は大体知ってるのぜ、悪く思わないでくれなのぜ!」

 

 

『1人きりの魔法使い』が叫び声をあげるのも無理はない、

急に腕を掴まれ走る車の中に引き込まれたのだから。

 

2人共車の中に入り切ったのなら、空いていた扉は勝手に閉まり舞は運転席に戻った。

 

なんと豪快な行動な事か……新たに乗り込んだ魔法使い含め、一同は驚きを隠せない。

 

まぁ舞ならそんな行動もとるだろう、《男勝り》な彼女は行動も豪快だ。

 

後ろ座席を見れば新たな乗客が琴音と知己の間に収まっている、

バックミラー越しに舞が『1人きりの魔法使い』に話しかけた。

 

 

車道「へぇ? あたしと同じクラスのギャルだったのぜ」

 

浜鳴「拉致なう!? ちょ、あたし急いでるんだけど!?」

 

ハチべぇ「安心するといいよ最上、少なくとも利奈と舞は君の状況を理解している」

 

古城「……拙者は?」

 

車道「気がついてたのはやっぱり魔法使いの方だったのぜ!

というか、逆だったらそれはそれでやばかったのぜ……先を急ぐのぜ!」

 

ハチべぇ「最上の探していた魔女が移動を始めたようだね、結界と共に僕らから離れている」

 

車道「逃げてるってことなのぜ? そうはさせないのぜ、ここまで来たらもう引き下がらないのぜ!」

 

山巻「えっ、えぇ!? まだあの危なっかしい運転をするの!?」

 

津々村「……空手家のアンタ、ここは諦めて慣れるしかない」

 

 

既に唐輝は怯え博師は車酔いを起こしかけているが、速さを緩める余裕はない。

 

ハチべぇの案内に従い、猛スピードの車に乗って町の中を走り抜けていく一行。

 

やがて舞が何かを見つけてニヤける頃、利奈は窓の外で高速で逃げる輝く紋章を目にした。

 

 

浜鳴「発見な……うぅ」

 

上田「あれが魔女の紋章……って、浜鳴さん大丈夫? 顔色が悪いけど」

 

車道「壁伝いに移動してるみたいなのぜ、これは都合が良いのぜ!

みんなどこでもいいからしっかり捕まってるのぜ、突っ込むのぜ!!」

 

 

抵抗とばかりに建物の壁を這いずり廻り逃げる魔女の紋章、

普通に走ってるだけじゃ絶対に追いつけないだろう。

 

それを見る最上の顔色は何故か青い、逃げる魔女は彼女と親しい関係なんだろうか?

 

全員が支えを得たのを確認したのなら、タイミングを見計らって車道は紋章に突っ込んだ!

 

 

紋章の先に広がるのは魔女の結界、先にあったのは統一された極彩色の迷宮。

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

粘液質の壁でヒトの基本的な顔のパーツは蠢き、床は規則性を持って変わりギラギラと輝いた。

 

後ろを見れば、入って来た筈の入口は無くなり分かれ道……この場が迷路だとはすぐ理解出来た。

 

一見今回の魔女が単純だと思うだろう、()()()()()()()()()()()()()までは。

 

 

古城「……ちょ、え? ええええぇぇぇぇ!!?」

 

上田「いきなり!? まっ、前置きも無しに……」

 

車道「ちょっと、すごい速さで逃げてくのぜ!? 全力疾走て追いかけるのぜ!」

 

 

結界に侵入して早々の魔女の登場……それがこの魔女の性質の一部だとして、

本来魔女に従える為にいる筈の使い魔はどこに行ってしまったのだろうか?

