魔法少女うえだ☆マギカ 希望を得る物語   作:ハピナ

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桜は散ってしまいましたが、執筆に対する集中力は散漫していませんとも!

どうも、1週間と1日ぶりのハピナですよ! いやはや、毎週休日という物は待ち遠しい。

41話となる今回は、前回の魔女討伐がオマケに付いた『魔法演習』より数日後の話になります。

どうやらまたしても一騒動起きてしまうようです、一体いつになったら平穏が訪れるのやら。

それではいつものように物語の幕をあげましょうか、今回は掃除の必要がなさそうです。



(41)罪による証明と白き正義

 

窓を眺めて外の景色を見ようとしても、結露に阻まれ結局見えず終い。

 

出席を取るに当たって先に名前を呼ばれた利奈、ちょっとした時間は若干暇だった。

 

出席簿を強めに閉じる音、その音にぼんやりとしていた利奈の意識は目覚めさせられた。

 

 

「今日も和出は休みか、誰が事情を知ってる奴はいるか?」

 

前坂「釛なら、体調不良で休んでいます」

 

「そうか……もう3日も休んでいるな、誰か和出について分かったら俺に教えてくれ! 以上だ」

 

 

学生による欠席、それには体調不良やサボりなどの様々な理由が伴ってくる。

 

出席数が減ってしまうのは将来に影響が出てしまうか、

義務教育の上ではその影響力というのはやや弱い。

 

それでも普段欠席をしないような生徒が、急に連続で欠席をし始めれば誰だって心配する。

 

 

花組ならば尚更だ、何故なら彼ら彼女らは魔法使いである。

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

篠田「それで利奈も含めて急にいなくなったんだ、みんな驚いてたよ」

 

上田「……ごめん、その時は急がなきゃいけない理由があったんだ」

 

清水「『1人きりの魔法使い』だろ? 利奈でもなきゃソロ狩は難しい、

利奈と舞が急いで向かったのは寧ろ正解だったと俺は思うぜ」

 

上田「そう? ありがとう海里」

 

白橋「利奈も大変だったもんね、話を聞く限りすっごい早い魔女だもん!」

 

ハチべぇ「先日の魔法演習は、それぞれが己の能力を向上させることが出来たっ言えるだろう」

 

中野「……それで、なんで今日はこんなに賑やかなのかな!?」

 

 

それはとある日の昼休みの時の事、朝の会は午前の授業と共にあっという間に終わった。

 

蹴太が皮肉混じりでそういうのも無理はない、理由としてはとても簡単。

 

何故かって? 見ればほら、使われていない理科室にはいつもよりたくさんの人がいる。

 

リュミエールの他にも、クインテットやゲマニストのメンバー……

どうやら先日の魔法演習の反省会も兼ねて集まっているらしい。

 

花組の大半がこの教室に集まってしまっているのだ、一体いつからこうなるようになったのやら。

 

 

月村「そういえば、結局アイドル好きの新しい武器はどうなったのかしら?」

 

録町「ちょっと!? そこは名前で覚えてくれないかな!?」

 

足沢「まぁまぁ……それより操太郎、そのCD射出機はどのくらいまで進んだんだ?」

 

切通「えっと、後は目の細かいヤスリで全体をならすだけで完成する……はず、多分」

 

月村「自分で作った魔法道具なのに、ハッキリしない答え方ね」

 

切通「うぅ、まだ実戦で動かしてないからどうとも言えないんだよう……」

 

ハチべぇ「機構内部に魔力は充分行き届いてる、実戦で使える可能性は高いと僕は分析するよ」

 

吹気「そういや今日は足沢さんね、くせっ毛の長髪さんはどこに行ったのよ?」

足沢「紗良の事か? それなら、自分の武器を見直したくなったからって先に帰ったぞ」

 

 

今この理科室に来ているのはほぼ先日の魔法演習に来ていた面子だが、

やはり日も経てば演習をやった日とそれぞれ事情が違ってくる。

 

各テーブルで話し合いや作業は行われた、流石に戦闘の練習をする者はいなかったが。

 

リュミエールのほとんどは教壇周辺にいた、理科室の全体を見守っているらしい。

 

そんな感じで一同は昼休みの時間を過ごしていると、理科室の扉からノックの音が聞こえた。

 

訪問者はもう慣れたイベントだ、利奈は理科室の扉の前まで来て客を迎える。

 

 

上田「あれっ、優梨だ! 久しぶりだね、今まで何してたの?」

 

下鳥「ちょっと調べ物をしていたのよ、あまり会えなくてごめんなさいね」

 

篠田「そういえば……最近見てなかったね、クインテットのメンバーもあたしも見かけてない」

 

