取るべきかスルーか正直迷っています。
夜の街を炎の翼を羽ばたきながら、護堂と待ち合わせしている場所に向かう。
「さっき護堂から、万里谷も攫われたのを聞いたから、簪の失踪とも無縁じゃないんだよな。二人共通の関わりのあるアイツだろ。あの事件の関係者が二人同時に消えるとなれば、ほぼ確実だ」
ヴォバンがいるその図書館の目の前で一夏達は集まる事になっている。
そして、その図書館の前に降りると先に付いていた護堂とエリカの姿があった。
「あ、一夏さん!」
「よぉ、護堂。で、ここにアイツがいるのか?」
「そうみたいです」
「それじゃあ、狼爺に決着つけに行くか」
ちなみに、駐車場には正史編纂委員会の使いが居るらしいが、一夏はその使いが甘粕じゃないかと予想している。
一夏自身、サポート役である、マハードに場所を教えてあるので呼べばいつでも来れる状況である。
「チース、三河屋でーす。狼爺に敗北をお届けに上がりました!」
とある日常アニメに出てくる三河屋さんの真似をしながら、扉を蹴り飛ばし、中に入れば風を巻いて、ボロボロの着衣を纏った人影が剣で斬りかかってくるが殴り飛ばし、落ちた剣をブーメランのように投げ、後ろにいたもう一人の頭に突き刺さり、呆気なく終わる。
「い、今のって...」
「狼爺の権能で"死せる従僕"だな。アレの相手するの面倒なんだよなー。数だけ無駄に多くて、飽きるんだよ」
先程の剣士たちは、間違いなく達人だった。
だがそんなのは知らぬとばかりに襲い掛かってくる従僕たちを全て権能なんて使わずに倒していく。
護堂はエリカや万里谷から、一夏の強さについてはある程度教えてもらってたが、実際に目の前でその強さの片鱗を見て唖然とするしかない。
一夏自身、従僕程度で自分が倒せるというのなら、是非とも倒してみて欲しいぐらいだ、と思っている。
一夏は伊達に修羅場を超えていなければ、羅濠教主に武術を習ってないのだ。
敗北した経験が無いわけではないが、もう遠い記憶である。
羅濠教主による、地獄が優しく感じる、師事を長年受け続けた結果、並大抵の達人では歯が立たず、まつろわぬ神もギリギリの戦いはあれど、負ける事は少なくなっている。
「お待ちください、王よ」
「あら、リリィ。あなたいつのまに日本へ来てたの?久しぶりね」
「なれなれしく呼ぶな、エリカ・ブランデッリ。友人でもないあなたに、そんな口を利かれる理由は無い」
青地に黒い縦縞の入ったケープをしている戦装束。
凛とした涼やかな声に、銀褐色のポニーテールと街を歩けば大体の人が振り向く美貌をした少女が現る。
なんとなく、見覚えのあった一夏はリリアナを見ながら首を傾げる。
「んー。何処かであったような...。剣馬鹿か、簪たちと同じあの時かな。確か、"青銅黒十字"の魔女、リリアナ・クラニチャールだっけ?マハードが寄越した書類にそんな感じなのがあった気がする」
「覚えていらっしゃったのですか?」
「俺を剣馬鹿や災厄兎と一緒にするな。ここに居るという事は狼爺のお供か?難儀なこって」
しかし、よくもまあこの真っ直ぐ少女をあの気性の荒すぎる狼爺に差し出せたものだと、少女の心が曲がるぞ、と一夏は思っていた。
最近、色々な組織のトップって、意外と頭のねじ外れてるの多いと思ったが言葉にするのはやめておこうと思った一夏だった。
「けれどリリィ、あなたよく我慢できているわね」
「はぁ?」
「伝え聞く侯爵の気性とバカ正直な貴方が上手くやれるとは思わないわ、どうせ言いたい事も言えずストレスを溜め込んでいるんじゃないかなーって」