 

 

サンドブラストの加工がされた瓶の身体、中身は赤黒い液体で満たされドロドロと揺らめく。

 

高価そうな子供用のワンピースがその中で浮かんでいる、不思議と沈むことはない。

 

下半身はまるで逆さ向きのハンガー、足はマニキュアに使われる筆先1本。

 

湧き出す色の付いた液は滴らない、恐らくそれはマニキュアの液だろう。

 

瓶の蓋から生える2本の腕、その筋肉は人間の物とはとても言えない。

 

腕の先はさらに4つに割れ、カプセル剤のような関節から伸びる触手が(うごめ)いた。

 

例えるなら、この魔女は薬瓶にカビが生えたような気味の悪い不気味さがある。

 

白目が肌色で黒目がマニキュアを塗ったような濁色……そんな汚い瞳で、

魔女は舞たちが乗る車を見るなり奇声をあげて結界の奥へ逃げてしまった。

 

大勢が相手では流石に都合が悪い、ならばこの場から逃げてしまおう……()()()()()()()まで。

 

 

逃避の魔女、性質は傲慢。

 

【挿絵表示】

 

 

 

車道「割と複雑な迷路になっているのぜ、カーナビ着けといて良かったのぜ……」

 

ハチべぇ「今まで進んだ経路が記録される機能のだね、

この結界は小規模の迷路で構築されているようだよ」

 

山巻「わあぁ!? ちょ、ちょっと! どっ、どんどん魔女との距離が離れてくよ!?」

 

御手洗「自分の結界だからぁ、迷路の構造を完全に把握してるってことかなぁ?」

 

ハチべぇ「琴音が言う事の可能性はかなり高いと思うよ、

でなければあの魔女はあそこまで早く行動出来ない」

 

津々村「だとしたら自分らはマズい状況、アイツに追いつくのにやたら時間がかかる」

 

根岸「無駄に魔力を消費しちゃうって事かな……うぅ、何とかならないのかな」

 

 

悩んでいる間にも魔女との距離はどんどん離れていく、

対策が生まれたのは咄嗟の思いつきによるものだった。

 

 

古城「……あ、そうでごさる! 迷路なら構造を上手いこと利用して、

何処かの道で魔女を挟み撃ちにしてやるでござるよ!」

 

 

思い立ったら吉日とばかりに、忠義は荷台の後ろで何やら道具を取り出し準備を始めた。

 

 

山巻「はっ……挟み撃ち、だって?」

 

古城「そうでごさるよ! なんかほら、ゲームとかでそういうのあるでごさろう!」

 

津々村「悪くない手だとは思うが、車は2台もないぞ? アンタに考えはあるのか?」

 

古城「二手に分かれて追い詰めるでござる、問題は迷路の把握でござるが……」

 

上田「追い詰めるだけで良いなら、私にも考えがあるよ!」

 

 

利奈の言う考えは、忠義の提案をベースに問題点をカバーした作戦だった。

 

口頭で作戦を伝えながら利奈も作戦を行う為の魔法を使う、やっているのは道具の作成だ。

 

その内容を聞いて一同は納得をする、魔女を完全に見失う前に行動を起こさなきゃいけない。

 

 

即興にしては上出来だ、成功しなければ意味が無いが。

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

飛び去る度に自らを追いかける者たちは遠ざかる、魔女は迷宮を疾走していた。

 

1人だけなら相手をする、迫り来る都合の悪さから彼女は逃げ惑っていた。

 

それは彼女自身の本質でもあった、その自分勝手さが親の教育によって

生まれ出た副産物だとは本人は気がつくことは恐らく無い。

 

孵化してからも、使い魔を建築材にしてまで都合の良い世界を創るという身勝手さを醸し出していた。

 

まぁ……そこにあるのは満足感などではなく、常に何かに怯える恐怖しかなかったが。

 

 

 

 

さぁ、次の曲がり角で完全に撒ける! そう、魔女が確信をした時だった。

 

 

 

 

走る車の屋根が不意に開く、そこから4人の魔法使いが飛び出した!

 

 

 

 

魔女は車を撒くことには成功したが、新たな追っ手が来るとは思いもしなかったらしい。

 

そこには棍の箒に乗る赤き奇術師、ムササビの如く風呂敷を広げ飛ぶ忍者、

ランスに跨る魔法少年と寄り添う魔法少女……4人の魔法使いが魔女を追尾している。

 

知り尽くした迷路を右往左往して惑わしにかかるが、素早い彼女らはらなかなか撒けない。

 

それも一心不乱にだ、迷路の構造を覚えることも()()()()()しないとこの速さは出ない。

 

そんな把握もしない状態で、魔女を追いかけてしまって大丈夫なのだろうか?