清水「よぉ優梨、今日来たのはその調べ物ってのについての話か?」

 

下鳥「情報を持って来たのならもっと纏まってから言いに来るわよ、

今日ここに来たのは……そうね、リュミエールにお客を連れて来たの」

 

 

そう言って優梨は後ろを向いたが……誰もいない? いや、優梨の後ろに隠れている。

 

何をビビっているのやら、そこにはミニスカで化粧をした規則違反の象徴ギャル2人。

 

まぁ2人はこの場には来た事ない、多少過剰だが慣れない場はそれなりに怖気付く。

 

 

ハチべぇ「久しく見る組み合わせだね、優梨の多忙が影響していたのだろう」

 

下鳥「そんな隠れなくても良いじゃない、来たいと言ったのはあなたたちよ」

 

浜鳴「緊張なう、来た事ないしちょっと居づらいかも」

 

木之実「……やっぱり帰るわ、ここまで来たけど都合が悪過ぎる」

 

下鳥「もう、あなたたちしっかりしなさい!

 

 

廊下は肌寒いというのに、未だ理科室入る事が出来ないギャル3人。

 

なかなか理科室にに入れず優梨が困っていると、思わぬ助け舟が3人にやって来た。

 

それは本当に意外な人物だった、一番助けに来なさそうな1人の少女。

 

 

橋谷「ぁ、あの! すみません!!」

 

木之実「……えっ? 優梨じゃなくて私ら?」

 

橋谷「あっ、あまり廊下に長くいたら……風を、引いてしまいます」

 

浜鳴「躊躇なう、あたしたちってこの教室の空気に合わな」

 

橋谷「いいから! 入って、ください!!」

 

 

そう言って、俐樹は優梨の後ろに隠れていた2人の腕を引いて引っ張った。

 

行く先はもちろん理科室の中だ、優梨が感心したような表情でその様子を見ている。

 

……が、そもそも俐樹に筋力が無いせいか、なかなかギャル2人は理科室に入ってくれない。

 

 

橋谷「うぅ〜〜……ちっ、力が強過ぎですぅ〜〜……」

 

白橋「俐樹どうしたの? 綱引きかな、2対1はずるいよ!」

 

木之実「転校生!? これどう見ても遊んでるようには……ちょ!?」

 

 

直希に悪気は無い、彼は時折思いがけないド天然な行動に出てしまう傾向にある。

 

今回に関しては良い方向に働いたらしく、直希は俐樹の文字通り『力』になった。

 

4人が理科室に入り切ったのなら、優梨は入って来た扉を静かに閉めた。

 

 

橋谷「ふあぁ〜〜、暖かなう! やっぱり暖房が効いてる部屋は最高だよ」

 

白橋「あれっ、綱引きじゃなかったの? まぁいいや、

ずっと廊下にいると身体冷やしちゃうし良いよね」

 

木之実「なっ、なんであんたが……私たち、あんたにどんな事をしてきたと思ってんのよ」

 

橋谷「そっ、それは昔の話です! 時間はかかったけど……

わっ、私はあなた達を許した……つもりです」

 

木之実「……変な奴、勝手にすればいいじゃん」

 

 

理科室に入った後のギャル2人は優梨に案内された、

立ちっぱなしは疲れるだろうからと空いた黒い机の席に座らせる。

 

優梨はそれなりの注目を浴びたが、3人の来客によって大きく理科室の様子が変わる事は無かった。

 

まぁ変化がない事(いつも通り)はある意味、安心出来る要素ではあるだろう。

 

話を聞くために教壇の上にいた海里は2人の前に移動し、椅子に座った。

 

優梨は余裕ある風格で腕を組み壁にもたれかかる、何故か利奈の隣だが。

 

 

清水「しっかし珍しいのが来たもんだな、用件は何だ?」

 

浜鳴「質問なう、『星屑の天の川』に所属してる和出釛の行方について何か知らない?」

 

清水「……は?」

 

木之実「ほらね! やっぱりあたしらは悪者に見えるんだよ、帰ろ帰ろ」

 

下鳥「落ち着きなさい美羽、海里はまだ何も言っていないわよ」

 

 

目に見えて美羽はこの場に居づらそうだ、それでも溜め息を吐いて美羽は話を続けた。

 

 

木之実「でも『同じメンバーなのに分からないのか』ってちょっとは思ったっしょ?

やっぱこの話をするには都合が悪いんだよなぁ、いちいち反応されんの嫌だし」

 

浜鳴「そんなこと言わないで美羽……とにかく、情報不足なう!

