インフィニット・ストラトス ~蒼天の魔王~   作:ハルン

18 / 52
四月からピカピカの(社会人)一年生だ!(白目)


新たな同居人と少女の思い

昼休みが終わり、一日の授業が終わり、部屋に戻った一夏達に山田先生が訪れた。

「織斑君。少しいいですか?」

「えぇ、どうかしました? 愚姉の事だったら、後日時間があった時に」

「どうかしました?」

「誰か来たの? 一夏」

「皆さん揃ってるんですね。簡潔に言いますとマハードさんとマナさんにはお引越しをしてもらいます」

何か用なのかと集まり始めた一同に、二人に引っ越してもらうので、その準備をしろと言う山田先生。

「何故このタイミングで、引っ越す事になったのですか?」

「デュノア君がコッチに来たんですけど、同じ男性を一つにまとめて置いた方が何かあった時に駆け付けやすいという事と、異性同士同じ部屋にするのは不純過ぎないかという声がありまして」

「まぁ、明確な理由があるのでしたら私はそれに従いますが、私とマナは同じ部屋という事でよろしいでしょうか?」

「はい。兄妹なら特にそう言った事態になる事は無いだろう、という意見が多かったので、お二人は同じ部屋です」

「えぇー、一夏と離れちゃうのー」

「決まったのなら仕方のない。では、用意の準備をしますので外で待っていてください」

「分かりました。では、終わったら教えてください」

バタン、と一度ドアが閉まるとマハードが溜息をつく。

「すみません、一夏。従者である、私が王である一夏と離れて、護衛できない状態になってしまって」

「問題ない。取り敢えず、武器とかの調整はお前の部屋で頼むわ。部外者に視られるわけにはいかないからな」

「何かあったら、教えてください。すぐに駆け付けますので」

「おう、その時は頼んだ」

「お兄ちゃん、準備で来たよ」

「では、一夏。また明日」

「じゃあね、一夏」

用意が出来たマナとマハードが部屋から出るとすれ違うようにシャルルが部屋に入ってくる。

「今日から同室だね。よろしく」

「おう、よろしく」

「で、一夏は何をしているの?」

「クトゥルフ神話を読んでいる」

「一夏ってそう言うのが好きなの?」

「一番は神話、伝承かな。他にもアニメ、漫画、ライトノベル、小説、文明解明等があるかな」

「は、幅が広いんだね...。後、中に可笑しなの入ってるの気のせいかな?」

「そう思いたいなら、そう思えば」

そんなやり取りをしていると、一夏は読んでいた本を仕舞い、制服の袖から大量の道具を取りだし始める。

「ええぇ?! どこにそんな数のモノが入ってるの!?」

「俺、暗k...昔、マジシャンになりたくてな、体から鳩とか出すやつあるだろ。アレの練習をしているうちに身に付いてな」

「へー、一夏にそんな夢があったんだ。僕に少し見せて」

「じゃ、ひとつ」

一夏は部屋を歩き、一つのグラスと厚紙を取りだす。

「ここに変哲もないグラスと厚紙があるな」

「うん」

「まず、グラスの上に厚紙を載せます」

グラスの上に厚紙を載せるとポッケから百円玉を取りだす。

「じゃ、この百円玉をこの厚紙を退かすことなく、グラスの中に移動させよう」

「うんうん」

「じゃ、行くぞ。アインス、ツヴァイ、ドライ!」

 

――チャリン

 

一夏が指を鳴らすと宣言通り、百円玉は厚紙をすり抜けるようにグラスの中に落ちていき、その様子に今だ信じれないシャルルはグラスの中と一夏を交互に見ている。

この時、一夏はシャルルの顔が無邪気な子供の様だ、と思った。

一夏の名誉の為に言っておくと、権能や特別な力は使ってない。

「まぁ、こんな感じで、俺もある程度できるんだよ」

「凄いよ、一夏! どうやったの、ねぇ、教えて!!」

「それ分かったら、つまらないだろ。タネが分かったら言いな。答え合わせしてやるからよ」

そういうと、一夏は部屋の中を歩き始める。

「あれ?どこ行くの」

「シャワー。あ、シャワー中覗くなよ。まぁ、覗くなら覗いていいけど、そう言う趣味がある奴なんだって思いながら接するから」

「ち、違うよ!? 僕はノーマルだよ!!」

「お前の言葉を信じさせてもらうよ」

少し、弄りながら、シャワー室に向かう一夏だった。

シャワー室から出た一夏と入れ替わりでシャルルはシャワー室に向かった。

 

 

 

 

 