 

何か考えがあるのだろう、魔法使い達は遠距離での攻撃を一斉に魔女に仕掛けた!

 

 

上田「スフェール・ノンブルー!」

 

古城「忍法『明るき晴天の手裏剣』!」

 

津々村「ランセサイザ・ダイナマイター!」

 

 

手のひら大で太陽型の手裏剣を右に避ければ、赤い魔力の球が魔女に迫る。

それを左にかわせば、勿忘草色のランスが瓶の身体を掠め大きな傷を付けた。

 

魔女は奇声をあげながら逃げ惑う、そんな彼女もただやられているだけでは済まない。

 

8つの触手が先の口を開け鋭い牙を見せてれば、マニキュアの液を球にして吐き出し飛ばした!

 

 

根岸「クロウステト・レオメッガ!」

 

 

魔女の攻撃は強い毒性を持ち明らかに危険だったが、

空中に出現する小さなタンスによってその弾道は阻まれた。

 

 

古城((ぐぬぬ……やはり、追いかけてるだけでは収拾がつかないでござるな))

 

津々村「ダメージは一応入ってる、事実魔女の身体に削ったような傷が多数見える」

 

ハチべぇ「どうやら移動によって急所を避けているようだね、

このままだと討伐までにかなりの時間がかかってしまうよ」

 

根岸「防御はまだまだいけるよ! 攻撃は単調だし、動きは簡単に読めちゃう」

 

津々村「なるべく激しい移動がないようにしてるけど、何かあったらすぐ言ってよ知己」

 

古城((しっかし、本当に任せっきりで大丈夫でござるか?

文字通り道は全く覚えてござらぬし、下手をしたら共倒れでござる))

 

上田「舞さんたちなら大丈夫だよ! それに、あの人だけって訳じゃない」

 

 

忠義はムササビのように飛んでいる影響か、口から苦無を飛ばしている。

念話で話すその表情からは若干の不安が見えた、作戦に不満があるのだろう。

 

それでも行った以上はもう後戻り出来ない、やるべきは現状維持だ。

 

次は分かれ道の無い直角の曲がり角だ、魔女は一切迷う事なく曲がり角を曲がった。

 

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()のだ、思わぬ形で魔女は追い詰められてしまった。

 

 

 

 

曲がり角を曲がった瞬間、運送に使われるような巨大なトラックが道を塞いでいる。

 

魔女は物の見事に激突を許し、その瓶の身体に小さなヒビを入れてしまう。

 

となれば逃げ道は来た道を戻る事だ、魔女が後ろを向いた……その時だった。

 

 

根岸「メビリ・ムナガチースリンヌイ!!」

 

 

振り向く僅かな隙をついて、知己は貯めた魔力で必殺魔法を放った!

 

放たれた桜色の魔力が高く上空に飛んだかと思うと、

利奈たちの背後に大量の家具が雨のように降り注いだ!

 

出来上がったのは桜色の家具の山だ、これでは簡単に通れそうにもない。

 

何故なら魔女は、浮いて移動は出来るが空を飛ぶことは難しい様子。

 

逃避できない絶望と哀愁に、魔女はガラスを引っ掻いた様な甲高い奇声をあげて怒った。

 

 

挟み撃ちにするには場所の把握役が2つ必要だなんて、誰が決めたのだろうか?

 

 

()()()()()()()()()()、もう片方はただ追いかけていれば大丈夫だ。

 

 

追い詰めれるよう工夫するのが、場所の把握役なのだから。

 

 

車道「よっしゃあ! やたらすばしっこいから、回り込むのに苦労したのぜ」

 

山巻「ぁあ、うぅ……着い、た? 車酔いで、気持ち悪い……」

 

御手洗「唐輝君フラフラだねぇ、車酔いは私が治してあげるよぅ」

 

車道「悪いけど戦闘の方は頼んだのぜ! 生憎、私の武器は今はまだこの車しかないのぜ」

 

浜鳴「な、うぅ……ホントに、この魔女と戦うしかないのね」

 

 

何やら最上はこの魔女と戦うに当たって迷いがあるようだが、その原因は分からない。

 

だが迷いがあるのは最上だけだ、一同が止まる理由にはならない。

 

怒り狂い襲いかかってくる魔女、皆と共に利奈も武器である棍を構え迎え撃った!