釛君の家族や先生はリーダーが手を回してくれてるけど、

いつまで誤魔化せるか……どこで何をしてるのかも分からない、行方不明なう」

 

下鳥「嘘偽りは無いわよ、美羽に至っては来たくもないのにこうして来ている。

相当困っているらしいわね、詳しい事は表沙汰にはなっていないけど」

 

清水「嘘を言ってるようには聞こえねぇよ、俺の方でも最近釛の情報は入ってないからな」

 

上田「何処かで孵化しちゃって、誰にも気づかれてないって可能性はあるのかな」

 

清水「それなら誰かしら見つけて討伐してるだろ、回数は減ったがパトロールは継続してるぜ」

 

上田「じゃあ、本当に行方不明……!?」

 

 

まず魔法使いである時点で、一般人による犯罪に巻き込まれているとは考えられない。

 

孵化をして気づかれてないという線も無い、となれば……どういう事だろうか?

 

明確な判断をするには情報が少な過ぎる、不安と疑問の中で一同は共に悩んだ。

 

 

木之実「……そもそもあいつ、いっつも1人で行動してたし分かんないのはある意味当然っしょ」

 

上田「いつも、1人……?」

 

木之実「行動が《わざとらしい》し、私らもあんまし相手してなかったんだよね、

そもそも『星屑の天の川』って団体行動する為のチームじゃないし」

 

浜鳴「ちょっと美羽、言い過ぎなう」

 

木之実「事実でしょ? 私らも自由に出来るから入ったんじゃん、

要するに都合の良いチームって事よ、プレイボーイの響夏は例外だけど」

 

 

それどころかそもそも釛の姿を見る者があまりいない、ここ最近は単独行動が多い。

 

見かけたとしても美羽の言う通りいつも1人だ、その数は契約時から段々と減っている。

 

利奈はその事情を聞いて、何故か心の表面から共感が湧いて来た。

 

 

上田「和出さん……だっけ、みんなで手分けして探せないかな」

 

浜鳴「協力なう!? ほっ、本当に!?」

 

木之実「まさか、口から出まかせでしょうよ」

 

 

最上は机に手をつき乗り出してまで驚いたが、美羽はイマイチ信用していない様子。

 

 

清水「誰がお前ら2人に協力しないって言った?

俺はまだ何も言ってないぞ、まずは俺の話を聞いてくれ」

 

浜鳴「聞く! 全力で傍聴なう!!」

 

清水「2人の温度差が凄ぇ……まぁいいや、同じ花組の仲間として行方不明者がいるのは心配だな。

情報屋として情報網には自信があるぜ、外見の特徴とかを教えてくれりゃあ周囲に探すよう頼める。

リュミエールとしても釛の捜索に協力したい、メンバーにざっと念話で聞いたがみんな賛成だしな」

 

木之実「は? リュミエールって結構いたよね、いつの間に全員に念話なんてしたのよ?

いちいち1人1人に念話をするのに、どんだけ時間がかかると思って……

そういや、リーダーが多人数を相手に同時に念話が出来る奴がいるって」

 

浜鳴「とにかく、協力してくれるって事だね!? 歓喜なう! ありがとぉーー!!」

 

 

変に疑う美羽を吹き飛ばす勢いで喜ぶ最上、あまりの積極的態度に海里の表情は少し苦笑い。

 

どうやら美羽は悪い方向に考えるネガティブな癖があるらしく、

比較的ポジティブな最上といる事でバランスをとっているようだ。

 

最上の勢いに押され美羽は静かになってしまった、その間に海里は釛の捜索についての話を始めた。

 

 

清水「俺はどんな奴か分かってるが、一応みんなに伝える用の外見の情報を教えてくれ」

 

橋谷「えっと……回視なう! 背は男の子の割にはそんなに高くなくて、

髪型はボサボサの短髪で見た感じほっそりした体型だったかな」

 

木之実「色で釛を判断するのは正直無理、菜種油っていう知名度低くてダサい色だし」

 

上田「魔法少年の姿なら一度だけ見たことあるよ、確か……カラフルなロボット、だったかな」

 

清水「よっしゃ、そんだけ情報が揃ってりゃ充分だ! 絵莉に大翔、お前らのチームでも頼めるか?」

 

篠田「大丈夫だよ! あたしから天音に力を貸してもらえるよう頼んでみるね!」

 

足沢「俺も紗良に言ってみる、普段動かないあの3人には良い運動だろうさ」

 

 

海里を中心に話を進める内に内容は膨らみ、やがて花組の大半を巻き込んだ内容になってきた。

 

誰がどの辺りを探し、捜索自体は基本どの位の時間行うか……など、後半は具体的な話になる。

 

