「イチカー!起きて!起きなさい!」
「うーん、あと五分」
「良いから起きなさいよ!」
「あと一億年...」
「ドンだけ寝る気よ!このバカ息子!!」
「グォッ!!??」
眠りについていた一夏は少女の声とエルボによって、強制的に起こされる。
「痛い...。腹が痛い...」
「さっさと起きないから悪いのよ」
痛む腹を抑えながら、周りと目の前の少女を観察する。
あたりを見渡せば、灰色しかない世界。
地平線の先まで、ひたすら灰色の空間が続き、目の前には10代半ばぐらいで、身体つきは細身で胸が寂しく、少し卑猥な服装をしている。
「...此処は何処だ」
「ここは生と死の境界、私は神殺しの母パンドラよ」
「神殺し...?」
一夏は先程、倒したであろうブリュンヒルデについて考える。
ドイツ中世叙事詩『ニーベルンゲンの歌』ではイースラントの女王とされていることを思い出すがブリュンヒルデが神かというと少し疑問である。
「じゃ、俺はブリュンヒルデを倒して、神殺しに成ったって事?」
「そう!後、ママって呼んでくれてもいいのよ!」
「...ママって、さっき自分でパンドラって言ったけど、それって人類に災厄をもたらす存在の事?」
「よく、ホイホイとそんな知識が出てくるわね...」
「神話、伝承とか好きだからね」
両親が神話、伝承を研究対象とする考古学者である為、幼い頃からそう言った話を聞かされ、いつの間にかそう言う類が好きなオカルト系男子になっていた。
「所で、俺は死んだの?」
「死んじゃいないわ。あなたは神殺しに成功したのよ。そしてあなたは呪われた祝福を受けて生まれ変わるわ。
『神殺し』『王の中の王』『魔王』
――『カンピオーネ』にね」
「良かった。色気のいの字も家事も出来ない、いつ結婚するのか分からない千冬姉を置いて死んだら、一体どうなるやら」
「カンピオーネになった事はノータッチなのね・・・」
「なったもんは仕方ないし、ここで騒いでもどうにもならないでしょ」
そう言いながら笑う一夏にパンドラは何かを思い出したのかポンと手を叩く。
「カンピオーネに成った今、どうでもいい話だけど、転生しなかったらイチカは30位までしか生きられなかったわよ」
「はぁ!?」
パンドラの思わぬ一言に驚愕する一夏。
「それ、どういう事だよ!!」
「イチカの使ったあの石碑は使用者の命を吸って発動するのよ。一気に命を消費したショックで髪の色素も落ちてるしね」
「マジで」
一夏は自分の髪の毛を一本抜くと其処には綺麗な銀髪があった。
「まぁ、無事カンピオーネに成った事だし、また神と戦う事になるけど頑張ってねー!」
パンドラの反応に軽すぎと思った瞬間、視界が急に暗くなり、そのまま抗うことなく一夏の意識は闇に飲まれていった。
パチッと目を開けると明るかった空は薄暗くなっており、先程まであったオーロラは消えていた。
一夏はもう一度、自分の髪の毛を見ると黒髪は銀髪に変わっていた。
「髪を黒に変えてから帰ろう。 きっと、千冬姉心配してるだろうし」
地面に倒れていた体を起こし、付いていた土を払いホテル目指して移動するのだった。
この日を境に一夏は最年少カンピオーネとして多くのまつろわぬ神との戦いに身を投じていくようになった。
中学一年生になった一夏は現在、夏休みであり、暇を持て余していた。
「暇だなー。どこかにまつろわぬ神出てこねぇかなぁ」
「一夏。その様な事を言い現実になった場合どうするんです?一度、戦いから離れてはいかがですか」
「
「この際ですから、周りに被害を与えない戦い方を考えましょう」
