午前の授業が終わり、先程まで食堂で機嫌の良かったマナは頬を膨らませ、ふてくされていた。
「折角、一夏と二人で時間過ごせると思ったのに」
「アンタだけに良い思いはさせませんわよ」
食事の最中に相席をした人物達とマナの間で火花が散る。
今この席にいるのは一夏、マナ、箒、セシリア、鈴だ。
「俺とマナはお前の事知ってるけど、そこの二人は知らないから自己紹介位したらどうだ」
「一夏の中学時代のクラスメイトだった
鈴が自己紹介すると火花を散らしながら自己紹介を始める箒達。
「それにしても、一夏がIS学園に入るなんてね。アンタ、高校に行く必要性自体ないでしょ?」
「そうなんだが、友達と一緒に時間過ごしたいじゃん。だから、退屈な高校に行くつもりだったんだけど...この有り様だよ」
「高校に行く必要が無いとはどういう事だ?」
「アンタそんな事も知らないの。そんなんで幼なじみなんて、所詮は自称ね(笑)」
鼻で笑う鈴に箒は顔を赤くしながらプルプルしている。
「まぁ、箒さんを弄るのはそこまでにして、説明してもらって宜しいでしょうか?」
「そうね。一夏は頭がいいのよ。例えるなら超難関大学を慢心しても受かるレベルでね」
「「え!?」」
「前に何か偉い学者でも解けないという問題を公開してたからその問題を解いて、賞金貰ったな」
一夏の凄い所は神殺しという偉業を成し遂げただけではなく、その頭脳もまた可笑しいのだ。
一夏は知識と戦いに貪欲で、手当たり次第にその知識を吸収し、それを惜しみなく発揮できる為、一部の人間からは「篠ノ之束に並ぶ頭脳」と認めら、神殺し関係ではその知識に貪欲な所から「オーディンの生まれ変わり」と言われている。
ここまで、一夏の学力が高いのは知識力とまつろわぬ神や神殺しなどの戦いによって、培われた推察力、思考力、洞察力によるところが大きい。
一夏の異常性に驚いていると一夏のスマホが鳴り始める。
《このターンX凄いよぉ!流石、ターンAのお兄さんッ!! 俺は不可能を可能に...。 まだだ...、私はまだ自分を弱者と認めていない!》
「そのテラ子安な着信音どうにかならないの?」
「自作で作ったお気に入りの着信音なのに...」
「それより、電話に出なくていいのか?」
「知り合いからだと思うけどな。となわけで、少し席を離れるぞ」
一夏は席を立つとそのまま、廊下の方に歩くと流暢な英語で会話する。
「一夏さんは英語がお上手なんですね」
「一夏は大体の国の言葉は喋れるわよ。世界中飛び回ってるうちに覚えたらしいけどね。そんな金何処にあるのかしら」
「まぁ、素敵な事ではありませんか。色々な国に行けて、文化交流やその国の人と触れ合える...なんて素晴らしいことでしょう!」
「に、日本人は他の国の言葉なぞ、喋れなくてもいい。日本人は日本語だけ喋ればいいのだ」
「箒さん。その考えは時代遅れでしてよ。今の社会に他国との交流は必要不可欠なのですから、自分の国の言葉だけ喋ればいいなんてことは無いのですから、今からでも英会話などある程度出来た方がよろしくてよ」
セシリアが箒に英語など少しでも覚えた方がいいと説いていると一夏が戻ってきた。
「なんだったの一夏?」
「知り合いから今度、食事に行かないかと言う誘いだった。そして、夏休み中にアメリカに行くことになったな。...それよりも前に居るんだよなー、先客が。これで夏休みの自由時間が減ったな。翠姐さんの所にも行かなちゃいけないし」
「翠姐さんとはだれだ? お前の姉は千冬さんだけだろ」
「俺に武術と生きていく術を叩きこんだ師匠。そろそろ、次の授業は実習だから先に行ってるわ」
一夏は食器を返却口に置くとその場から去っていった。
「私達も早く食べましょ。遅れただけで叩かれたら、嫌だからね」
「私は食べ終わったから、おっさきー。待ってー、一夏!」
一夏の後を追うマナを見た箒達はマナに良い思いさせてたまるかと頼んだ料理を食べていくがその姿はとても、礼儀の良い物ではなかった。
一日の授業が終わり、箒達がしたくのないISの指導をするとうるさいので、一夏は権能を使い周囲を騙し、屋上で横になってるとスマホから着信音と映像が流れる。
《( 0w0) ダディバナサン! (; 0w0)Σ ナゼェミテルンディス!! (; 0w0)オンドゥルルギッタンディスカー!!》