一通り話が纏まる頃、ちょうど昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴った。

 

今日学校が終わり放課後になれば、早速『和出釛の捜索』が始まるだろう。

 

それまで勉強に励むことにしよう、一同は次なる授業を受けるため花組の教室に戻って行った。

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

時間を進めて帰りの会の終わり立て、挨拶の後に花組一同は椅子を机の上に上げ後ろに移動する。

 

そんな作業をしながら、直希は今日行われる捜索においての自分の立ち回りを思い直していた。

 

学生鞄を肩に背負いながら、目の前の空に指で図を描いて何度も覚え直す。

 

 

白橋「えっと、僕は俐樹の家の近くにしてもらえたから……あの辺りを探せば良いのか」

 

 

考え事をしながら教室を出て廊下を歩くと、ふと明るい声が耳に入って来た。

 

それは廊下の端の方から聞こえて来た、声のする方へ行けばそこは別のクラスの教室。

 

教室の室名札には『2ー月』……どうやら月組の教室のようだ、中はまだ帰りの会の真っ最中。

 

 

武川「ってなわけで、最近万引きやスリとかの盗難被害が池宮で増えてるから気をつけてねぇ〜〜!

え、オイラがやったんじゃないかって? まさかまさか、オイラの頭がそんな事出来る訳がない!

それこそ、八百屋から魚を盗もうとする頭にネジ穴しかない泥棒みたいな者! オイラってアホだもん」

 

 

教室の後ろの扉からこっそり覗けば、そこでは漫才が行われていた。

 

傍らでは若い女の先生がその様子を明るく笑いながら見守っている、

元になった人物の影響だろうか? 教師がいるとどうしても目に入ってしまう。

 

もちろん黄色い彼が行う漫才も面白かった、その腕はつい見入ってしまうほど。

 

 

「ねぇねぇ、あの子誰だろう? ほら、教室の後ろにいる子」

 

「あぁ花組に行ったっていう転校生だろ、最近やけに団結力上がったクラスの」

 

「すっごいイケメンじゃん! うちのクラスに来れば良かったのに」

 

 

一応黒いバンダナで頭は隠れているが、若いのに白髪で整った顔立ち……

まるで外国人のような風貌は、どうしても目立ってしまっていた。

 

月組の一部の生徒にも見つかってしまう、しばらくして直希もその事に気がついた。

 

逃げるようにしてその場を後にする、聞けた漫才のネタは結局1つだけ。

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

帰路を外れて歩く内に、直希は自分が担当する区域の近くまでやって来た。

 

池宮ではどちらかというと地味で簡素な場所、目立つのは自衛隊の施設くらいだろう。

 

要するに直希がいるのは西の地区だ、工場などが建ち並ぶ工業の区域。

 

帰りが遅くなる事には困ったが、その辺は俐樹が経緯を変えて家で説明してくれるらしい。

 

そう俐樹について考えた時だった、彼女の体調が悪かったのを思い出す。

 

 

白橋「そういえば、最近の俐樹って風邪気味だったっけ……この辺ってどうなってるんだろ」

 

 

この地区について知らないのか、直希は鞄からスマホを取り出し電源を入れた。

 

まだ代替え機だが、近々彼のスマホが用意されるのだとか……

他にも何かありそうだが、相当親切な家に引き取られたらしい。

 

マップのアプリを開いて一通り見てみると、1件の店が直希の目に止まった。

 

 

白橋「……あれっ!? 俐樹が気に入ってるハーブ専門店、この辺りにも出店してたんだ。

そういやのど飴も売ってたなぁ……ちょっと寄り道になっちゃうけど、ごめんみんな!」

 

 

遠くない距離、直希が見つけたハーブ専門店はあった。

 

誰しもが知る有名なハーブから誰も知らないようなハーブまで、選り取り見取り取り揃えている。

 

人気なのはティーバッグや石鹸だが、直希が目的とするのは体に優しいのど飴。

 

 

白橋「確か、俐樹が好きなハーブはブルーマr……ん?」

 

 

スマホから目を離し直希はふと前を見た、視界の端に人影が映る。

 

普通は一般人だ、だがその人影は急ぐように路地裏へと入って行ったのだ。

 

さらにその人影はどこか同年代の様にも見える、直希はとある人物を思い出した。

 

まさかと思い、足音を立てないよう早歩きで路地裏へと入って行く。

 

直希が担当する区域からはどんどん離れて行くが、それでも直希は後を追う。

 

人があまりいない場所なのか、その辺りは日光が入りづらく廃油や火薬の匂いが漂っている。

 

酷い場所だ、そう思いながら何気なく直角の曲がり角を曲がった……その時だった。

 