「それ、どんな無理ゲーだよ・・・。まつろわぬ神相手に周りに気を配れますかってんだ。てか、俺の権能で危険なのは現段階で一つだけだ」
先程から一夏に話しかけているのは一夏の従者である、マハード・ガーネット。
マハードは半年前にエジプトでまつろわぬ神との戦闘で負傷した所を一夏が助け、助けて貰った恩として、一夏の従者になり、忠誠を誓い一夏の身の回りの仕事をしている。
その実力は魔女と同等であり、剣術の才も高く、その実力は一夏の右腕として十二分に発揮している。
一夏が持つ、世界を焼き尽くす事が可能な切り札があるが、それが何処までの威力があるのか分からず、現段階では都市の一つや二つを焼け野原に変える事が可能ということは判明している。
最大の火力を出そうにも一夏のポテンシャルが複雑に絡んでくるのと、試す相手がいない為、分からずじまいである。
そんな会話をしていると物凄い勢いで何かが駆け上がり、近づいてくる音が部屋中に響く。
「一夏!「廊下を走るな!」ブフッ」
ドンッと勢いよく扉が開くと同時に一夏は近くにあった枕を先程、扉を開けた女性に投げつける。
枕はそのまま女性の頭に吸い付くかの様に当たり、そのまま後ろに倒れる。
マハードは何やら電話の対応をする為に一度退出している。
「ちょっと!いきなり何するのよ、一夏!!」
「お前こそ何してるんだよ、マナ!俺があれだけ口が酸っぱくなるまで言ったよな!!廊下は走らない、扉はノックしてから開けるってさ!!」
今、一夏の説教を受けているのはマハードの妹、マナ・ガーネットである。
マナもマハードと同じく、魔術師をしているが、まだ未熟なところがあり、現在マハードと一夏の師事の下、魔術を学んでいる見習い魔術師である。
「何か言いたいことがあるなら言ってみろ」
「うぅ、ごめんなさい。あのさ、一夏。今度の日曜日に海水浴に行かない?」
「なんか特別な事が起きない限り外に出たくない」
「先程、プリンセス・アリスから、ゴルゴンの石板の対処をしてほしいとの事です」
電話から戻ってきたマハードは一夏が興味を引く話をする。
ゴルゴンとは、地中海で発見された石板で蛇の頭を持つ女性のようなモノが刻まれた黒い石材で作られた縦横1m程の大きさのモノでギリシア神話に関する事が記述されている。
「お前ら、今すぐ仕度しろ」
「え?引き受けるの」
「行きたくないんなら行かなくていいよ。依頼をこなしながらギリシャの海でバカンス楽しむから。マハードは行くんだろ?」
「私は常に一夏と共にあります。王が行かれるのであれば例え、日の中、水の中、まつろわぬ神の戦いの中何処までもお供します」
「マハード...。お前の忠誠心は嬉しいけど、俺が言うのもなんだが、もう少し、自分の命大切にしようぜ。なら、今から仕度して来い」
付いて行く事を伝えるとマハードは自室に向かい、仕度の準備をする。
因みに住む場所の無いマハード達に『俺の家に住めばいい』と言い、姉である千冬は基本的に家にはおらず、部屋が余っているのでマハード達に部屋を貸し、同居している。
この時、見ず知らずのマハード達に部屋を貸すことに反対した千冬だが、家の実権を握る一夏に『認めないとビールは月に一本、自分の分しか家事はしない』という酒好きで家事全般が駄目な千冬に取って苦行と同時に死刑宣告を下すと千冬は意見をコロッと変え、賛成し、世界最強のブリュンヒルデにとって一夏は数少ない天敵と言えるだろう。
「行く!私も行くわよ!!」
「仕度次第、すぐ行くぞ」
イチカ達の目の前には綺麗なエーゲ海が広がっていた。