某オンドゥル語で有名なワンシーンと台詞をチョイスして作った一夏お気に入りの着信音シリーズである。
時間とネタがあれば作るほど、今ハマっているマイブームである。
「どうしたマハード?護堂がまつろわぬ神と接触したか...。了解した、すぐそっちに向かう」
「また...まつろわぬ神が出たの」
「あぁ、だからちょっくら行ってくる。我は天を廻る不死鳥となりて、我は大地を照らす太陽と成る」
一夏は背中から炎の翼を出し、飛び出した。
その姿を影から見守るマナ以外の一人の少女の姿があった。
「あれは...夜...。太陽は落ちてないのに夜の様に暗くなってた...。これもあの時見たまつろわぬ神の仕業なんだろうな」
一夏は視た未来を思い返してるとある事を思い出す。
それはプリンセス・アリスが予言した【星なき夜の予言】があの星の無い夜に当てはまるのだ。
「夜...闇...そして、蛇...。蛇は大地母神の象徴だが、これだけじゃ特定するのは難しい...。あと少し、キーワードがあれば...」
一夏はまつろわぬ神を特定するために思考を巡らせるが答えに辿り着けずにいると、ビルの屋上に槍を構えるエリカと銀の髪と闇色の瞳が特徴的な少女、そして、ビルの傍らには動かない護堂がいた。
「チッ...遅かったか」
「貴方は...」
「妾の前に立ちはだかる其方は何者だ?」
「そこで寝ている奴と同じ、東洋の神殺しだ」
一夏はエリカの近くに行くと聞こえるか聞こえないかの声で語りかける。
「護堂は死んでいるわけじゃないだよな」
「えぇ、まだ死んではいないわ」
「なら、俺が時間稼ぎをするからその間に護堂を連れて遠くに逃げな」
「どうか、ご武運を」
一夏は目の前の少女に一歩、歩み出す。
「次の妾の相手は其方か?」
「そうだ。だが、お前を倒すの俺じゃない。アイツはまだ終わってないからな」
「その口ぶり、あの神殺しはまだ生きているという事か」
「さぁ?どうだろうな!」
一夏は後方から飛んできた大型拳銃を受け取ると目の前の女神に向けて放つ。
「そのような、人の知恵で作られたモノが妾に通用すると思ったか」
少女の後方から飛んできた梟に放たれた弾丸が相殺され、相殺されなかった梟が一夏に襲い掛かろうとするが一夏は焦らず、聖句を紡ぐ。
「神王の雷光よ!我に立ちはだかる愚か者に、天の怒りを知らしめよ!」
「その雷は...父上の...」
一夏は右手を梟に向けると、右手から放たれた雷によって梟は撃ち落とされ、呪力に還っていく。
雷は留まる事を知らず、そのまま少女を襲うが、少女はそれを躱し、後方のビルの一部に雷が直撃する。
「驚いたぞ。よもや、父上の権能を持つ神殺しに会うとはな」
「初見で分かっちまうのかよ...。だが、おかげでお前の正体も分かった」
「ほぉ、では申してみろ」
「ギリシア神話に出てくる都市の守護者という意味の名を持つ女神...その女神の名はアテナ! ゼウスの娘だ!!」
「如何にも!」
少女の姿をした女神アテナは大鎌を呼び出し、一夏に接近する。
「ついでに言えばお前は大地母神であると同時に冥府の女王だ!梟は夜に冥界に渡ると鳥とされている。お前の聖鳥である梟はお前の死の一面を表したモノだろ!」
「まさか、この短時間でここまで暴かれるとは...。ここ数百年、其方の様な神殺しは居なかった。そして、アテナの感がこういっておる。其方は危険だと!」
「あぁ、そうかい!」
一夏は雷を纏った拳でアテナを殴りつけようとするがアテナは身の丈ある大鎌で難なく防ぐ。
「それにお前、自分を象徴するモノが一つ欠けてるだろ」
「!? よもやそこまで把握しているとは...。奇才な神殺しだ。それに故に危険!」
「おっと」
アテナは一夏を撥ねのけると大鎌で一夏の命を刈り取ろうとするが、寸前で回避するがIS学園の制服が少し、切り裂かれる。
「其方を相手にするには完全ならざるアテナでは不足の様だ。ここは引かせてもらおう。妾の目的は其方ではなく、ゴルゴネイオンなのだからな」
「しまった...」
アテナの後方に闇が広がるとそこから無数の梟が飛び出し、一夏に群がり、一夏を襲う。
一夏は全域に放電する事で梟を一網打尽にすると周りを見渡すが何処にもアテナの姿は無かった。