シャルルがシャワー室に入ったのを確認すると一夏はスマホを取り出し、マハードと連絡を取る。

「さて、マハードには、情報収集に行ってもらうか。行先はフランスだな」

一夏はベッドの下に隠しておいた銃のマガジンに弾を詰め込んでいく。

「何の用だ。頼み事はさっき連絡したろ」

「えぇ、仕事をする前に二つ程、用件がありまして」

「で、その用件とやらは?」

「一つ目ですが、これは確認と理由です。フランスということはデュノア社についてで、いいんですよね」

「そうだな。後はフランス政府とデュノア社で、行われているだろう黒いやり取りについてあればそれも調べてくれ。フランス政府のお偉いさん方の弱みも探ってくれると助かる。今後、役に立つだろう...あ!後、デュノア関連で魔術に関わっているか調べて」

デュノア社が何故、こんなハイリスクな事をするのか、その内部事情を知る事で解明する事、もし、何か行動するのであれば、魔術を使うのであれば、自分が出るだけで、収まる可能性があるからだ。

フランス政府関連は、デュノア社で問題が起きた時にこれ以上、面倒な事にならないようにする為である。

「二つ目は何だ?」

「もし、何か行動するのであれば、これを使ってください。防刃、防弾加工を施したコートと素顔をバレないようにする為の仮面です」

「あいよ。これに変声機能は?」

「ありますが、丈夫ではないので、大切に扱ってください。調べ終わり次第、連絡しますので、では」

「まぁ、壊れたら、俺が声を変えればいいか。ガンバ―」

一夏は手を振りながらマハードを見送っていくと、ガチャ、とドアが開く音が聞こえると一夏は素早く、銃とマガジンをアタッシュケースに仕舞うと、時計を見るとパソコンを取り出し、起動させる。

シャワー室から出て来たシャルルはジャージ姿で出てくると、一夏の隣のベットに座る。

「そういえば、一夏はIS学園卒業したら、どうするの?」

「なんだその質問? まぁ、俺は国家代表とか微塵も興味ないから、俺のやりたいように生きるさ」

「それだと、世界初の男性IS操縦者なんだから、絶対周りが許してくれないんじゃないかな?」

「なんで、俺がイチイチ周りに合わせて生きなちゃいけないんだよ。馬鹿馬鹿しい」

そう言いながら、一夏は先日、簪と話をした、ビームマグナムの設計図を描いていく。

「誰かに強要された人生なんざ退屈すぎて、生きる気力を失うね。お前は誰かに強要された、誰かが作った人生の線路を歩くのが好みなのか?」

「そんなわけないでしょ! 僕だって、一夏みたいに自分の思うがまま生きたいよ!!誰かに決められて生きる人生なんて僕は嫌だ!!」

「分かったから、そうヤケになるなよ」

「そう...だね...。僕も少し、熱くなりすぎたよ...。今のは、忘れて」

「お前が言うなら、忘れてやるよ」

「そうだ。明日、僕と模擬戦してくれないかな?」

「別に構わんよ」

「じゃ、明日の放課後に第三アリーナに集合だよ」

そう言うとシャルルはベットに横になり、寝息を立てる。

その様子を見た一夏は、やや煽る様な言い方をしたのはシャルルが何か抱えているのなら、助けてやりたいと思ったからだ。

だが、一夏は御人好しで人を助けるつもりは無い。

ほんの僅かでもいい、助かりたいと思ってる人を一夏は優先的に助ける。

先程、シャルルは今の自分の環境下に不満を覚え、逃げ出したい、助かりたいと思っている事が分かった。

助かりたいという意思があるのならば、救いの手を指し出してやろう、それが一夏だ。

「シャルル、お前を拘束するものを俺が壊してやる。困ってる人()がいるのなら、助けるのが()の務めだからな。だが...待て、しかして希望せよ」

そう言うと一夏は、不敵に笑い、拳を強く握った。

 

 

 

 

 

翌日、何事も無く、授業が終わりを告げ、一夏は放課後に模擬戦をするというシャルルのとの約束の為、第三アリーナに来ていた。

強いて問題があったのなら、ラウラからの敵意の籠った視線をずっと浴びていたことだろう。

この時一夏は某見た目は子供、頭脳は大人の少年探偵が使う麻酔針をぶち込んでやろうか、と何度か実行しようとしたが、隣の席のマナがいち早く気づき、阻止していた。

そして、模擬戦をする事になったのだが、何処から聞いてきたのか、箒、セシリア、鈴と合同で模擬戦をする事になった。

 

 

――― 一夏VS箒、セシリア、鈴、シャルルという形で

 