「海とか久しぶりだな。最後に日本出たの半年前だしな」
「そうだね、半年前にエジプトに来たのが出会いだもんね」
「そうですね。あの時、一夏がいなければ、私もそうですが、マナの命も危険でした。この多大なる恩は必ずやお返しします」
「気にするなって、お前たちが俺の従者に...。家族になってくれて感謝してるのはこっちなんだからさ」
少し前の話をする一夏達。
何故、一夏がエジプトに居たのか、それは一夏の持つ権能を使い少し先の未来を見た結果、近いうちにエジプトにまつろわぬ神が現れる事を知り、単身エジプトに向かったのだ。
そこで起きたまつろわぬ神との戦いに巻き込まれたマハード達を助け、まつろわぬ神を無事倒し、(ピラミッド一つ破壊と周囲の生物の死滅という被害、後に一夏によって元に戻っている)無事解決したのだ。
「所で一夏。件の対処はどうなさるつもりですか?」
「取り敢えず、ぶっ壊す。龍脈とか周囲から呪力を集めてるが、今のところ影響はないけど、このまま進むと甚大な被害が出るからな」
「そうですか。取り敢えず、エジプトのような事態にはしないでください」
「いや、なったとしても後で戻すから大丈夫だって。明日、ぶっ壊すからお願いね」
「一夏!早く泳ぎましょ!そのために水着を新調したんだから!」
ゴルゴンの話をしていると水着姿のマナが一夏の腕を引っ張る。
「マハード、お前は俺の為に働いてくれるけど、偶には休め」
「ですが...」
「一夏からの命令だ。全力でこの休息を楽しめ、いいな!」
「...では、御言葉に甘えて」
マハードは着ていた服を脱ぎ捨てると其処には鍛え抜かれた肉体と海パンではなく、褌を付けたマハードの姿があった。
「って、なんで褌なんだよ」
「この間、買い物に出かけた時に『これを見に付ければ、願いが叶いやすい』という事で、買ってみました」
「そのお値段は?」
「5万です」
「それ、只のぼったくりの悪徳商法だ!たっく...」
一夏はマハードの行動に頭を抑える。従者としても魔術師としても一流だが、何処か抜けているのがマハードなのだ。
「騙せ、偽れ、欺け!我は森羅万象あらゆるものを惑わす者成り!」
一夏はマハードの褌が人の眼に付く為、一夏は聖句を紡ぐ。
一夏の持つ"騙す"権能を使い、マハードの褌を市販の海パンに変える。
「さて、何して遊ぶかな?」
「競争!スイカ割り!」
「釣りで」
「じゃ、最初は競争して、腹減ったらバーベキューでもするか!」
競争で始まり、スイカ割り、釣り、バーベキュー等、一夏達は普段遊べない分、精一杯遊んだ。
そして次の日。
「じゃ、マハード、マナ。準備は良いな?」
「うん」
「いつでも」
「準備は出来ています」
「じゃ、やりますか」
全員の準備が出来たことを確認した一夏は聖句を紡ぐ。
「我は戦場に赴き、我は戦士の魂を選定し、我は選ばれし魂を宮殿に導く者なり」
一夏の身体に光が集まり、光が収まると其処には白銀の鎧を身に纏い、剣を携えた一夏の姿があった。
「せーの、でッ!」
一夏は剣を大きく振りかぶりそのまま叩き下ろす。
ゴルゴンに溜まっていた呪力は消え、ゴルゴンに罅が入り、砕け散る。
ゴルゴンが砕けると一つの光の柱が現れると其処から白馬が現れる。
「この感じ、神獣か...。マハード、頼んだぞ」
「一夏の意のままに」
「頑張って一夏。負けないでね」
「心配するな、俺は負けない。 オラ、ササッと行け!」
一夏の言葉に三人は一度顔を合わせ、お互いに頷いて駆け出した。
「悪いがお前に構ってる暇はないのでね。とっとと終わらさせてもらう」