 

白橋「あっ、ごめんなさ……え?」

 

 

直希がぶつかった少年は一見、名も知らない知らないの人物だった。

 

第三椛学園とはまた別の学校のジャージ、普通に考えれば他校の生徒。

 

それでも、直希は彼が誰であるかを理解出来た。

 

 

 

 

彼の手を見ればほら、見慣れた指輪の上で菜種油色の宝石が存在を主張している。

 

 

 

 

和出「っててて……おい、どこ見て歩いてや……がっ!?」

 

白橋「あぁ!? 和出釛!!」

 

和出「マジかよ、この辺に配備されてる魔法使いはいないんじゃ……っくそ!!」

 

 

見つかってしまった釛は本気で直希から逃げようとしたのか、

この場に魔女も魔男もいないのにソウルジェムを使い変身した!

 

利奈が言っていた通り、まるでロボットのような姿の衣装に身を包んだ。

 

近未来的な眼帯に手をかけると、眼帯についた宝石が魔力の輝きを放つ!

 

 

和出「鋼鉄の翼! ジェヴォラーレエェッ!!」

 

 

短く強い呪文と共に菜種油色の魔力が弾け、釛の背にジェット機にあるような

文字通り小さなジェットエンジンが付いた頑丈な鋼鉄の翼が背中の機械から出てきた。

 

床を蹴ってそのまま空を飛ぶ、魔力を燃料にして路地裏を無音で滑空する。

 

数秒の内に釛は見つかった場所からかなり離れた場所に移動した、胸の内に湧くのは一旦の安堵。

 

 

 

 

釛はこれで撒けたと思ったらしいが……相手が悪かった、直希も変身して魔法を使う。

 

 

 

 

白橋「鋼鉄の翼! ジェヴォラーレエェッ!!」

 

 

短く強い呪文と共に白色の魔力が弾け、直希の背にジェット機にあるような翼が生成された。

 

それは釛と全く同一の物だった、唯一違うのは直希のが無色である事だけ。

 

釛は当然驚きを隠せない、彼の『模倣』の魔法を見るのは釛にとってこれが初めてだった。

 

 

和出((ちょ、どういう事だよお前!? 何で俺の魔法が使えるんだ!?))

 

白橋((えぇっと……飛びながらの説明は無理だよ!? とにかく一旦止まってくれよ!))

 

和出((うるせぇ! んなこと言って簡単に捕まる俺じゃねぇぞ!!))

 

 

目立たぬよう滑空する2人の魔法少年、機械の翼を背に着け高速で空を飛ぶ。

 

釛は今度こそ撒こうとして複雑な路地裏を右往左往したが、直希はその動きに喰らい付いてみせた。

 

まるで元から自分の魔法だったかのようだ、それは初めて目にした魔法なのに。

 

 

和出(チッ……このまま進むと路地裏から出ちまうな、仕方ねぇ)

 

 

しばらく空中の追いかけっこが続いていると、周囲から日の光が差し込むようになってきた。

 

これ以上は目立つと判断したのか、釛は地面に着地し鋼鉄の翼を背中の機械に収納した。

 

直希も背中に着けていた無色の翼を消して着地する、周囲を見ればそこは比較的広い十字路。

 

その十字路は卍の形をしており、街の方からは見えず一般人に見られる心配は無い。

 

とにかく釛は止まってくれた、直希は説明をしようと釛に話を持ちかける。

 

 

白橋「止まってくれてありがとう! それで、僕の魔法についてだったね」

 

和出「……も、だろ……」

 

白橋「僕の魔法は『模倣』の魔法で……えっ?」

 

和出「お前も、俺らをバカにしに来たんだろ? 何をするにも悪にしか見ない俺らを」

 

白橋「え、何の話? バカにしに来たんじゃないよ、僕は君を探しに来たんだ」

 

和出「嘘つけや! 分かってんだぞ!? 裏で俺の事も《わざとらしい》だの陰口叩いてんのはな!!」

 

白橋「……ごめん、本当に何の話? 僕にはさっぱり分からな」

 

和出「どいつもこいつもバカにしやがってぇ……! 『星屑の天の川』が『花の闇』だァ?

ふざけんじゃねぇ!! 誰が孵化の度合い調節して魔法使い支えてると思ってんだ!!

数夜だって、今じゃ身体ん中あんなボロボロになっちまってよぉ! なァ!?」

 

白橋「あの、一旦落ち着いて」

 

和出「裏で誰が何をしてるかなんて、誰もそんなの知ろうともしない。

いつから、歯車は狂ったんだ? いつから……俺たちは、悪者になっちまったんだ?