 

 

上田「ボス、ステージ!!」

 

 

それは利奈にとって定番の掛け声だ、この時は一同の出撃の合図にもなった。

 

 

襲い来る魔女の二つの腕と八つの指、その口からはリボンやナイフの刃が唾液と共に出て来た。

 

そのリボンは最上がよく知る物だ、蘇芳色のリボンは体液に濡れているが捕獲には向いている。

 

魔女の手法はリボンで捕獲した者を、ナイフの刃で斬り刻むといった所だろう。

 

直接ナイフの刃で斬りつける事も出来る、喰らった傷は痛々しいことになりそうだ。

 

そんな被害を受ける訳にはいかない! いつも以上に前衛は気を引き締めた、それは利奈も同じ。

 

 

上田「アンヴォカシオン!」

 

古城「ウヒョー! リュミエールのエースの本気でござる、初めて見るでござるよ!」

 

山巻「……っ、こんな時にノッてる場合か!? 今は目の前の相手に集中しろ!」

 

 

初手はすっかり酔いが覚め人が変わった唐輝だ、拳で魔女が仕向けた刃を受け流す。

 

絡まろうとするリボンをパイプ椅子で弾く知己の傍ら、

琴音は魔法の泡を生み出し魔女にぶつけて弱体の効力を与えた。

 

最上は自らが持つ唯一の補助魔法を前衛3人にかけた、それは回避率を上げるという内容だ。

 

バレエを踊る事によって全体にかかる魔法、時折更新しないと途切れてしまうタイプ。

 

彼女ら後衛の補助を受け、残る前衛4人はそれぞれの武器で魔女に挑んだ!

 

 

魔女はリボンやナイフの刃による攻撃はもちろん、

筆の足を使って色濃いマニキュアを床に塗って来る。

 

床に塗られたマニキュアは滑って転ぶことを狙っての策だろうか?

 

まぁ、この4人には雑魚級魔女による姑息な手は通用しそうにもないが。

 

 

上田「瓶は厚いガラス、ハンガーは細長い鉄……うぅ、固い物質ばっかりだ」

 

津々村「アンタは融通が効くからまだ良い、自分は突くことしか出来ないから絶望的」

 

ハチべぇ「どうやらこの魔女は防御面に魔力を費やしているようだね、

筆による床塗りの雑さ等の攻撃面の弱さはそれが原因と言えるだろう」

 

山巻「あのガラス瓶にヒビでも入れたいが、あんなに動いてちゃ力が入らんな……」

 

古城「それなら拙者に任せるでござる! あのすばしっこいのを大人しくさせるでござるよ!」

 

 

様子を見ようと前衛が一旦一歩下がる中、最も早く飛び出したのは忠義だった。

 

魔女の前に出て両方の忍者小手に黒茶色の魔力を込める、

一定の魔力が溜まったならそれを複数の球体に固めた。

 

一見なんの変哲も無い磨かれた泥団子のような球体、忠義はそれを魔女に向かって投げつけた!

 

 

古城「忍法『暗き曇天の煙幕』! いっけぇ魔女の目を晦ますでござるうぅ!!」

 

 

忠義がほぼ《ノリノリ》で叫んだ通り、彼が投げた球体の正体は煙幕だった。

 

魔女の前で外殻が弾けたかと思うと、まるで積乱雲のような煙が魔女を大幅に覆い尽くした!

 

防御をしようと魔女は腕を自分の前で交差させたが、逆に触手にある口か大量の煙を吸ってしまう。

 

吸ったのとほぼ同時に、魔女の瓶の体内ある赤黒い液体が激しく泡立った。

 

赤が少なくなり液体は黒に近づく……その色の変化と比例し、魔女はだんだんと大人しくなる。

 

 

古城「やったでござる! 目眩しの高価でかなり動きが鈍ったでござるよ!」

 

車道((でもまだ動いてるのぜ、急に視界が塞がれたせいか混乱してるのぜ……大丈夫か?))