一夏は中国の山奥に住む自尊心が異常なほど高い武人に教えてもらった縮地神功・神足
通、所謂、縮地と呼ばれる術を使い、白馬に接近し、頭上から剣を突き刺す。
白馬が倒れて、数瞬後、エーゲ海に巨大な渦潮が出来ると其処から一人の男性が現れるとイチカと目が合う。
「貴様...今代の神殺しか」
「あぁ、そうだ。俺は織斑一夏...東洋の神殺しさ」
「ならば、我も名乗ろう。我が名はポセイドン!天空神ゼウスの兄だ!」
一夏は聖句を紡ぎ臨戦態勢に入る。
「我は永久の生と死を繰り返し、天を廻る太陽と成り、天を照らす光と成る!」
一夏の背中から炎の翼が生え、羽ばたきながらまつろわぬ神に接近する。
接近する一夏をポセイドンは三叉の矛を一振りすると3m程の津波を操り、一夏に襲い掛かってくる。
「しゃらくせぇ!!」
一夏は津波を切り裂き、拡散するが完全に消えたわけではなく切り裂かれた津波はバラバラになったまま新たな津波になり、一夏を襲うが一夏は上空に退避する。
ポセイドンの手にある三叉の矛を一夏に向けて突き立て、一夏は回避する素振りを見せずに直進し、三叉の矛によって左腕を切り落とされ、苦悶の表情を浮かべるが、切り落とされた左腕から勢いよく炎が噴出し、炎が消えると其処には何事も無かったかのように切り落とされた左腕があった。
「肉体が再生した?...その炎もしや、幻獣フェニックスから簒奪したものか」
「...一応、正解だ。これは幻獣フェニックスから簒奪したモノだ。そろそろ、本気を出すかな」
「我を相手に手加減とは不愉快だな」
「世界を焼き尽くす劫火よ!天を焦がし、大地を灼熱の劫火で焼き尽くせ!」
一夏を中心に炎が広がると炎は一夏の左手に集まり剣の形になる。
「
「クッ!」
一夏は炎の剣を一振りすると炎はポセイドン目掛け突き進み、ポセイドンは自身を覆う程の津波を作り防ぐが、炎の勢いは止まらず津波を蒸発させ、そのままポセイドン襲う。
「グゥゥ...。この炎は...魔人スルトの...」
「そうだ。悪神ロキによって鍛えられたモノだ」
「...だが、本来の威力までは出せていない。その炎を凌ぎ、貴様を倒せば我の勝ちだ!」
「それはどうかな?」
一夏の身体が一瞬、揺らぐと同じ姿、同じ声をした一夏が二人いた。
「クッ!幻影の類か!!」
「嘗て、アンタはペラスゴイ人に崇拝された大地の神だった。だが、この時アンタは海神として力は今世に伝えられるほど強くなく、また全物質界を支配出来ていなかった」
「貴様!我を暴き立て、忌まわしき過去を思い出させるつもりか!?」
「ティターン神族との戦いの時にキュクロープスから海と大地を操ることのできる三叉の矛を贈られ、奮闘の末、勝利した。ゼウス、ハーデスとのくじ引きで支配領域として海を引き当てた。だが、海を支配するにはアンタの力は不十分だった!」
一夏は炎を操り、ポセイドンを襲うがポセイドンは水の盾を何重に重ねることで防ぎ、三叉の矛で一夏を攻撃するが、一夏の身体は霧に変わると霧散した霧が集まり一夏の身体を形成する。
「当時のアンタは嵐や津波を引き起こし、大陸をも沈ませることができたが・・・それでは支配しているには程遠い。そこでアンタはある人物に目を付けた」
「えぇい!聞いた風な口を聞くな!!」
「海の支配者として力の弱かったアンタはある人物に目を付けた、後にお前の妻になったアムピリテだ!アムピリテは強力な力を秘めた女神だった。大波を起こし、海の巨大な怪魚や海獣を数多く飼い嵐を鎮めることができる程の強大な力を持った女神だ。元々、大地の神であったアンタはアムピトリテと婚姻し、正妻にすることで彼女を傍に置くことで、海を支配することに成功し、大地と共に海をも司るようになった。異名の1つに大地を揺らす神ってのがあるが、それはアンタの大地の神としての性質を言い表してるものだ」