最初こそやべぇ事はしてたが、もうその分を償えるくらい苦しんだだろ!?

それでも許さねぇか? だったら、とことん悪になり切ってやらぁ!!

自分の存在を証明するために盗んで盗んで盗みまくる、邪魔する奴はぶっ飛ばす!!」

 

白橋(っ……! ダメだ、真面に話を聞ける状態じゃない!)

 

 

直希が偶然見つけた釛は最早正気では無かった、目にハイライトが灯っていない。

 

釛が言ってる事は支離滅裂で、直希の話をほとんど聞いていなかった。

 

その表情は怒っているようで狂気に駆られ怯えている、眼帯についた菜種油色の宝石は黒に近い。

 

 

和出「巨人の腕! ビッグレイトオォ!!」

 

 

釛は自らの手に魔力を込めて振り上げると、その拳は倍以上に膨れ上がった。

 

そのまま直希目掛けて振り下ろす、直希の反応は早く何とか回避することが出来た。

 

直希は初めてだが、最初に比べ見る限り彼の動きは素早さを増している。

 

どうやら以前のように何も考えずただ巨大化させる事をやめたようだ、

おかげで拳や蹴りによる攻撃の命中率は格段に上がっている。

 

直希は釛が使いこなす『大小』の魔法を『模倣』する事も出来たが、

それでは魔法使い同士の戦闘でどちらかが大怪我をしてしまうと判断した。

 

 

白橋「ルビーニ・エカン!」

 

 

直希は自分の固有魔法を持たない魔法少年だったが、その代わりに使える魔法があった。

 

それは自らの元となった人物……篠田絵莉が扱う固有魔法、『学校』の魔法の一部。

 

直希は白色の魔力で無色の長い縄跳びを創り出す、どうやら戦わずに釛を捕まえるつもりのようだ。

 

 

和出「両手で持つ変則型の鞭ってところか? いい度胸じゃねぇか!

戦うんだったら、そのくらい闘志を燃やさなきゃなぁ!」

 

白橋「本当は僕だって戦いたくない……最後にもう一度だけ聞くよ、僕の話を聞いてくれない?」

 

和出「へっ、ほざけ! 否定しか出来ねぇ奴らの話なんざ聞くかよ!!」

 

 

会話は釛によるストレートパンチによって強制的に終わる、

ついに魔力を無駄にするような決闘か始まってしまったのだ。

 

 

拡大と縮小を繰り返す不規則な格闘術、釛はパターンを読みづらい攻撃で攻めに攻める。

 

直希は避けるので精一杯と言っても過言ではない、とにかく隙を探しては縄跳びを振った。

 

格闘と縄跳びという変わった攻防が続いた、やや力押しの釛が有利に見える。

 

 

白橋「……っ! 全然、命中しない」

 

和出「オラオラどうしたぁ!! そんな紐一本じゃ何ともねぇぞ!!」

 

白橋(普通に戦ってたんじゃキリがない、何か突破口は……

あっ、そうだ! 利奈や海里みたいに作戦を考えなきゃ)

 

 

直希は両手で取っ手を持ち縄跳びを振り回していたが、一旦距離を置いて少し考えてみた。

 

続く釛の攻撃による邪魔は何度かあったが、それは鉄製の掃除用ロッカーや

先ほど空を飛ぶのに使った鋼鉄の翼を障害物にして攻撃を阻んだ。

 

考えに考え……やっと1つの案が頭に浮かんでくれた、早速直希は行動に出る!

 

と言っても、両手で1つずつ持っていた縄跳びの取っ手を片手で2つ持つ形に変えただけだが。

 

改めて直希は釛と向き合う、この作戦で終わらそうと強く決意し身構えた。

 

 

白橋(上手くいくかどうか、分からないけど……やるしかない!)

 

和出「ようやくやる気になったみてぇだな、まどろっこしいこと考えてねぇでかかってこい!!」

 

白橋「これで決める! うおおおぉぉ!!」

 

 

根性を入れんと勢いでとりあえず雄叫びをあげた直希だったが、

まぁ流石にこのまま何も考えずに突撃していくわけじゃない。

 

縄跳びを振り回しながらまずは機会を伺う、不規則な攻撃だが隙が無いわけじゃない。

 

態度の変化に警戒されたのか、なかなか隙が出来なかったが……

戦いながらそれなりに長く待ち、やっと釛に隙が出来た!

 

 

白橋「タンリュカ・ルシウム!」

 

 

直希は縄跳びを持っていない方の手に白色の魔力を込め、それを空中に放った!