「多勢で寄って集って、戦ってるくせに、その程度か? 俺に傷一つ付けれねぇのか!」

「何だ...この強さは!?」

「大勢で挑んでも、勝機なんてありませんでしたわ」

「...ほんと規格外ね」

「射撃にはそれなりの自信があるけど...。あそこまで、避ける、斬る、相殺、掴むとか...さすがの僕でもへこむな...」

一夏の規格外の戦闘力を改めて実感する一同とその高さに驚く、シャルル。

訓練機で参戦した箒は、真っ先に潰され、セシリア、鈴、シャルルの即席コンビで応戦するも、セシリアのティアーズ全機撃破、鈴の龍砲、青龍刀半壊、シャルルはSE(シールドエネルギー)こそ減っているが、武器や機体の損傷はそこまで高くない。

対する一夏は縮地は使えど、それ以外は一切使わず、余裕の表情を浮かべながら笑っている。

SEを残り2、3割まで削られ、どうすればいいのか対抗策を考えていた時。

「なんか考える余裕あるの?ないでしょ!?」

「グフッ!?」

「セシリア!」

「どうやら、終わりの時が来たようだなぁ。岩盤浴はい・か・が?」

「ほぉああぁぁ?!」

瞬間加速でセシリアの懐に潜り込み、鳩尾に強烈な一撃を喰らわせ、怯んだ所を回し蹴りで沈め、そんなセシリアを心配した鈴の顔面を掴むとそのまま、アリーナの壁に叩きつける。

鈴をアリーナの壁に叩きつけた衝撃で、大きなクレータを作った。

「残りは...」

「ヒィ!?」

「お前だァ!」

残ったシャルルに向け、前進するが、シャルルも只、怯えるだけではなく、右手にアサルトライフル、左手に散弾銃を持ち応戦する。

「あらよっと!」

「しまった!」

一夏は地面に雪片を軽く刺し、棒高跳びの要領で、シャルルの背後を取ると慌てて、振り向くとそこにはカスールとジャッカルを構えた一夏の姿があった。

「ゲームオーバーだ!ド外道!!」

「キャァァァァ!?」

カスールとジャッカルを一心不乱に撃ちだし、可愛らしい悲鳴を上げるシャルル。

一夏の言葉を聞いた全員が、それはお前だ、と内心思ったがどんな仕打ちをされるか分からない為、言わなかった。

 

結果、模擬戦は一夏の完勝で終わった。

 

今回の模擬戦を終えて、得た事は一夏の理不尽な強さと模擬戦を仕掛けたら、地獄を見るという事だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「箒、鈴、セシリアは頭が固いんだよ」

「「はぁ」」

「だが、剣は接近して、斬る為のものだろう」

「脳筋、猪突猛進過ぎ。だから、カウンター喰らって速攻落とされるんだよ」

「ぐぅ」

模擬戦が終わり、一夏による反省会が行われていた。

「セシリアはティアーズ破壊された時の対策が少ない。ショートブレードの展開も遅いから、接近戦において無防備同然なんだよ」

「でしたら、接近させなければいいだけですわ」

「バカスカ、接近されてたのは何処のどいつだ?展開遅いんなら、そのライフルで接近戦するとか考えておかないと接近されたら終わりだぞ。てか、同時使用出来る様になれや」

「はい...。以後、気をつけます」

言葉のナイフでドンドン、攻撃していく一夏に痛い所を突かれたセシリアはショボーンとしていた。

「鈴は強い武器に頼り過ぎ。例えば、龍砲とか、龍砲とか、龍砲とか」

「全部、龍砲じゃない。で、他の改善点は?」

「龍砲使う時に無意識だろうけど、少し、舌で唇を舐める癖があるからそこを直すのと、後は接近戦の練習。青龍刀なくなった時の策として、素手による格闘を覚えるとかな」

「ふーん。じゃ、もう少し、武術の練習するとしますか。その時、一夏指導よろしく」

「まぁ、ある程度できるし、いいぜ」

鈴の今後の改善点を言うと、鈴が武術の指導を申し込んできたが、この時、一夏は鈴を自分の師匠の魔術結社に送り込もうかと思ったが、自分でやった方がいいなと思い了承する。

「シャルルは特に悪い点は無いんだよ。相手との距離を常に考え行動するとか、高速切替とか上手く使えてるし。未熟な部分があるからそこを直せとしか言いようがないな。まぁ、原石に少し磨きが掛かった程度だから、まだ強くなるから、精進あるのみだね。あるとしたら、少し、効率的に動こうという姿勢が強いな。もう少し、効率性を無視した戦いをしてもいいかな」