ポセイドンは一夏を三叉の矛で切り裂くが一夏の身体はまたもや霧になり、ポセイドンの周囲を覆い始める。
「目眩ましのつもりか神殺しよ!今すぐ、姿を表し、我を暴き立てた罪その身を持って償え!――――ゴフッ」
怒るポセイドンの背後から一瞬、冷たく鋭い感触がするとその感触は体中を巡ると胸元から剣先が姿を表し、ポセイドンは背後に視線を移すと其処には左手に炎の剣を持ち、右手に持っていた剣でポセイドンを突き刺す一夏の姿があった。
「グッ...。貴様ァ!」
「アムピリテと共通点が多いのは女王の時代が終わり、女性の地位は落ち、神話は書き換えられ男が世界を支配し始めた。その時に妻であるアムピリテの神格と力を引き継ぐ形で海神ポセイドンが誕生した。時代の変化によって生まれた、海神・・・。それがアンタの本質だ!!」
一夏は炎の剣を両手で持ち、ポセイドンに接近し、切り裂くと現れた炎柱にポセイドンが飲み込まれる。
「ぐぅぅぅ...流石は神殺しと言ったところか...。だが、只ではやられんぞ!!」
「グッ...!ガハッ!?」
ポセイドンは三叉の矛を振りかぶり、渾身の一撃を一夏にお見舞いする。
三叉の矛の一撃により鎧は砕け視界がぶれ、臓器を貫かれた一夏は態勢を崩し、海へ落ち、最後に一夏が見たのは剣が突き刺さったまま炎に焼かれゆっくりと灰になり消えていくポセイドンの姿だった。
「知らない天井「一夏ぁぁぁ!!」へぶっ!」
目を覚めた一夏はお決まりの台詞を言おうとした瞬間、一つの黄色い閃光が一瞬見えると腹部に衝撃が加わる。
「いきなり何するんだよ!」
「!?」
一夏は突撃したマナに拳骨を落とし、一夏は後ろで静かにしているマハードに視線を移す。
「マハード、あれからどれ位時間経った?」
「一日であります」
「マジで」
「はい。マジです」
マジかー、と呟きながら一夏はエーゲ海に沈む夕日を見る。
「じゃ、明日帰るか」
「もう大丈夫なの?」
「問題ない。まぁ、半ば観光で来たし、お土産買って帰るぞ」
「え~、もう少し、居たい」
「駄々を捏ねるな駄々を」
一夏はお目当てのまつろわぬ神との戦いであり、目的を達成し、権能も増えたことにより、一夏自身、満足であり、長居は無用と言わんばかりに帰りたいのが本心である。
「一夏。今回の戦での被害は今までの中で最も抑えられていました。一夏は周りへの配慮を考えたのですね」
「いや、周りに被害が出なかったのは場所が良かっただけだろ」
今回は海の上での戦闘がメインであったのと周りに何もない為、そこまで被害が出なかったのだ。もし、これが別の場所だった場合、地図を作り変える必要があっただろう。
「折角の海外なのに...」
「まぁ、近いうちに第二回モンドグロッソがドイツで行われるからその時にゆっくり、観光すればいいさ」
第二回モンドグロッソは後二ヶ月まで、迫っており、千冬は二連覇という偉業を成し遂げるために日夜トレーニングに時間を費やしている。
「まぁ、どっかのアホな国が馬鹿なこと考えていそうだな。誘拐とか」
「確かに一夏を誘拐する事で精神的に不安定にし、織斑千冬の戦意喪失もしくはリタイヤを狙うと言ったところでしょうか?」
「そんな所だろうぜ」
「その時の事はその時、考えましょ」
「だな」