 

すると、魔力は何本ものチョークに変化し豪速球で釛に襲いかかる。

 

それを連続で放つ、チョークと言っても魔力製のチョーク……当たったら普通に痛いだろう。

 

 

和出(遠距離で攻めてきたって事か……? 顔つきが変わった割には、随分と雑なもんだな)

 

 

どうやら直希は釛を追尾せず、広範囲にチョークの弾を撃っているらしい。

 

先ほどより手数は明らかに多かったが、文字通り雑な攻撃を釛はそれらを全て回避する。

 

だがかわした代償として、釛は大きく体制を崩してしまう……

直希の狙いはこの隙だ、すかさず釛を狙って縄跳びを振った!

 

 

和出「……ぐっ!?」

 

白橋「バランスを崩した、ここだああぁぁっ!!」

 

和出「なめんなァ!! いくら自分の身体でバランスを崩したとはいえ、当たらな」

 

 

今の直希の攻撃は2つ持った取っ手の内、1本を相手に投げつけるという方法だ。

 

更に釛は身体を捻りその投てきをかわす、簡単な行動だったがこれ以上動けそうにない。

 

……さて、この動けない状態が()()()()()だとは気づかれなかったようだ。

 

 

白橋「ビッグレイトオォ!!」

 

 

突然直希は呪文を口にしたが、急でも予め仕込んであった白色の魔力はその言葉に反応した。

 

その魔力は何処に仕込んであったんだって? 答えは意外な場所にある。

 

見ればほら、直希が投げつけた縄跳びの取っ手が一瞬の内に倍以上に膨れ上がる。

 

 

和出(……は? ちょ、マズい! さっきのふざけた弾幕はカモフラージュか! やべっ!?)

 

 

気がついたようだが時すでに遅し、釛は放たれた塊に当たり全身を打撲した。

 

肉が沈む鈍い音と共に、釛の口から痛がるような声が空気と共に漏れ出る。

 

思わぬダメージ量に直希は罪悪感を覚えたが、彼の考えた作戦はこれで終わりではない。

 

直希はもう片方の取っ手も振り払うように投げる、釛が完全に倒れこむ前にだ。

 

投げた勢いによって、釛の身体に縄跳びの紐がぐるぐると巻きつく。

 

釛は倒れた後も抵抗とばかりに、巻き付いた縄跳びを力任せに引きちぎろうとした。

 

それでも釛の拘束は解けない、魔力製の縄跳びは丈夫で釛にダメージが残っていたからだ。

 

 

 

 

どうやら直希の勝利に終わるようだ、まぁ結局勝ち負けは関係ないが釛を捕まえれた。

 

 

 

 

和出「ぐっ……クソがっ!! こうなりゃ警察に連れてくなり勝手にしやがれ!!」

 

白橋「えっ、警察? 何で君を警察に連れて行かなきゃいけないの?」

 

和出「……何でって、だから俺を追いかけて来たんじゃねぇのか?」

 

白橋「違うよ! 僕、君と話がしたいだけなんだ」

 

和出「なんか、俺とお前で色々と食い違いが……ぐあ!?」

 

 

釛は観念したのか冷静になる……が、せっかく話が出来る状態になったのに様子がおかしい。

 

縛られたまま全身を痙攣させている、どこが苦しいのか自分で分かっていない。

 

直希が驚いた影響で縄跳びは緩んでしまったが、それでも苦しみ続けている。

 

要因は釛を見ればすぐに分かった、彼の眼帯から黒い魔力が漏れ出ている。

 

目の前の事に夢中になり過ぎて、ソウルジェムの事など度外視していたのだろう。

 

 

もうすぐ釛は孵化をする、これを防ぐには早急な浄化が必要だ。

 

 

白橋「大丈夫!? ……うん、どう見ても大丈夫じゃないよね!?

そっ、そうだ! こういう時は浄化だ、グリーフシードを使って……

ってああぁぁ!! そうだ、僕のソウルジェムって変わってるからグリーフシードは」

 

 

まぁ要約すると、今の直希はグリーフシードを1つも持っていないという事だ。

 

これには彼なりの事情があるのだが、一刻も争うこの状況でそれを語っている暇はない。

 

釛が持つグリーフシードを探すという手もあるが、その情報を聞き出すことも出来なさそうだ。

 

 

白橋「うぅ……試したことないけど、今はこれしか方法が無い……!」

 

 

普通に考えれば八方塞がりで、このまま釛は魔男化の一途を辿る。

 

だが直希には1つだけ思い当たる方法があった、それは本来ならばあり得ない方法。

 

首元のチョーカーを乱暴に外し、急いでそれを白色のソウルジェムに戻した。

 

色と宝石の形はソウルジェムの物なのに、形状が完全にグリーフシード。

双方を足して2で割ったような物……それはどちらとも言えない、これが直希の特殊な魂。

 

暴れて苦しむ釛を馬乗りになってでも押さえつけ、直希は行動に出る。

 

 

 

 

あろうことか、孵化寸前の釛のソウルジェムに自分のソウルジェムを押し付けたのだ!