「なるほどね。一夏はそう言うの考えないで戦ってるの?」

「俺は偶に考えるけど、基本的に本能で戦うかな」

「な、中々原始的な考えだね」

「偶にはこういう考えも必要という事さ」

「みんなー。喉乾いたでしょ?お茶持ってきたよ!」

シャルルの問題点を言っていると、マナが人数分のお茶を持ってくる一夏達とは反対の方から声がしてきた。

「あれっ、あのISってまだテスト段階じゃなかったの?」

「完成したからそのテストの意味も含めてここに来たのかしら?」

そんな周りの疑問を余所にラウラは一夏に問いかける。

「おい、貴様も専用機持ちなら私と戦え」

「嫌だね。戦う理由が無い」

「教官の汚点であるお前を私は許さない!お前を倒し、教官と同じ強さを手に入れる!」

この時一夏はラウラがどういう人間なのか理解する。

「その不躾な口を閉じろ、贋作(フェイカー)

「貴様!?」

一夏の発言にキレたラウラが、レールカノンを一夏に向けて狙いを定め、撃つが

「この程度か...。所詮は偽物か」

「くっ!」

一夏は素手で受け止めると、そのままラウラに投げ返すとラウラは手刀で切り落とす。

「頭に血が上り過ぎて、周囲への警戒が疎かになってるぞ」

「グッ」

次の一手を打とうとした瞬間、すでに背後を取っていた一夏がラウラの首筋に手刀を当たる寸前で、止める。

「贋作、偽物と言われたのが、そんなに癪か? だがな、お前の今の在り方は正に偽物だぞ」

「貴様に一体何が分かる!!」

一触即発な雰囲気にが辺りを覆うとアリーナのスピーカが響き始める。

『そこの生徒、何をやっている! 学年とクラス、出席番号を言え!』

騒ぎを聞きつけてきたのか、先生の声がスピーカーを伝わってアリーナに響き、ラウラから手刀を離し、鈴達の所に足を進める。

「戦う雰囲気じゃないのでね。此処は退かせてもらうぞ」

スタスタとアリーナを去っていく一夏を遅れて追い掛ける、マナ達。

 

 

 

 

 

アリーナを後にした一夏はマナの部屋に来ていた。

「ねぇ、一夏。なんで、ラウラに贋作なんて言ったの?」

「ん?あぁ、その事か。理由は簡単だ。アイツの在り方をそのまま言ったまでだ」

「ん?」

「アイツは駄姉の信者だろうな。恐らく、ドイツに行った時の教え子だろう。アイツに何があったのか分からんが、あいつの中身は空っぽ...その中身を"織斑千冬"という存在で埋めようとしているんだよ。"織斑千冬"という世界最強の強さでな」

「それは憧れとは違うの?」

「憧れとも違う。自分すら知らずに他者で自分を塗り固めようとしている。それは只の猿真似だ。自分と言う存在を理解し、意志をもって、真似ればそれは自分の力になるだよ。それは自分の意志が籠ってるからだ。だが、アイツは只、力を求めるだけで、其処には自分の意志は存在せず、模倣しようとする相手の思いも意志も何も考えず、只真似て、求める。だから俺は偽物、贋作と言ったんだ。それに、人は決して他人になる事が出来ない」