「う、ううううるさいッ!見てきたみたいに言うな!」
声を荒げてエリカの語りを遮るリリアナに、これは図星だなと苦笑を浮かべる一夏とエリカに弄ばれている事に仲間意識を感じてしまった護堂。
「白き王、そして草薙護堂!草薙護堂の愛人がいろいろ申していましたが、全て事実無根です。お忘れください。私は確かにヴォバン侯爵の供をしておりますが騎士として何ら恥じるところはありません!ええ、絶対に!!」
「アッ、ハイ」
「あー、それはわかったよ、うん。それと、エリカは俺の愛人でもなんでもないから。それこそ事実無根だ」
「我らの情報網は、すでにあなた方の男女の...失敬、主と騎士を超えた関係だという事は把握済みです。この雌狐なら、若き王を骨抜きにするなど児戯にも等しいでしょうし」
「うわぁー」
「俺がエリカにたぶらかされてるみたいに言うな!あと事実無根だって言ってあるだろ!その情報は間違いだ!」
護堂はそんな事ないと言うが、現にエリカが護堂に腕に抱き付いて離れない姿を見る限り事実無根と言えないだろう。
「それと、我らの情報網には白き王も嘗て一人のまつろわぬ女神と淫ら「リリィ!それ以上言うのはやめなさい!!」しまった!?」
リリアナは一夏の情報もある程度掴んでいるのでその情報を言いかけた瞬間、エリカに止められ、リリアナも咄嗟に手で口を閉じた。
何故なら、その情報は一夏にとって、黒歴史であり、一夏の逆鱗にリリアナは触れてしまった事に、顔を青くしている。
「探るのは構わんが、少し、口が軽すぎたな。テメェとこの本拠点に案内しろ、今すぐ地図といままで歩んだ歴史を壊してやるからよ。あ"?」
「も、ももももも申し訳ありません!わ、私の発言で気を悪くしてしまったことを誠に申し訳ありません。今回の失態は全て私の口の軽さによるものですので、私を煮るなり焼くなり、好きにしてかまいません。ですが、"青銅黒十字"には何の責任もありません!王の寛大な慈悲で、どうか"青銅黒十字"を滅ぼすのはお止めください!!」
腰を90度曲げる謝罪から、土下座に移行したリリアナに一夏は腕を組み仁王立ちをしながら、殺気と怒気を撒き散らしながら、見下している。
美少女を恐喝する不良みたいな構図になっているが、誰も止めるものは居なかった。
飛び火するのを恐れて自ら、魔王の怒りを買う人物はいないだろう。
だが、このままでは無駄に時間過ぎ去ってしまい、あらぬ方向に被害が出るので、護堂は意を決し、一夏に話しかける。
「あ、あの一夏さん。このままだと万里谷や一夏さんのお友達も危ない目に遭うかもしれないから、先に進みませんか?」
「......」
目の前の怒りの
「ハァ。おい、とっとと、狼老害とこに案内しろよ」
「は、はい!こ、こちらです!!」
「なぁ、エリカ。一夏さんって短気なのかな?」
「白き王はそこまで、短気という訳じゃないわ。今回はリリィの身から出た錆ね。彼にとって、リリィの話しかけたことは一種のトラウマとも、黒歴史とも呼べる出来事に触れたのが不味かったわ。私達の間では彼の前では、それを一種の禁句にしてるの。過去にそれを笑いながら話した魔術師は二度と人前に出てこなくなり、部屋の中から悲鳴や謝罪の言葉を叫ぶようになったって話があるのよ」
「一夏さん...。貴方は一体何をしたんですか...」
純粋に何をしたのか気になった護堂だが、目の前で、一夏の機嫌を確認しながら、行動する少女の様な真似はしないようにしようと心に固く誓った護堂であった。
リリアナの案内の下館内の奥へ進んでいく。