 

山巻「充分だ、これだけ鈍れば無駄な魔力を割かなくて済む」

 

 

魔女が混乱し激しく動く中で、次に行動に出たのは唐輝だった、茶の帯を腰に縛り呪文を唱える。

 

 

山巻「熊の如く! 岩をも砕く豪腕をこの身に!」

 

 

魔法を使い帯に鉄色の魔力が帯びたかと思うと、唐輝は魔女との距離を一気に詰める。

 

厚い家具の防御も受け、唐輝は攻撃に集中することが出来た。

 

拳を強く握り締めて思いっきり振りかぶり、その拳を魔女の身体に叩き込んだ!

 

瓶の身体に大きなヒビが入るとと共に、魔女はリボンを引っ張り張ったような断末魔をあげた。

 

ヒビから液が漏れ出ることはない、相当厚いガラスなのだろう。

 

 

山巻「ぐっ……普通殴っただけじゃ、決定打にはならないか」

 

ハチべぇ「ダメージそのものは入ってるようだね、言うならあともう1歩だよ」

 

山巻「分かってる! 後は頼んだぞ、トドメを刺してくれ!」

 

 

唐輝は利奈と博師の方を見てその言葉を発していた、利奈は若干戸惑っている様にもみえる。

 

 

上田「ちょっとトドメを刺すにはヒビが足りないけど……うん、魔力を多めに使って強引に」

 

津々村「アンタ待て、その必要はない」

 

上田「え? だって、普通にやっても……」

 

津々村「いいから、普通にやってくれ! 自分に策がある、()()()()()()()()()()()()()()だ」

 

上田「……作戦があるんだね? りょーかい、ならいつも通りに行くよ!」

 

 

そう言った利奈は両手の棍を1つまとめ赤色の魔力を多めに込める、それは過度な量ではない。

 

一方博師は持っていたランスの先端にある円錐に手をかけると、

その先端を捻る……どうやらダイヤルになっているらしい。

 

一定量まで巻き上げると、ランスの全体に勿忘草色の魔力が溜まり出し煌々と輝いてみせた。

 

 

さて、双方早々と準備を終え魔女を倒すための最後の行動に出る。

 

利奈は魔女の目の前まで走り込んだ、妨害とばかりに触手の攻撃が襲うが弾かれる。

 

ベルトがリボンを弾いたのだ、その防御率は魔女の攻撃を熟知してなければ達成できない高さ。

 

走りながら回避して進み、ついに利奈は魔女の目の前まで来た!

 

遠い上に中液が濃く分からなかったが、瓶の中のワンピースは安物の品だった。

 

ポリエステルが混じった材質……何を指し示すのか分からないそれは、ヒトの様に動いている。

 

これが魔女の本体だろう、厚いガラスの中に彼女はしまわれていたのだ。

 

 

そんな身体ももうじき終わる……放つ、利奈の必殺魔法。 赤色の刃からなる魔力の大剣!

 

 

上田「ソリテール・フォール!!」

 

 

利奈が大剣を創り出して構え、真後ろに差し掛かったその時、

魔女の身体に博師の武器の一部である円錐の物体が突き刺さった。

 

薄い氷を踏み抜いたような音がすると、ヒビら勿忘草色の光を一瞬放った。

 

次の瞬間……ヒビが少し改善されていたのだ、行われたのは()()()()()という奇行。

 

 

車道((ちょ、オイオイオイ!? 何やっちゃってくれてるのぜ!?))

 

ハチべぇ((そういえば舞は彼の必殺魔法を見たことが無かったね、見ていれば分かるよ))

 

車道((見ていれば分かる、って……大丈夫なのぜ?))

 

 

不安になる余裕があるのは車体に潜む舞くらいだ、利奈自身は不安なんてありゃしない。

 

何故か? 利奈は博師の()()()()()()()()を知っていたからだ、それはつい先日の話。

 

それはともかく、一切の迷いなく利奈はその大剣を横に振りかぶった!