 

 

 

 

それは一見意味が分からない行動だが、その意味はすぐに分かることになる。

 

多少反発するように魔力の火花が散っているが、押し付けたソウルジェムは穢れを吸収している。

 

そうしている間も釛の黒に近かったソウルジェムは輝きを取り戻し、

直希がソウルジェムを離す頃にはキレイな菜種油色に戻っていた。

 

 

一先ず釛は助かったが……これは一体、どういうことだろうか?

 

直希の特殊な魂は、本当にソウルジェムと言えるのだろうか?

 

それを知るにはまだ情報が無い、今はまだ直希だけの秘密。

 

 

和出「あれ……俺ってば、孵化せずに済んだのか?」

 

白橋「うん、ちょっと危なかったけどね」

 

和出「なんか、悪りぃな……俺と話がしてぇらしいが、ちょっと……休ませて、くれ……」

 

 

そう言って釛の全身の力が抜けると、気を失ったのか自然と彼の変身は解けた。

 

眼帯だったソウルジェムも卵型になって転げ落ちるが、それは直希が落ちる前に受け止める。

 

どうやら今は話せる状態ではないらしい、それは気絶している釛を見れば明らかだ。

 

無理もない、釛を見つけた様子だと3日かけて絶望という感情だけで

孵化寸前になるまでソウルジェムに穢れを溜め込んだのだろう。

 

とにかく釛を見つけたことを直希は念話で伝える、釛と直希が2人で会話をするのはまた今度。

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

こうして、短期間行方不明だった和出釛は無事見つかり捜索は早めに終わった。

 

長らく釛は絶望にどっぷり浸かっていたらしく、所々記憶が飛んでしまっていたのだとか。

 

余談だが、それはここ最近増えていた池宮での万引きやスリの話。

 

これを気に、何故かそれらが減っていったというニュースが光を中心に広がる事になる。

 

防犯カメラにも写らず証拠は無し、犯人は手練れだそうだが……早急な事件解決を願おう。

 

 

あぁ、すぐに聞かなくなった噂話によると結局釛は保護者にこっ酷く叱られたらしい。

 

厳しく言えば因果応報という奴だ、周囲を心配させた分も含めて

自分の罪を見つめ直し、しばらく反省してると良いだろう。

 

どうせ、彼の腕ならば警察に捕まることはまず無いだろうから。

 

 

………………………………

 

 

次回、

 

 

 

清水「……まぁ、相手が通称『花の闇』じゃあそう簡単に行くわけねぇよな」

 

 

 

上田「1cmくらいの大きさの……粘土かな、何だろうこれ」

 

 

 

軽沢「そう言えば……それについて、数夜が何か言ってたような気がするよ」

 

 

 

前坂「思い込みも甚だしい、お前はさっきから何を言ってる?」

 

 

 

〜終……(41)罪による証明と白き救済〜

〜次……(42)自由な食事会と暗躍者〜

 

 

 

魔法使いは運命に沿う。

 




やれやれ……直希に襲いかかった挙句孵化をしそうになるなんて、彼は人騒がせな人物だ。

さて、行方不明者の捜索が主軸となった今回はいかがだったでしょうか?

今回はたった1人の人物に振り回されてしまいましたが、進歩した事があったのもまた事実。

まさかギャル2人がリュミエールを尋ねるとは、前まではあり得ない話でした。

美羽は捻くれてまだいづらい様子ですが、最上がいればその内慣れるでしょう。




さて、今回の雑談は……そうだな、『服装』についてでも話しますか。




個々のキャラクターを創る上で、やはり大変なのは服装の決定です。

学園物となれば制服で統一出来るので楽ですが、魔法使いの姿はどうにもならない。

『色』『魔法』『願い』そして最低でも、その人物の本質に合った服装にしないと違和感が出る。

その点で直希は結構苦労しました、何せ自分自身の本質がまるで無いような人物ですもの。

私自身が元々ファッションセンス無いので、資料等を見て決めるようにはしていますね。




今回はこんなものですかね、あまり長々と話しても終わらないだけです。

次回より物語は段々と佳境に差し掛かります、一体前章の終着点はどこにあるのやら。

それでは皆様、また次回。 急激な気候の変化にはお気をつけ下さい、特に黄砂。
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