ラウラの千冬に対する態度は尊敬を超え、信仰と言っても過言ではない。

相手の技を真似るのであれば、相手の思いや意志を読み取り理解すべきだ、と一夏は教えられている。

『相手の技を模倣するのであれば相手を理解し、自らの意思を持ってその技を成せ』これは今は亡き親友が一夏に教えた言葉だ。

ラウラは只、力を模倣し、吸収しようとしてるのだ。相手を理解せず、相手の意志や思いも、ましてや自分の意思すら無く、真似るだけのその姿は正に偽物である。

それではいずれ力に飲まれ、自らを破滅に導くだろう、と一夏は考えているが、これについては彼女自身の精神的な問題である為、どうこうすることは出来ない。

「まぁ、俺がああ言った理由は以上の通りだ。アレは力に飲まれて、自滅するタイプだね。よくゲームとかで、力を手に入れるも制御できずに暴走させる奴とかさ」

「ふーん。そう言えば、お兄ちゃんはいつ頃戻ってくるの?」

「今週中には戻ってくるだろう。そこまで、難しい事じゃないし」

「因みにどんなこと頼んだの?」

「ちょっと、デュノア社とフランス政府の内部事情を調べてくれ、と頼んだ」

「それ、かなり難しいと思うんだけど...」

「アイツは『では、二日か三日で調べ上げてきます』と言って、旅立っていったぞ」

お兄ちゃんマジハイスペック、と言っているマナを無視し、部屋を歩き、ドアの前に立つ。

「そんなわけだ。後はいつも通り、自由にやらせてもらうから」

「程々にね」

「善処しよう」

そういうと、一夏は部屋を後にし自室に戻るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

部屋に戻った一夏はそのまま新しい武器の設計図を描き、その他設定や色々奮闘する事数時間が経ち、太陽も沈み、闇が広がる夜。

基礎は出来上がり、外装もついでにマハードに外装の製作を頼んである為、後はプログラムなどの中身を手掛ければ終わりという段階まで進んでいた。

時計は既に八時を指しており、ずいぶん長い間纏め作業に没頭していたのだと気づかせる。

「一夏、そろそろシャワー浴びたいんだけど、先に一夏が浴びる?」

「ん? いや、先に浴びてていいぜ?」

「そう? だったらお言葉に甘えちゃおっかな」

一夏の言葉を聞いたシャルルはそういうとシャワーの準備をし始める。

それを横目で見ながらも一夏はデータ作成を続けていく。

そしてシャルルがシャワー室に消え、シャワーが流れる音が響きだす。

「あ~、マハードが帰って来ないと、『ドキッ、白き王の突撃(物理的)恐怖の家庭訪問』が出来ないじゃないか。アイツ、もうすぐ終わるって言ってたな。戻るまで寝よ」

そういうと、ベッドに倒れこむと、そのまま寝息を立て始めてしまった。

 

そして一夏が夢の中へと旅立った数分後。

 

 

「はぁ~、コルセット部屋に忘れるなんて、ドジだなぁ、僕」

シャワーを浴び終えたシャルルが部屋へと戻ってくる。

濡れた髪をタオルで拭きながら戻ってきた彼は、ベッドの上で自分の方に顔を向けながら寝ている一夏を見て思わずぎょっとする。

「い、一夏!? ......って、寝てるのか。はぁ、良かったぁ......」

そう言って胸をなでおろすシャルル。

その胸は、男ではありえないほどのふくらみを持っていた。

「やっぱり、やだなぁ、みんなを騙すのって」

彼は、実は『彼』では無く『彼女』だったのだ。

いったいどのような事情があり彼...否、彼女が自身の性別を偽ってここにいるのかは定かではない。

だが、彼女の様子を見るに、好き好んで性別を偽っていたというわけではないだろう。

「別にいいか、一夏も寝てるし」

取りに来たモノをつけずに、上着を着る。

「はぁ、どうしてこうなったのかな...。 僕はただ、母さんと普通に、ほんとに普通に暮らせればそれでよかったのに...」

だというのに、自分の母は病に倒れ、帰らぬ人となり、そのせいで今まで顔を見たことも無い父親に利用され、彼女がIS学園に入学したのはその父親に言われての事だ。

もちろん、ただ入学して来いと言われて来たわけではない。

「ごめんね、一夏。でも、僕にはこうするしかないんだ...」

今のような境遇になって、何度も何度も、毎日の如く呟いている『ごめん』そして、『こうするしかない』という単語。

だが、呟いたところで現状が変わるわけでもない。

結局は、今ある自分の居場所を保つために、自分はあの忌々しい父親のいう事を聞かなければならないのだ。

直接では無いにしろ確かに電話越しで、父親の声から発せられた命令。

それは織斑一夏のISのデータを入手してくる事。

今、デュノア社が欲しいのは第三世代のIS、そして、一夏のデータである。

後者に関してはその情報の価値は、まさに計り知れないほどの物となるのだ。

シャルルは用意された端末に白式をケーブルで繋ぐとそのデータをコピーしていく、その時だった。

「!? 何...この感覚...」

それは、背骨に直接氷を当てられたかのような寒気。

そして何者かに見られているかのような感覚。

ほんの一瞬の感覚に大量の冷や汗をかきながら、周囲を見渡す。

しかし、当然周囲に誰かがいるはずも無い。そこにいるのは眠っている一夏しかいないのだから。

何が起きたのか戸惑っているとデータのコピーが終わり、これをデュノア社の指定された場所に送れば終わり、これが終われば少しは楽になるのかな、と思った次の瞬間。

「いつかは実行するだろうなと思っていたが...まさか今日とはな」

声のした方を見てみると其処には眠たげに上体を起こしている一夏の姿。

一夏の瞳は、眠たげに細められているが、まっすぐシャルルを見つめていた。

 

 

 

 

 

 




デュノア社関係者逃げて超逃げて―

なにやら、行動を起こすつもりの一夏、デュノアに明日はあるのか!




引っ越しの用意などで、今回の更新から少し、次の更新まで間が開くと思いますがご了承ください。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。