 

魔女の身体は最初に比べてヒビが減っていたが、その脆さは増してまるで飴細工のよう。

 

それが博師の魔法の効果だ、彼はデメリットを上手いこと活かし活用したらしい。

 

 

ガラスの破片と共に血飛沫の如く中の赤黒い液体が飛び散り、

その液に浸っていた安物のワンピースが吹き飛んだ。

 

何処から聞こえるのかハッキリしない断末魔が辺りに響く、その声はとても痛々しい。

 

投げ出されたワンピースは繊維状に解れて糸となり、黒い魔力となって激しく蒸発しだした。

 

 

どうやら無事魔女トドメを刺すことが出来たらしい、となればやるべき事は……

 

 

古城「逃げるでござるううぅぅ!!」

 

山巻「ちょ、オイ!? なんだあいつ、逃げるのはっや!?」

 

車道「とにかく早く逃げられない奴は乗るのぜ! しばらくひとっ走りしてやるのぜ!」

 

上田「ゆっくり話してる暇は無さそうだね、浜鳴さんも行こう!」

 

浜鳴「……え? あぁ、うん……逃避なう!」

 

 

最上は黒い魔力に還元されて崩れて行く魔女が気になるらしいが、利奈に手を引かれ走り出す。

 

一方の利奈も唐輝と後衛にいた琴音と合流し、急いでワゴン車に戻った舞の車に乗り込んだ。

 

利奈自身飛行魔法は使えるが、飛べない魔法使い達を案じてわざわざ陸路を選んだらしい。

 

 

車道「しっかり掴まってるのぜ、激しい運転にはなるけど我慢するのぜ!」

 

 

窓の外を覗くと、上空にムササビの様に飛ぶ忠義と知己を乗せランスで飛ぶ博師がいる。

 

舞が車を発進するのと空飛ぶ魔法使いたちが出発するのは、ほぼ同時のタイミングだった。

 

魔法使いが逃げてる間も魔女は滅びて行く、マニキュアの液も固まりボロボロと崩れ落ちた。

 

 

そして、全てが1点に飲み込まれる。

 

崩れ切ってとなって形状を失った残骸と化した魔女も、迷宮を構築していた粘液質の壁も、

床に塗られたマニキュアも剥がれ全て吸い込み、結界ごとその結界にあるもの全て飲み込まれる……。

 

あとに残ったのは全体の4分の3に穢れが溜まったソウルジェムと、

リボンやフラフープといった新体操がモチーフのグリーフシード。

 

 

魔法少女は……逃避の魔女を救った。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

魔法使いたちが戦っている間も結界は移動していたらしく、

結界から脱してみればそこには広々とした駐車場が広がっていた。

 

どうやらデパート・エタンの地下駐車場に出てしまったらしく、

一同は慌てて変身を解除して人気の少ない物陰に移動した。

 

ソウルジェムとグリーフシードを持って来たのは最上だ、大切そうに持っている。

 

 

上田「全員揃ってるね? みんなソウルジェムを見せて、魔法使ったし浄化しなくちゃ」

 

車道「懐かしい場所なのぜ……前来た時は車椅子だったのぜ、よくここまで回復したもんだぜ」

 

ハチべぇ「今回は役割分担がしっかりしてて人数も多い、

戦闘による魔力の消費量は少量で抑えられたと僕は思うよ」

 

 

ハチべぇの言う通り、必殺魔法による魔力消費は多少多かったものの浄化量は少なくて済んだ。

 

ついでとばかりに孵化寸前のグリーフシードの整理もする、

今日だけでハチべぇはいくつグリーフシードを背中で飲み込んだことやら。

 

順調に浄化を進め終える頃、ふと博師はとある重大な事に気がついた。

 

 

津々村「……ん? そういやアンタ、抜け殻は何処にあるんだ?」

 

浜鳴「抜け殻? ……ぁ、ああああぁぁぁぁ!!」

 

山巻「そういえば、ここって()()()()()()()()()()()()()だ!