起きたのならその時に考えればいいや、と頭の中で結論を付ける一夏であった。
そして、時は流れ、第二回モンドグロッソが開催されたドイツに一夏は姉である千冬の応援に来ていたのだが、ここで一つアクシデントが起きた。
「まさか、俺が捕まるとはな...。てか、見事なフラグ回収だな...」
一夏は観戦中に配られた飲み物を飲んだ途端、強い睡魔に襲われ、気が付いたら手足を拘束され、知らない場所にいたのだ。
(睡眠作用のある薬か・・・。飲み物に魔術でも仕込んでいた可能性もあるな)
カンピオーネである、一夏は人を超えた呪力を持っており、経口摂取などの特殊な方法でもない限り魔術や呪術を一切受け付けない体質になっている。
マハードに助けを頼もうにも現在、マハードは高熱を出して医者から絶対安静と言われ、歩くこともままならないマハードは弱っている身体に鞭を打ち同行しようとしていたが一夏の説得により渋々了承し、マナはマハードの看病をしている為、一緒ではない。
「おい、お前の姉は弟より名誉を選んだみたいだぞ」
「あのブラコン織斑千冬も世界的地位と名誉に目が眩んだか」
(たぶん、こいつらは千冬姉に直接脅迫したのではなく、日本政府に脅迫したんだろう。そして、日本政府はそのことを千冬姉には知らせなかったってところか...。女尊男卑が当たり前になった世界で男である、俺を見捨て、千冬姉に二連覇してもらい女性の地位を更に向上させると言ったところか)
戦いによって培われた勘は大したもので実際に一夏の予想した通りだったりする。
「このままじゃ織斑千冬が優勝してしまう」
「俺たちも殺されちまう」
「あいつら容赦ないからな」
「だが、亡ナントかは最悪、弟の身柄を引き渡しを要求していたから、此奴さえ、渡せば首の皮一枚つながる」
(ふぅーん。中々、面白い話が聞けたな。今、思えば僅かながら魔術の気配がしたな。まだまだ、未熟だねー)
この場から、脱出する為に得意のルーン魔術を行使する為、一夏はルーン文字を描く。
一夏がルーン文字を描き終ると同時に行使すると部屋一帯が炎に飲み込まれる。
「な、なんだ!?」
「いきなり、燃えやがった!!」
「逃げろォォォォ!!」
(よし、今だ!)
自分の事を忘れ、我先に逃げ出す誘拐犯を見ながら窓へ飛び込み、短く聖句を紡ぐ。
「天を翔ぶ、不死鳥よ!」
短くても聖句は聖句なので、権能をしっかり発動させ、炎の翼を羽ばたかせ、周りを確認する。
「よし、まだ外に誰も出てないな」
確認した一夏は新たに聖句を紡ぐ。
「大地を揺るがす怒りよ!その怒りの鉄槌で敵を討ち砕け!」
ポセイドンから簒奪した権能を行使し、倉庫を殴る。
すると、倉庫はまるで地震に合ったかのように大きく揺れると倉庫が崩壊し、土煙が上がり始める。
土煙が晴れると其処には
「王に対しての行い...本来なら万死に値する所だが、今回は見逃してやる」
そう言うと一夏は返事の無い誘拐犯に背を向け、権能を解除し、会場に向かって歩き出した。
向かっている途中で救援に来た、千冬とドイツ軍と合流、無事保護された。
どうやら、千冬は表彰式を抜け出して助けに来たらしく、一夏を見つけた時、半泣きの状態で抱きついてきた。
日本に帰国後、マハードにその事を話すと一夏を護れず、危険な目に合わせてしまった事に対し、死んで償おうとした為、マハードを止めるのに苦労した一夏であった。
Gジェネとこの作品のネタは思いつくかが、他の作品は思いつかない...。
次は本編です。
マハードとマナ遊戯王のブラックマジシャンとブラックマジシャン・ガールをイメージすればいいです。