「マハード。護堂達の所にアテナは行ったか?」
「いいえ。別の方角に行きました」
「そうか。なら少し、待つか。この戦いは護堂にとっていい実戦になる」
「一夏自身が倒さないのはその様な目的があったからなのですね」
「俺だって考えて行動するさ」
一夏は居るであろう人物に話しかけると一夏の後方に従者であるマハードが姿を表し、先の戦いで大型拳銃を投げたのはマハードである。
一夏はその場に座り込むとコンクリートの冷たい感触が伝わってくる。
「アイツには強くなって貰わないと困るんだよ。あのまつろわぬ神が言った『全ての神殺しを滅ぼす、祝福されし王』と『この世界を裏で暗躍する混沌』て奴が現れるまでに強くなる必要がある。アイツも俺も」
「一夏はそのまつろわぬ神が来るまでに一夏自身も強くなる必要がある。だけど、その前に神殺しになったばかりの草薙殿を鍛える必要があるという事ですね」
「そうだ。俺は少しの間寝るから何かあったら起こしてくれ」
そういうと一夏はゆっくりと瞼を閉じていくのだった。
とある、儀式場に自分と同じ位の少女達が倒れていた。
一夏はこの光景を見てこれは幾度となく見た夢だと理解した。
これはドニと共闘したあの事件。
死者こそいないが最悪と言っても可笑しくない、一夏にとって自分の不甲斐無さを実感した瞬間。
目の前にいる人物はまつろわぬ神を降臨させるために少女達を犠牲にした思い出すだけで殺意が湧く
そして、自分を見つめる一人の少女。
顔を思い出そうとするが思い出せないがその少女は最近、再会したような気がした。
「一夏!一夏!」
「ん?」
眠りから覚めた一夏の前に焦った表情のマハードが居た。
「大変です!!」
「何が...。これは...」
辺り一面に広がるわ夜、大空に輝く星が無く、まるで闇そのものだ。
「これがプリンセス・アテナが予言した【星なき夜の予言】...。不完全なアテナが完全なアテナに舞い戻ったって事か...」
「如何なさいますか?」
「アテナの所に行く。まずはそれからだ」
「はい!」
光が消えた市街を駆け巡っていく一夏達は木々が生い茂る場所に一人の巫女服の女性が居る事に気づくと、一夏は女性の方に足を進めた。
「久しぶりと言うべきか、万里谷祐理」
「貴方は織斑一夏さん...」
「元気そうで何よりだ...」
一夏は少し、万里谷の顔を見ると目を合わせないように逸らす。
普段なら問題無く、相手を見る事が出来るが、一夏は過去の事件に関わった彼女達を事前に護る事が出来なかったことに対する罪悪感が一夏を襲うのだ。
あの時力があれば、もう少し、早く行動出来ればあんな事にはならなかったのかもしれない。
今となっては後の祭り、過ぎ去った過去故にどうすることも出来ない。
「まだ、あの時の事を気にしているのですか?」
「あれから、何年も経つが今だに忘れる事が出来ない。いや、忘れちゃいけないんだ...。それが救えなかったあの子達の為なんだ...」
「確かに救えなかった人もいました。ですが、私の様に救われた人もいます。それはあの人も同じはずです。だから、過去に囚われないでください!」
「...そうか。そう言ってくれると助かるよ」
そう言うと一夏は黄金に輝く空間を見つめる。
「万里谷祐理。あそこで、戦っているのは護堂と真のアテナか」
「はい。エリカさんが言うにはアレを使った護堂さんはえげつないらしいです」
「えげつない?」
万里谷の言葉に首をかしげる一夏だが、黄金の空間での戦闘を観察していると万里谷の言っている事が理解出来た。
切り裂いたのだ。神を神たらしめるモノそれは――
「神格を...切り裂いた...。俺がソレを使ったら、絶対勝てるやつだろ! なんで、俺の前に現れ無かったんだよ!!ちくしょーめ!!」
「い、一夏さん?」
黄金の剣がどういう化身か理解した一夏は心の底から嘆いた。
一夏は心の奥底からウルスラグナが世界のどっかで復活しないかなと思いつつ、その結末を見届けるために一度深く息を吐き出してから微笑み混じりの観戦を改めて開始した。
その結果は、言うまでも無いだろう。
明けましておめでとう!
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