図書館の二階に上がり、閲覧室に足を踏み入れれば背の高い老人――ヴォバンと白衣と袴姿の万里谷と簪がいた。
「相変わらず、やんちゃな事をしているらしいな。えぇ、狼爺」
「貴殿と最後にあったのは1年程前だったかな...」
「確か、度の過ぎる事ばっかやっているアンタに説教と新しく考えた切り札の実験のために戦った時だったか。俺の一方的な協力に答えてくれてありがとうよ。有効手段が一つ増えたぜ」
言葉と言葉の口撃と、いつ戦いが起きるのか会話を聞いている方は冷や汗しか流れない。
「それで...今回は今日は何の用かね、夜叉王」
「流石の俺もテメェの所業に堪忍袋の緒が切れかけていてな、テメェをぶちのめして、綺麗さっぱり終わりにするつもりだったんだが、俺もコイツも別件で用があるんだよ」
"夜叉王"とは一夏が通り名の一つである。
戦いを望み、戦いを楽しみ、戦っている一夏の姿が鬼神の如き姿、そのあり様から付いたものである。
「草薙護堂だ、俺の友達を返してもらいに来た」
一夏がまず思ったのが「らしいな」だった。
王に相応しい自分本位の考えだと思いつつ、目の前で繰り広げられる会話を頭にいれるだけ入れるがほぼ右から左に流している。
言い合いの中にやはりというべきか、聞き逃せない項目が1つだけある。
その項目を聞いた一夏は目を細め、ヴォパンを見据える。
「ジジィ、テメェまだ懲りてないのか」
一夏の髪が毛先から徐々に黒から白銀へと変わっていく。
一夏の感情が高ぶっている証拠だ。
「まだ、あのくだらねぇ事を繰り返すつもりか? 流石にそれは許容できねぇな。さて、地獄への片道切符を買う準備は出来たか?」
何処に隠し持っていたのか、一つの刀を取り出し、いつでも攻撃が出来る様に構える。
「お、お待ち下さい白き王よ!ここで...この場で決闘をなさるおつもりなのですか!?」
住宅街にある図書館。
そんな場所で決闘を行えば、間違いなく当たり一面が廃墟になるだろう。
目の前の古参の神殺しはさておき、一夏はそこまで馬鹿ではないこのまま戦えば甚大な被害が出るし、助けにきた簪や万里谷をマモレナカッタなどと言う事態はしたくない一夏。
「しゃねーな、...なら、ゲームで決着を付けようぜ。俺と護堂そして、アンタだ。それとも何か?多勢に無勢じゃ、卑怯とか抜かさないよな。最古参の神殺しさんよ」
「ほぉ...、そのゲームの内容はどの様なモノだ?」
「アンタは30分後に追いかけてきて俺達を殺し万里谷と簪を捕まえる。制限時間は......夜明けまで、どうだ?」
一夏の提案にヴォバンは頷き万里谷の腕を掴んで護堂の方へ突き飛ばし、簪の腕を掴み引き寄せ、抱きとめるが、その身体は小刻みに震えている。
不安そうな顔をする簪に一夏は優しく語り掛ける。
「大丈夫だ。もう、これ以上お前が怖い思いをする必要は無い。あの時より俺は力を付けた。大丈夫、今度こそ、守ってみせる」
「う、うん...」
先程まで蒼白だった顔が赤くなっている事に不思議に思いながら、一夏はヴォパンを見つめる。
「いいだろう、今日こそ貴様との決着をつけてやる」
「今日こそ、引導を渡してやるぜ!狼爺ィ!!」
「あれ?勝手に話が進んでいく...」
護堂の知らぬ間に話が進み、困惑するが、ここまで話が進んでしまった以上、最後まで付き合おうしかない。
覚悟を決めた護堂を見た一夏は薄らと笑った。
マナプリズン5個と交換できる概念礼装は何にしました?
正直、ジャンヌか槍師匠で悩んでジャンヌにしました。
理由?ジャンヌがかわいいから。