どどどどうしよう!? 抜け殻がどうなってるのかわっ分からないよ!」

 

車道「落ち着くのぜ! まだカーナビの記録が残っている、そこからさっきの場所を調べるのぜ」

 

浜鳴「うぅ、不覚なう……早く抜け殻を探さないと」

 

 

「その必要は無い、慌てるな最上」

 

 

浜鳴「……え?」

 

 

声がしたのは舞の車の裏からだった、裏から抜け殻を背負った数夜が出てくる。

 

 

山巻「ひっ……ひええぇぇ!!?」

 

前坂「そんなビビること無いだろ、せっかくお前らが無くした者を持って来たってのによ」

 

御手洗「じゃあぁ、その子ってぇ……」

 

前坂「さっきお前らが倒した魔女の抜け殻だ、早くこいつのソウルジェムを戻してもらおうか」

 

浜鳴「理解なうリーダー、再生なう!」

 

 

最上は指示に従い、背負われた抜け殻の手に持っていた浄化済みのソウルジェムを当てがった。

 

すると、か細いソウルジェムの輝きと共に背負われた少女の意識を呼び起こしてくれる。

 

数夜はその様子を確認すると、最上から蘇芳色のソウルジェムを受け取る。

 

 

木之実「ぅぅ……リー、ダー?」

 

前坂「また孵化をしたようだな美羽、俺の為だからと無茶をし過ぎだ」

 

木之実「でもリーダー、私はリーダーの為なら」

 

前坂「()()()()()()()()()()()()()

 

木之実「……え?」

 

前坂「もうお前を追ってまで批判する奴なんかいねぇぞ、絶望に溺れ幻を見てるだけだ。

身を滅ぼしてまで俺に尽くすな、たまには逆に俺に頼ってみせろ。

お前ら自身分かってるだろ? もう、そんな依存する必要は無いってよ」

 

木之実「……っ!!」

 

 

彼女に何があったかは知らないが、どうやら数夜の言葉に安心感を抱いたようだ。

 

美羽が流す涙で数夜の背中が濡れる、いつもは厳しい数夜だが今は黙っていた。

 

精神が疲れ果てていたのだろう、少なからず今の美羽は僅かでも希望を感じていた。

 

 

そんな時だった……綿菓子の様な煙状で濁色の魔力が、美羽の片目から激しく噴出したのは。

 

 

上田「『濁色の魔力噴出』……!」

 

古城「のわあぁ!? ちょ、それ大丈夫でござるか!?」

 

前坂「こんなんでも痛覚は無いらしいからな、今はほっとけ」

 

根岸「ちょっと待ってよ! どう見ても只事じゃないじゃない!」

 

前坂「 ほ っ と け と言った、見れば分かるだろ? 今はこいつに構うな」

 

 

未だ美羽の目から濁色の魔力は噴出し続けているが、

数夜は美羽を背中に背負ったままその場を後にした。

 

 

津々村「アンタ、何処に行こうってんだ?」

 

前坂「元は俺のチームのメンバーだからな、後処理は俺の方で行わせてもらう」

 

車道「なんかさっきからみんな静かだけど……お前ら一体、何者なのぜ?」

 

前坂「それは俺の口から話すことじゃない、情報は充分出回っているからな。

行くぞ最上、そのグリーフシードは連中にくれてやれ」

 

浜鳴「……へっ? 置いてけぼりなう!? 待ってよリーダー!」

 

 

美羽を背負って立ち去る数夜、そんな数夜を最上は追いかけて行ってしまう。

後には、いくらか使用された逃避のグリーフシードと妙な静けさだけが残った。

 

 

車道「……とっ、とにかく! 厄介な相手だったけど、けど無事魔女を討伐出来て良かったのぜ」

 

ハチべぇ「消費魔力も少量で抑えることが出来たようだね、

 

古城「よくよく考えれば飛び出して来ちゃったでござる、

今までの事を徳穂や海里に念話で連絡を入れとくでござるよ!」

 

御手洗「そういえばぁ、グリーフシードはどうしようかなぁ……

そうだぁ! 私は博師君と知己ちゃんにあげれば良いと思うよぅ!」

 

津々村「自分らが? 知己はしっかり防御出来てたが、自分は全然だったんだけど」

 

山巻「そうじゃない、と思う……どちらにしろ、僕らはしばらくお休みするから……もらってよ」

 

根岸「ありがとう2人とも! グリーフシードって今じゃ貴重なのに、すごくありがたいよ」

 

 

しばらく唐輝と琴音のコンビが休むのも要素にはあったが、

夕方共に魔法の練習に励み絆を深めたのも大きいだろう。

 

今回の戦闘や逃避のグリーフシードの事もあり、

コンビ同士の友好度は確実に上がったと言えるだろう。

 

ふと博師がチョーカーの首元から時計を見れば、時刻はすっかり夜になっていた。

 

 

津々村「もうこんな時間か、ここから外に出出たら辺りはすっかり真っ暗かな」

 

車道「真っ暗……!? 門限無しとはいえ病み上がりで夜遅くまでいるのは流石にマズいのぜ……

ちょっくら車でひとっ走りなのぜ! 中央地区の辺りで、誰か送って欲しい奴がいたらついでに送ってくのぜ」

 

上田「中央地区? それなら私の家が近いかな、お願いします舞さん」

 

 

こうして、今夜も魔法使いによる不思議で不気味な夜は解決という形で更けていくのだろう。

 

利奈の他にも、博師と知己のコンビが舞の世話になることになった。

 

何やら2人で話をしているようだが、助手席に座りぼんやりとしている利奈には聞こえない。

 

まもなく車は地下駐車場を抜けて外に出る、商業区域であるその場所は街明かりで溢れていた。

 

人の波も混じり、まるで目の前に天の川が流れているかのよう……

自ら帰路に着くまで、利奈は住み慣れた街の風景を眺めているだろう。

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

木之実「うぅ……リーダーも最上もごめん、私ってばまた孵化しちゃって」

 

浜鳴「もういいよ美羽、復活なう! また元に戻れたんだし、元気出さなきゃだよ!」

 

前坂「…………」

 

浜鳴「ほらリーダーも……リーダー? 考え込みなう、どうしたのリーダー?」

 

前坂「……どうやら、裏で何かが動いているのは間違いないだろうな」

 

木之実「裏って、何の事ですかリーダー?」

 

前坂「ちょっと考え事をしててな……今日、美羽の現象を見て確信した」

 

 

 

 

俺がかけた呪いに、()()()()()()()()()()()って事をな……!

 

 

 

 

………………………………

 

 

次回、

 

 

 

木之実「なっ、なんであんたが……私たち、あんたにどんな事をしてきたと思ってんのよ」

 

 

 

浜鳴「とにかく、協力してくれるって事だね!? 歓喜なう! ありがとぉーー!!」

 

 

 

和出「へっ、ほざけ! 否定しか出来ねぇ奴らの話なんざ聞くかよ!!」

 

 

 

白橋「うぅ……試したことないけど、今はこれしか方法が無い……!」

 

 

 

〜終……(40)逃げの依存と感じぬ希望〜

〜次……(41)罪による証明と白き救済〜

 

 

 

魔法使いは運命に沿う。

 




40話突破記念イラスト(*⁰▿⁰*)

【挿絵表示】



さて、久々の魔法使いvs魔女との戦闘はいかがだったでしょうか?

相変わらず魔法使いの数が多く纏めるのは大変でしたが、まぁ全員それなりに
それぞれの役割は果たしてくれたんじゃないかとは思っています、多分。

登場人物の数もかなり増えてきました、前章が終わったら
後章が始まる前にリストを挟むのもありかなとは考えています。

大体……そうだな、50話前後でうえマギの前章は終わるかなと予想していますね。

イラストの方も増やしていきたいですね、最近になってデジタルで描き始めたので。


雑談を若干挟みます、興味がない方は飛ばして下さい。
今回は『花見』についてにしましょうか、私は桜が好きなのでね。


……えぇ、ほぼ愚痴になりますが私は仕事の関係で行けませんでしたよ。

皆様はお花見行けましたか? 今年の桜も各地でキレイに咲いたんだとか。

今年は例年に比べ暑くなるのが早く、比較的開花も早かったですね。

風も強かったから散るのも早かったなぁ……尋常じゃなく春が短かった、わけがわからないよ。

今後も休みが潰れるなんて自体がありそう、現実ってなんと非情なんだ(白目

適度に休憩を取ったり隙間時間見つけたりして、今後は執筆を進めていきたいですね。

まぁ自分なりに気をつけますよ、病みすぎて優しさを捨てる事だけは絶対にしたくないので。


それでは皆様、また次回。 次回は利奈以外の目線からの場面もあります、お楽しみに。
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